マイペース70代

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「引きこもり狩り」 芹沢俊介◎編


この本は、「アイ・メンタルスクール(名古屋市)」に強制的に入寮させられていた青年が、昨年の4月18日に死亡した事件について考えるため、7月に京都と名古屋で開催された集会やシンポジウムがきっかけで出版された。
編者の芹沢俊介氏を始め、執筆者は全員このシンポジウムの参加者である。
多少なりとも不登校やひきこもり問題などに関心と関わりを持つ私は、以前からアイ・メンタルスクール事件や、長田塾裁判にも関心を持っていた。
アイ・メンタルスクール事件の時に、長田塾代表・長田百合子氏と、アイ・メンタルスクールの杉浦昌子代表が実の姉妹であることを知り、「これは何なのだ?」と驚きと同時に不思議に思った。
事件につながるほどの暴力的・強制的な指導で、不登校や引きこもりが「治る」という信念を抱くに至ったのには、この二人には何かあるというような感じでもあった。
そのあたりのことも、この本で少し納得できるような気がした。

私は、長田氏が強引に引きこもっている青年を引き出す様子を、テレビで一度だけチラッと見たことがある。
あまりにもひどいやり方であることと、それをテレビカメラが写しているということで、「ひょっとしたらヤラセか?」とさえ思った。
だからあまりにも不快で、全部を見てはいない。
多分、この時に拉致のように長田塾に連れて行かれた青年が、裁判を起こしたのだろうと推察される。
そして、その手法を容認する人たちが結構多く、容認する世論が後押しをするような感じで、現在の教育再生会議の提言につながっていると感じている。
長田塾やアイ・メンタルスクールの先輩格と言える「戸塚ヨットスクール」を
あの石原東京都知事は支持し、応援してもいる。
人権を無視した指導が大手を振り始めている傾向を、私はとても怖いと感じている。

その流れに待ったをかける意味でも、先日紹介した 「変えよう!日本の学校システム」古山明男著 と共に、この本を多くの人に読んでいただきたいと思う。

この本の「緒論」で、芹沢俊介氏は「善意の道は地獄に通じる」と書いている。
本の紹介にも下記のように書かれている。

疑うべきは 善意の「支援」そのものだ
「うわべは善意に見える、尊大な悪意というものがある」
   フリードリッヒ・ニーチェ (信太正三訳) 

私自身の言動に「尊大な悪意」が発現しないように、深く心に刻みたい。

2007年04月12日


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