ヘンデル◇イタリア歌劇「リナルド」より~私を泣かせて下さい
ヘンデル、1685~1759 ドイツの作曲家、後にイギリスに帰化しました。バロック時代を代表する重要な作曲家であり、バッハと同年に生まれています。特にヘンデルはオペラ、オラトリオにおいては沢山の作品を残しています。
*オラトリオ=それはイタリアで始まったクラシック音楽の楽曲の種類であり、バロック時代の楽曲形式の一つです。オペラ(歌劇)に似ていますが、演技、大道具、小道具、衣装を用いません。独唱、合唱をオーケストラにより演奏され、歌詞に物語性、宗教性があり、全体的に叙事的です。
さてこのオペラが出来上がる経緯として、ヘンデルは1706年頃からイタリアを旅行していますた。その時にイタリアオペラというものを実際に鑑賞し、そのエッセンスを吸収することが出来た有意義な時期でもあったようです。また、ヘンデルがロンドンに帰って来て最初に初演したオペラでもあったようです。
この作品はトルクァート・タッソによる叙事詩「解放されたエルサレム」をもとに作られました。その内容は、キリスト教徒達の間の不和、後退、そして最終的な勝利を描いています。また、タッソの表現方法の最も特徴的なものとして、愛と義務の間で引き裂かれる登場人物たち、彼らが直面する感情的葛藤の描写、そして武勇や栄誉に反する愛、というもので私たちに大きな叙情的興奮をもたらしてくれます。
もう少し、歌劇の場面に近づいてみましょう。
二人のキリスト教騎士が、この秘密の砦を発見し、砦を守る障壁を乗り越え、リナルドにダイアモンドの鏡を与えて自身の女々しく愛に堕ちた状態を見せ、傷心のアルミダを残して戦場へ連れ戻す。そしてアルミーナの貞節によって救われるという物語です。
さてこの絵画はそんな元々は敵対関係のアルミダとリナルドがアルミダの宮殿でまさに骨抜きにされている場面です。 よく絵を見ますと左上に兵士達がリナルドを心配している様子が伺えますね。

カラッチ(1557-1602、バロック期イタリア画家)◇リナルドとアルミダ
もう一枚、同じシーンをご紹介します。絵の趣がかなり変わりますね。

ブーシェ(1703-1770 ロココ期フランス画家)◇リナルドとアルミダ
今日のアリアはこの「リナルド」第2幕に登場します。
敵(キリスト教騎士達)の魔術師アルミダに捕らわれ恋人(リナルド)を思って、アルミーナが自分の悲運を嘆くシーンで歌われます。別のタイトル「涙の流れるままに」とも表記されているものがあります。愛する人だけお思い、敵の王の誘いに屈しない、という歌でもあります。

ティエポロ(1696-1770ルネッサンス最後期イタリア)◇アルミダを捨てる兵士リナルド
kumikopiano インフォメーション
バッハ◇フランス組曲第6番より「サラバンド」
ピアノ:本間くみ子
他、55曲それぞれ演奏の一部をアップしています。
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