シナプス国語作文研究所

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本文を読む前の儀式




自由に読書を楽しめる子どもほど、想像力をはばたかせ、勝手な思い違いをしたり、文章を雑に読み飛ばすことによって、正しく文意を汲み取れないことがある。文章の内容によって、模試の成績が乱高下するようだったら、要注意だ。
また、読書が嫌いな子供ほど、何度も本文を読み返して混乱し、いったいこの文章は何が言いたいんだろう、と悩むことがある。模試はいつも時間が足りないようだったら、おそらくこのタイプだ。文章を繰り返して読めば読むほど、「自分なりの解釈」が意識に混入してしまい、読解の精度が下がってしまう。

こういった状況は、本文を読み始める前に、これからご紹介する一連の儀式を行うことによって、驚くほど改善されるだろう。最初は時間が余分にかかってしまうため、非効率のような気がするかもしれないが、慣れればむしろ1つの問題にかかる時間は短縮する。ぜひご家庭で実践し、習慣化していただきたい。

[参考] 平成17年度都立西高校入学試験問題 国語  四



[1]段落番号を書き入れる。
目的は番号をふることではなく、手を動かしながら、各段落の文頭を目で追うことによって、文章のテーマと全体像を把握することにある。実際にやってみよう。

1.私は子供のころ、
2.私たち子供は、
3.むろん、私たち子供が
4.私たち子供は
5.お年寄りに席を譲りましょう。
6.始発駅に電車が
7.ホームで並ぶというルールは、
8.電車で席を譲ることは、
9.共同体に道徳をもたらす
10.言葉のない何かしらの力
11.欲求は、
12.ゴッホのしたことは、
13,彼がところかまわず
14.さまざまな共同体のなかに、

たったこれだけの作業で、本文を読まずにして以下のことがわかる。

・テーマはおそらく「共同体の中の道徳」だ。
・文章は、大まかに言えば「筆者が子供時代の思い出を語り、電車に乗る際のルールやゴッホについての例示を挙げながら、共同体の中の道徳観を語っている」といった感じで流れている。

[2]出典と著者名を確認する。
・出典
書名とはつまり、その本の最も短い要約文 であることが多いので、大変重要な情報源だ。「倫理という力」という書名はまさしく[1]で各段落の文頭から類推したテーマと合致する。ここで、類推したテーマに確信を持つことができる。
・著者名
もし著者の名前を知っていたり、同じ著者の本を読んだことがあれば、それは大変ラッキーなことなので、ぜひ本文を読む前にチェックするべきだ。事前に、 著者の特性や嗜好がわかるわけなのだから
読書をしない子供であっても、受験勉強をしていれば、毎日数多くの著作に目を通すことになる。以前解いたことのある問題と同じ著者の作品が試験で出題されることもよくある。著者名に注目させることによって「この人はこういう作品を書く人だから・・・」という思考回路が1本増やせる。


題名も著者名も目次も隠されたままの本を読めといわれたときのことを想像してほしい。まず読む気がしないでしょう。最初の10ページくらいの間は、この本には一体何について書かれているのだろうかと困惑するかもしれない。まったく非効率だ。
読解問題に取り掛かるとき、いきなり本文を読む、という状況は、つまりはそういうことなのだ。事前の情報収集が必須である。

[3]語注を確認する
瑣末なことかと思われるかもしれないが、本文を読む前に語注を確認するべき理由は以下の通り。

・課題文を読みながら語注を確認するというスタイルをとると、その分目線が動き、課題文への集中を欠いてしまう。集中を欠くともちろん読解の精度が落ちる。特に文章を読むことに慣れていない小学生は、このような単純な動作が原因となり、文章を読み飛ばすことがある。

・出題者がわざわざ語注で説明する言葉は、その意味が正しく理解できていないと、読解にさしつかえ、ともすれば設問に解答できないからだ。語注の言葉が課題文のキーワードになっていることも多い。
ちなみにこの問題の語注にある「胚珠」という言葉を理解していないと[問1]を正しく解答することはほぼ不可能だ。
また課題文中で語られている「道徳律」の意味をつかめていなければ、[問2]の解答時に支障をきたすし、課題文の真意を汲むこともできない。
まさしくこの問題の場合は、語注の言葉が精読のためのキーワードになっているわけだ。事前にしっかりと確認するにこしたことはない。

[4]設問の種類を確認する
本文を読む前に選択肢の内容まで熟読する必要はないが、それでも、「どのような問題構成になっているのか。」ということは、本文の読解に入る前に確認しておくべきだ。また特例として、以下のような設問がある場合は、精読すること。
・「---------という一文が本文から抜けています。この一文が入る前の直前の5字を抜き出しなさい。」という形の問題。
・本文の段落構成を問う問題。
・自由作文課題
本文を一通り読み終えてからこういった設問を遭遇すると、下手をすれば本文をもう一度読み直さなければならないという事態が発生する。 本文を繰り返して読むことは絶対に避けなければならない。 時間効率が悪いからというのももちろん理由の一つだが、もっと大切なことがある。
あなたがもし読書好きならば、お気に入りの本を何度も繰り返し読みかえし、読むたびに変わる印象を楽しんだり、新しい発見をしたりすることがあるだろうが、それは読書のときに限ってほしい。印象が変わるのはより筆者の考えを理解できるようになったからではなく、あなたの主観が混じったからだ。この主観の混入こそが、選択肢問題に取り組む際の障壁になる。そして読むたび新たな発見があるのは、奥が深い本だというわけではなく、読み方が雑だからか、知らぬ間にぼんやりしているからか、単純に書いてあることを忘れてしまったからである。そんな読み方を試験でしてはいけない。

それでは実際に設問を確認してみよう。
(問1)選択肢
(問2)書き抜きと記述
(問3)選択肢
(問4)選択肢
(問5)自由作文200字
*「集団と個人」「他者への思いやり」「人間としての強さ」の3つのトピックからテーマを選び、本文を参考に200字の作文をする問題。どのテーマで書くか、どんなことを書くか考えながら読解すべき。


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