基本に忠実に本質を伝える

基本に忠実に本質を伝える

漢字とアルファベットでは対処が違う


A structural-functional basis for dyslexia in the cortex of Chinese readers

中国語ディスレクシアの大脳皮質における構造的機能的基礎

Proceedings of National Academy of Science of the United States of Americaのオンライン版に発表された論文です。この雑誌はとてもいい雑誌です。論証もしっかりしたものしか載せません。一報一報が短いので読むのもそんなに大変ではありません。

発達性ディスレクシア自体は遺伝的要因が濃いものです。が、要因を持っていたとしてもディスレクシアがハッキリ表出するかどうかは言語の文化的背景が大きく影響すると言われています。これは"Multilingualism, Literacy and Dyslexia: A Challenge for Educators "に述べられていたことです。

ProNaSの報告では中国語と英語のディスレクシアの脳をMRIで観察して活性化程度を観察しています。英語では文字と音の変換が、特に音の短期記憶が弱く、該当する大脳の灰白質が少ないのではないかと言われています。
一方、中国語では文字そのものの認知と運動機能が弱いと読み困難になるとしています。左脳の運動野の活性化が弱いということです。

ざっくりとまとめると、アルファベットを使用する言語のディスレクシアでは聴覚連合野が弱いと読み困難に陥りがちで、漢字を使用する言語では左脳の運動連合野が弱いと読み困難になるということです。

脳の構造

経験的にアルファベット使用言語では音韻障害が、漢字では短期の運動技能が弱いと読み書き困難に陥りやすいといわれていたことを、実際に脳を観察して実証しました。

これを踏まえて指導に結びつけると、英語では音と字の結びつきが弱いので、音←→字の変換をせずに、音←→絵←→字の変換を行うことで、理解をすることができる可能性がある。
例えば、絵カード、塗り絵など。彼らは文字を見ても画像を認識する視覚野が活性化すると言われていますので、得意な視覚野を経由した文字認識をするといいと思われます。

漢字指導では、微細な指先のコントロールや手先の動きの短期記憶が弱いと思われるので、体全体を使った習字を行ったり、指先や視点の訓練を行うことで改善される可能性があると思われます。

私が驚いたのは、ディスレクシアの場合には、該当する大脳皮質の構造自体が減っているということでした。やはり別ルートも使用した多感覚指導が必要だと思われます。

すごく大事なことなのに最後に言ってごめんなさい。
ディスレクシアの場合には後頭葉の視覚連合野が盛んに働きます。だから、字を平板に認識するのは難しいのですが、彫刻や建築など立体視する場面には断然強いです。それを敢えて平板視につぶして紙の上に集中させるのが難しいのだと思います。だからビジョントレーニングが効くのかな。


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