6月7日の朝にいきます

6月7日の朝にいきます

2025年11月24日
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カテゴリ: 私の宗教観
「私は人生の中に『余生』があるとは思いません。
この世に生まれ、成長し、学び、社会に出て活動し、 そして高齢期を迎えて老いが進み、
やがて死が訪れる。

そのライフサイクルの中の、すべての時間は、等しく大切なものだと思うのです」

これは「さくら苑」桜井里二苑長の言葉だ。

もう20年も前のことになるが、文春文庫から私が上梓した「老人と犬~さくら苑のふれあい~」。
横浜市は旭区にある特別養護老人ホームでの、動物と入居高齢者との日常を、
「盲導犬クイールの一生」の写真家・秋元良平氏の写真と私の文章で構成したドキュメンタリー本。

ことの起こりは日本動物病院福祉協会が、人と動物の絆を深める「CAPP活動」を始めるにあたり、
動物が定期的に訪問できる施設を募集。 桜井苑長はその第一号に名乗りをあげ、
「できれば訪問を受けるだけでなく、動物と一緒に暮らしたい」と申し出た。

その理由が前記したもの。 つまり
「高齢期は自分の人生の総括
時です。たとえ車椅子の生活であっても、寝たきりになっても、
日々を楽しく充実させて生きていたいと思うのは、すべての人の願いではないでしょうか。
老人ホームでも、大切なのは『生存』ではなく『生活』なのです」 (桜井苑長)

こうして大型犬を含め犬6頭&猫3頭を迎え入れた苑での日々の生活を「老人と犬」では追った。
ペットと位置付けられた動物を受け入れた苑では、数々の奇跡のようなことが起きた。
もう何年も手が動かせないでいたおばあさんが、犬を抱きしめたい一心で手を動かしたり、
誰とも仲良くなろうとしなかったおじいさんが、猫の話しをするために仲間の輪に加わったり・・。

すべてを書くと長くなってしまうので、動物との絆はここまでとして、
「さくら苑」にはもうひとつ、とても「大きな試み」がなされていた。

厚生省(現・厚労省)では、特別養護老人ホームには「静養室」と「霊安室」を設けることを義務付けている。
ちなみに「静養室」とは、死が目前に迫った人を、他の居住者から離して看取るための個室。
もちろん「さくら苑」にも、この二つの部屋はある。
でも・・・開設依頼、一度も使われたことがないのだ。

桜井苑長は言う。
「生きとし生けるものは、必ず最期を迎えます。
生と死は対極にあるのではなく、死は生の延長線上に位置するもの。
死とは決して敗北ではなく、人生を結実させる大事な瞬間だと思うのです」

最期の時に、夜陰に紛れて家族に引き渡してしまうのではなく、
縁あって一緒に暮らしてきた仲間と共有する時間を持つ。
桜井苑長は最期の時間を今まで居住した部屋で、同室者や仲のよい人と共に過ごすように計らい、
亡くなった後は食堂ホールに安置して、スタッフや動物も含めた全員でお別れの時を設ける。

簡単なことではない。
日々の生活と、国から決められた課題を守ることだけでも大変な介護の現場で、
桜井苑長の「想い」を実現するために、スタッフも全員、力を合わせていた。
桜井苑長の考えに心から賛同している人たちが、苑を支えていた。


「死は生の対極ではない。生の延長線上に死はある」
「人生のどの時期をとっても、すべての時間は等しく大切なもの」

私の中で最期まできっと生き続ける、たいせつな、たいせつな「言葉」、「想い」・・。





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最終更新日  2025年11月24日 14時20分26秒
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