新 松磯山荘住人のつぶやき
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7月からTBS系列で放映されていたドラマ「初恋DOGs」も、先般最終回を迎えました。「ドラマの感想は?」と聞かれたら、私はこう答えると思います。《一般向け感想》青春群像劇として、最終的には視聴者の納得を得られるエンディングだったのではないでしょうか。爽やかで心温まるストーリーだったと思います。個人的には、主役2名の恋愛模様にはあまり興味は持てず、むしろ、動物たちの賞賛に値する演技や、圧倒的な存在感を放っていた韓国人俳優ナ・イヌのカリスマ性、そういったものの方が印象に残りました。《法務担当経験者としての感想》法務担当経験者としては、やはり残念なポイントが満載だったとしか言いようがありません。そして、世間でどう思われようと、弁護士としての花村愛子さんは未熟であるとしか言いようがなく、私だったら独立した彼女に仕事を依頼しようとは思いません。大手の看板がなくなったからではなく、弁護士としての経験や力量等に疑問があるからです。これが、ドラマという虚構の世界の話でつくづく良かったです。「そんな小難しいこと言わなくてもいいじゃないの」と自分でも思うのですが、「心温まるハッピーエンドだったわよね」と思う一方で、どうにもモヤモヤしたものが残ってしまうので、そこはここで吐き出しておこうかなと思います。風変わりな感想になりますが、どうぞご容赦下さい。【最初に訴えられた訴訟はどこへ?】第8回の放送で、確か訴状の送達が獣医師の白崎さんのところにあったはずですね。訴状も画面上にチラッと見えていました。原告の名前は「湯本昇」(←ドラマにも出てきた怪しげなあの人!)、訴訟代理人名前は「九条夕貴」、送達場所は「草野・九条法律事務所」でした。ちなみに、訴状の日付は、令和7年8月15日になっていました。前回の記事でも書きましたが、基本応訴しなければならないはずです。なぜなら、訴状を無視して放置すれば、原告=湯本昇の主張がそのまま認められてしまうからです。私は、この訴訟こそスラップ訴訟(←最終回でこの言葉がセリフに出てきました!)のようなものだと思っていましたし、当然反訴はありかな、と思っていたのですが、あにはからんや、最終回を見る限り、この訴訟については全く触れられることなく終わっているようです。本当にスルーされている感じ。というのも、最終回で放映された訴訟は、上述の訴訟とは異なり、新たに提起された訴訟(別訴)のようです。原告が白崎さん、被告が相楽さんと湯本さんで、訴訟代理人も本澤さんでしたから。確かに、訴えられた場合、反訴という選択肢をとらずに、訴えられた訴訟の対応も進めつつ、新たな訴訟提起を行って対応する、というやり方はありますけれどね。ドラマの尺の関係で、最初の訴訟についてはオール割愛、ということにしたのかもしれませんが、訴訟に慣れていない多くの視聴者に対して、何か誤解を与えてしまいそうで、モヤモヤ感が残りますね。【夏期休廷期間もあるので訴訟が終わるのはまだまだ先の話ですよね?】訴状の日付が放送日近辺に設定されるのは、ドラマでは「あるある」なのでしょうが、それで思い出しました。裁判所には夏期休廷期間というものがあります。つまり、8月中に口頭弁論等の期日が設定されることはまずない、ということです。訴訟に関わる者なら皆知っている話です。通常、第一回の口頭弁論期日は、訴状が提出されてから1ヶ月後あたりに設定されますが、休廷期間が挟まれると、さらに後ろ倒しになりがち。上述の最初に提起された訴訟(8月15日の日付があるもの)であっても、どんなに早くても、令和7年の9月の下旬か10月のはじめ頃に、第一回口頭弁論期日が設定されるのではないでしょうか。言うまでもなく、新たに提起した訴訟の第一回口頭弁論期日は、もう結構寒くなる頃でしょうね。え…もうドラマ終わってるって…。【訴訟代理人がいるなら原告本人や被告本人は第一回の口頭弁論には普通出席しない】ちなみに、訴訟代理人を選任しているときは、第一回の口頭弁論期日はもちろん、他の期日であっても、原告本人や被告本人は出席しないのが普通です。かつ、被告側は、期日の一週間前までに争う旨の答弁書を出しておき、被告代理人も含めて初回期日を欠席するのが普通ですね。ですから、ああいった第一回の口頭弁論の場面は、いわばドラマ仕様なわけです(←手続き的に間違っているわけではないですが)。【証拠の後出しは必ずしも得策ではない】準備書面や証拠(書証等)は、期日の一週間前に裁判所前に出しておくのが基本ルールです。ところが、どうやら「不意打ち」が好きそうな愛子さんは、期日当日に新しい証拠を提出していますね。もちろん、最終回のケースでは、さすがに「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法」にはならないでしょうが、裁判官からするとあまりいい印象ではないでしょうね。でも、その方が演出効果が高いからなのか、こういうところもドラマ仕様になってしまっているようです。【証人尋問もね…】最終回では、証人尋問の場面がありましたが、これは、訴え提起から相当時間が経過した段階で行われるのが普通です。なぜなら、当事者の主張と書証が出尽くされ、争点整理が行われた後、ようやく実施されるのが証人尋問手続だからです。夏期休廷期間もあっての話ですし、そうですね、今年中に尋問期日にまで到達するとは考えにくいです。下手すると来年の終わり頃かも。え…このドラマ来年まで続くわけないじゃないし…。それから、これも法曹関係者では常識レベルの話として…。人証(証人尋問)よりも書証がしっかりしていることの方がよほど重要です。人間の記憶は曖昧ですし、だんだん記憶は変化していきます。しかも、法廷で証言すること自体、それこそ一生のうちで一度あるかどうかというような場面、証言者は緊張を強いられるのが普通ですから。また、この段階では、既に裁判官の心証はある程度決まっているのが普通です。実際問題、「証人尋問なんて当事者のガス抜きのためあるようなものだ」と言う法曹関係者も少なくありません。つまり、証人尋問が主戦場ではないのです。でも、ドラマ演出上、訴訟の山場のように描かれがちなのでしょう。【このセリフはいただけない ― 「ソハさんの力をあてにして仕事のチャンスをもらうより、自分の手でつかむ」】愛子さんの「ソハさんの力をあてにして仕事のチャンスをもらうより、自分の手でつかむ」というセリフ、「カッコイイ」ということになっていますが、私に言わせると、愛子さん少し勘違いしていないかなと思いますね。ビジネスはご縁です。ご縁を大切に出来ないと、いい仕事は出来ません。仕事のオファーがあるということは、とてもありがたいことであり、貴重な勉強の機会をいただけるわけですから、大いに感謝すべきことなのです。そこが抜けている印象でした。実際、企業法務の現場は、生きた学びの宝庫です。企業法務に求められるスキルは、訴訟対応だけではありません。契約業務、ガバナンス対応、業法対応、会社法対応、人事労務対応等、分野も多岐にわたります。そして、何よりも、多くの人と人が関わり合いを持つことで生じるいろいろな事象に適切に対応していくことが求められますので、本当の意味での「人間力」が要ります。もちろん、オファーを断る自由はあります。正直なところ、まだ駆け出しの新米にしか見えない愛子さんには、ソハさんが提案している仕事は、「時期尚早レベル」で「かなり高いハードル」だと思った方がいいでしょう。ですから、「貴重な機会をいただけるのは大変ありがたいのですが、未熟な私には荷が重く」と断るならまだしも、「あなたの力なんて借りないわ」という感覚はちょっといただけない。結局、人の好意を素直に受け取れないのは、こじらせ女子のこじらせ女子たるゆえんなのでしょう。ま、若いってことなのでしょうかね。#初恋DOGs
2025年09月03日