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2007年01月15日
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 建物の最上階にあるマコトが昔働いていたという部屋からは、アイの講演会のために集まった人々の様子がよく見えた。けっこうな人だ。10000人くらいはいるだろうか?遠すぎて、タイチやシュンやリカの姿はとても確認できない。
 高いところから見ると、人の頭が黒点で、その点描写でひとつの絵が描かれているかのように見えた。
 じっと見ていると、その絵の一部が動きはじめ、ある隅の一部に点の集中がはじまった。水たまりの上に、筆から一滴、墨汁か絵の具を落としたときに、それに向かっていく渦巻きのような動きがおこった。
 スピーカーのアナウンスがはいった。
「コンサートの前に小さな奇跡が起こりました。皆さん、押しあわないように。そしてその事実をここに集まったみなさんに知ってもらうためにお知らせします。この講演会場のまわりには、多くの、小さな屋台がでています。軽い食べ物や飲み物、パンフレットを売っている店のほかに、絵や装飾品を売っているところもあります。また、楽器を演奏している人などもいるのはみなさんごぞんじのとおりです。
 その中で、みすぼらしい身なりで、目の前に、なにやら紙の束を積み上げてそれを売っている店で奇跡がおこりました。
 そこでは、ある男の人が、自分の書いた詩集を一冊100円で売っていました。しかしそれは、印刷され製本されたものではなく、小さな子供が遊びでつくるように、紙をはさみなどで切りそろえホッチキスで止めたものでした。お金をだしてでも、自分の本をよんでもらいたい人がいるというのに、はたしてそんな本が売れるのでしょうか?

『おれって、本当は才能があるのだろうか?』
 買った人々も驚いきました。
『もしこれが、まだ書かれていない、あの有名なシリ-ズの本の最終巻と同じ内容であったとしても、そうでなかったとしても…まちがいなく傑作だ』」
 集まった人々の拍手とどよめきが、遠くで鳴り響く雷の音のように、最上階にいるシュンとコピヤの耳にも届いた。






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最終更新日  2007年01月15日 20時17分15秒
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