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マイペース70代
印象に残った絵本色々
「だいじょうぶだよ,ゾウさん」
作: ローレンス・ブルギニョン 絵: ヴァレリー・ダール
訳: 柳田邦男 出版社: 文溪堂
年老いたゾウさんと幼いネズミが、助け合いながら大きな木の下で暮らしている。
ある日ゾウは、やがて行かなくてはならない「ゾウの世界」のことをネズミに教える。
そこは、深い谷をはさんだ大きな森。
この世界と、やがてゾウが行かなくてはならない世界とつなぐのは、一本のつり橋。
その吊り橋が壊れていることに気付いたゾウさんは、不安そうにネズミを見る。
ゾウはつり橋を修理できないが、ネズミならできる。
しかし、大好きなゾウさんがそのつり橋を渡ってしまったら、
もう2度とゾウさんには会えないことを知ったネズミは・・。
「生と死」、生きとし生けるものが必ず直面しなくてはならないその時を、
往くもの、送るものがどのようにそのことを受け入れてゆくのか。
そんなことをまっすぐに、穏やかに、やさしく表現している。
一読し、その表現のわかりやすさにうなり、
二読して、その意味の深さを感じ、
三読し、その絵の隅々に行き渡る温かさと優しさにジーンとした。
そして、絵本の中のゾウさんに、101歳で亡くなった祖母を思った。
ゾウは祖母、ネズミは私。
私は、祖母の渡ったつり橋を
「だいじょうぶだよ」と安心させて渡らせる力になっただろうか。
そう思った時、祖母が「だいじょうぶだったよ」と言ってくれたような気がした。
幼いネズミは、葛藤の中で成長した。
私も、いつしかネズミからゾウさんの立場に変化してきている。
そして、幼い孫たちを思う。
こうやって、色々なことがつながってゆくのだろう。
何度読んでも、いろんなことを考えさせてくれる絵本である。
「おにいちゃんがいて よかった」細谷亮太・作、永井素子・絵
この絵本の作者は、小児科医。
きっと、多くの子ども達の生と死や、その家族の思いを見つめてきた人なのだろう。
生まれながらのハンディや病気を持った子も多いが、
生育過程で事故や病気で障害を持つようになる子も多い。
当事者としての子どもの大変さはもちろんのこと、
その親の心配や苦労は誰でも多少は想像できる。
しかし、その兄弟姉妹の思いについては、
ついつい軽んじられることがあるのではないだろうか。
重度の障害を持つ子の家庭に生まれた子は、
健康に生まれただけで「幸せだ」と思われがちで、
時には、親なき後の障害を持つ子の面倒まで、多少は託されてしまう。
生育過程では、手のかかるハンディを抱えた兄弟のために、我慢をすることも多いだろう。
それはそれで仕方のないことではあるが、
その寂しさや我慢を十分に汲み取ってあげなくては、幼い心は我慢することに疲れてしまう。
さらには、そんなに我慢しながら支えてきたお兄ちゃんやお姉ちゃんが突然いなくなった時、
親の悲しみの影で戸惑う幼い心がさまよってしまうかもしれない。
限りある命は、必ずいつか終わりがある。
その死の悲しみや喪失感を乗り越えるには
それぞれの年齢にふさわしい納得や受け入れが必要だ。
そうでなければ、逝った人だってうかばれないだろう。
心ならずも先に逝かなければらならなかった命は、何を望むだろう。
きっと、愛した人たちの心の中で生き続けること、
その人たちの心に、何か温かいものを残しているということではないだろうか。
「あなたがいて良かった」
人にとって、この言葉はどれほど嬉しいことだろう。
自分の存在を認められ、大切に思ってもらえた証だから。
「おにいちゃんがいて、良かった」
幼くして旅立たなくてはならなかった兄にとって、
妹のこの言葉はどれほど安らぎに導くことだろう。
そしてまた、そう言えた妹にとっても、これからの人生の糧になることだろう。
このように言える環境を作っていくことがどれほど大切か、
そしてそれは、意識してそのように考えなくてはならないことで、
決して自然で当たり前のこととは言えないと思う。
そんなことを考えさせられた、温かく素敵な絵本であった。
「アンジュール」
作・絵: ガブリエル・バンサン
これには、ゾクゾクッとするほどの感動をした。
文字のない、デッサンだけの絵本なのだが、
すべてがその絵に書きつくされていて、
アンジュールという犬の孤独感、絶望感、放浪、
そのあとに(多分)同じ悲しさや孤独を抱えた子どもとの出会いが、
心に染み通るように描かれている。
近いうちに、自分の本として購入しようと思う。
「戦争のつくりかた」「新・戦争のつくりかた」
「戦争のつくりかた」は十年ほど前に出版された絵本なのだが、
昨年の9月に「新・戦争のつくりかた」が出版された。
(私が持っているのは十年前のもの)
まさに絵本通りのことが、着々とこの日本で進行しているような気がする。
絵本の最後は、こうしめくくられている。
人のいのちが世の中で一番大切だと
今までおそわってきたのは間違いになりました。
一番たいせつなのは「国」になったのです。
安倍首相は今回の事件を、最初から「ピンチはチャンス」と捉えていたのかもしれない。
まさかそこまでとは思いたくないが、推移をみているとそう感じて仕方がない。(2015年02月09日)
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