2003/11/28
XML
カテゴリ: 国内小説感想
 冷え込む空気の中でも陽射しは柔らかく、スーパーの裏、従業員用出口の階段脇にたむろするそれぞれ毛色の違う仔猫四匹は、じゃれあって、じゃれあって、何をそこまでじゃれあうことがあるのかと思うほど、じゃれあっていた。横の道を車が通る時は何も反応しないのに、買い物袋をシャカシャカ鳴らして通るおばさんが来ると暗闇の中に逃げる。が、すぐ戻る。階段に従業員が現れるとくしゃみのように逃げ散るのだけれど、やっぱりすぐに戻ってじゃれ始める。
 夏の間、出逢うと膝に乗って来た猫のいた場所で、その時の猫よりもずっと毛並みのいい白い上品な飼い猫と、こちらは馴染みの黒白の気の弱い猫が、鳴き合っていた。黒白はきちんと鳴くのだが、白は細く長く喉を鳴らすだけで、お互いの会話が成立しているようにも見えない。首輪がきついのかと思い見てみたがそういうことでもない。簡単に人に触らせる無防備さは心配だ。こちらが離れても、二匹の弱々しい鳴き合いは続いていた。
 夏の少し前に産まれた三匹の猫たちがよく走り回っている近くの道路で、その内の一匹らしいのが、車道の端を冒険心に満ちた足取りで歩いていた。道のあちら側にいるのは見たことがない。以前、別の猫の礫死体ならその道で見た。バイクの音が聞こえ、光が見える前に猫は茂みに飛び込んでいた。蛮勇とはなるな。
 三つの猫の話は全く関係ない。

梅崎春生『鏡』
遠藤周作『イヤな奴』
高橋たか子『骨の城』
吉田健一『一人旅』
島尾敏雄『夢屑』

中里恒子『家の中』
小川国夫『天の本国』
三田誠広『鹿の王』
小林恭二『磔』
森瑤子『死者の声』

 ユープケッチャ、「ユープケッチャ」『ユープケッチャ』! この短篇をプロローグとした『方舟さくら丸』を、短い期間に二度読み、すぐに友達に貸し、元々古本だった為に、中の頁が何枚か抜け落ち、輪ゴムで留め別の友達に貸し、ボロボロになった。どうしてあんなに夢中になったか今思うと不思議だ。
 読んだことのある短篇は飛ばすかあまり期待せずに読むこのシリーズ、『ユープケッチャ』だけは初めて読むような感覚でワクワクしながら読めた。短篇自体が映画の予告編のようだということもある。他の短篇に関しては特に書くこともない。




島尾敏雄『夢屑』より


 作者と妻の壮絶な関係を分かってても、つい微笑んでしまう。


講談社文芸文庫





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2004/10/29 01:09:47 AM
コメント(0) | コメントを書く
[国内小説感想] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Comments

nobclound@ Vonegollugs &lt;a href= <small> <a href="http://hea…
Wealpismitiep@ adjurponord &lt;a href= <small> <a href="http://ach…
Idiopebib@ touchuserssox used to deliver to an average man. But …
HamyJamefam@ Test Add your comments Your name and &lt;a href=&quot; <small>…
maigrarkBoask@ diblelorNob KOVAL ! why do you only respond to peop…

Profile

村野孝二(コチ)

村野孝二(コチ)

Keyword Search

▼キーワード検索

Archives

2024/12
2024/11
2024/10
2024/09
2024/08

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: