leafのささやき

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北村　薫

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leaf2004

October 30, 2004

思いもよらぬ事故や事件が多くて

ニュースを聞く度に憂鬱になってくる。

昔読んだ「明日があるなら」シドニｲ・シャルダン作の

一場面を思い出した。

この本は上下2巻あって上巻はいわゆる「岩窟王」、

下巻は「怪盗ルパン」のようなストーリー

になっていて、結構おもしろい。

主人公トレイシーは結婚前の幸せな時期に

母の自殺そしてその後自殺の原因となった人物や弁護士

そこは生きながらの地獄で彼女は流産してしまう。

独房に監禁されたトレイシーは復讐を決め、

誰が見ても絶望的な状態の中で彼女は生きぬくための

力を蓄えようとする。

ここからが私のお気に入りの場面だが

＜私の武器はただひとつ。それは勇気よ。

先祖が生き続けたように・・・

トレイシーはイギリス人とアイルランド人をスコットランド人

の血を引き、・・良い特性を受け継いでいた。

・・・智力、勇気、意志・・・

飢饉や疫病や洪水を生き延びたわ。だから私も・・・

彼女の身体の一部である先祖たちが集まっていたのである。＞

まずは体力の回復に太極拳をやり、気を喚起して活力を刺激した。

次に精神の訓練。

暗闘に横たわって数学の難解な方程式を解いたり詩を朗読したり

学生時代に演じた劇の台詞を暗礁したり・・・。

この独房拘禁で精神的にまいり衰弱するか反抗するかだったのに

彼女はすっくと立ち上がり

、この場にそぐわない人格・・自信にあふれた威厳さえ

ただよわせているようになっていた。

あくまでこれはフィクションだけど、

でも気持ちの持ち方で人間って強くもなり

弱くもなり得るのでは。

気が小さくてすぐパニックになってしまう自分だから

厳しい状態に陥ったとき

せめてトレイシーの何分の一かの勇気が持てたらと

最近のニュースを見て思った。

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