目の変化びと

目の変化びと

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2025年07月29日
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過去に書いた詩で、懐かしい詩は、たとえば、



    小林ナオジ


私とMは夜の遊戯場で少年から
男を買った
部屋に戻った私らは
男を狭く鏡の多い浴室に連れ込み
ていねいに男を洗った
背中には大きな傷があった

男を浴室で飼うことにした
男はいつも湿っていた
慎重に選んだいくぶん腐った食べ物を
私らは浴室に運んだ
散歩のときには男のふやけた顔に
丹念に化粧をして連れ歩いた

私らは相談して男を
小林ナオジと名づけ働かせた
小林ナオジは重い荷物を夜の果てへと
夢中になって運び続けた

少年が小林ナオジを買い戻しに来たとき

私とMが入浴するときには
浴室の外に立たせて楽しんだ
寒さに震える明け方には
四人で輪になって抱き合い
激しくシャワーを浴びた


重い荷物をおろし焚火を囲み
小林ナオジは獣になって歌う
焼けた裸から重い肉が落ちていく
夜どおし騒いだあと腹の減った私らは
小林ナオジの肉を食らい
余った肉を池に放り込む
肉は沈み血は一面に拡がり
小林ナオジはいつもわらっている



    最期の夏


熱の樹のふもとで
祝う
葉を燃やす
枝が燃える
根にへばり付いた土は
地下の闇深く焼け落ちる
耳朶から上は残り
腰は熱の海に沈み
中間は剥奪されたまま
最期の夏が枯れていく

深い穴で横たわる
薄目を開けて光を飛ばせば
遠い所で浮かんでいる奇形物
満月の縁から伸び出してくる青い紐になって
月の植物は落ちてくる
腐れかかった花びら一枚に
なんとかくっついている茎と
葉の三枚ほどの姿
くるくるまわって落ちてくる
手を開き腕を伸ばす

この夏が終われば
もう
そのようにも強く
驚いてはいられないだろう

私を縛りあげていく
かすかな音
分からない音
どうしても分からない音
風はいっそう強く奪い
なにひとつ抱き取れはしない



    落音


叩き
潰され
無表情な黙殺

戸惑い震える声
身体から漏れ出し
声から音の塊が落ちる

音はすとんと
音の池に沈む

音の無い声
あての無い静寂を求めて
滑り
彷徨う

ついに静寂を見い出せず
音の池深く
沈んだ音を掬い上げ
浮遊する声
ひたすら掴み
壊れた音を声に埋め込む


強く音を吸い込み
有らん限りに発声す






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Last updated  2025年10月18日 11時43分50秒
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Comments

ミズナ@ Re:ミズナさんへ(12/10) gaMeさんへ お返事をありがとうございます…
gaMe @ ミズナさんへ 「悟りについて」をおもしろいと言っても…
ミズナ@ Re:悟りについて(その33)(12/10) こんにちは。 「悟りについて」 なんか、…
gaMe @ まちがい けっきょくのところ、この頃(2006年)や…
gaMe @ もがいていた時期 この頃(2006年)書いてた、【私=瞬間ご…
無空無限@ Re:川を渡る(01/06) 幾月か幾年かは存在にまかせて、喜び祝い…
gaMe @ これ書いて、4〜5年経って、思うこと。 こんな文章を自分が書いただなんて、ほん…
gaMe @ 結末を知って見ると… この前(2018年8月19日)見ておもしろかっ…
gaMe @ 約 数 「同じ個数に分けられない(1個ずつは除く…

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