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「あいぞめ」ってあいちゃんのことを歌った歌なんでしょうか?閻魔あいの「あい」って「藍」?最終回をみながらそんなことを考えていました。
Apr 7, 2007
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2007/1/24、やっと能登さんバージョンが発売されました。年の最初に相応しい、曲調歌詞共に暗い、いい感じの曲です。藍を同音の愛に読みかえても結構いいかもしれません。愛欲に縛られる人の業とか何とかかんとかみたいな感じで。あと、ベースの音、最初に聴いたときからどうも渡辺等さんっぽいなぁと思っていたのですが、やはり正解でした。あのぶわ~んとした音色は大好きです。能登さんの声もですが、このあたりも新居昭乃さんの曲を思わせる原因だったのかもしれません。
Jan 23, 2007
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小鳥たちの囀りも未だ聞こえぬ、静かな朝。「う…ん…」マジョパルフェはゆっくりと目を開けた。強烈な朝焼けの赤。その光を、それ以上に赤い瞳で受けた。眩しそうに目を細める。目を細めたまま、時計を見た。「…寝坊したか」小さく溜め息をつく。頭を掻きながら隣に目をやると、仰向けで眠っているマジョリズム。「まだ眠ってる…」彼女は悪戯っぽくそう小さく笑うと、すーっと小さな寝息を立てるリズムの鼻をグリグリと押さえ付ける。「ふ…ふわ…」マジョリズムは苦しげな声を上げた。しかしまだ目は覚まさない。パルフェはその広い額をじっと見つめる。「…」(おでこ)パルフェは突然リズムの広い額を叩いた。ぱちん、という軽い音。「!? ふゃ」びっくりして目を覚ますリズム。「おはよ」何事も無かったかのようににっこり笑う。「…」リズムは、額をさすりながらそんな彼女を寝惚け眼で見た。「んー…」焦点の定まっていない目。近眼で、しかも寝起きなので当然である。「… …あ、おはよ」やっと気がつく。「おはよ」もう一度にこりと笑って挨拶を返す。「あれ?なんで私パルフェの所で寝てるの?」眠い目を擦りながら、これまた眠そうな声で尋ねた。「お酒。ってか酒臭い」「…う…」口に手をあてる。「あまり飲んでないのにねぇ?」「そうだっけ?」リズムは、寝ぐせのついた髪をいじりながら呟く。「グラスに一杯半ほどでしょ?ブドウ酒」「そんなに…飲んだかなぁ? …」そう言いながら、リズムはまた寝ようとする。「こらぁ、もう起きなさい!」パルフェはリズムの鼻をぎゅうっとつまんだ。「ふががあが痛い痛い!!」飛び起きるリズム。ぱっと指を離す。「もうっ、何よ?」少し赤くなった鼻をさすりながらリズムは抗議する。「何よって、遅れるわよ? もう6時半過ぎてる」パルフェはそう言いながら時計を指差した。「…うそっ!?」リズムも慌てて時計を見る。6時32分。「私は今日10時からの会議だけだから…もうちょっと寝るけど」そう言うと、小さくあくびした。「え? …ってちょっと、遅刻!?」りずむは飛び起きて指を鳴らした。「えいっ」輝くピンク色の煙に包まれたリズム。瞬く間に身仕度完了。そしてもう一度指を鳴らす。するとサンドイッチが現れた。それを二つ手に取った。「これ、昨日のだけど、まだ腐ってないと思うから食べてね」「おっけー…ありがとリズム~行ってらっしゃい…」そう言いながら再びベッドに潜り込むパルフェ。「うん」少しだけ羨ましそうな表情で指を鳴らすとリズムの姿は掻き消えた。「…」パルフェは目を開く。ついさっきまでそこにいたマジョリズム。まだその残り香さえある。耳の中にはまだ声が残っている。何気なくベッド側の小さな机を見ると、そこにはマジョリズムのメガネが置かれてあった。(ああもう迂闊者…)パルフェは大きく溜め息をつく。(どんな感じなのかな)そっとかけてみた。「おおう」思わず声が出るほどに歪んで見える部屋。(リズム、目かなり悪いのね…)そう思った瞬間、突然「あああ、メガネ忘れた」という声が聞こえた。「…おかえり」目を閉じて呟くパルフェ。「パルフェ、メガネ忘れたの。どこか知らない?」「ん?さてねぇ?」知らん振りをするパルフェ。「メガネ、メガネ…あ」パルフェの顔に目が止まった。「何やってんのよ」リズムはそのメガネに手を伸ばす。「ほい」メガネを外し、レンズを触らないように、そっと手渡した。「気を付けてね」「ん。んじゃ行ってくるわね」マジョリズムはそう言ってもう一度指を鳴らした。「…」また静かになった部屋。パルフェは無言でベッドに横たわる。さっきまでリズムが寝ていた場所に、そっと手をあてる。(リズムの体温)温かい。(ということは、まだそう遠くには…逃げて…)そんな訳の分からないことを考えている間に、眠りに…「…寝そびれたわよ」冴えた目を見開き、ぼそっと呟くパルフェ。時計を見ると6時52分。テーブルを見るとサンドイッチが無造作に置いてある。「そういや腐ってるって…」サンドイッチを手に取り、少し嗅いでみる。「大丈夫よね」一口囓った。少し乾いた食パン。(大丈夫っぽいけど、乾いてる)呟きながらもう一口、二口ともふもふと囓る。「一人で食べるって…なんだかなぁ…」はぁっと溜め息をつく。さっきより短くも重い溜め息。「…私も行くとしましょうか。 早いけど」サンドイッチを平らげると、ゆっくりと身仕度を始めた。いつもより、少し遅い朝。窓の外では小鳥が囀っていた。その声に気付いたパルフェ。「あんたたちも寝坊したのね」
Jan 8, 2007
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私はテキ、秘書長マジョリズム様の下、女王様の秘書をしております。今日は機密に触れない限りで、私たちの一日を紹介したいと思います。・・・私の出勤時間は朝八時半、その3時間前には起床いたします。同僚のテキパキと同じ家に住んでいるのですが、ほぼ同時刻に目覚めます。他の魔女に比べればかなりの早起きのようです。そして六時には朝食、身仕度を整え、七時半には家を出ます。なので、始業時間の一時間前、概ね八時には着きます。一方、ハナ様は六時ごろには起床なされるとのこと。そして朝のお祈りをされ、六時半に朝食、七時半頃には出勤してきたマジョリズム様と、スケジュールの確認をされるとか。…そういえばマジョリズム様って何時頃に出てこられるのか、いまだにわかりません。そんなこんなで、九時になるとお仕事開始。まずはすぐに始まる会議の準備です。書類と資料の最終確認、それをマジョリズム様に見ていただきます。九時半になると、女王様は会議室へ向かわれます。私は主に事務処理専門ですので、執務室でお見送りとお留守番なのですが、マジョリズム様は一緒に会議室に行かれます。また、秘書とはいえ、実質的に親衛隊長であるテキパキも、女王様につき従って行くことが多いです。会議が続いている間、私は目下の問題についての資料の収集、書類の作成などを行います。十一時半から正午頃になると、ハナ様が戻ってこられます。そこで打ち合わせがてら昼食に向かいます。最近よく行くのは、王城近くにある食堂です。女王様はここのCランチ(量多目でお値段お手頃)がお気に入りで、マジョリズム様はBランチ(量・値段ともに普通)、私とテキパキはここのおそばが大好きです。というのも、ここのご主人は人間界でそば打ちの修行をされたとのこと。だからとても美味しいのですよ。昼食後はずっと翌日の会議の資料作成・女王代行のゆき様と後見人のリカ様との連絡など、動きっぱなしです。また来客があればその案内と摂待を行います。そうこうしていると一五時、一旦休憩時間が入ります。マジョリズム様は仕事が無い場合、大体この前後に人間界に戻られます。ちょうど人間界の午前三時頃、なんでも戻る途上、ほうきの上でおやすみになられるとか。誠に以て信じ難いことです。いつか事故ると思います。一方、私たちは一七時で一応終業時間を迎えます。が、残業があることが殆どです。とはいえ、遅くとも一八時半には終わります。その後、女王様は夜のお祈り、私はテキパキやお友だちと遊びに行ったり、夕食を食べに行ったり…。そんな感じで、二〇~二一時ごろに帰宅します。帰宅後は、テキパキは鍛練、私は読書などで自由時間を過ごし、ゆっくりと入浴した後、二三時五〇分頃就寝。これが大体私の一日です。 聞くところによりますと、女王様はもう少し遅く0時過ぎにお休みになられるそうです。またマジョリズム様はほうき上での居眠り含めて、ほぼ三―四時間の睡眠だということです。よくうとうとしておられますが、致し方ないことなのでございましょうか。。。*****りずむ:「…という文書を見つけたわけですが」テキ :「あっ!」りずむ:「まあいいですけど。 あと、私は大体七時半前後に来てます」テキ :「へぇ、そうなんですか?」ハナ :「うん、そうだよ」パキ :「私たちとあんまり変わらないんですね」りずむ:「ええ」ハナ :「あ。 でも、りずむ?」りずむ:「はい?」ハナ :「もう少し寝なきゃだめだよ?」りずむ:「え?」ハナ :「からだ壊しちゃう」りずむ:「あ、はい…大丈夫です… けど…気を付けます」ハナ :「うん。 ねえ、ところでテキはどんな遊びしてるの?」テキ :「は…はい、えっと…」ハナ :「?」テキ :「えー… 魔女界には娯楽が少ないですから」ハナ :「ん?そうかな? だいぶ増えたはずだけど。 というかテキパキも一緒なんだよね?」パキ :「うっ」ハナ :「?? どうしたの?」テキ :「…ええ、だから娯楽が。ねえ?」パキ :「そそそそうです」りずむ:「あー… …ギャンブル?」パキ :「…」テキ :「…」りずむ:「お馬さん?それともトトさん?」トト :「なぁに? 呼んだかしら?」ハナ :「トト」りずむ:「あ、ごめんなさい。 あなたじゃなくって、サッカーの」トト :「あっそ。 …で、どうなのテキ、テキパキ?」パキ :「えっと」テキ :「…機密事項ですので」ハナ :「ちがうよ?」テキ :「じょおうさまぁ~…」パキ :「あ、私は少し警邏行ってきます」テキ :「あ、こらテキパキ、逃げるな~っ!!」・・・…とまあ、こんなゆるい感じの一日も、たまにはあります。こんな毎日だと、いいのですが。
Jan 6, 2007
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http://plaza.rakuten.co.jp/mahodobackyard/diary/200603280001/の補遺です。『初学記』を読んでいたところ、春分明庶風至東方というような表記を目にしました(巻一、風第六)。「東方」は註釈です。
Jan 6, 2007
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ある日の午後、MAHO堂。商品製作のかたわら、おしゃべりしている5人。*****ふぁみ:「…そういやさぁ」みなみ:「うん、そうだな」ふぁみ:「え?まだ何も言ってないんだけど」みなみ:「ありがとう」ふぁみ:「???」みなみ:「いやたい焼き買ってきてふぁみ:「誰が!?」みゅう:「… それはいいとして、ふぁみちゃん何?」ふぁみ:「あ、あのね」こえだ:「ええ」ふぁみ:「あたしら、あんまここのことよく知らないじゃん?」みなみ:「うん」ふぁみ:「どうなってるの?MAHO堂って」みゅう:「そういえばかなり変な建物よね、ここ」みなみ:「クレアちゃん、どうなの?」クレア:「くれあ大体しってるよ?」ふぁみ:「どんな感じなの?」クレア:「えっとねぇ…」ふぁみ:「へぇ」クレア:「こんなかんじ…かな」ふぁみ:「裏にこんな大きな岩山あるんだ」クレア:「うん、くれあのおへやから見えるよ。 っていうか、裏側はこれしか見えない」こえだ:「クレアさん」クレア:「なに?」こえだ:「この小屋は?5番の」クレア:「あー、そこはまだ行ったことないの。 だから、わかんない」こえだ:「怪しいですわね」クレア:「うん。こんどりずむさんに聞いてみる… …で…紙紙…」ふぁみ:「?」クレア:「…っと。 今くれあたちがいるところはこんな感じだね」みゅう:「そうね」クレア:「みんなと初めて会ったのが作業場、ここだったよね」ふぁみ:「んだね。いきなりクレアちゃん入ってきてびっくりした」クレア:「えへへへ…」みなみ:「んでさ、あそこの階段…っていうかはしごから中二階へと」みゅう:「りずむさん、上がったっきり帰ってこないわね」ふぁみ:「そういやそうだね」みなみ:「実は異世界に」ふぁみ:「んなわけない」みゅう:「居眠り?」みなみ:「たぶんね」ふぁみ:「…」クレア:「…で、おみせのぶぶんがあって」こえだ:「レジはこちらの作業場からしか入れないんですわよね」みなみ:「え?そんなことないよ? あたし飛び箱の要領で」ふぁみ:「おねーちゃん、やめなよね」みなみ:「やっぱだめか」みゅう:「うん、お行儀悪いと思う」みなみ:「そうだね、一回頭から壁に突っ込みそうになったし」クレア:「みぃちゃんすごいねぇ…」みなみ:「ほら」ふぁみ:「何がほらだよ」こえだ:「…あと食堂ですわね」みなみ:「クレアちゃんは毎日ごはん食べてるんだね、ここで」クレア:「うん。 おトイレも近いから朝は便利だよ」ふぁみ:「…」クレア:「? で、くれあのお部屋があるとこはぁ…」みなみ:「紙、ほい」クレア:「ありがとみぃちゃん。 こんな感じだよ」みなみ:「そっちは二階建てだったね」クレア:「うん。そこの扉から渡り廊下渡って」みゅう:「下が川なんだよね、確か」クレア:「うん、たまにお魚とか泳いでるよ」みなみ:「塩焼きがいいな」クレア:「!?」こえだ:「えっ!?」ふぁみ:「…水きれいだもんね」みゅう:「魚いるのも当然よね」クレア:「え? …あ、うん。 それで中に入って、物置き… …っていうかホール?みたいなとこ抜けて」ふぁみ:「5だね」クレア:「うん。 で、ぐるぐる階段で二階に上がったらくれあのお部屋」みゅう:「その向かいがりずむさんのお部屋なのね」クレア:「うん。 くれあのお部屋のほうが天井たかいんだよ。 天窓もついてるし。 おつきさまよく見えるんだぁ」こえだ:「私の部屋にもありますわよ」クレア:「そうなんだ、きれいだよね。 雨が降ってるときはちょっとやだけど」こえだ:「…わかりますわ」みなみ:「くれあちゃんのお部屋の下がおふろ場か」クレア:「うん。窓が五つもついてるから、露天ぶろみたいだよ」みゅう:「…」みなみ:「…それはちょっと」クレア:「?」みゅう:「だって、中から見えるってことは、外からも」クレア:「あ」みなみ:「それはいいとしてさ」みゅう:「よくないと思うけど」みなみ:「この“裏庭”って?」クレア:「知らない。 入ったことないから。 裏庭ってなんか怖くて」みなみ:「あたしはこーいうの好きだな。 今度入ってみたいなぁ」クレア:「べつにいいと思うよ? りずむさんもたまにここでぼーっとしてるし」ふぁみ:「それって、いつもじゃない?」みなみ:「それは禁句」こえだ:「で、まんなかに魔女界の入口とステージがある、と」クレア:「うん。 あそこ結構好きなんだ。においとか」みゅう:「魔女界に一番近いから、おちつくのかもしれないわね」クレア:「うーん、そうかも」みなみ:「そういえば秘密の地下室とかないの?」ふぁみ:「あー、それありそう」りずむ:「ないわよ」ふぁみ:「うわっ!!」みなみ:「りずむさん、おはようございます」りずむ:「うん、おはよう」ふぁみ:「…やっぱり寝てたんだ」りずむ:「え?…あ、あ… 寝てないわよ?」みゅう:「声裏返ってますが」りずむ:「…もう…」みなみ:「うーん…」ふぁみ:「ん?おねーちゃんどしたの? またくだらないことで?」みなみ:「くだらないって何事か! すっごく気になることがあるんだけど」ふぁみ:「くだらないことでしょ?」みなみ:「そういうことを言う口は!!!」ふぁみ:「んふゃいんふゃい…」みゅう:「で、何なの?」みなみ:「んとね、この岩山の裏」クレア:「うん」みなみ:「ここ、川と岩山とすきまがあるんだけど… 絶対ここ何かあるよ」こえだ:「…」みなみ:「どしたの?」みゅう:「…みなみちゃん」ふぁみ:「やっぱり下らなあふゃいいふゃい…」みなみ:「この口だな?」りずむ:「…」クレア:「?」からんころんからん…(客 :「あれ?誰もいない?」)クレア:「お客さんだ、はぁい~」りずむ:「…あ、ほんと!いらっしゃ…みなみ:「急ぐとこけr…りずむ:「わっ!!みなみ:「…遅かったか(ぎゅううう)」ふぁみ:「おふぇ~ひゃん、はへふはへふ!! (おねーちゃん、裂ける裂ける!!」みなみ:「あ、ごめんごめん」…のんびりしたMAHO堂の午後。
Jan 3, 2007
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2076年12月31日、午後11時56分。秘書室で一人残業しているりずむ。「zzz…」しかし居眠りしています。57分、目を覚ましました。*****りずむ:「んー…ふわぁぁあ… って…また寝ちゃ…って…」寝惚け眼で時計を見ると既に11時58分。りずむ:「…んー… …? … ぁああ!? 新年まであと2分!?58分13秒。 え?うそ?? … あ!! 年賀状… 書いてる途中で眠… まずい!! えーい!(ぱちん) 和服おっけー!(ぱちん) 写真…おっけー! よし、さらさらさらっと。 しょうしゅん、で、酉歳だから… あとは巻機山…あぁんもう時間がないわ!」59分。りずむ:「よしもっかい魔法で、えいっ(ぱちん) …年賀状プリントおっけー!!」59分51秒。りずむ:「じゃあみんなの所にとんでーけピューっ!!(ぱちん)」*明けましておめでとうございます*りずむ:「ふぅ…間に合った…」*****2077年元旦。まずはふぁみ宅。郵便受けに年賀状を取りに来たふぁみ。ふぁみ:「あ、りずむさんから年賀状来てる… 最近魔女界に行きっぱなしだからなぁ… なになに… …こう…?しゅん…2077… まきはたやま…りず… …ぶっ!! “む”がないじゃん!! ってかどうやって送って来たんだろ???」*****みゅう宅。みゅう:「あ、りずむさんから年賀状… …うわ、やっぱり綺麗だなぁ、りずむさん… こんな魔女になれたらいいなぁ… それにしても、この黄色いのはなんだろう?」*****みなみ宅。みなみ:「りずむさんか… ん? …んんん!? …部屋が暗い。 そして額が赤い。 さては寝起きか? 居眠りしてたか??」*****こえだ宅。(日帰り海外旅行中で不在)*****MAHO堂。魔女界に行ったきりのりずむに代わり、人間界にいたマジョランが店主代理をつとめています。クレア:「…」ラン :「クレアちゃん、リズムから来てるよー、年賀状」クレア:「え? あ、ほんとだ」ラン :「…いろいろ難ありだけどね」クレア:「え?」ラン :「いやもうあの子、ほんとドジなんだから」クレア:「ん? あっ! あはは、『巻機山りず』って!!」ラン :「しかも酉年だからか知らないけど、 ヒヨコはないでしょヒヨコは」*****魔女界、ハナの執務室。ハナ :「りずむ、あらためまして新年おめでとう」りずむ:「女王様、おめでとうございます」ハナ :「戻らなかったんだ、MAHO堂には」りずむ:「はい」ハナ :「ふぁみちゃんたちに会いたいんじゃない?」りずむ:「ええ、でも今ここを離れるわけにはいきませんので」ハナ :「そうね。 …このさきどうなるか… でもね」りずむ:「?」ハナ :「年賀状、これ」りずむ:「へ?女王様の所にも行きましたか?」ハナ :「うん、来た」りずむ:「あれ?送ってなかったはずですが… どうせすぐに新年の年越しパーティでお会いすると思いまして」ハナ :「うん。いっしょにお祝いしたもんね。 でも今朝来てたよ?」りずむ:「おかしいですねぇ」ハナ :「でもありがとね」りずむ:「ええ。はい」ハナ :「でね、ここ」りずむ:「??」ハナ :「『む』が抜けてるよ」りずむ:「あ…あーっ!!?」ハナ :「それにね、寝起きで撮ったでしょ?」りずむ:「えっ?」ハナ :「おでこ、赤くなってる」りずむ:「…げっ」ハナ :「みんなにも送ったの?」りずむ:「あ…はい…」ハナ :「やったね!」りずむ:「やっちゃいました…あはは… …新年早々…あはは…は」
Dec 31, 2006
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*****辺境の岩山。(…パルフェ様の会議、まだ続いてるのかしら)再び「魔女の爪」を採りにきたルナ。既に採取を終え、女王城目指しほうきを駆っている。「魔法ラズベリーも採ったし」リリの大好物。そしてルナ自身も好きな魔法の果物。真っ赤な果実。(赤か…)ルナはパルフェの真紅の瞳をまず思い出した。そして…(あの魔女の髪)パルフェは以前このあたりで見た三人組の魔女を思いだした。(いるかしら、今日も)その時冷たい風がルナに吹きつけた。「寒っ…」マントの襟元に顔を竦め入れた。(嘘でしょ?今の時期の風じゃ…)もう一度吹きつける、冷たい風。(でもなんか変ね…)しかし肌を切り裂くような力は無い。(ただ、寒いだけ)まるで風の精の息吹が感じられないような、ただ動いているような風。「… ああ、そういうことか…」ルナは一つの事実に気がついた。そしてほくそ笑む。(ハナの力が衰えてきているから…か)小さく声に出して笑う。「だんだんと面白いことになってきたわ…」ぼそっと呟いたその途端、下の方で爆発音が聞こえた。「ん?」鳥たちが数十羽、ばさばさと音をたて飛びたった。(あの魔女達…か)そう言うと、ほうきの柄を握る左手にほんの少し力を加えた。(まだ時間はあるわね…)ルナは細い煙が上がっている方へ向かった。*****ガブガブの森に聳える、小さな岩山の南麓。(いたいた…)少し離れた木の枝の上に腰かけ様子を窺う。前と同じ白・黒・赤の髪をした三人の魔女。黒コゲのガブガブを解体している。(またガブガブか)木の幹にもたれながら、三人の行動をじっと見つめている。「ふんふふ~ん♪」鼻歌交じりでガブガブを切り裂く赤い髪の魔女。「ルビィ、あんた何が楽しいの?」ばらしたガブガブの破片を、次々と魔法で小さくしながら、感情のこもらない声で尋ねる黒髪の魔女。「んふふ~♪」鼻歌か笑い声か分からない声を上げながら、最後の一切れを切り裂いた。「…だって、お客さんきてるし」微笑みながら魔法のナイフをベルトの鞘に収めた。(…)ルナは少し息を詰めた。「ええ、そうね」白い髪の魔女がルナが腰かけている木の枝の方を見た。「…前の魔女さんね」その声に黒い髪の魔女もルナのいる方を向いた。「出てきたら?そんな所にいないでさ」(ふふ…なかなか)ルナがさっと腕を払うと、風が体を掻き消した。次の瞬間、ルナはその風を身に纏い、三人の前に現れた。そんなルナに対して、三人は全くたじろぐ様子もなく、口々に呟いた。「お客様?」「何?」「追っかけ? …それとも覗き?」妖しげな赤い髪の魔女・ルビィの口調に苦笑しながら謝るルナ。「うふふ…ごめんね、こそこそ隠れてて」黒髪の魔女が首を横に振る。「ううん、ってかあれで隠れてたつもりなの?」「言うわね…」ルナもそれに応じ、口の端を歪ませた。「…ま、いいわ。私はマジョルナ」三人は顔を見合わせた。それから白い髪の魔女がにこっと微笑んだ。「私はアルベド」「ニグレド」じっとルナの目を見据える黒い髪の魔女。「ルベドよ」ウィンクして名乗る、赤い髪の魔女。ルナは訝しげな表情で三つの名前を反芻した。「アルベド、ニグレド、ルベド…? それって…」「私たちの名前」ニグレドが無表情なまま答えた。「髪の毛の色よ、そのまんまだけど」アルベドが自分の白髪を指差しながら答えた。「ああ」ルナは肯いた。「別に黒・白・赤でもいいんだけどねっ☆」ルベドはウィンクしながら答えた。「そう。シュヴァルツ・ヴァイス・ロットでも」アルベドは目を閉じて呟いた。「あたしはノワール・ブラン・ルージュの方がよかったんだけどね」ニグレドは、セリフとは裏腹に無関心丸出しの口調でそう言い捨てた。「…っていうか、名前なんて私たちにとってはどうでもいいの」「名前なんて、もともと無いんだから」アルベドは少し悲しそうに呟いた。「普段はね、ニグ・アルビィ・ルビィって呼んでるんだよ」と言いながらルベドは二人に抱きついた。「暑苦しい」露骨にイヤな顔をするニグレド。「うふふ」困ったような笑みを浮かべるアルベド。「で、何?何の用?」抱きつかれたままのニグレドが、冷たい声で尋ねた。「別に。前に見掛けたから、ちょっと気になってね。今日もいるかなーって思ったら…」ニグレドの金色の瞳を直視した。「いた」ニグレドは感情のこもらぬ声で呟いた。「ええ」肯くルナ。「そう」顔の筋肉を緩めることなく、そう呟く。「なんか爆発させてたみたいだけど、何してるの?」ルナは三人に尋ねた。「ごはんを狩ってたの」ルベドはにこっと笑った。「っていうか、あなたはこんなとこで何してるの?」(…)ルナは少し考えてから、バスケットを取り出し、中に入った魔法ラズベリーを見せた。「これ、取りに来たの」「魔法ラズベリーか」ニグレドは一瞥して呟いた。「ええ」「このあたり多いですからね。…んー…」アルベドは辺りを見回す。「ほら」そして指差した。その先には鈴生りの赤い実。「あたしは酸っぱいからあんまり好きじゃないけどね」ルベドはすっぱそうに口をすぼめた。「ジャムなんかにすればおいしいけどね」その時近くで聞こえる、ガブガブの呻り声。「ガブガブ」そういって、呻り声がした方を指差すルベド。「ええ、行きましょう」ニグレドも肯き、ルナをチラッと見た。「そうね。 …じゃあね、お仕事中失礼したわ」ルナはその視線に気付き、ほうきに跨った。「ええ、それじゃ」ニグレドはルナから視線をはずさずに言った。「ばいばい、あたしの追っかけさん」ルベドは軽く手を振った。「お気をつけて」アルベドは優しい口調で、しかし警戒していることを隠さずに別れの挨拶をした。「ええ」三人の顔を順番に見ながら、ほうきに魔力を込め、一気に駆け上がった。下を見ると三人の姿はもう見えない。(アルベド、ニグレド、ルベド…か…)「でも、あの三人…」(不自然なほどくっついていた)アルベドとニグレドに、嬉しそうに抱きつくルベドの顔が思いうかんだ。「…変な趣味でもあるのかしら。それとも…」下卑た想像をしてしまったルナは自嘲的に笑った。「ふふ…まあいいわ。それじゃパルフェ様の所に…」そう呟くと、柄を握る左手に魔力を込めた。*****一方これより少し前、女王城。既に会議は再開されている。「…でありますので、元老の方々の定員を削減すべきであるように思います」マジョリカはこう述べ終わると、一礼して席についた。マジョサリバンはそれを横目で睨んだ。と、ほぼ同時にマジョドンが激昂した。「マジョリカ!!お前は元老でも無いのに口を慎め!!」(ふふ…好機、かな?)パルフェはくすっと微笑んで、マジョドンを、そしてマジョリカを見た。こちらの視線に気付かず、マジョリカを睨みつけているマジョドン。マジョサリバンもマジョリカをじっと睨んでいる。「何をおっしゃいます、マジョドン殿。 私は先代女王様より現女王の補佐を嘱された身… この場における発言権はございますぞ?」そうしてマジョリカは議長のユキの顔を見た。「ええ」肯くユキ。そんなマジョリカに対して、マジョドンは鼻で笑って吐き捨てた。「虎の威を借る狐…いやカエルか…」「おっしゃいたいことはそれだけでございますかな?」真正面からマジョドンの目を睨むマジョリカ。「マジョドン、少し言いすぎだ」マジョリードは冷徹だが、ほんの少し怒りを込めた口調でマジョドンをたしなめた。「マジョリカ、そなたの見解にも一理ある。しかしやや性急のようにも思えるな」マジョミラーはマジョリカにそう言った。続いてマジョハートも、「もう少し詳しく説明してはくれぬか?」とマジョリカに説明を求めた。「…そうでございまするな」マジョハートの言葉に少し萎縮するマジョリカ。(煽らなくとも風はある、か)パルフェは、憤怒の表情未だ冷めやらぬマジョドンを見た。「…削減する理由につきましては、先ほども申しましたように… 現在魔女の数が急激に増加しており、それに伴い…なんですかな… そうそう、システムも複雑化しております」マジョリカは一息ついて、さらに続けた。「さらに人間界との交流も今後増えて行くでしょう。 となれば、もはやたった8名の元老だけでは魔女達の要求を満たすことはできかねます。 そこで元老院を廃し、人間界の方式を援用して…」爆発しそうなマジョドンの表情を見ながら続けた。「将来的にでございますが、議会制度を採りいれ、そこで元老の方々は それぞれの職掌に応じて大臣となっていただく… まあ、魔法使い界でも似たようなものがございますが」マジョドンは発言が終わった途端に声を荒げた。「ウソをつけ! 元老院を破壊し、お主やマジョリズムら側近の権力を…」「マジョドン様」マジョリカはため息をついて、辛辣な一言を放った。「…マジョドン様こそ、経済界の利益しか考えておられぬのではありますまいか?」みるみる顔が真っ赤になる。マジョドンは椅子を蹴って立ち上がった。「何をぬかすかこのたわけめが!!」マジョドンは水晶玉を取りだした。「…お主、ケンカを売っておるのか?もしそうなら…」「いいえ、ただ事実を述べているだけで」「マジョリカ…」「マジョドン!!女王陛下の御前であるぞ!」マジョハートはマジョドンを一喝した。ハナはそれにこくんと肯き、マジョリカをたしなめた。「マジョリカ、言いすぎですよ。 マジョドンも、落ち着いて」それでも怒りがおさまらないマジョドン。「女王様、私はこんな元魔女ガエルに侮辱されたのですぞ?」「魔女ガエルを悪く言うものではないぞ、マジョドン」マジョリードは少し怒りを含んだ声でマジョドンに注意した。「…すまぬ、マジョリード。しかしな、こやつは…」マジョハートはマジョドンの言葉を打ち消すように続けた。「先ほどもリードが言っておったが、人間界の制度を我々魔女界にそのまま用いるのは 如何なものか、マジョリカ」そう言ってマジョリカを見る。ハナの姿がその視野の片隅に入った。「マジョハート様、そのあたりはこれから詰めていかねばならぬ所であります。 ただ、元老の方々の職掌を見てみた場合、著しい偏りが見られます」ふむ、と肯くマジョハート。「それはそうだな。私は医者。 マジョスローン様は博物館長、マジョドンは魔女問屋の元締め」そして不機嫌な表情のマジョドンに目をやりながら続ける。「…マジョサリバンは試験官魔女長、幼稚園園長のマジョミラーに、図書館長のマジョリード…」不意にマジョドンと目が合った。マジョドンはその視線をすっと外す。「…そしてマジョプリマは芸術院長、マジョパルフェは留学生センター長… 明らかに文教方面に偏りがあるからな」「はい。 私も早急に結論を出せと申しておるわけではありませぬ」
Dec 27, 2006
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「…女王様はどうお考えか?」マジョハートは突然ハナに質した。ぴくっとヴェールが揺れる。「え?…ああ、そうですね」その声色からも明らかに動揺が見られる。「…人間を元老院に入れるのも…」ハナは思わずそう呟いてしまった。「… …は?」自分の耳を疑い、思わず声を上げるマジョハート。元老たちも意外な回答にざわめいた。「女王様?」ユキは驚いた表情でハナを見た。マジョリカも不審の目を向けている。その二人の、そして元老たちの視線に気付いたハナは、自分の発言がおかしかったことに気付き、慌てて訂正した。「あ…ああ、そうではなく… そうですね。これから議論する必要があるかもしれません…」ハナの声が途切れると、歪んだ沈黙が会議室を覆った。誰もが明らかな違和感を感じながら、その違和感がどこにあるのか分からない、それを模索しているような沈黙。「…ともあれ」マジョドンがその沈黙を破った。「女王様はこの魔女ガエルの肩を持つおつもりなのですな?」「肩を持つ…?マジョドン、その言い方は少しおかしいでしょう」「どこがですか?」強気な口調で尋ね返すマジョドン。「私は皆を信頼していますが、かといって誰の肩も持っていません」そして小さく息を吸う。「ただ、今の魔女界は昔の…先代の女王様の頃と比べても変わった」ちらっとユキを見る。ユキも小さく肯く。「…ですから、魔女界の体制も、すこしずつ変えていく…」再び弱々しく息を吸い、そして吐き出しながら続けた。「いいえ… それは性急だとしても、議論は行っていく時期に入ってきているように 考えます…」その様子をじっと見ていたマジョリードは目を閉じて考える。(やはり、女王様…)ゆっくりと目を開け、左前方でハナを睨むマジョドンに目をやり、それから書類に目を通しているパルフェに視線を移した。そしてまた目を閉じた。(決断せねばなるまいか…?)「しかし変えたのは女王様、あなた自身がなされたことですぞ?」マジョサリバンが念を押すように確認を求めた。「…ええ。それはわかっています。 ですから、なおさら…」そんなハナをじっと見つめているマジョリカは心の中で肯いた。(ふむ)「マジョサリバン様」そして再び口を開いた。「先々々代の女王様の呪いが解かれた以上、 遅かれ早かれ人間界との繋がりが深まるのは自然… 女王様はその決断をなされたのですぞ? それを詰るような口調で…」「私は詰るつもりで言ったわけではない」平然と答えるマジョサリバン。「ただ確認しただけだ。 そなたこそ、先のマジョドンの言ではないが、 虎の威を借るなんとやら…」「カエルじゃ」そう言ってマジョリカを嘲るマジョドン。マジョリカは表情を変えずに、しかし強い口調で非難する。「侮辱するにもほどがある!」マジョドンも負けじと言いかえす。「何をいうか、この佞臣め!」それに肯きながらマジョサリバンが静かに言った。「女王様を嗾けたのはマジョリカだと聞いている」マジョリカは表情を険しくし、マジョサリバンを睨んだ。「マジョサリバン様こそ、試験官魔女の削減に対して 逆恨みしておられるのではありますまいか?」「何!?」マジョリカとマジョドン、それにマジョサリバンも加わって掴みかからんばかりの口論が始まった。その途端。かん!!突然甲高い音が響いた。杖の石突きが床板を激しく叩く音。マジョスローンが険しい目つきで一同を睥睨する。静まり返る元老達。「…女王様」マジョスローンがゆっくりと口を開いた。「これは議論というより、ケンカです。 今の状態では、まともな議論はできないでしょう」マジョスローンはハナを見た。「今日はここで打ち切っては如何でしょうか? 頭を冷やして考えねば、考えもまとまらないでしょう」そういうと、頬を緩めた。先の険しい表情とは一転した、優しいおばあちゃんの顔。「そうですね」ハナもゆっくりと肯き、それに同意した。そしてユキに促した。それを承けてユキは宣言した。「…本日の定例元老会議はここまでとします。 解散してください」ハナが部屋をあとにすると、それに続いて元老達も上位の者から退出していった。パルフェも書類をまとめて立ち上がろうとした時、「パルフェ」マジョドンがパルフェを呼びとめた。「パルフェ、前の話だが」「はい、分かっております」すぐさま答えるパルフェ。「…マジョリカを追い落とす」低い声で耳打ちする。「それは計画のうちに入っておりますので、御心配なく」「そうか、よろしく頼む」「もちろん。ただ…」「ん?」「その件に関しましては、城内でなされませぬよう。 どこに何があるか分かりませぬ故」「うむ、そうだな。 気をつけよう」そうしてマジョドンも帰っていった。(…)その背中に冷たい視線を送るパルフェ。そして小さく「ふぅ…」と溜め息をつく。と、その瞬間、不意にルナが現れた。「パルフェ様、お疲れさまでございました」「!? …ああ、ルナ。 もう…びっくりさせないでよ」「申し訳ございません」素直に謝るルナ。「ま、いいわ。 お待たせ」「はい」廊下を歩きだす二人。女王城を出るまでは無言。前庭に出たところでパルフェは口を開いた。「マジョリカがとうとう元老院の削減案を切りだしたわ」「ほう」「マジョドンがすごい怒ってね」「でしょうね」くすっと微笑むルナ。しばらく歩いて、城をの領域外に出た。そこで二人は一旦立ち止まった。「で、どう攻め崩すお考えですか?」「ええ」肯くパルフェ。「隙はある。マジョリカと前女王、ユキ様との間に、ね」そう言って指を弾くとほうきが現れる。パルフェは静かに腰かけた。「どういう?」そう言いながらルナもほうきを取りだす。「…簡単に言うとね、双頭の蛇」パルフェはそう言いながら両手の人指し指をくるくると回した。「ほう」ルナもほうきに腰かけ、二人はゆっくりと浮かび上がった。「…女王を補佐するという、よく似た職掌を司るのが、二人いるの。 摩擦が起きないほうがおかしいでしょう?」「違う方向を向けば」「ええ。胴体は真っ二つ」その指をパチンと弾くと、銀色の火花が散った。二人はいつものカフェに向かい、ゆっくりと飛び始めた。「…そしてその二人の調整をしているのが、マジョリズム」「マジョリズム…」「彼女は私の友人…だから人となりはよく知っている。 真面目な人よ。融通きかないところがあるけど、控え目であまり我は強くない。 二人の間をよく取りもっているわ。だから摩擦には至っていない」パルフェは目を閉じた。「それに、実際の影響力は…私が見る限りはマジョリカ・ユキ様よりも上ね」「とすればマジョリズムを外せば」そんなパルフェをじっと見つめる。「そう。マジョリカとユキ様の間には摩擦が生じる」少し悲しそうに呟くパルフェ。「ふむ。それにハナの力も落ちる」ルナは肯いた。「ええ」目を開け、パルフェは続けた。「ただ…問題は味方ね」「?」「マジョドン、利に聡いのはいいのだけれど、それを表面に出しすぎる。 また気性も激しい。 操りやすいけど、毒になる」苦笑するパルフェ。「邪魔になれば切り捨てれば」ルナはさらっと言った。「そうしたいのは山々だけど、たぶん無理」「…何故に?」わざと尋ねるルナ。パルフェはくすっと笑って答えた。「魔女界の経済を牛耳っているからよ」その答えにルナも微笑む。「ですね。敵に回すわけにはいかないし、切ろうにも一筋縄ではいかない」「ええ」「とすれば…誰か同じ“畑”に…マジョドンの敵になるようなのを作って…」「…孤立させる?」「ふふふ…」ルナは掠れた声で笑った。「マジョドンのライバルになりそうなの、誰かいる?」「…東地区元締めのマジョラクスはマジョドンと対立しております」「調査、早いわね」「いつも飛び回っておりますので」「ご苦労様」くすっと笑うパルフェ。「じゃ、そっちの方もあたりをつけとくべきね」「お任せ下さい」「うふふ…お願い。 そういえば、もう一つ…」パルフェは、午前中に為された魔女同士の恋愛に関しての議論をルナに話した。「そのような議論も…」ふと三人の魔女を思い出しながら呟くルナ。「ええ」「愛ですか」「ん?ルナ興味あるの?」ちょっと艶っぽい視線で見るパルフェ。「無いといえば、嘘になります」感情無く即答するルナ。「そうなんだ」くすっと笑うパルフェ。しかしルナは言った。「ですが、それは負の関心」「負?」パルフェは少し眉をひそめる。そして怪訝な表情で尋ねた。「どういうこと?」「私は、“愛”で少なからぬものを得ました」「ええ」少し不安そうな微笑みでルナを見るパルフェ。「でも、それ以上に多くのものを失いました。 そしてそれらは…もう取り返しのつかない…」そう言って目を閉じるルナ。「え?」「そういうことです」「よく…わからないんだけど…」すーっとルナの近くにほうきを寄せる。薄く目を開け、小さな声で呟いた。「これ以上は、言いたくありませんので」「そう」「すみません」「…謝られても、困る」そう言いながらパルフェはまた少し距離をとった。(…昔負ったケガと関係があるのかな)パルフェはそう思った。じっとルナの右肩を見る。その心配そうな、疑いの念を孕んだ視線を受けたルナは、思い出したように呟いた。「そうだ。 …また魔女の爪とってまいりました」そしてほんの少しだけ、笑った。その表情の変化に、パルフェは少し驚いたが、同時に安心もした。「あ、ありがと。あれよく効くわね」「そうですか」そう言うと、再び口許を緩めた。その口許を見つめながら、パルフェは思った。(ルナ、あなたがよくわからない)ルナを見ないようにするため、パルフェは下を向いた。「…着いたわ」地面に降り立つ二人。ほうきを片づけながら、パルフェは黙って空を見上げた。魔女界特有のピンク色の空。たまに色が薄くなる。そこにたゆたう小さな雲達。ルナも空を見上げた。小さな雲達は寄り添って、大きな雲の塊を形作る。しかしその脇には、その大きな塊からどんどん外れてゆく無数の雲。次第に他の塊になってゆく。またそれはくっついたり、離れたり。いつしか二人は無言で空を見ていた。言葉を交わさず、ずっと。(雲の陰が濃い)ハナもまた空を見上げていた。「女王様、どうかなされましたか?」秘書のテキパキが尋ねる。「お加減でも?」同じく秘書のテキも心配そうにハナの様子を窺った。「大丈夫、ただ、雲を見てただけよ」「雲…」りずむも見上げた。淡い五色の光で覆われた灰色の雲。空そのものが明滅しているような感じ。「雨、でしょうか」テキパキが早くも傘を用意する。「あはは、テキパキ早いわよ」ハナは笑ってそう言った。「あ、申し訳ございません」「もう…」テキはそう言いつつも、自分も出そうとしていた傘を背中の後でこっそり隠した。「あ」目聡くそれを見つけるテキパキ。「あんたもじゃない」「う、見つかった」ハナはまた笑った。それにつられてりずむも。そして、テキとテキパキも苦笑い。「そういえば人間界は今梅雨で…」「懐かしいなぁ…私がいた頃も梅雨あったよねー」「ええ。もう少し遅かったですが、昔は」「うん。六月頃だっけ」…そんな何気ない会話が交わされる。ハナは硬く強張った心がほんの少し和らいだ、そんな気がした。
Dec 27, 2006
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ハナ :「とりっくおあとりーとっ!!」どれみ:「うわぁっ!!」ハナ :「はぁいどれみ、はなちゃんサンタからプレゼントだよぉ」どれみ:「は…?ハナちゃんかぁ… ああびっくりした…」ハナ :「あはは、どれみびっくりしたー?」どれみ:「したよぉ… っていうかハナちゃんそのあいさつは違う」ハナ :「知ってるよ?」どれみ:「… しかもトナカイ無しで袋に乗って…って」ハナ :「えへへ。似合う?」どれみ:「服は似合ってるけどさぁ。 まあいいや、それにしてもさ…」ハナ :「…どれみ」どれみ:「ん?」ハナ :「起きたら枕もと見てみて」どれみ:「?」ハナ :「…じゃあ、またね。 どれみ…ママ」どれみ:「え?ちょ…ちょっと!? …消えちゃった」*****翌朝目を覚ますと、あたしの枕許には、白い羽の形のブローチと、ハナちゃん自筆の絵手紙が、確かに置いてあった。…「またね」か…。来年も、会えるのかな?
Dec 25, 2006
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「ピーリカピリララポポリナペーペルトっ! ステーキよ…出ろっ!」ぼわん!薄桃色の煙と共に現れたのは、ステーキの絵。「まただぁ…」うなだれるふぁみ。既に6回目。ステーキの写真が3回、絵が2回、食品サンプルが1回。「なんでダメなんだろう…」ふぁみはため息まじりにポロンを眺めます。今日もらったばかりのポロン。少し古びて、傷もあります。(前に使ってた子って、どんな子だったんだろう)蛍光灯の光に透かしてみながら、いろいろ想像します。(魔女になれたのかな? 魔法上手だったのかな?)「ペペルトポロン、って言ったっけ…?」ふぁみはその時気付きました。「あ」魔法玉を使い切ってしまっていることに。「あちゃー… これじゃ練習できないじゃん…」勉強机の上の写真立ての中からそんなふぁみを優しげに見つめる、年老いた女性。「はぁ~あ…」と大きなため息をついた瞬間、ドアをノックする音が。「!」ビクッとドアの方を振り向くふぁみ。「おーい、ふぁみ」ドアの向こうから声が聞こえます。「さっきからピリ辛ピリ辛うるせぇよ」「げっ」手にしたポロンをベッドのふとんの中に隠しました。「あ、ご…ごめん陽兄ぃ」「俺勉強してんだからさぁ… 入るぞ?」がちゃっ。(え?入ってくる!?)と思う間もなくドアが開きました。「こ…こら勝手に入って来ちゃダメっ!!」と非難の声を上げると同時に、部屋に入ってくる兄の陽介。目が合いました。ふぁみは見事に見習い服のままです。「…」「…」(あー…やばいかも)ふぁみの背中をつーっと冷や汗が一筋流れます。「何してたんだお前?…ってその格好なんだよ」薄いピンクの見習い服を着たふぁみを見て、陽介は呆気にとられています。「何でもいいでしょ、ほっといてよっ」顔を真っ赤にして何故か胸を隠すふぁみ。「ガキみてーだな」「るっさいなぁ! っておにーちゃんだってガキじゃんか」と口を尖らせるふぁみ。「やっぱガキだな」ふぁみの姿をじっと見る。「何よ…っていうか早く出てってよ!!」開きっぱなしのドアの外を指差すふぁみ。「なんだよ、ピリ辛言ってるからカレー味の持ってきてやったのに… ほれ」そう言って隠し持っていた激辛カレー味のポテトチップスを示しました。「え? あ…ありがと」「やろうかと思ったがやめた」陽介はぷいっと取り上げました。「え?なんで!?」「態度が悪い。 だから」そう言って陽介はその袋を開けようとしました。が…「…一人で食…ん?」「開かな…」力任せに引き破ろうとする陽介。当然の如く、「うわっ!!」思いっ切り中身をぶちまけてしまいました。「ちょ…おにーちゃん?」「あ~あ…やっちまった」陽介は袋の中に残ったのを落とさないようにテーブルの上に置きました。「全く…何やってんのさぁ」呆れ顔で呟くふぁみ。「…うっせぇ」陽介は顔を真っ赤にして怒りながらも床に散らばったポテトチップスを拾いあつめます。「ドジなんだからさぁ、陽兄ぃは」笑いながらも手伝うふぁみ。「お前には言われたくねぇよ」「まあきょうだいだからね、似るのは当然だよ」ふぁみは何気なく呟きました。「……」「…」暫くの沈黙。不意に陽介が口を開きました。「…ドジっていえばどれみばあちゃん似だよな、俺ら」「…え?」その顔を見るふぁみ。「ばあちゃん、天国行くまでドジだったもんな」懐かしそうにふぁみの机に置いてあるふぁみとどれみの写真に目をやりました。「…うん。よく転んでたし」そう肯くと、手を止め、その写真を見つめるふぁみ。「どれみおばあちゃん、か」(もう三年…)さっきより少し重い沈黙。(…)そんな時、陽介は再びふぁみに話し掛けました。「…っていうかさぁ、お前」「?」きょとんとした表情で陽介を見るふぁみ。「スカート履いてる時ぐらい、脚閉じろよ」「…え?」ふぁみは自分のスカートの裾を覗き込みました。「あ!?」慌てて脚を内股にしてスカートを押さえます。「丸見えなんだよ」陽介のその言葉に顔を真っ赤にして大声を上げます。「な…このへ…ヘンタイ!!」「変態っていわれてもなぁ…」そう言って頭を掻きました。「…つーか、漫画かなんかの服なのか?それ」と陽介はふぁみの服を指差しました。「へ?」ギクッとするふぁみ。「い…衣装?」と、上擦った声で答えます。「へぇ。何の?」「ま…」と言おうとしてあわてて口を噤みました。「ま…まぁ…あ、妖精妖精」「へー…劇かなんかか?」「う…うん。そうそう」かくんかくんと何度も首を振るふぁみ。陽介はぼそっと呟きました。「全然似合ってないな」「ほっとけ!!」そんなふぁみの怒鳴り声を無視し、陽介は視線を下に落とします。そしてため息まじりに「…っていうかお前気ぃ抜いたらすぐ脚開くのな」 陽介は再び指差します。「!? ほっといてよ!」ふぁみは裏返った声で非難しながら、再びスカートを手で押さえました。「…っと。 よし、大体片づいたな」そういうと陽介は立ち上がりました。「部屋汚して悪かったな」「うん」こくりとうなづくふぁみ。「めちゃ悪かったよ、ほんと」冗談とも本気とも付かぬふぁみの冗談に憮然としつつも、「…じゃあ、おやすみな」そう言って部屋を出て行こうとする陽介。そんな背中に向かって、ふぁみは微笑みかけました。「うん、おやすみ。 おにーちゃん、勉強がんばりなよ」(…)少し振り向き、笑顔を浮かべて、陽介は肯きました。「おう。 …お前も練習がんばれよ」「えっ?」ビクッとするふぁみ。(魔法、バレてた!?)そんなふぁみを不思議そうに見ながら尋ねます。「? いや、劇なんだろ?」「あ…ああ、そうそう。頑張るよ」小さく肯くと、陽介はふぁみの部屋のドアを閉め、自分の部屋に戻っていきました。「…」陽介の部屋のドアが閉まる音を聞き届けると、ふぁみは「ふぅ…」と一息つきました。ふとテーブルの上を見ると、陽介が残していった激辛カレー味のポテトチップス。一枚手に取りました。「真っ赤っかだ」一口パクッとかじってみました。最初、ほんの少し舌を刺す辛さ。「なんだ、激辛ってあんま辛くな…」そこまで呟いた瞬間、強烈な辛さがふぁみの舌を突き刺しました。「か…辛っ!」舌を出して犬のようにハァハァしながら刺激に堪えようとするふぁみ。「マジめちゃ辛いじゃんかこれ!」涙目になりながら手で舌を扇ぎます。もちろんこんなことで刺激がおさまるわけがありません。「水!水!」机の上に置いてあったミネラルウォーターを口に含み、そして冷やし癒すようにゆっくりと、しかしがぶがぶと飲みました。*****「ふぅ…酷い目にあった」しばらくして落ち着いたふぁみ。見習い服から部屋着に着替え、机の前でぼーっとタップを見ています。「やっぱあたしってドジだよなぁ…」ことん、とタップを写真立ての前に置き、ふぁみは一人呟きました。「魔法も下手くそだしさ」写真立ての中で微笑む祖母。「ね?おばあちゃん」机に突っ伏して写真に話し掛けます。「でもね、あたし魔女見習いになれたんだよ。 おばーちゃんの言ってた通りだよ。 魔女って…本当にいるんだよ」そういうとふぁみは写真立てを手に取りました。そしてぎゅっと胸に抱き、呟きました。「見ていておばあちゃん。 あたし、立派な魔女になるから。 そして…」(その時は… あたし、たぶん… …ううん、ぜったいに強くなるから)もう一度、写真を見つめました。肯いたような、そんな気がしました。(うん)ふぁみもそれに肯きかえすと、写真立てをそっと元の位置に戻しました。「おやすみなさい、どれみおばあちゃん」
Dec 23, 2006
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人間界に来て数日経ったマジョリズム。今日はハナ・どれみと共に買い出しです。*****りずむ:「あの、どれみちゃん」どれみ:「ん?なに?」りずむ:「あれは、なんですか?」ハナ :「どれどれ~?」りずむ:「あれです」どれみ:「あ、あれプリクラって言ってね、写真撮ってシールに出来るってやつだよ」りずむ:「へぇ~…」ハナ :「りずむ、やってみたいの?」りずむ:「んー…」どれみ:「ってかやりたいって顔に書いてる」りずむ:「あ… でも、わたしお金持ってませんから」ハナ :「あー、それならどれみが出すからだいじょぶだよ」どれみ:「な!? …ま、いいけどね」りずむ:「いいの?どれみちゃん」どれみ:「いいよ。記念になるしね。 昨日お小遣いもだったばっかだし。 …んじゃやってみよっか」りずむ:「はいっ」ハナ :「わかりやすいねー、りずむ」りずむ:「えへへ」*****どれみ:「んじゃ、まずここにお金を入れて…」~で、15分後~ハナ :「いっぱい撮ったねぇ」りずむ:「はいっ。 たくさん撮りました」どれみ:「お小遣いが…お小遣いがぁ~」りずむ:「あ」ハナ :「こまかいことは気にしない気にしない。 ねぇどれみ?」どれみ:「細かくないよぉ~ ああ…あたしってやっぱり世界一不幸な美少女~…」ハナ :「ハナちゃんのとくせいプリクラあげるからぁ」りずむ:「わ…わたしのも」どれみ:「んー…? …」どれみ:「結構いいかんじじゃん」りずむ:「そうですか?」ハナ :「りずむかわいー」りずむ:「そんな…ハナちゃんのもかわいいですよ」ハナ :「えへへー… …ってなにこれ」りずむ:「…どれみちゃん 目、半開きですね」どれみ:「がぁぁん…ほんとだ…がくっ」ハナ :「あ~あ」どれみ:「いいや、みんなで撮したのあるから… これか… … な!?」ハナ :「どしたの?」りずむ:「?」どれみ:「これも…あたしだけ…」ハナ :「白目むいてる」りずむ:「あの、どうやったらこんな見事に」どれみ:「うわぁん!! やっぱりあたしって世界一不幸な美少女だよぉ~…」ハナ :「いつものことだけどね。ね、どれみ?」どれみ:「ひどい~っ!!」
Dec 18, 2006
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早朝、辺境の岩山。その片隅にある古い石造りの家。三人の魔女が並んで窓の外を眺めている。荒涼たる灰色の森。「今朝は冷えてるね」赤い髪の魔女が寒そうに手を擦りあわせる。「霜、降りてるわよ」白い髪の魔女が外を指さした。「今、そんな時期?」黒い髪の魔女が欠伸しながら誰とは無しに尋ねた。「んなわけない」赤い髪の魔女は首を横に振った。「何かあるわね」白い髪の魔女がそう言うと、ほかの二人は肯いた。「でもまだ眠い…ふわぁ」黒い髪の魔女はもう一度小さく欠伸をしながら目を擦った。「…あたしたちには関係ないわ…」一番眠そうな表情の黒髪の魔女はそう言うと、わしわしと頭を掻いた。「ぁあふ… んー…そうね、興味ないし…」つられて欠伸をした赤い髪の魔女は呟いた。「もう一眠りしましょう」白い髪の魔女が促すと、三人は薄暗い家の中に入っていった。*****女王の居城の会議室―魔女界の全てを議論し、決定する元老院会議が行われている。女王ハナが最も奥の玉座につき、一段下がってハナの右側に後見人マジョリカ、左側に摂政にして議長のユキ。そして女王から見て右手に元老魔女長のマジョスローン、そしてマジョドン・マジョミラー・マジョプリマ、左手に元老魔女第二位のマジョハート、次いでマジョサリバン・マジョリード・マジョパルフェが順に席を占めている。会議が始まって既に二時間…「それでは次の議題ですが…」議長のマジョユキが次の議題に移ろうとしたその時、「女王様」マジョサリバンが手を挙げた。「はい、マジョサリバン」ユキがそれに応じる。少し間を置き、マジョサリバンはゆっくりと口を開いた。「最近、魔女の中に人間に恋をし、魔女であることを捨て、 人間と結婚する者が多くなっていると聞いております」元老達もマジョサリバンに目を遣った。ハナはその発言を一瞬反芻した後、静かに肯いた。「…ええ、それは私も。 ですが」変わらずにゆっくりとした口調で続けるマジョサリバン。「はい、私もそれについてとやかくは申しません。 魔女界と人間界との垣根が少しずつ取りはらわれていく… その過程の一つに過ぎないと思います。ただ…」「ただ?」ハナは無愛想なマジョサリバンの顔をヴェール越しにじっと見た。マジョサリバンはその視線を鋭い眼光で受けとめ、またゆっくりと口を開いた。「はい、他者を本気で好きになることを知った魔女達の中には、 魔女同士で互いに愛しあうようになることも」ひそひそと言葉を交わす元老達。ただ一人、パルフェだけはそしらぬ顔で紅茶を口に含んだ。その時ハナが口を開いた。「どこかいけないところでも?」ハナは小さく咳払いをして尋ねた。「人間を好きになる魔女がいるということは、 魔女を好きになる魔女がいても不思議ではないでしょう?」ハナの発言に対して、また言葉を交わす元老達。マジョハートは独り言のように言った。「…まあ、魔女界にはほとんど魔女しかおりませぬからな」少し離れたところにいるマジョミラーも「しかたないといえばしかたない、自然なことなのかも」と呟き、紅茶を一口飲み下した。そのような独り言に対し、サリバンは少し声を強めた。「そうでしょうか?私にはとても不自然な、歪んだもののように思われますが」その時、マジョプリマがしなやかな動作で挙手した。「どうぞ」ユキが促す。「はい。 …サリバン様、恋愛は様々な形があって当然ですわ。 そのような堅苦しい型に押しはめるのは…」マジョプリマが少し非難めいた口調で言った。マジョサリバンは、片眉を僅かに上げて短く尋ね返す。「堅苦しい?」「ええ、他者を好きになる感情というのはどこからどう湧いてくるのか分からないもの…」そんなマジョプリマの意見を、マジョサリバンは皮肉を込めた口調で返した。「ほう、マジョプリマ。あなたは恋愛に詳しいようですね」平然とそれを受けるマジョプリマ。「女優はいろんな経験を糧にするものですわ」ニヤリと笑ってマジョプリマに詰め寄る。「では魔女を愛したことも?」鼻で笑って言いかえす。「ノーコメント。不粋な質問はお止め下さい」再びざわめく元老達。ハナはそこで二人に割って入った。「はい、マジョサリバン、マジョプリマ。 二人だけで話しない」マジョサリバンに向かって、ハナは言った。「魔女同士の恋愛が不自然であるというなら、 魔女が他者を好きになるということそれ自体がもともと無かった… …とまでは言いませんが、決して多くはなかったことでしょう?とすれば」ふぅっと息を吐き出し、続けた。「恋愛自体が魔女にとっては不自然な行為とも、言えますよね」「それはそうですが…」「それなら魔女が魔女を好きになるのも似たようなものでしょう?」しぶしぶ肯くマジョサリバン。「女王様」半分居眠りしているマジョスローンの隣で、マジョドンが挙手した。「なんですか?マジョドン」「…深すぎる愛情は、裏返れば強い憎しみに変わることもあります」噛みしめるようにマジョドンはそう言った。ハナは少し驚いた表情を浮かべ、それから微かに微笑み、肯いた。「うん、そうですね」(トゥルビヨン様のこともあるし…)ハナは、今は人間界で暮らしている先々々代の女王の故事を思い出した。(どれみたちと一緒に、トゥルビヨン様を悲しみから救って…)「あ」(…ママたち、もういない)ハナは気付いた。(今の私、トゥルビヨン様と同じなのかな…)「…女王様?」ぼーっとしているハナに声をかけるユキ。「あ」ハナはびっくりしたようにユキの方を振り向いた。元老達を見ると、皆こちらを向いている。中には怪訝な視線を送る者も。ハナは急いで考えをまとめ、それから徐ろに言った。「愛が有れば憎しみも生まれる。 しかしそれもまた自然…そのように考えます…」「では女王様は愛や憎しみという感情がもとで、何か事件が起こっても…?」今度は表情を引き締め、ハナは声を強めた。「問題が別のような気がしますが、否定はしません。 …実際にすでに数件起こったとも聞いています、ね?パルフェ」末席で肯くパルフェ。「はい。私のもとには幾らかそのような情報が」マジョドンは苛立たしげに呟いた。「ならば…」ハナは首を横に振る。「いえ、私は止めようとは思いません。それは仕方の無いことでしょう」「仕方ない…ですと?」そう呻くマジョドン。「むしろそれをフォローすること、出来れば…悲しい出来事が起こるその前に、 当事者たちの話を聞いてなんとか解決する方へ向けるのが、 我々のなすべきことだと思います」「…」合点がいかないという様子で黙りこんだ。マジョサリバンは冷ややかな表情でハナに詰め寄った。「それは現実的に不可能では? 魔女界に魔女がどれほどいるのかご存知の筈」ハナはその冷たい視線を真正面から受けとめ、切り返した。「魔女を好きになる魔女は、まだそれほど多くはないと聞きます。 それに、最初から不可能と決めて諦めるのは好きではありません」「…」(好きではない、か)マジョサリバンは小さく鼻で笑った。マジョドンは押し殺した声で呟いた。「しかしいずれは」そのマジョドンの言葉を遮って、ハナは言った。「そうなったとき、考えればよいでしょう」ますます語気を強め再び詰め寄るマジョドン。「女王様、それでは遅すぎるのでは?」苛立ちを隠さずに、しかし穏やかな声で答えるハナ。「今考えるのは早すぎます」「女王様!」声を荒げるマジョドン。その表情を、ヴェールの奥から睨みかえすハナ。マジョハートは呆れた口調で二人を宥めた。「マジョドン! …それに女王様も」ハナは気を鎮め、一つ深呼吸をしてからハナはマジョハートに謝った。「…ごめんなさい」マジョドンはマジョハートを睨んでからそっぽを向いた。「ふん」今まで目を閉じて議論を聞いていたマジョリードが、落ち着いた声でハナに質した。「…ともあれ、女王様は魔女同士の恋愛に関しては肯定なさる」「はい」二呼吸おいて、もう一度マジョリードは尋ねた。「昔の人間界において、同性愛は罪だという考え方も…」肯くハナ。「知っています。しかしここは魔女界です」マジョリードは小さくため息をついて続けた。「わたくしは…参考とすべきではないか、と申しあげているのですが」「ええ、参考にはすべきでしょうね」ハナはふぅっと息を吐き出し、マジョリードの顔を見た。まっすぐにこちらに向けられた視線。冷徹だが、誠実な目。ハナは続けた。「…ただ、人間界と魔女界とでは、その背景がまるで異なります。 そのことを念頭においておかねば、それは単なる魔女の人間化」直ぐさまマジョリードは反論した。「それならば、魔女が他者を本気で愛し、本気で憎む。 これもまた魔女の人間化ということではありませぬか?」「ちハナが再反論しようとした時、パルフェが挙手した。「ハナ様」ユキはハナの方を振り返る。肯くハナ。「どうぞ、パルフェ」ユキが発言を促した。「マジョリード様、人間と交流を持つ以上、人間化ということは 多かれ少なかれ避け得ない事象。 しかしその変化は、魔女そのものの…いわば自発的な変化。 それは人間の側でも同じ事が起こっていると思われます」「…思われる…か。 根拠は?」「留学生の証言、それに各地のMAHO堂からの報告など… なんなら次回の会議までに資料を揃えますが」そう言ってリードの顔を見た。マジョリードはしばらくパルフェの顔を見てから肯いた。「…そうだな、そう願おう」「了解しました。ともあれ…」パルフェはメモを取りながら続けた。「魔女自身が自発的に変わっていくのと、 人間達の勝手な決め事を魔女の世界に持ってきて、 援用するのとでは問題が異なるのでは?」しばし考えこむマジョリード。「…ふむ。 人間界の決まり事を持ってくるのは単なる異物。 桜の木に梅を接ぎ木するようなもの…か」肯くハナ。「それに対し、魔女そのものが変わるのは… 咲く場所の土質に応じて色を変える紫陽花のような… …いや、これは少し違うか」マジョリードはふふっと微笑んだ。ハナはそんなマジョリードに目を遣り、それからパルフェの方を見た。ちらっと視線を交わし、またメモを見るパルフェ。「ありがとうパルフェ」パルフェはハナの方を向き、軽く会釈した。「…それにしても」そんなパルフェを見つつ、マジョリードは続けた。「ただやはり問題となるのが、愛と裏返しの憎しみの問題。 特に我々は魔法を持っております」「はい」「したがって憎しみの感情が芽生えたとき、その害毒と申しましょうか… 被害は計り知れぬものになりませぬか?」マジョドンが質した。「感情を爆発させたときどうなるかわからぬ、ということ…か?」「ええ」マジョドンとマジョリードはハナを見た。ハナはその視線を受けて、少し考えた。やがて口を開いた。「それは…自省を求めるしかないでしょう」「女王様」その時、マジョスローンが細い目を薄く開いて言った。「…女王様、問題が堂々回りしておるようですね。一旦ここでこの議題は打ち切りませぬか?」そう言って、この話題を切りだしたマジョサリバンに視線を送った。マジョサリバンも、仕方ないという感じで肯いた。また互いに言葉を交わす元老達。しばらくしてマジョハートがハナに進言した。「女王様、一旦休憩になさっては?」肯く元老達。その様子を見てハナは宣告した。「…そうですね。では一旦休憩を入れましょう」そしてマジョスローンの顔を見た。マジョスローンもそれを見て微笑んだ。「では、クロックフラワー2つ分の間、休憩とします」 午後2時47分、元老院会議は1時間の休憩に入った。
Dec 16, 2006
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「女王様、お疲れさまでした」会議室から出てきたハナとマジョリカ、ユキを迎え一礼するりずむ。「マジョリズム、御苦労様です」そういって微笑むハナ。「…休憩じゃ、わしはラウンジにおるでの」「女王様、また後で」マジョリカとユキはそれぞれ一礼すると去っていった。「ええ、後で」ハナはそれに短く答えると、二人の背中を見送った。「…では、行きましょうか、りずむ」「はい」*****一旦女王の居室に引きあげてきたハナとりずむ。「お疲れさまでした」居室手前の事務室では秘書のテキとテキパキが書類の整理をしている。ハナを見ると立ち上がり、一礼した。それに肯き答え、りずむと共に居室に入っていった。「ふぅ…」そう言いつつヴェール付きの額冠を外し、机の上に置いた。そしてマントの紐を解いた。「女王様」そう言うと、りずむはハナのマントを預かった。「…今はハナでいいわよ」振り返り、微笑むハナ。そのハナの目に力がないことを見てとったりずむは、心配そうに尋ねた。「ハナ様…お疲れですか?」そして枝を模したマント掛けにマントを引っ掛ける。「そう見える?」「はい」ハナはふふっと笑ってから、ゆっくりとソファーに腰かけた。「疲れてはないけど…ちょっと考えが纏まらないっていうか、ね」(やっぱり、調子悪そう…)りずむがそう思った瞬間、「そうね、絶好調ってわけじゃないわね」とハナはにっこり微笑んだ。「また心を…」困ったような、恥ずかしいような表情を浮かべるりずむ。ハナは首を横に振って、りずむの発言を否定した。「ううん、心を読んだ訳じゃないわ。 …りずむの表情は読み取りやすいから」「女王様…」気恥ずかしさのあまり思わずそう呟いてしまうりずむ。「はーなっ。 でもね、…」ハナは手招きをした。「?」「ここに座って」指でちょんちょんと自分の隣を指し示すハナ。「? 失礼します」りずむはそこにそっと腰かける。「…」りずむの肩にもたれ掛かるハナ。「甘えられる人がいるって、安心できるなって」「いきなり、なんですか…」困ったような口調で、でも慈しみを込めて非難の声をあげるりずむ。ハナはそのままの体勢で尋ねた。「これって、『愛』?」「へ!? さ…さあ、どうでしょうね?」突然の言葉に驚きながらも、りずむは意地悪く突きはなす。ハナはそれを無視して呟いた。「…たぶん、愛だと思う。 おとこのひとを好きになるってのとは、ちょっと違うっぽいけどね。 たぶん、ママとか、そんな感じの」「んー…母性愛ですか」「うん」ハナは目を閉じた。「…でもこれも愛、だよね。やっぱり」「そうですね」そう言うと、りずむも目を閉じた。ほんのりと色付く空。しかし二人は気付かない。しばらくして、不意にハナは尋ねた。「…ということは、私りずむを憎めるの?」「えっ?」あまりな質問に耳を疑うりずむ。「さっきからずっと考えてたんだけど… 人を好きに…愛していたのが、憎しみに変わるのって、何が原因なのかなぁ…とか」熱っぽい気だるさを湛え、自分を見上げているハナの瞳。それを逸らすように静かに目を閉じ、少し考えてからりずむは答えた。「…人それぞれ…ではないでしょうか。 あまり答えになっていませんけど」「そっか…」再び目を瞑るハナ。「マジョドンって、昔人間を好きになって、裏切られて、人間嫌いになったのよね」「そう聞きました」「深すぎる愛が、深すぎる憎しみに変わった」「…ええ。トゥルビヨン様も」「うん」小さく肯いてから、声を少し落として尋ねるハナ。「そうすると、憎しみって、愛の裏返し…?」「うーん…そうですか…ねぇ?」「でも、愛が無くても、他のひとを憎めるのよね」「その場合は…自分を愛している…ってことじゃないでしょうか?」自信なさげに呟くりずむ。「…私にはよくわかりませんが」「私にもわからないよ…」「人間に聞いてみないと、ですね」「そうだ、元老院の中に人間入れてみる?」ハナは冗談めいた口調で提案した。「また無茶な」あはは、と苦笑した。「だよね」顔を見合わせて笑う二人。「マジョユキ様にでも尋ねて…」その時、部屋の扉がノックされた。「女王様」「…もう時間? みたいね」ハナはそう呟くとりずむから離れ、少し乱れた前髪を整えた。りずむもさっと立ち上がり、ドアの方に向かった。「はい、どうぞ」入ってきたのは秘書のテキとテキパキ。「そろそろ会議が再開されます」「お支度を」親のモタ・モタモタと違い、仕事が速いというか、少しせっかちな性格である。部屋のクロックフラワーを見ると、一つは完全に開ききり、もう一つも半分ぐらい開いていた。「まだ時間は少しあるけど…そうね」ハナはそう言うと机の上の額冠を着け立ち上がった。その背中に、りずむは手にしたマントをさっと掛けた。「ゆっくり、歩いていきましょう」「ええ」マントの止め金を衣に引っ掛けながら、ハナは肯いた。「…それじゃ、行ってくるわ」と、きゅっと紐を結んだ。「はっ」はさっと敬礼し、二人を見送るテキとテキパキ。*****会議室へ歩いていく二人。不意に、「少し、冷えるわね」ハナが呟いた。「え?」耳を疑うりずむ。「なんか寒くない?」「はい」心配そうにハナを見つめる。「そう…」「熱でも?」りずむは失礼します、とハナのヴェールをめくり、額にそっと手を当てた。「ないわよ、熱は」ハナは小声で言った。「ですね」りずむはそういうと、指を弾いて肩掛けを取りだした。「じゃあ…ハナ様、これを」そしてハナを包むように肩に掛けた。「どうですか?」ふわっと漂う、少し饐えたような甘い香り。仄かにジンジャーとカモミールの香りも混じっている。「…りずむの匂いだ」ハナはポツリと呟いた。「あ、すみません。長い間洗ってなかったから… 臭います?」ハナは首を横に振る。「…暖かいから、いい。 ありがとう」「そうですか」ちょっと恥ずかしげな笑みを浮かべるりずむ。肩掛けの両端をギュッと握り、ハナは呟いた。「…霜がやってきても、氷が堅く張っちゃっても大丈夫。 りずむが側にいてくれるから」「はい?」「…何にもない。じゃ、後でね」ハナはそう言うと会議室に入っていった。「霜と氷…?」(何だろう…)りずむはそんなことを考えながら、資料室へ消えていった。
Dec 16, 2006
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客 :「店員さん、ちょっと」ふぁみ:「はぁい」客 :「あそこの…ふぁみ:「ああ、店長さんっすか?」客 :「…いくつなの?」ふぁみ:「えっと…たしか86歳客 :「!?」みなみ:「だあああああああ!!! 28歳です28歳です」ふぁみ:「? … !! あああそうそうそう。28歳です」客 :「ふーん…」
Dec 10, 2006
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www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000LRZMVOトップはアンアン。五人全員出ることを祈ります。
Dec 10, 2006
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日に向かい咲く花霧のなかより生まれ出で 薫る風 ほのかに 美しく翔け舞う白鷺霧のなかより生まれ出で満ちる月 なぎさに*****ふぁみ:「なにこれ?」みなみ:「知らんよ、あたしに聞かんで」
Dec 10, 2006
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http://plaza.rakuten.co.jp/mahodobackyard/diary/200603290000/で検討したのんちゃんの本棚ですが、この場面の資料を入手しました。まず以前の検討結果。上段左から魔女の歴史リカの占い呪文のとなえ方魔女の世界魔女の国魔女になりたい私は魔女魔女の夢東京魔女伝説魔女の呪文魔女占い魔女グッズ魔女法律魔女ホーキマキハタヤマリカ魔女入門(西洋の?)魔女(欠)魔(不明)下段左から魔女と雪女(?)私は魔女を見た魔女は奥様エコエコアザラシ魔女大好(き?)良い魔法(?)使い(欠魔女っ子ルル(?)楽しい魔女(欠)魔女のエチケット(西洋の?)(欠)魔女大戦争(不明)魔女裁判魔女用語魔女グッズ東洋の魔女次に資料によって確認できたものです。(数字は資料に付いている通し番号らしきもの)2-11による(()内は背景による)上段左から魔女の歴史(魔女の歴史)リカの占い(リカの占い)呪文のとなえ方(判読不能)魔女の世界(同上)魔女の国(同上)魔女はサンバが好き(同上)魔女マンボ(同上)魔女グッズ(同上)奥様は魔法使い(同上、この右にあと六冊ある)魔女入門(魔女入門)西洋の魔女(無し、というか隠れているのか)下段左から?(魔女と)私も(私は魔女を見)魔(無し)魔女(魔女は奥)エコエ(エコエコ)魔(魔女大好き)魔法(魔女っ子ルル)魔法(楽しい魔女)魔女裁(魔女のエチケット)魔女用(西洋の魔女)魔女グ(魔女大戦争東洋の(魔女マンボ) (魔女用2-21による上段左から魔女の歴史リカの占い呪文のとなえ方魔女の世界魔女の国魔女になりたい魔女の夢魔女はサンバが好き私は魔女東京魔女伝説ボサノバ魔女魔女マンボ魔女占い西洋の魔女下段左から魔女と雪女私は魔女を見た魔女は奥様魔女大好きエコエコアザラシ 2-37の背景には「(表記無し)マザラン」とある良い魔女悪い魔女っ子メグ(以下表記無し)魔法使いサリ(以下表記無し)魔法のマコちゃん魔法大戦争魔女裁判魔女用語魔女グッズ東洋の魔女こんな感じでした。
Dec 8, 2006
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息づいてる花の命この丘に芽吹いてる草の命風吹く丘に揺るぎなくあなたはそこに居続ける時の軛に耐えながらできる限り居続ける辛いよね でもあなたを愛してくれるものがあるここにいるだから私でよければずっとずっと 傍にいるからあなたが眠る その時まで子守歌を 歌ってあげる母からもらった 子守歌風吹く丘で 小さく嘯くあなたのもとへ届くようにこころの声で 囁くように風の色が変わった今も花や草たち息づき芽吹く変わらず ずっとだから私も歌い続ける
Dec 7, 2006
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夕焼け色に染まる部屋で懐かしい 写真一枚眺めてるずっと前 もらったビー玉もてあそび 語り掛けるの あなたの笑顔に青いビー玉 指から落ちたスローモーション 見てるみたいにゆっくりと 落ちてくビー玉固い音 こつんと響いた あたしの胸にまるでノックをするみたい心の扉を 一度だけどうにもできない 激しい流れが一気に込みあげ流れだす瞼閉じても遅かった青いビー玉 転がる音が胸掻きむしる 激しく強くキラキラと 零れる涙音もなく 消えない跡を刻んでいくのあしもとに転がるビー玉 目をやると暗い光を 放ってる夕暮れの終わり夜の始まり窓から差し込むお月さま懐かしい あなたの笑顔に見えてくるずっと前 話してくれたあの話 繰り返してみる あなたの声で いつもそこにいるんだよね それは分かっているけれど泣いた後に見る星たちは滲んで いつもよりきれい月は今 薄い雲に隠れてるけど大丈夫 もいちど顔を出すまでは多分私 起きているから
Dec 5, 2006
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今日の朝、夢を見た。女の人が空を飛んでいる夢。わたしの身近にいる人に似ていた。深い青色の瞳、水色の髪。でもその人は、りずむさんみたいな感じの、紺色の魔女服を着て…そしてほうきで飛んでいた。だから、たぶん…というか、ぜったい魔女。身近な人…みなみちゃんではないと思う。彼女が、にっこり微笑んで、ほうきに乗ってこちらを見ながら、白い雲の上を飛んでいる夢。ほんわか暖かい、どこかすごく落ち着く夢。皓々と輝く世界を、ゆったりと…どこへ飛んでいくのか、終わりはあるのかわからないけど、そんなことはどうでもよくなってしまうくらい、ほんわかした、心がぽかぽか温かくなる、そんな夢。でも、夢の最後をよく覚えていない。夢の中でも眠ってしまった?あまりに気持ちよくて…どういうことだろう…わたしにはわからない。ただ言えることは、目覚めたとき、なんだかとても寂しかった。それだけは、6時間ぐらいたった今でも、しっかりと覚えている。そしてその夢にでてきた魔女そっくりの友達は、いつものように、遠くを見ている。何が見えるのだろう…?
Dec 1, 2006
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ふぁみ:「っていう夢を見ました」りずむ:「へぇ」ふぁみ:「え? …それだけ?」
Nov 29, 2006
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『おねがいマイメロディ~くるくるシャッフル~ キャラクターソングアルバム Girls』の4曲目、ピアノちゃんの歌「Upper」の歌詞(?)聴きとってみました。*****(おめぇ~おめぇ~)おめぇおめぇおめぃぇ~~ぁ…ぽきゅぽきゅぴゅぅぅお…ぽきぇえぇぇおぅぽおぅめぇ~~~~…おめぽぉきゅ~ぺ~きゅぅ~ぽきぃゃぅ~~~ぽきゅぽきゅpきゅpきゅきゅぃゃ~ぅ(おぉぉぅめぇ~~ぅ あwmわmpmpmpっmpmppっっpp…pp…pk…pp…pky…pk…pfppky…めぇ~~ あーぁぁぅぅぉ)※ぱーぷーぺーおー(ぇあfmkfkmkfkあぅkfktあぅkあぅkあnあうfけけやけゃーffきゃーぷっぺっぱーpぷっぺっぱーぁぅあmぇぇぅぅぅうあーぅ あぅあめ~~ぅ めえっめえっめぇえぁぁ~~ぁ)※めっぴゃぁ まっぴゃぁ あっぷぅきゃ~ぅっぷきゃ~あっぷっぴっぷきゃーきゅーきゃーきゅー●おみぇ~おめ~あっおっあっおっあっおっあっおっいぇええ~いぃぃぃ~…おぅっおぅっおぅっおぅっ!ぽっぴっぽっぴっぽっぴっぽっぴっぱっきゅぱっきゅぺっきゅめぇ~~~~…おっぷっめゃぁぃおめぇぅめぇーっおーぅぽーーぅめkめkyめ~~っ…ぽきゅ~んぽきゅぅん ぽきゅぽきゅぽきゅ~ぅぁあぁあぃおぉぅおぉぅめぇ~…あめぇえ~あっあっあぅあぃぃぅぴゅ~ぱにゃ~?めーーーっ…ええあいうぅ おあゅぅぅあ おめおめおめぇええ~(おぉぅぱけやぁ)※は特に表記困難な箇所です。()内は音がくぐもっている箇所です。●のところはエコーがかかっており、しかも被っているのでメロディ部なのかエコーなのか判別できません。
Nov 28, 2006
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今朝方、夢を見た。女の人が空を飛んでいる夢。あたしの身近にいる人に似ていた。深い灰色の瞳、銀色の髪。でもその人は変な服を着て、これまた変な輪っかみたいなものを体に着けて…明らかに普通の人間ではない。そして水晶玉を持っていたから、たぶん魔女。だから身近な人…みゅうではないと思う。そんな魔女?が、とても楽しそうに、虹色の光を四方に振りまきながら、青空をずっと飛び続ける夢。曇り一つない、底抜けに明るい夢。虹色の光を振りまきながら…曇り一つない、翳り一つない、楽しい夢。ただ、その人は最後には融けて消えてしまった。笑顔のまま、自然に、いつの間にか。どういうことだろう?あたしにはわからない。ただ言えることは、目が覚めたとき、なんだかとても悲しかった。それだけは、起床して数時間を経た今も、しっかりと覚えている。そしてその夢に出てきた魔女そっくりの友人は、今日も窓際で居眠りしている。…あたしも、眠い。
Nov 26, 2006
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帰り道。クレアとみなみは一言も交わさずに、川沿いの道を歩いています。やがて、路地に入り、そして見慣れた通学路を横切り…二人とも黙ったまま、ゆっくりと。でもMAHO堂での沈黙のような不快なものではなく、心地の良い沈黙。温かい静けさ。そんな時、突然みなみは口を開きました。「…クレアちゃんは、魔女」「ん?」驚いたように目を少し見ひらくクレア。数呼吸おいて、また呟きます。「…あたしは、人間」「…」今度は少し目を伏せます。そんなクレアを、みなみは横目で見ました。「前にも言ったよね。 魔女と人間とはぜんぜん違うって、ふぁみが」「うん」小さく肯くクレア。みなみは急に足を止めました。「…あたしもそう思う。でもね」目を閉じ、すーっと息を吸いました。「今、あたしらは一緒にいる。 そのことだけでも、奇跡に近い」「んー…そだね」クレアは少し考えてから、肯きます。「で、こうやって手つないで、歩いてる」「うん」今度はすぐに。「これも、奇跡だよ」みなみは少し潤んだ目を細めます。「…うん」そして今度は半呼吸置いて、小さく肯きました。「で…ケンカして、たぶん… 仲直りできた」一言ずつ、ゆっくり区切って、噛みしめるように呟くみなみ。「みぃちゃんとは、できた…かな」みなみから目を逸らし、小さな声で少し恥ずかしそうに言いました。「うん。 これって、なんにせよ… 心が触れ合って、こすれあって…ちょっと痛かったってことでしょ?」「だね」にこっと微笑むクレア。「ここに、魔女と人間との違いなんて…なんか関係してる?」「してない」クレアはゆっくりと首を横に振りました。「でしょ?…そういうこと」クレアはみなみの顔をじっと見ました。そして「よくわかんないけど、わかったような」みなみはクレアの言葉を聞くと、自分を見つめる瞳に視線を合わせ、少し目を見開きました。そして、いつもよくする、苦笑の表情。「自分でも、何言ってるのかよくわかんないよ、 あはは」「うふふ」その表情に安心したクレアも笑いました。「あ~あ…」二人して見上げる夕焼け空。あれだけ分厚かった雨雲もだいぶ薄くなってきています。浅い夕暮れ。「…でもさ、そのワガママは直さんといかんよ」普段通りのあんまり抑揚を付けない口調で、ぼそっと呟くように短い言葉で、でも心を込めて諭すみなみ。「…」クレアは声に出さず肯きました。・・・おおよそ5分後。「そろそろMAHO堂だね」MAHO堂の庭に生えている大きな木が見えてきました。「うん」みなみは、そう返事するクレアの掌がじっとり濡れてきているのを感じました。「クレアちゃん、緊張してる?」「え?なんで!?」心を読まれたかと思い、みなみの顔を見上げるクレア。「…大丈夫」みなみはそう言って微笑むと、その手にきゅっと力を込めました。「みんな、いい奴だから。謝ったら許してくれるって」(ふーん…)近くの家の屋根から二人を見下ろしているチュチュ。(無事ご帰還ね。りずむに報せなきゃ)そう呟くと、すぅーっとMAHO堂へ戻っていきました。*****「ただいま」「お帰り、チュチュ。偵察お疲れさま」「偵察って。 あ、クレアちゃんとみなみちゃん、もうそこまで来てるからー」「そう。みゅうちゃんたちは?」「そっちは知らないけど、そんな遠くには行ってないはずよ。 …ん?」チュチュはそういうと鼻をひくひくとさせました。「…あ、夕食できてるんだ。ってかまた生姜使った?」「ええ、よくわかったわね」「好きねぇ、生姜」呆れ顔で呟くチュチュ。「体あったまるからね。 …みんな雨で濡れたかも知れないでしょ?」そう言ってくすっと微笑みました。「あ、ということは」「今日の夕食は三人分、プラス四人分」そう言いながらスープの味見をするりずむ。「あぁ」チュチュも一緒に味見をします。「…うん、おいしい」「よかった」「でもさ」チュチュは乱れた髪を手櫛で整えながら言いました。「…もうだいぶ前に雨止んでるよ? ちょうどクレアちゃんが出てくくらいの時に」「えっ!?」真顔で驚くりずむ。「窓の外ぐらい見なよ」チュチュがため息まじりに言ったちょうどその時。からんころん…「あ、誰か帰ってきたみたい」りずむがぱたぱたと出ていって見ると、MAHO堂の玄関にはみゅうとふぁみ、そしてこえだが立っていました。「見つかりませんでした…」「ほんとにマジカルステージ効果あったの?」「心配ですわ」りずむはくすっと笑いました。「大丈夫よ。 …ほら、後」「え?」ふぁみが後を向くと…「ただいま」「…ただいま」みなみと、みなみの後に隠れているクレア。「おねーちゃん」「みなみさん」ふぁみとこえだは、みなみの所に駆け寄りました。「見つけられたんだね、クレアちゃん」みなみはふぁみの頭にぽん、と手を置きました。「うん、ありがとね」「え?」どういうことか分からず、きょとんとしてみなみの顔を見ました。「何か魔法使ったんでしょ?」苦笑いを浮かべるふぁみ。「あー…ばれてたの?」「うん。モロ」「おねーちゃんは何でもお見通しだぁ…」ふぁみはそう言いながら、頭に置かれたみなみの手にそっと触れました。「…」クレアはきまり悪そうな顔で、みなみの周りに集まっている三人に目をやりました。「ん?」そんなクレアと目が合ったみゅう。にっこり微笑み、「クレアちゃんも…おかえりなさい」そう言いながらクレアの頭を撫でました。「う…」クレアの目からは涙がぽろぽろこぼれ落ちます。「みゅうちゃん、ふぁーちゃん…けーちゃん…ごめんね」そう言うのが精一杯でした。「わたしもごめんね、クレアちゃん」「あー…もういいよ。あたしらのせいでもあるんだからさ。ごめんね」バツが悪そうな表情のふぁみ。「クレアさん、ごめんなさい」「ひとりぼっち、さびしいもんね」そうみなみが語り掛けると、クレアは声を上げて泣きはじめました。そんなクレアをじっと見つめていたりずむ。不意に、「…クレアちゃん、少し雨に濡れたみたいね。着替えてらっしゃい」りずむはチュチュに目くばせします。それに肯いたチュチュは、「いこっ」とクレアを引っぱっていきました。「…じゃあ着替えてきます」「はい」感情を込めずに、短く返事をするりずむ。りずむの脇を通りぬけるとき、「りずむさん、ごめんなさい」クレアは見上げてそう言うと、ぺこりと頭を下げました。「うん、あとでゆ~っくり、教育的指導をするからお楽しみに」にこ~っと笑ってクレアの頭を裏拳で、軽くこつんと叩きました。「さ、あなたたちも」そして四人をMAHO堂の中へ迎えいれました。
Nov 26, 2006
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「みなみちゃん…みんなもお疲れさま。 でね、今日の夕食はご馳走したいんだけど… …っていうかもう作っちゃったんだけど」「え?」食堂部屋の方に目を向けるこえだ。「やったっ!走り過ぎておなかへった」ふぁみはお腹を押さえながら喜びます。「あたしも…なんか久しぶりにおなか空いたって感じ」と苦笑するみなみ。「んふ」そのとなりでみなみに微笑みかけるみゅう。みなみは、肯いて見せました。「んじゃおかーさんに電話します」そういうとふぁみはポケットから球状の携帯式端末を取りだし、通信を始めました。「んー…あ、おかーさん?ふぁみだよ。あのね…」「わたくしもママに知らせますわ」「わたしも」それに続いてこえだとみゅうも散らばって通信を始めました。「あ、りずむさん。おかーさんがちょっと話したいって」ふぁみはその端末をりずむに見せました。そこに映っているのは、淡い紫色の髪をした、30台半ばの女性。りずむは端末に向かい会釈しました。「はい、店主の巻機山でございます…」そんなりずむをじっと見つめているみなみ。「魔女…」それからふぁみを見ました。「そして人間」ぽつり、そう呟きました。(あたしは…)「はい、それではまた…」そういってりずむはぺこりとお辞儀しました。「おかーさん何だって?」「オッケーだって。 …近々みんなの親御さんにもご挨拶しなくちゃいけないわね。あら、みなみちゃんは?」「あたしは…いいや、どうせ今誰もいないし」「そうなの?ならいいけど…」胸の前で腕を組みながらみなみを見ました。みなみはりずむのその言葉に、笑顔だけで答えました。「りずむさーん」こんどはみゅうが、そしてこえだが、りずむを呼びました。「ん?」そちらに走っていくりずむ。(なんか……ちょっと寒いな…)・・・一人ぼーっと中庭を眺めているみなみ。「おねーちゃん、どうしたの?」ふぁみが話し掛けてきました。「…ん?なんでもないよ。ちょっと走ったから疲れたのかも」えへへと笑いました。「そう。で、クレアちゃんとはお話しできた?」少し声を低くして尋ねます。「うん。それはね。 …やっぱりお互いのこと知らないとなぁ」「だねぇ」一瞬間をおいてから、うんうんと深々肯くふぁみ。その時、りずむは手をぽんと鳴らしました。「はい、んじゃみんな夕食オッケーね。 じゃ、食事の用意してくるから、ちょっと待っててね」そう言って食堂部屋に向かおうとするりずむ。「りずむさん」その袖をみなみは掴みました。そして…「ん?」目を合わせずに小声で呟くみなみ。「ありがとうございました」「どうしたの?」「…なんとなく」俯いたままのみなみ。「そう。 …よくわからないけど、役に立てたのなら嬉しいわ」そういって肩にぽん、と手を置きました。「…手伝います」「うん」にこっと微笑んで肯くりずむ。「あたしも手伝う」「わたくしも」「わたしも」ほかの三人も相次いで声を上げます。その時、猛ダッシュで私服姿のクレアが入ってきました。「クレアも…!!手伝う!」ふぁみは「うん」と肯きました。「いっしょに、ね?」みゅうも微笑みました。「うんっ!」こえだは心底嬉しそうにしているクレアに、目をやりました。(…)*****15分後、食堂部屋。「いただきます」五人のバラバラな、でも明るい声で晩餐が始まりました。お喋りをしている五人とりずむ、それにチュチュ。メニューは肉じゃがと鮎の塩焼き、ポテトサラダと、生姜多目の魔女スープ、他諸々。魔女スープを口にするみなみ。(あ)そんな時、みなみはポツリと呟きました。「…生姜」「ん?」そんなみなみを見るりずむ。「おかーさんが、あたしが風邪引いたときによく作ってくれた、 ハチミツ生姜汁思い出した」「生姜汁って」ふぁみがその「生姜汁」を飲みながら呟きました。「ああ、人間界でも生姜をお薬みたいに使うのね」「んー…そうですね」みなみはそう言いながら、スープをまた一口、口に含みました。「ちょっと違うかもだけど」(あ、そうだ…みなみちゃんって…)「そういえば、さっきお家に誰もいないって言ってたわよね」りずむはパンをちぎりながら尋ねました。「…母は、今海外です。いつ帰ってくるかはわかりません」「何なさっているの?」そして小さく千切ったパンを口に運びました。「画廊です。アフリカの絵とかを扱う…」「へぇ」口許を手で隠しながら相槌をうつりずむ。こくんとパンを飲み下してから、再び尋ねます。「…お父さんは?」「陶芸家です」「お父さんも家に居られないの?」もう一度パンを手に取りました。「いますけど、いないのと同じです」何の躊躇いもなくそう言い放つみなみ。(?)手をとめ、みなみの顔を見つめました。「どういうこと?」「お仕事に集中していると、アトリエにこもりっきりになっちゃって」「そう」ゆっくりと、パンをちぎる動きを再開します。「おとうさんかぁ」そんな二人をじっと見ていたクレアが呟きました。「?」六人の視線がクレアに集まります。「くれあ、魔女だからおとうさんいないの」「あ」みなみがクレアを、少し申し訳なさそうに見つめました。その視線に気付いたクレアは慌てて、「あ、あー、でも寂しいとかそんなのじゃなくって。 ただどんな感じなのかなーって」えへへと笑うクレア。みなみはその笑い声にかぶせるように、俯いて呟きます。「あたし、お父さんは好きじゃない」「え?」えへへという口の形のまま、クレアはみなみを見ました。「あたしと似てるから、なんとなく。 だから好きじゃないの」「…よくわかんない」理解不能という表情のクレア。そんなクレアの顔を見たみなみは、冗談めいた口調で、「あー…自分で言っててあたし自身よくわかってないから」と、自嘲的に微笑みました。そして魔女スープを一匙。その瞬間、クレアの手の温もりを思い出しました。(温かさも、冷たさも感じたこと…ない)「そう… …おとうさんとは、『こころが擦れあわない』の…」と、小さな声で呟きました。「…」そんなみなみの唇の動きを黙って見つめるクレア。ふぁみは肉じゃがを小皿に取り分けながら呟きました。「そっかー…でも、あたしはお父さん好きだよ。優しいし、お花のこととっても知ってるし」「ふぁみちゃん家ってお花やさんよね」とみゅうが尋ねました。「うん。そうだよ」と、取り分けた肉じゃがを頬ばります。「へえ、そうなの…」そんなふぁみの顔を見つめながらりずむは呟きました。(そういえばどれみちゃんもお花好きだったなぁ…)そしてもう一度ふぁみの顔を見つめます。(血、ひいてるんだな…やっぱり)「? りずむさん?」自分の顔をじっと見つめられて怪訝そうなふぁみ。「あ、なんでもないわ。 あまりに肉じゃが美味しそうに食べてたから」「やっだもうりずむさんったらぁ、あはは」少し恥ずかしそうに笑う顔。それもまたどれみちゃんに似ている。(血、か…)不意にふぁみが尋ねます。「そういえば、りずむさんの水晶玉ってどんなのですか?」「え?急ね。 …見る?」「はい、っていうかどこにしまってるんですか?」「ここよ」りずむは胸を指差しました。「おっぱい?」みなみはこともなげに尋ねます。「おいこら」ふぁみは冗談めかした口調でみなみをたしなめました。「…んなわけないでしょう」りずむは右手を前に差しだし、ぱちんと指を弾きました。「強いて言うなら、心の中、かな?」すると、右手の上に、薄いミントグリーンの水晶玉が、ふわりと浮かび上がりました。「結構大きい…」「これじゃ首から下げられないよね。 っていうか胸に挟…むこともできないか」「さっきから何を言ってるんだおねえちゃんは…」ふぁみは半ば諦め顔で呟きました。「…ええ、そうねぇ」水晶玉を胸の上に乗せ、挟むふりをして見せるりずむ。「首から下げるには大きいわね」「…りずむさんも素で返したらダメです」ふぁみはまた、もうやる気ないという感じで呟きました。「あれ?でも…」みゅうが何かに気付きました。表面に無数の傷。その中の一つは大きく、まだはっきりと残っています。「傷だらけですわね…」こえだがちょっと眉をひそめました。じっとその傷を眺めるりずむ。そして「あはは、いろいろあったから」と、感情のこもらない笑い声をあげました。「りずむさん…」クレアはりずむの顔を見ました。りずむは肯定するように、少し目を伏せ、そしてクレアの目をまた見据え、微笑みました。(禁断魔法…)りずむは、ハナが三年前、禁断魔法でどれみを蘇らそうとした時のことを思い出しました。(そう、あの時に…)そしてそっと胸に手をやりました。今も残る、水晶玉の傷。ハナがお別れをした後、どれみの家族達にもお別れの時間をとらせてあげようと、人間界全体の時間をほんの少しだけ巻きもどした時に使った魔法で、できた傷。「私には、何をしてでも守らないといけないものがあるからね…」ぼそっと呟きます。「へぇ、かっこいいなぁ」みなみは感嘆の声をあげました。「じゃあ、それを守るためなら…」「ええ。いざとなったら…ね」そういいながら左手の中指ででパチン、と水晶玉を弾きました。それに応じてほわっと光が放たれます。(だからりずむさんの水晶玉ボロボロなんだ…)ふぁみはりずむの表情をしげしげと見つめます。「なんかかっこいいなぁ…」「え?」りずむが少し驚いたようにふぁみを見ました。「同感ですわ」「そんな…」りずむは恥ずかしそうに頬を掻きました。そしてずれてきていたメガネを直します。「で、りずむさんの守りたいものって?」みなみは唐突に尋ねました。「ん? …それはね、秘密」「魔女界とか?」「それもあるわね。でもそれ以上はなし。ないしょ」と、りずむは時計に目をやりました。6時52分。「あ、いけない。私今日、8時までに魔女界に行かないといけないのよ。だからちょっと準備しなきゃなんだけど…」「あ、それならくれあが夕食の片づけしときますー」「あたしも手伝うから大丈夫よ」と、たくわんをポリポリ言わせるチュチュ。「わたしたちも」とみゅうも手を挙げました。「そう。んじゃお願いできるかな」りずむはまたにこ~っと笑ってクレアに言いました。「あ、例のアレは帰ってきてからね」「は…はい」本気で緊張するクレアに笑う他の四人。そんな四人に、「それじゃみんな、明日もよろしくね」と、りずむは手を振ると宿舎部の方へ走っていきました。「はぁい、りずむさんもお気をつけて…」たったったっという足音が遠ざかっていきます。そして扉が閉まる音…「…行っちゃったね」「うん」「あたしらはゆっくり食事しましょー」そう言いながらも物凄い勢いで肉じゃがを食べ始めるチュチュ。と、その途端、宿舎部の方から「きゃあ」という声と、どすんという音。「…転んだね」とふぁみ。「大丈夫かしら?」心配そうなみゅう。「大丈夫よ、あれぐらいの音ならいつものことだし」とチュチュ。クレアも肯いています。
Nov 26, 2006
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それを聞いたみなみは、ちらりとふぁみを見てから呟きました。「…そういえばさぁ、ふぁみも小さい頃からドジだったよなぁ」「るっさいなおねーちゃん」いつも通りの軽いケンカ。クレアはじっと、でも楽しそうにそれを見つめています。「…あれ?」不意に、クレアが疑問の声をあげました。「ん?」クレアの問いに反応するふぁみ。「みぃちゃんとふぁーちゃんって、小さいころからのお友達なの?」「?」みなみは、クレアの顔を、じーっとしばらく不思議そうに見つめたあと、疑問の表情で口を開きました。「え?言ってなかったっけ?あたしとふぁみ、遠い親戚でさ、小さい頃から仲良かったのよ」ふぁみはその言葉に続けて言いました。「うん。おばーちゃん同士がきょうだいなんだよ」「ふーん…」そう言ってこくんとお茶を一口飲みくだそうとした…次の瞬間、クレアはふぁみの顔に向かってお茶をふきかけました。「ぶほっ…ええええ!?」「うわわわクレアちゃん!!! ってどわっ!!」ごん!ふぁみは泡を食って後へのけ反り、椅子からひっくり返って床に落ち、頭をぶつけてしまいました。「…!!!」「うっそ!?全く似てないよ!?」立ち上がるクレア。「いたたた…っさいなぁ… クレアちゃんいきなり何なのさぁ…」頭をおさえて涙目でクレアを非難するふぁみ。「あ…あああ? ごめんふぁみちゃん。 …クレアのせいで、ほんとごめんなさい…」必死に謝るクレア。そして抱きおこし、ハンカチでふぁみの頬を拭います。「ったくぅ…まあいいや。 っていうかそんなに驚くことないじゃんさぁ…」「だって、ぜんぜん似てないんだもん」みなみは生姜風味の甘い魔女スープを飲みながら、呟きます。「あー、だって…1…2……6親等だもん」ふぁみもそれに肯きます。「そうそう六頭身六頭身」そういって倒れた椅子を起こし、座りなおすふぁみ。クレアも自分の席に戻りました。「…」それを見計らって、チュチュはみなみとふぁみに尋ねました。「そういえばみなみちゃんのお祖母様、ふぁみちゃんのお祖母様とご姉妹だって聞いたけど」「はい。あたしのおばーちゃんがお姉さん、おねーちゃんのおばーちゃんが妹です」そう言ってみなみを見るふぁみ。「あたしの方はあたしが生まれるすぐ前に亡くなっちゃったから、全然顔も見たことないです。 写真でしか…」スープの香りを鼻に通して楽しむみなみ。ふぁみは少し悲しそうに呟きました。「あたしのおばーちゃん…どれみおばーちゃんは、 …三年前に亡くなって」「そっかぁ…悲しかった?」クレアは、ふぁみの顔をじっと見つめました。「うん。今でもたまに思い出したりする。あたし、おばーちゃん大好きだったから。いろんなこと教えてもらったし、魔女のこととかもね」「へぇ」クレアは少しだけ表情を明るくして相槌を打ちました。「魔法使い界ってのもあるって。でも小さいんだってー」クレアはニコッと笑い肯きます。「あるよー、小さいけど。何で知ってるんだろう?っていうかふぁみちゃんのおばーちゃんすごいねぇ」クレアは目をまるくしました。「まるで魔女さんみたいね」みゅうも感心したように呟きました。「あはは、ないない、それはない」みなみはそう言って笑いました。「なんっっっでそんなに否定するわけさ?」ふぁみはムキになってつっかかります。「だってさ、あんた爆発してばっかだもん。 もしほんとに魔女の血ひいてたらもっと魔法上手っしょ?」そう言ってみなみは残ったスープを飲み干しました。「う、反論できないのが辛い」がっくり項垂れるふぁみをほったらかしにして、こえだがクレアに尋ねます。「クレアさんは魔法使い界行ったことあるんですの?」「ない。行っちゃダメなの」ぷるぷると首を横に振ります。「え?なんで?」「今、魔法使い界はなんかややこしいことになってるからって」「ふーん」あんまり興味がなさそうなこえだ。「よくは知らないんだけどね」クレアはそう付けたしました。「チュチュさん何か知ってます?」みゅうがチュチュに尋ねます。「ん? …んー…なんか戦争やってるらしいけど、詳しくは知らないわ」「戦争…」みなみが呟きます。「…生々しいなぁ」「生々しいって、現実だし」そう言ってチュチュはデザートのリンゴを頬ばりました。「人間も魔法使いも同じだねぇ」ふぁみはそう言って窓の外を眺めました。「そうですわね。最近また世界で戦争とか増えてますし」ふぁみの視線の先に目をやるこえだ。「魔女界はどうなんですか?」みなみはチュチュに尋ねます。「え?大丈夫…よ? 昔はいろいろあったけどね」言葉を選びながらそう答えました。「人間も、魔女も、魔法使いも…一緒なのかな」みなみはそう呟きながら時計を見ました。午後八時前。「あ、もうこんな時間だ」「そうですわね」「そろそろお暇しなければ」「かたづけよっか、そろそろ」五人とチュチュは、そう言いつつ食卓を片づけ始めました。*****片づけ終わって、お別れの時間。「じゃあね、みんな。 また明日~っ」MAHO堂の玄関で手を振るクレア。「クレアちゃん、おやすみね」それに対して軽く手を振るみなみ。そしてみなみ・ふぁみ・みゅう・こえだはMAHO堂を後にしました。と間もなく…「それじゃ、みなさんおやすみなさい」こえだはお迎えの車に乗って帰っていきました。それを見送る残り三人。「こえだちゃん家ってほんとにお金持ちだったんだ」ふぁみは頭の後で手を組んで呟きます。「そういやあたしらも送ってってくれればよかったのにねぇ」「まあいいじゃん、ゆっくり歩いて帰ろうよ」同じ格好でみなみも呟きました。しばらく無言で歩く三人。三叉路。一本はMAHO堂へ、もう一本はみゅうの家、そしてもう一本はふぁみの家とみなみの家の方へ。そこに差しかかったとき、「あ、わたしこっちだから」みゅうは自宅方向を指差します。「それじゃおやすみなさい」そう言って手を振るみゅう。「おやすみ、みゅう」みなみも手を振り返します。「おやすみー、また明日ねっ」ふぁみも同様に。みなみとふぁみは二人でしばらく歩いていきます。不意にふぁみが呟きました。「今日はいろんなことあったよねぇ」みなみはふぁみの顔をちらっと見て、それから空を見上げました。星一つない空。「そうだね…疲れた。 でも、楽しかった」軽い笑い声。「楽しかった?」みなみの顔を見るふぁみ。「うん」「ケンカしたのが?」はぁ?という感じでみなみの横顔を見ました。「うん」さっきと同じ調子でうなづくみなみ。「うん、って…」そう言いかけると、みなみは続けました。「ケンカできるって、幸せだなって」ふぁみも空を見上げます。「…おねえちゃんの言うこと、たまに分からなく… ま、いつものことか」そんなふぁみの顔を見ながら、みなみは演劇じみた口調で言いました。「おほめいただき光栄です」「ほめてないよ」即答するふぁみ。「でもさ」みなみはふぁみの手を握りました。「な…何? いきなり何するのさ!?」「温かい」そして頬にその手を当てました。「ちょっと…?」「人間は、温かい。 魔女も、温かかった」クレアの汗ばんだ手の感触を思い出します。「おねえちゃん…?」怪訝そうに見るふぁみ。「ふぁみ」「ん?」みなみは言葉を探しつつ、呟きます。「なんかさぁ… … …まあいいや、ほら、着いたよ」言葉が見つかる前に、ふぁみの家に着いてしまいました。「ん?なぁにさ? 気になるじゃん」店の入口の所で、ふぁみはみなみに詰め寄ります。そんなふぁみに、みなみは寂しそうに、でも嬉しそうに言いました。「ふぁみが気にしている限り、 あたしはふぁみの中にいるんだよね」「? 何言ってるの?」くすっと笑って、握っていた手を離します。「いや、いい。 …おやすみ、ふぁみ」「??? まあいいや。 おやすみ、おねーちゃん。また明日ね」そういって店の裏口にある、自宅玄関の方へ歩いていきました。「ん」そう肯くと、みなみはゆっくりとふぁみの家から離れていきました。。後の方では、ふぁみの「ただいまー」という声が聞こえます。(やっぱり、なんか寒い…)ぶるっと震えます。(風邪ひいたかなぁ…)「仕方ない…今日は早く寝るかぁ」みなみはそう呟くと、自宅へと続く緩やかな降り坂を一人駆けていきました。
Nov 26, 2006
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またまたマジョリズムの部屋。みなみ:「…なんかあたしらりずむさんの部屋に入りびたってるよなぁ」ふぁみ:「だね。 でもいろんなものがあって楽しいよ」みなみ:「そういう問題じゃないと思うけど」りずむ:「あ、何探してるの?」ふぁみ:「りずむさん、失礼してます」みなみ:「キルトの模様のなんかないかなーって」りずむ:「キルト…それなら… … あ、これだ。 重いから気を付けて…」ふぁみ:「うわぁすごいキルトの本だぁ…って でかっ! そして重っ!!」みなみ:「しかし魔法文字だね」ふぁみ:「クレアちゃんに読んでもらおう。 …あれ?」みなみ:「何か紙が落ちてきた」ふぁみ:「なんだこれ」みなみ:「絵?また女の人だ」りずむ:「ん? …あ」ふぁみ:「この人も恋人なんですかぁ?」りずむ:「違うわよ、っていうか『も』って何よ!?」ふぁみ:「じゃあ誰?」りずむ:「んー…これ私が…学校の美術の授業で描いたのだと思う… ほら、日付」ふぁみ:「んー?2006…23…11!?」みなみ:「2006年23月11日か。 いつだよ?」ふぁみ:「知らないよ」みなみ:「どちらにしても今から70年前、とすればりずむさんが 16歳の時のですよね?」りずむ:「…そうだけど、なんかその言い方ひっかかるわね」ふぁみ:「誰なんですか?」りずむ:「えっとね…確か… …この時モデルやってたのは… んー…」みなみ:「忘れた?」りずむ:「えへへ」ふぁみ:「こういう時は裏に…ほらメモ」みなみ:「あ、ほんとだ」りずむ:「えっと…あ、そうそう。ルナさんルナさん。 美術の講師だったルナさんだわ」ふぁみ:「マジョルナさん?」りずむ:「ええ。 今何してらっしゃるのかしら… 憧れだったんだけどなぁ…」ふぁみ:「…ふーん…」みなみ:(ねえふぁみ)ふぁみ:「ん?」みなみ:「しっ」 (やっぱりりずむさんってさぁ…)りずむ:「何コソコソ話してるのよ」
Nov 23, 2006
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クレアが人間界に来て程無い、ある夜。(おつきさまだ)クレアは窓から皓々と差し込む月の光を見ていました。魔女界の月とは似ているものの、やはりどこか違う、人間界で見る笑う月。(ここは人間界…)あらためて、そのことを実感するクレア。こっちに来て出会った、人間達。だいたい予想していた通り。でもやっぱり少し外れていたところもあった。考え方とかが、やっぱり違う。その違いだけが、やけに何か引っ掛かる。イヤではないけど、違和感がある。たぶん、ひと月もすれば慣れると思う。でも、もし慣れなかったら?うっすら感じる不安。そんな状況で、一年間いろんなことを学ばなければならない…「一年…か」はぁ…と、小さくため息をつきました。(ちゃんと…何かを得られるのかな…)そして、ふと呟きました。「ねぇお母さん?…あ」(お母さん、いないんだよね)窓から覗く月。その月の笑う顔が、だんだんと母親の顔に思えてきます。「お母さん…」いつも近くにいて、見守ってくれた母親。もちろん血の繋がった母親では無いけれど、大事な、一番大切で身近な人。その人とは全く別の世界に、一人で来ている。そう、一人で。(独り…)「ひとりぼっちなの…かな…」出口のない螺旋に陥るクレア。(会いたい……帰りたい)そう思えば思うほど、寂しさが込みあげてきました。(さびしい…おかあさん…)止まらない涙。枕に顔を埋めます。そしてぎゅっと握り潰すように、枕を抱きしめました。押し殺した嗚咽。(ひとりぼっちはやだよ…)不意に、強く閉じた瞼の裏にある人の顔が浮かび上がりました。同じ魔女の、しかも憧れの人でもあるマジョリズム。「あ」(…そうだ。今日はりずむ様がおられる…)今夜は魔女界に行かず、MAHO堂の、隣の部屋で寝ています。(もし、一緒に寝させてくれたら、寂しくない)枕から顔を離しました。「行こうかな…行ってお願いしてみようかな」ベッドの上に座りこみ、ドアの方に目をやります。「でも、恥ずかしい…よね」そう呟いて、小さくため息を吐き、再びベッドに潜り込む…そんなことを幾度と無く繰り返しました。しかし一旦湧き出てきた寂しさ、虚しさは募る一方です。(…やっぱり、決めた)そう決意して、部屋の扉を開けました。なるべく音を立てずに。目の前にあるりずむの部屋のドア。(でも…失礼かもしれない…)扉のノブに手を掛けたまま、心の中でそう呟きました。「ううん、決めたんだから」今度は、そう声に出しました。自分に言い聞かせるように。一歩一歩、できるだけ足音を立てないように近付いていきます。ぎしっ…ぎっ…きしっ…ぎっ…4歩目で辿りついてしまいました。(よし…)クレアはすぅっと大きく息を吸いこみ、また吐き出しました。そして…こん…こん、…震える手で、りずむの部屋のドアをノックしました。するとすぐに、「はい」小さな、でも整った声が聞こえます。「クレアです」「どうぞ」「失礼します」クレアはドキドキしながらドアを開けました。「どうしたの?」薄いミントグリーンのナイトウェアを着たりずむは、ベッドに身を横たえて、少し眠そうな目でこちらを見ています。「夜遅くにごめんなさい」「うん、大丈夫。まだ眠っていなかったから。…で、どうしたの?」そう言ってメガネを掛けました。「りずむ様…あの」少しもぞもぞとしながら呟くクレア。「ん?」りずむは少し首を傾げました。「…えっと…」視線を宙におよがせながら、見つからない言葉を探しています。(あ)りずむはそんなクレアの様子を見て悟りました。「ふふ、いいわよ…」そう言って手招きします。「りずむ様…?」「お母さんが恋しくなったんでしょう?」「!」顔を真っ赤にするクレア。(なんで分かったの!?)りずむは、クレアのそんな驚きさえ読んだかのように、「クレアちゃんまだ八歳だもん。そうなるのは、あたりまえよ」ニコッと笑みを浮かべました。「りずむ様…」「一緒に寝ましょう、ね?」その瞬間、頭の中で何かが弾けたようなような感覚。「は…はい、ありがとうございます」緊張のあまり冷たくなっていた指の先まで、一気に血が通いはじめたような、そんな感覚。そんな温かさを噛みしめながら、とことことりずむの元に歩いていくクレア。「さ」りずむは少し体をずらし、クレアを誘います。「失礼します」そういって、りずむのベッドに潜り込みました。「ん」声か息か分からないような声で肯くりずむ。「これ、しまいましょうね」「抱き枕?」「うん」そう言って指を弾きました。ぽん、という軽い音がして、ピンク色の煙と共に消える抱き枕。「…どう?これで狭くない?」「はい、大丈夫です。りずむ様は?」「うん。問題なしよ」「りずむ様って、抱き枕派なんですか」まだ緊張のとけない声音で尋ねるクレア。「派…そうね。クレアちゃんは?」そう言ってくすっと笑いました。「ううん、くれあは使ってません」「ぬいぐるみとか?熊の」「えっ?」再びぴくっとするクレア。「…いいえ、こ…子供じゃないですから」「そうね」もう一度くすっと笑うりずむ。・・・りずむの体温で温まったベッド。(すっごい幸せ)隣にはあこがれのマジョリズム。クレアはちらっとその横顔を見ました。その視線に気付いたりずむは、囁くように話し掛けます。「ねえクレアちゃん」「はい?」「…誰かと一緒に寝るのって、わくわくするわよね」「はい…そうですね」「なんか、お泊まり会みたいなのって久しぶり」りずむはずっと昔、初めて人間界に来たときのことを思い出していました。初めてのお泊まり会。(あの時も、ここにあったMAHO堂だったな…)「ほんと、久しぶり」クレアは、りずむの白い頬に目を遣りながら尋ねました。「これまでの留学生さんたちは?」「みんな大きかったから。一番若かった子で15歳、大体27-8歳だったからね。…さすがに一緒には寝られないわ」くすっと微笑むりずむ。「なんで?」不思議そうな顔で見るクレア。「え!?」りずむは一瞬言葉につまりました。「なんで?って…」(そっか。クレアちゃんまだ子供だから…)注意深く言葉を選ぶりずむ。「変な噂立っちゃう…って…あー…大人にはいろいろあるのよ」しかし結局上手い言葉は見つかりませんでした。「いろいろ…ふーん…」その曖昧な説明に、未だ納得いかないというようにりずむを見るクレア。不意にりずむは思いつきます。「あ…あぁ、大きかったらベッド狭いでしょ?そういうこと」「そっか、そうですよね」やっと納得するクレア。(ふぅ…)胸を撫で下ろすりずむ。そして息を整え、声を低くして話しかけます。「ねえクレアちゃん」「?」「もし、よかったらだけど」「…はい」「こっちにいる間は、私のこと、お母さんって思って欲しい…な」「…えっ?」思わず声を出してしまったクレア。そのやや過剰とも思える反応に、少し気後れしたりずむは、またまた、あたふたと言い訳を考えました。「あ、あのね…」顔がカーッと熱くなってくるのがわかります。「だ…だって、私一応人間界での保護者だから…」(何を言ってるの私は…??)クレアはその言葉で、強引に現実に引き戻された感覚を覚えました。(あ、そっか。お仕事だもんね、りずむさん)「ああ…そうですね…」残念そうに目を伏せ、少し俯きました。(お仕事だから…)(うっ、クレアちゃんなんか泣きそうだ)その表情を見て、りずむは少し後悔しました。「あ…あのね?」そして体を横に向け、じっとクレアを見つめ、先の言葉に続けるように言いました。「…てのもあるんだけど、クレアちゃんが、私のことお母さんって思ってくれて、もしそれで少しでも楽に、楽しく生活できたら、私も嬉しいから」「りずむ様」もう一度、りずむの顔を見るクレア。月明かりでもわかるほど、頬が赤らんでいます。その視線を受けとめて、さらにりずむは続けます。「私はけっこうドジで…たよりないけど」「いいえ」「今みたいにすぐあたふたしちゃうけど」「?」「…でも、もしよかったら、甘えて欲しいの」「はい…」恥ずかしそうに肯くクレア。「そう、よかった」一安心するりずむ。そして続けます。「前からずっと言おうかなと思ってたんだけど…こうやって、ゆっくりお話しする時間、あんまり無かったものね」「ですね」それに相槌をうつクレア。「うん。で、クレアちゃん」「?」「クレアちゃんは、お母さんのことなんて呼ぶ?」「え?…と、おかあさん」「おかあ、さん」りずむは、「さん」を少し強調して言いました。「じゃあね、私のこと、りずむ様じゃなくって…」「えっと……りずむさん?」「うん、そう呼んで欲しいな」「はい、分かりました。…りずむさん」「よくできました」と、小さく笑うりずむ。「…じゃ、もう休みましょう?」「はい。それじゃ…りずむさん、おやすみなさい」「おやすみ、クレアちゃん」そう言ってりずむはまた仰向けになり、静かに目を閉じました。クレアはそんなりずむの方を向いて、体を少し丸めました。目の前にはりずむの横顔。(おやすみなさい、りずむさん)そうしてクレアも静かに目を閉じました。時計の音だけが響く、静かな夜。久しぶりに二人で眠る、温かな夜。鼻で大きく、すぅっと息を吸うと、柔らかな香りを感じました。うっすらとしたカモミールの香り。さっき入ったお風呂で使ったボディシャンプーの香りです。(くれあと同じ香りだ…あたりまえか…おんなじお風呂に入ったんだから)ほんの少しだけ、りずむの肩に頭を寄せるクレア。(ん?)りずむは目を軽く開けました。(ふふ…)カモミールの香りの、その奥から漂ってくる、りずむそのものの香り。(おかあさんとは違う…魔女幼稚園の先生とも違う……魔女ともちょっと違う……?ふしぎな感じ…)そのクレアを、包むような視線で見守っているりずむ。(お母さんの気持ちって、こんななのかな…)次第に眠りの世界へ落ちていくクレア。「りずむ…ママ」微かな声で、少し恥ずかしそうにクレアはそう呟きました。「…うん」りずむも、少し恥ずかしそうに答えました。クレアがその答えを聞いたのは、夢の世界に入る、ちょうどその時でした。
Nov 22, 2006
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*****翌朝。クレアは何か締めつけられるような、柔らかいものにのしかかられているような感覚で目を覚ましました。「うー…う…ん…?」首と胸、そして足に何かが絡みついています。「?…息苦し…?」目を開けると、5cmの距離にりずむの寝顔。「うわっ」思わず叫ぶクレア。「んー…」絡みついていたのはりずむの手足。首の下に左腕、半ば覆いかぶさるように、胸の上に右腕。そして右脚をクレアの左脚に絡めた体勢で眠っています。(えっ!?)しばらくするとりずむは目を覚ましました。「あー…あ?…あれ?」気の抜けた驚きの声を挙げるりずむ。間近で見つめる、金色をしたまんまるの瞳。(なにかな…)「あ、クレアちゃん」寝惚け眼のりずむ。「りりりりずむさん、おおおはようございます」クレアはガチガチになっています。「…んーおはzzz…」りずむはしばらくクレアをじーっと凝視した後、すぅっと瞼を閉ざし、そのまま二度寝してしまいました。(えええ!?)そんな時、チュチュが飛んできました。「おはよーりずむ、朝…あっ」苦しさと恥ずかしさで真っ赤になって硬直しているクレアをぎゅっと抱きしめ、体を絡みつかせて眠るりずむの姿。どこからどう見ても、子供の添い寝をしている母親には見えません。「り…りずむ、あんた何やってんの!?」思わず大声をあげるチュチュ。「んが?」「ば…バカかあんたは!!」その声に再び目を開けるりずむ。「あーうるさぁいなぁ……チュチュ朝から何よ…」「何?…って聞きたいのはあたしよ。それ何抱いてるかわかるでしょ?」「え?抱き枕…」りずむは気付きました。「あ」*****朝食。「あはは、クレアちゃんさっきはごめん、抱き枕と間違えた…みたいね」「いえ…」ぷるぷると頭を振るクレア。クレアは頭の中で、昨夜のりずむと今朝の寝惚けたりずむの様子を反芻していました。(なんかぜんぜんちがうなぁ)その顔が不機嫌そうな顔に見えたのか、「ほんとに怒ってない?」と、心配そうな顔でクレアの顔を覗き込みました。クレアはにこっと笑って言いました。「いいえ、怒ってません。 でも…」「ん?」「りずむさんって、ねぼけやさんなんですね」「やさん?」いまだ寝惚けているようなりずむ。チュチュが口を挟みます。「ああ、りずむの寝惚けは酷いわよ?」クレアはそれに肯きつつ、以前のことを思い出していました。「うん…そういえば最初の朝も、ほうきとちり取りで…」「え?そんなことしたっけ、私?」「知らないわよ」と、そっけない態度のチュチュ。「りずむ、そろそろ…」そう言いつつ、チュチュは時計を指差しました。「え?虫?虫飛んでる?」当然の如く勘違いしています。「…あんたまだ寝惚けてるわね。違う違う、時計を見て」もう一度時計を指差します。「あ、そっか。そろそろみゅうちゃんたちの来る時間ね」とそう言った途端、「くーれーあーちゃーん」ふぁみの元気な声が聞こえてきました。「あ、それじゃ行ってきます……りずむママ!!」「ん、行って…え!?」クレアはびっくりしているりずむに向かって「うふふ」と笑うと、カバンを手に取りMAHO堂を飛び出していきました。(りずむママ…か)「それもいいわね、ね?チュチュ」傍らのチュチュに話し掛けます。「頼りないママだけど、ねぇ?」嫌みったらしく舌を出し、ぴゅーっと逃げていくチュチュ。「待ちなさい…っ!?」立ち上がり、駆けだそうとした瞬間、テーブルの角で腰をしたたかに打ちつけてしまったりずむ。「…!!」チュチュは、そんなりずむを天井近くから見下ろしながら、呟きました。「新米ママさん、頑張ってね」
Nov 22, 2006
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次の日、朝からしとしと降りつづく雨。「梅雨も本番かねぇ…」「んだねぇ」ふぁみとみなみはだるそうに会話しています。窓際ではみゅうが居眠り。こえだは何処かへ行ってしまいました。「…みんな眠たいのかな?」「かもねぇ」「なんか気が重いねぇ」「んだ」気の抜けた声でそう言いつつ、ごつんと音を立てて机に突っ伏すみなみ。「…鼻打った」*****一時間目終了後の休み時間。さっきより強まるでもなく、弱まるでもなく、止むでもなく、本降りになるでもなく。そんな感じで雨は降りつづいています。みなみの机の周りで、ふぁみとみゅう、それにこえだがお喋りしています。「なんかやる気でないねぇ」「そうね」そんな中、みなみはずっと外を眺めています。少し心配そうな表情で。「はろー」突然クレアは何事も無かったかのようにやってきました。「あ」誰よりも早くその声に反応するみなみ。(…やっぱり来た)少し残念に感じました。それが顔に出たらしく、みなみの表情の変化を見たクレアは、ムッとした表情を浮かべると、みなみを無視するように、みゅうに話し掛けました。「…」眉を少し寄せてから、小さく息を吐き、再び窓の外に目をやるみなみ。「おねーちゃん」そんなみなみの隣で、ふぁみは少し声を落として話し掛けます。遠くではみゅう・こえだと楽しそうに話すクレアの声。「…いいの」みなみは、机に置かれたふぁみの左手小指の爪に目をやりながら呟きました。「それがクレアちゃんの考えなら…ね」「…」*****放課後、MAHO堂。今日は雨のこともあり、お客は一人も来ていません。五人はまたあまり喋らずに、黙々と作業しています。午後四時半。「ねえみぃちゃん、ちょっとハサミ貸して?」クレアが指差します。「ん?…ん」近くに置いてあったハサミを渡すみなみ。「ありがと」「ん」数分後。「クレアちゃん、さっきのハサミ…」今度はみなみがハサミを借りようとしました。「あ、ちょっと待って、まだ使うから」クレアはそう言いながら、ビーズを糸に通しています。「あたしは今いるんだけど…」みなみは困ったように呟きました。「ま、いいや。 んじゃ…ふぁみ、ちょっとこれ借りるよ」そう言ってみなみはふぁみのハサミを使いました。「ああ…ってもう使ってんじゃん」「おう、さんきゅ」それを境に、みなみとふぁみは楽しそうに話を始めました。それにみゅうが加わり、やがてこえだが引きずりこまれます。「…でさ、クレアちゃんは?」みなみは何気なくクレアも会話に巻きこもうと、話を振りました。「ん?なに?ちょっと…あ」集中力が少し途切れてしまったその瞬間、あらかたビーズを通し終えた糸を持つ手が滑り、床に落ちてしまいました。「あああああっ!」ばらばらに散らばるビーズ。「…せっかくここまでやったのに…」うなだれるクレア。「…みぃちゃんのせいだ」「は?」「みぃちゃんがきゅうに話しかけたから…」「あ、ごめん…」みなみは素直に謝りました。「…あたし、手伝うよ」そしてビーズをさっと掻き集め、クレアに差しだしました。「いいよもう!」クレアは、その手を叩きました。再びこぼれ落ちる色とりどりのビーズ。「ちょっと…クレアちゃん?」ふぁみは少し声を荒げました。「…はぁ」みなみはその手をさすりながら、小さくため息をつきました。そのため息に刺激されたクレアは、みなみをさらに責めます。「どうしてみぃちゃんはくれあの邪魔ばっかりするの?高学年クラス来ちゃダメとかさぁ」「だから、クレアちゃん…それは」「みぃちゃん、やっぱりクレアのこと嫌いなんでしょ?」「! …いや…なんで…分からないかなぁ」みなみは一瞬だけ、クレアを睨みました。しかしその感情を急激に抑え、少し震える声で搾りだすように言いました。そんなみなみに構わずクレアは続けます。「わかんないよ。 …クレア、みぃちゃんたちが一番のともだちなのに」さらに震える声でみなみは呟きました。「だからそれはそうなんだけどさ…」そう言うと、みなみはクレアの近くにあるハサミに目をやりました。それから視線を上げ、くれあの手、顔、そして、その金色の瞳に視線を送りました。その目は明らかな怒りと不信の色を含み、まっすぐにこちらに向けられています。みなみはそれを見てゆっくりと口を開きました。「…クレアちゃん…じつはね、あたしも」とみなみがそう言いかけた瞬間、クレアは叫びました。「もういい!!やっぱりみんなくれあのこと邪魔なんだ!! くれあ魔女だから!! だから…嫌いなんだ!!」クレアは一瞬躊躇った後、思い直して吐き捨てるように叫びました。「!」みなみは立ち上がりました。それと同時に、「くれあも…みんな大嫌い!!!!」そう吐き捨てると、クレアはMAHO堂を飛び出していきました。「待って!!」みなみは大声で呼びとめました。しかしクレアはすでに店の外へ、そして階段を駆け上がって行ってしまいました。「クレ…」喉から軋むように絞り出される声。そして玄関の方へ二三歩歩きだしましたが、足が萎えてしまったように倒れ、その場に座りこんでしまいました。「え!?みなみちゃん…?」みなみのそんな姿を見て驚くみゅう。「クレアさんって、かなりワガママですわね」こえだは誰とは無しに呟きます。「…ほんとわけわかんないよ、あの子。 っていうか…おねーちゃん、大丈夫?」ふぁみはそう言いながら、みなみの肩をさすります。「…うん」力なく肯くのが精一杯でした。「何かあった?」食堂部屋の奥で何やら作業していたりずむが、クレアの声を聞いてやってきました。「クレアちゃん飛び出して行っちゃったみたいだけど」「りずむさん…」色を失っているみなみの表情。「えっ!?」それを見たりずむもまた声を失いました。それからりずむはしゃがみこんで、みなみの横顔をじっと見ました。「どうしたの? …ゆっくり、落ち着いて話して…くれる?」みなみはおどおどとりずむの目を見ました。温かい人間の目。「はい…」少し上擦った声で、これまでのことを話し始めました。
Nov 17, 2006
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・・・「そんなことがあったの。 確かにクレアちゃんのワガママは直さないといけないわね… だけど」りずむは四人を見まわしました。ふぁみとこえだはこくんと肯きます。「…でも、みんなも… ちょっとやりかた、間違っちゃったかもね。 まずはクレアちゃんのお話聞いてあげないと」俯く四人。しばらくしてみなみは口を開きました。「やっぱり…それが原因ですよね」少し落ち着いた口調、でもまだ普段より弱い声。その隣りで、みゅうは小さく肯き、手をきゅっと握りしめました。窓の外、やっと降り止んだ雨。しかし空には厚く重い雲。「…そう。まだ知りあって1ヶ月も経ってないんだし。 もっと、知ってあげなきゃ。そして、知って貰わなきゃ。 …それからでも、いいと思うな。 クレアちゃんの“ため”に、何かをしてあげるというのは」ぽん、とみなみの頭に手を置きました。そして一部訂正しました。「あ、“してあげる”んじゃなくって、 一緒にどうすればいいのかを考えるのは、だね」そして、椅子に座るように促しました。それに従うみなみ。椅子に腰かけたのを見て、りずむは再び問いかけました。「…で、みなみちゃんはどうしてそう考えたの?」「それは…あたし自身、同じような経験したから…」「そう…」そう言って、みなみに微笑みかけるりずむ。みなみは、その表情をじっと見つめました。「あの子は…みなみちゃんが言うことなら、絶対わかってくれるはずよ」りずむのその言葉に、みなみは小さく肯きました。「はい。それは… …あたし、心のどこかでは分かってたんだけど…」小さく息を吐き出し、なおも続けます。「でもあの気持ちだけは、クレアちゃんに味あわせたくなかった。だから、ちょっと焦ったのかも…」その声は少し震えています。「うん…わかるわ。私も似たような経験あるから」「りずむさん…」そう呟いたみなみが見たのは、昔の小さな傷を凝視するような、りずむの目。不意にこちらに向けられました。「それより、今はクレアちゃんを捜すのが先ね」「はい」みなみはすっと立ち上がって大きく肯き、みゅう達の顔を見回しながら、口を開きました。「みんな…これ、あたしがカタ付けるから」それを聞いたふぁみは、首を横に振りました。「ううん、あたしらも手伝う。クレアちゃんに嫌な思いさせたのは、あたしらも同じだから」「責任、ありますものね…」「うん。みなみちゃんが手伝わないでって言っても、だめよ」「みゅう…みんな… …そっか、そうだよね」みゅう・こえだ・ふぁみの順番でその顔を見ました。(そうだよね)そしてもう一度心の中で呟きました。「…それじゃ手分けして探そう。 あたし、先に行くね」そういうと、みなみは制服のまま、まっ先にMAHO堂を飛び出して行きました。「じゃあ、わたしたちも…」みゅうも出ていこうとしました。が…「みゅうちゃん、待って」ふぁみはその腕を掴んでひきとめました。「ん?」「おねーちゃんに見つけさせてあげようよ」「あ、それいいわね」みゅうはニコッと微笑みます。「でも、どうやってするんですの?」「あたしらにはこれがあるじゃん!」ふぁみはそう言うとタップを取りだしました。「まほう」三人は同時に言うと、顔を見合わせました。りずむは少し明るくなった三人の表情を見ると小さく微笑みました。「じゃあ、マジカルステージっていうのを教えてあげる」「なに?マジ… 何?」「マジカルステージ。 三人以上で魔法を使うと、もっとすごい力を発揮するの。 昔は見習い試験の…何級だっけ…忘れたけど…えっと…… …ああんまあいいわ。とにかく。 普通よりすごい魔法が使えるの」「…へぇ」りずむの説明になっていない説明に半ば呆れ顔の三人。「こほん。 まず…見習い服に着替えてみて」「はぁい」そういうと三人は見習い服に着替え、ポロンを取りだしました。「はい、いいわね? そしたら、呪文を唱えるんだけど… いつものとはちょっと違うの」「え?」ふぁみがそう声をあげると、りずむは続けました。「みゅうちゃんは、えっと… …なんだっけ… …」ぱちん。りずむは指を弾きました。現れたのは分厚いメモ帳。それをパラパラとめくっています。「りずむさん、忘れたんだ」ふぁみはぼそっと呟きました。「…」顔を真っ赤にするりずむ。「…図星みたいですわね」「えっと、えっとね!! まずふぁみちゃんは、『ピリカピリララ、のびやかに』。 それからみゅうちゃんは『パメルクラルク、たからかに』。 こえだちゃんは…『プルルンプルン、すずやかに』だったと思う、たぶん!」 こえだの言葉を打ちけすように、りずむは早口で説明しました。「たぶん…?」ふぁみはじーっとりずむを見ました。「…でね、最後に『マジカルステージ』って言うの。 そしたら、魔法の場が発生するから。 そこでやりたいこと言ったらオッケーよ」「…大丈夫なんですの?」こえだが心配そうに小声で尋ねました。「知らないけど」ふぁみは首を横に振ります。「でも、やるしかないわ」みゅうがそう言って肯くと、他の二人も小さく肯きました。「じゃ、いくよ」ふぁみのその声に表情を引き締める三人。「ピリカピリララ…のびやかにっ!」ふぁみはポロンを掲げました。「パメルクラルク、たからかに…」続いて呪文を唱え、ポロンを掲げるみゅう。「プルルンプルン、すずやかにー!」こえだもそれに続きます。そして、三人は声を合わせます。「マジカルステージ!」すると、三本のポロンが交わったその一点から、淡い光が一瞬のうちに、波打つように広がりました。現れたのはパステル調の虹色の光で満たされた空間。「みなみちゃんに、クレアちゃんを見つけさせてあげて!」その瞬間、三人を包んでいた空間を構成する光が、ピンク色・クリーム色・青紫の三条の光へと凝集していきました。そしてそれら混じり合い、螺旋を描きながら、MAHO堂の天井をすり抜けて、上昇し、灰色の雨雲の近くで弾けました。しかし、ただそれだけ。「なんかすごいことになったみたいだけど」ふぁみはポロンをかざしたままの状態で呟きます。「…消えたわね」こえだも同じ体勢のまま空を見上げました。「やっぱり失敗?」みゅうは腕を下ろし、同じく空を見上げています。こえだはりずむに尋ねました。「…で、どうなるんですの?」「失敗はしてないわ。光が出たから。たぶん何か起こったとは思うけど…」りずむは頬を掻きながら呟きました。「…ともあれ、クレアちゃんを探してみて」顔を見合わせる三人。「…はい」なんだかなぁという感じで外へ出ていきました。
Nov 17, 2006
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MAHO堂に一人残されたりずむ。「…」少しのあいだ、ぼーっとしています。そして突然呟きました。「あ、そだ。チュチュ」「なに?」どこからかチュチュが飛んできました。「クレアちゃん見つけて、ガードしてあげて」りずむはそう言うと胸の前に左手を差しだしました。その手のひらに浮かび上がる水晶玉。そして右手で指を弾くと、水晶玉にクレアの姿が浮かび上がります。「えっと…この道だとたぶん…」「ああ大丈夫。 あたしりずむよりこの町詳しいから。 事故らないようにとかすればいいのよね?」「ええ、みなみちゃんたちには見つからないようにね」「りょーかーい」そう言うとチュチュは飛んでいきました。「ふぅ…」りずむは小さく息を吐き出しました。(今日は私が夕食準備しとかなきゃ)それからくすっと笑って心の中で呟きました。(…四人分追加で、ね)*****クレアを追いかけていったみなみ。「クレアちゃん!」もうだいぶ走りました。それでもクレアの姿は見えません。(ちょうど雨上がったのはラッキー… だけど)その時、突然救急車のサイレンが耳に入りました。(救急車…まさか…)近くで止まった、サイレンの音。(クレアちゃん!?)みなみはあわててそちらの方に向かいました。細い路地を通り抜け、曲がり角を右折すると、ある家の前に救急車が止まっていました。(違った…事故じゃない)ほっと胸を撫で下ろすみなみ。「そう簡単に事故らないよね…。 …でも」微かな不安を感じたみなみは、クレアの無事を念じました。(クレアちゃん…!!)そう念じた瞬間、雨雲を裂くように頭上を横切ったのは、一筋の流れ星。「え?流れ星? …まだ五時前なのに?」その流れ星は、川原の方に流れていきました。(そうだ)みなみは立ち止まりぎゅっと目を瞑りました。「クレアちゃんが無事でいますようにいますようにいますように!」三回唱え終えた瞬間…「…?」何かぼやけた像が、みなみの脳裏をかすめました。「!」(あ、そういうことか)そして再び流れ星を追うように駆けだしました。「…ありがと、みんな」*****(どうしよう…これから)クレアは一人、川原を歩いています。初めての場所。(ここはどこ…?)空を見上げると鈍色の雲。川向こうを見ても人影はありません。「ひとりぼっちなのかなぁ」とぼとぼと、何も考えずに、ただ真っ直ぐに川沿いの一本道を歩いていくクレア。そんな時…「あれ?巻機山さん?」「あ」前に立っているのは高学年クラス長の朱。「バーミリオン…」思わず、みなみだけが呼ぶあだ名で呼んでしまうクレア。いつの間にか目からは涙が溢れています。「え?ちょ…なんで泣いてるん?」その言葉が終わらないうちに、クレアが飛びこんで来ました。「巻機山さん…? どうしたん?」朱は、よしよしと頭を撫でながら尋ねました。・・・川原の土手を少し歩き、橋の下、地面の濡れていないところを見つけ話をしている二人。「へぇ、信玄らとケンカしたんか」「うん。もうみんな嫌い。みんなもくれあのこと嫌いだから」「ほんまか?」朱はクレアの顔を覗き込みました。「…うん」少し考えてから肯くクレアに、朱はくすっと笑って言いました。「早いねんな、嫌いになんの」「え?だって、みんな…くれあを邪魔者に…」「うそん、…少なくとも信玄、あ…武田さんな 巻機山さんのこと、ようあたしに話すねんけどな」「え?」「あれ、結構変な奴やんか?でもな、巻機山さんのこと話すとき、ちょっとちゃうねん」「どんなの?」潤んだ瞳で朱を見るクレア。「うん。 何て言うかなぁ…変は変やねんけど、 …信玄、巻機山さんのことよう考えとる」そう言って頭を掻きました。「今回のことだってな… 巻機山さんがクラスであんま馴染んでなさそうやったからってことらしいわ、 どうやら」乱れた髪を直す朱。「…知ってる。聞いた」小さな声で呟くクレア。「うん。 だからな、巻機山さんのこと、考えてる…ってのだけは間違いないやろ?」「うん、でも…」そう言って、体育坐りの膝に顔を埋めるクレア。「そやな。ちょっときついわな、信玄らのやりかた」「…」川面を風が揺らしました。「あいつなぁ…下手くそやねん、人と接するのが。 三年の時うちに転校してきてんけど、 一個下の教室、ふぁみちゃん所に入りびたっててな?」俯くクレアの髪に目をやります。「…長い間クラスに友達おらへんかってん」その視線を川向こうへ移し…「あたしが声掛けても、最初はちょっと喋るぐらいでな。 …あいつああ見えてかなり人見知りやねん」クレアは顔を上げ、朱の横顔をじっと見つめました。朱もまたそんなクレアの顔を見ました。「あたしもちょっと変わっとるから、あいつんことが気になってな、 毎日ずっと話し掛けてん。 ほんなら、だんだんお互いのことわかってきてな? いつのまにか仲良うなっててん」苦笑する朱。「…下手くそやのに、真面目やねん。 一生懸命すぎるほどにな。 だからおかしいことになったんかもな」「バー…朱さんって、みぃちゃんのこと、よく知ってるんですね」「ああ、バーミリオンでええよ。 …まあうちら三年間つきあっとるからな、巻機山さんよりはよう知っとるつもりや。 あ」急に何かに気付いた朱は、空へと視線を送った。一筋だけ、すぅっと流れる光の帯。「流れ星や!願い事っ!」急に立ち上がってビシッと指差しました。「え?」つられてそっちを向くクレア。「天下統一天下統一天下統一…よっしゃ!」願い事を一心に唱えています。「天下統一…?」クレアは不思議そうにその横顔を見ました。「まきはちゃまさんもにぇがいごと!!」焦ったために噛んでしまいました。「はぅ? …あー…」小声でぶつぶつと何やら唱えるクレア。「言えた?」「はい」「…にしてもえっらい遅いなあの流れ星」確かに、まだ流れ星は消えていません。「…あれ? なんかこっちに…来る!?」動きが止まる朱。「来ます…ね」クレアの動きも止まりました。まっすぐに二人の方に向かって飛んできます。「うわあ!」と、後数十メートルというところで、すぅっと融けるように消えてしまいました。「あー…びっくりした。っていうかなんやあれは… …そういやまだ明るいのになんで星? ようわからんわ、異常気象かいな…ほんま。 気象庁何やってんねん…」一人でぶつくさ言っている朱。「あ」クレアは気付きました。(まほうか)「まあええわ、クレアちゃん何願い事したん?」「えへへ…ひみつ」「あー!なんや… …まあ大体分かるけどな」朱はニコッと微笑みました。それから壁にもたれて、真顔に戻って続けます。「さっきのことやけど… 信玄のこと、ほかのみんなのこと、もっと知ってったらええと思うよ。 クラスのみんなのことも、先生のことも それと同時に巻機山さん…」そこまで言ったところでクレアが遮ります。「あ、くれあのこともくれあって呼んで下さい」肯く朱。「そやな。 …クレアちゃんのことも、知ってもらったらええ。 まずはそこから、やな」「…はい」小さく、とても小さく顔を縦に振るクレア。「嫌いになるにせよ、友達になるにせよ、それからの話やと、 あたしは思う」「はい」もう一度肯くクレア。その時、「おーい!クレアちゃーん!!」みなみの、いつもとは少し違う、心配そうな、でも強い声が聞こえてきました。「!」クレアは思わず体を震わせました。「…お迎え来たなぁ。 な?」そう言ってクレアを立たせました。「さ、いこか」「え?でも…」「…ほら、出ていったりぃや!」そう言いながら、ぽんとクレアの肩を叩きました。「あたしんことはナイショな!」そして自分はみなみに見つからないように身を隠しました。「あ」クレアが四・五歩、よろよろと出たちょうどその時、みなみがこっちを向いていました。「あ」みなみも小さく声をあげました。「…」そして無言で近付いてくるみなみ。「…」またそれを無言で、少し怯えたような顔で見るクレア。「…」「…」二人の距離は一メートル弱。無言のまま、互いの目を見ています。クレアが視線を下げたのと同時に、「やっと見つけた」みなみは少し上擦った声で、その静寂を破りました。「…」クレアはみなみの顔に再び目を向けた瞬間、「バカぁっ!!」ありえないほどの大声でどなりつけるみなみ。「!」クレアはびくっと全身を震わせました。「…でも無事でよかった」そしてクレアの頭をくしゃくしゃとし、それからぎゅっと抱きしめました。「ごめん、あたし今情緒不安定だから何するかわかんない」さらに腕に力を込めます。「みぃちゃん…」「心配した。救急車いたし」「え?」「それに私が見つけられて、嬉しい」「なんで?」「あたしがこの作戦の言いだしっぺだから。 責任あるからね。ごめん…」「うん…」クレアはみなみの左腕に、そっとも右手を添えました。「あたしが間違ってた…」「うん…くれあも、ごめんなさい」クレアも小さな声で謝りました。「ん?」「くれあ、いろいろひどいこと言っちゃった」「うん。でも、あたしは、もういいよ」みなみは途切れ途切れにそう言いました。「みんなにも」「…そうね」「謝る」「ん」(一件落着かな?)陰からそっと見まもる朱。「だから、帰ろ?ね… りずむさんも待ってるから」「でもさ、怒られないかな…?」「ん?」「お仕事中に飛び出しちゃった」「ああ、それならあたしもだから。 一緒に怒られよう、ね?」「…うん」そういうとみなみは体を離しました。それから、「握手」右手を差しだします。「ん?」「仲直り」そっと、その右手を握るクレア。「うん」みなみは、その手に左手を添えました。そして、まっすぐにクレアの瞳を見つめました。「…帰ろっか」「手、つないだまま帰ろ?」クレアはぽつっと呟きます。「いいな、それ」みなみは添えていた左手でくれあの右手を握り直しました。(朱さん、願い事叶いそうだよ)クレアは心の中でそう呟きました。そしてMAHO堂へ向かって歩き出す二人。(大丈夫そうやね)橋の陰で息をひそめていた朱は、もうだいぶ小さくなった二人の背中を見ながら呟きました。(流れ星への願い事もたまには叶うねんな… …っちゅーことは…)そう言ってニヤリと笑う朱。「明日はどんな顔してくるかな、信玄」
Nov 17, 2006
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「うわわ…また遅刻だよ!!!」ふぁみは小学校への坂道を猛ダッシュで駆け上っていきます。みゅうたちは先に行ってしまったようです。ちょうど校門をくぐった瞬間、チャイムが鳴りはじめました。「げっ」玄関を入り、上履きに履き替え、階段を駆け上る…。チャイムの最後の音が鳴っています。廊下を走り、途中で転び、なんとか扉の前まで辿りつきました。しかし、チャイムの音はすでに消えています。(これは遅刻かも……っていうか完全に遅刻だよね)恐る恐るドアを開けるふぁみ。「先生ごめ…」「ごrるぁ!!!!!」そう言った瞬間頭の上から物凄い巻き舌の怒鳴り声が聞こえました。「ごめんなさいいもう遅刻しません反省しています!!!」「あはは、先生まだ来てへんで、自習や」「へ?」関西弁。「…なんだクラ長か」「なんだやあらへん。はよ座れー」「へーい…ったく…」カバンを机の上において椅子に腰かけました。「ふぁみ、また遅刻か」低い声で隣の席のみなみが声を掛けます。「ごめんおねえちゃん」「ぷっ」前の方にいるこえだがこっちを見て笑いました。「んな!?」と言って拳を握り締めました。それを見たこえだはあっかんべー。「ちょっ…」立ち上がろうとするふぁみの袖をつかみ、「やめとけ」と言わんばかりに、ぶるんぶるんと顔を横に振るみなみ。「…ったく」そういいながらちらっと右前方を見ると、少し離れた席のみゅうが手を振っています。ふぁみはそれに答えました。と、「そういやさぁ」ふぁみはみなみに話し掛けました。「クレアちゃん、ちゃんと来た?」「うん。あんたよりよっぽどしっかりしてるよ。たださぁ…」その時、担任の辺見先生が入ってきました。「はぁいおはよー」何故か後のドアから。「…後で」みなみは小声で囁くと、教科書を机の上に広げました。「?」*****9:27。一時間目後の休み時間。「みゅーうちゃん!!」「あ、いらっしゃい」みゅうはにっこりとクレアを迎えます。「お、クレアちゃんまた来たか」みなみは携帯用の鉛筆削りで鉛筆を削りながらクレアに話し掛けました。「ふぁーちゃんもちゃんと学校来たんだ」「おう」ふぁみはびしっと手を挙げました。「遅刻ギリギリだったけどね」と苦笑いのみゅう。「というか本当なら遅刻ですわ」こえだはじろっとふぁみを見てから、わざとらしくぷっと吹き出しました。「うっさいなぁ。 …ってかさぁおねーちゃん、昨日のアレのこと、クレアちゃんに言った?」「ああ、そうそう、クレアちゃん。あのさぁ…」みなみはとふぁみは、試験の時魔法での演奏と一緒に、女王様に魔法を使わない生演奏も聴かせることを、クレアに話しました。「うん、それいいねっ!くれあも久しぶりにやっちゃおっかな?」そういってにっこり笑うクレア。「じゃ、決定だね」ふぁみのその言葉に、他の三人も肯きました。と、「あ、そだ」みなみは何かを思いだしたように呟きました。そしてまわりをきょろきょろと見まわしました。「いた。 …おーい、バーミリオン」「何や信玄?」ひょこひょことクラス長の朱がやって来ました。「あぁ、プリント。今日が提出日だったよね?ほい」「ん、確かに」と言いながら、朱はそのプリントを受け取りました。「…あ、忘れた」そばで聞いていたふぁみがカバンを漁りながら呟きます。「ふぁみちゃん、またかいな…」ため息をつく朱。「ばー…」クレアは目を白黒させています。「ああ、これバーミリオン」みなみは立ち上がり、朱の髪の毛をぐしゃぐしゃっとかきまわしました。すると朱はその手を払い除けながら、「ちゃうわ!! …あ」それからくるっとクレアのほうに向きなおり、ぺこっと頭を下げました。ショートカットの黒髪を左側頭部で小さく縛った女の子。「朱瓊言います」「しゅけい…さん? しゅ…さん?」「はい、華僑です」「かきょう?」珍しく知らない単語に出くわしたため、年相応の反応を示すクレア。「外国に住んでいる中国の人の事よ」みゅうが教えます。「へえ、日本のとなりだね?」「高学年のクラ長やってます、よろしく」と、手を差しだす朱。「はい、巻機山クレアです。よろしく」その手を握るクレア。「クレアちゃんのことは信玄からよう聞いてますー… というか噂でも」「しんげん?」またも疑問の表情でみなみを振り返ります。「あー…武田だから、信玄…ってこいつが」そう言いながら朱を指差しました。「ちなみにバーミリオンは朱色のことね。苗字が朱だから」「うん、それは知ってる…けど… ちょっと言葉」「ああ、私関西から来たからやね。 関西弁聞いたことない?」「はい」「巻機山さんは神戸って知っとる?」「んー…?」「ああ、大阪の隣や」「大阪は知ってますー」「そっか、そこから来たんや。 だから関西弁っていうか大阪弁っていうか神戸弁やねん」「どこだよ」みなみはぼそっと呟きました。「みなみさんと朱さんは仲いいんですのよ」そっと耳打ちをするこえだ。「へー」小突き合っている二人を見るクレア。その時チャイムが鳴りました。「あ、いけない」そういってあわてて自分の教室に戻っていくクレア。「じゃあ、またあとでねー」「うん」そういいながら手をふるふぁみ。「じゃあねー」朱も手を振ります。「…」じっとクレアを見つめるみなみ。そんなみなみをこれまたじっと見ているみゅう。朱もそんなみなみを怪訝そうに見ながら、自分の席に戻っていきました。「んじゃ授業始めるよー」そうこうするうちに辺見先生が教室に入ってきました。*****次の休み時間も、クレアはやってきました。しかし…「あ、あたしら次体育だから」みなみは教科書を片づけながらクレアに知らせました。「ええ、男子いないでしょ?」と、少し離れたところで着替えているみゅう。「そういやそうだねー」そう言いつつクレアはあたりを見まわしました。「ふぁーちゃんとけーちゃんもいないね」「ああ、体育の当番だから、先に着替えて準備しに行った」みなみは服を脱ぎながら答えました。「…そっか。んじゃ帰る。それじゃあまたあとでねー」「ん」クレアは手を振りながら戻っていきました。(こりゃやっぱちょっとまずいかもなぁ)そんなクレアを見送ったみなみは、体操着に袖を通しながらみゅうに話し掛けました。「ねぇみゅう」「ん?」「クレアちゃんのことなんだけど」「ん」うなづくみゅう。「クレアちゃんってさ、休み時間とかいつもあたしたちといるじゃん? それってあんまり良くないと思うんだけどさ」「…そうね」みゅうは少し考えこみます。「クラスにもあんまなじんでないみたいだしさ。 …っていうかみゅう前後ろ逆」「あ、ほんとだ」みゅうは前後ろに着てしまった体操着を正しく着なおしながら言いました。「…中学年クラスの前通ったらさ、クレアちゃんなんかぽつんってしてた」「そう…やっぱりまずいね、それ」みゅうはみなみを振り返ります。「あたしたち、何かしたほうがいいかもね…」・・・四時間目、体育の時間。今日は鉄棒です。順番待ちの時間を利用して、四人はこそこそ小声で話をしています。「んー…休み時間始まったらあたしらどっか行くとか?」みなみは髪を掻き上げながら提案しました。それに対して、「それはちょっと可哀想じゃないですか?」とこえだ。「んー…でもさ、一緒に帰るんだしさ」ふぁみはみなみを見ながら言いました。「ちょっと厳しいかもしれないけどさ、クレアちゃんのクラスで友達作って……ってのがいいと思う」みなみは、ふぁみの言葉に肯き、ぽつりと呟きます。「…で、どうするの?」みゅうはみなみの顔を見ました。「どっか行くってのを何回かやってみて、様子見てみよっか」「うーん…」こえだは考えこんでいます。「ダメそうだったらさ、他の手考えればいいんだしさ」と、半ば促すようにこえだを諭すふぁみ。「…そうですわね」「じゃあ、決まり。行ってくる」みなみはそう言って立ち上がりました。「え?どこに?」みゅうはみなみに尋ねました。「…どこに…って、鉄棒。順番きた」みなみは指差します。「あ」
Nov 15, 2006
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*****授業終わって昼休み。今日は月曜、週一回のお弁当の日です。生徒たちは思い思いに友達同士で昼食をとっています。「みゅーうちゃ…あれ?」 お弁当をぶら下げたクレアが高学年クラスにやってきました。「ああ、巻機山さん。 信玄らやったらどっか行ったで」朱は、明るい栗色の髪の女の子とお弁当を食べています。「えー、そうなの… どこ行ったか知りませんか?」と、クレアが尋ねると、「んー…わからん、ごめんな」朱は首を横に振りました。「あたしも」一緒に食べていた女の子も同様に。「…そうですか」残念そうに教室に戻っていくクレア。「しょーがない、かがみんと一緒にごはんたべよー…」そして教室に入り、廊下側前から四列目の席を見ました。「…あれ?」かがみはいません。その目を最前列に向けます。そこにいつもいるはずの内村もいません。「二人ともいない…」クレアはぶつぶつ文句を言いながら、自分の席につきました。「なぁに~?なんで誰もいないのよぉ…」そしてため息をつくと、りずむお手製のお弁当を食べ始めました。・・・一方、屋上に避難している四人。「…」全員無言で、お弁当を食べています。「やっぱりさぁ、これってよくないかも」ふぁみは箸でプチトマトを潰しながらため息をつきました。「確かに気分は良くないね…でも」みなみはその潰れたプチトマトを横目で見つつ、かまぼこを口に頬ばりました。そして咀嚼しながら空をぼーっと眺め…ふぁみはそんなみなみの横顔を見てつぶやきました。「おねーちゃん、なんか今日はヘン?」みなみは眠そうな目をふぁみに向け、逆に尋ねました。「そう見える?」すると、隣りに座ってサンドイッチを囓っていたみゅうが心配そうに呟きました。「ええ、みなみちゃん、暗いっていうか」「そっか…」そういいながら、もう一度空に目をやるみなみ。不意にみなみは呟きました。「…あたしって三年の時、こっちに越してきたのよ」「そうだったね」ふぁみは肯きました。「覚えてる?あたし、その時低学年クラスだったふぁみんとこばかり入りびたっててさ。 …気がついた時、クラスで浮いてた」弁当箱の中に残っている、汚れたアルミホイルをジッと見つめ、くすっと笑った。「そうだったの?」みゅうが訝しげに尋ねると、「っていうかみゅう、あたしがクラスにいたこと自体知らなかったじゃん」目を下に落としたまま、そう呟くみなみ。「あ、ごめん」あわてて謝るみゅう。「いやいいけどさ。自分のせいだから…」ぱちん。お弁当箱の蓋を閉め、みなみは話を続けます。「うん、でさ。 … クラスで何かするっていうときにでも、なんか寂しいっていうか。 …わかるのよ、一人ぽつんってしている時の気持ちがさ」「だから…」みゅうはみなみに色んな感情が綯い交ぜになった不安定な視線を向けました。「うん、できるだけ早く、クラスで友達作って欲しい。 だから…」珍しく思いつめているみなみの顔を見ながら、みゅうはふと思いました。(だとしたらクレアちゃん、わたしたちがいなかったらもっと辛くなるんじゃないか)と。「ねえ、それならそのことを…」みゅうがそう言いかけたとき、予鈴が鳴りました。ちょうど午後一時です。「うわっチャイム鳴った!」ふぁみは慌てて弁当箱を片づけながら立ち上がりました。「まだ予鈴だから大丈夫ですわ」そう言いながら優雅な仕草で片づけ始めるこえだ。「いや、今日は五時間目小テストだからさ、もう戻らないと危ない」「じゃあ急がないと!」みなみの言葉に慌て始めるこえだ。「トイレも行きたいし」ふぁみはそう口走りながら時計を見ました。「…というわけで、もう少し様子見てみよう、ね?」いつのまにか片づけ終えたみなみは、三人に微笑みかけました。「戻ろっ!」*****午後二時前、五時間目終了。みなみ達はまた屋上へ逃げていきました。授業終了と同時にトイレに駆け込んだふぁみを除いては。・・・「みゅーうちゃんっ☆」四人が教室を出て一分も経たないうちに、クレアが高学年の教室に入ってきました。「あれ?いない…」また教室を見まわすクレア。四人の姿はありません。「…まただ」そう呟いてため息を一つつくと、中学年クラスに戻っていきました。「ふう…漏れるかと思った…よく四十五分も保ったよねぇ…」一方、間一髪間に合ったふぁみは、トイレから出てきました。「自分自身をほめ…」その瞬間。「あっ」「あっ」ちょうど中学年の教室へ戻ろうとするクレアと鉢合わせ。「あ、ふぁーちゃん」「げっ」そう言って屋上に逃げだすふぁみ。「『げっ』って…あーっ!逃げないでよ」あわてて追いかけるクレア。しかしちょうど階段の所まで来たとき…「こら廊下は走らない!!」職員室へ戻る倉持先生に捕まってしまいました。「巻機山さん、ダメじゃない…」その隙に階段を駆け上がっていくふぁみ。(ふぁーちゃん…どうして…?)先生の小言を聞きながら、クレアはふぁみの態度を幾度も思い出しました。(「げっ」って… なんでくれあを見て逃げたんだろう)「…以後気を付けてね」「はい」先生の言葉は全く耳に入っていません。クレアはしょんぼりと自分の教室へ戻って行きました。「あれ?」あまりの悄げように、倉持先生は首をかしげました。(そんなにきつく叱ったっけ?私…)*****一方その頃、屋上にて。「見つかったですって?」こえだが声を荒げます。「ふぁみ、それはちょっとまずったかも」みなみは頭を掻きました。「うーん…かもね。 でもここで謝っちゃったら…」コンクリートの床をこんこん、と軽く蹴りながら呟くふぁみ。そのふぁみの足に目をやりながら、みなみは独り言のように言いました。「もしかしてあたしたちのやり方、間違ってる…のかな…」みなみのその言葉に、みゅうは口を開きました。「そのことなんだけどね…」みゅうのかすかな声を打ち消すように、こえだが大きな声をあげました。「…でも、でもでも。クレアさんがクラスでお友だち作るためには…」こえだはみなみの顔を見、それからみゅうの顔を見ました。みなみもまたみゅうの顔を見ると、みゅうは戸惑いながらも、小さく「うん」と肯きました。「…」みなみもまた少し躊躇ってから、自信なさげに提案しました。「…もう少し続けてみよう?」「…」みゅうはそんなみなみの顔を、じっと見ていました。「もうそろそろ、戻ろう…」みなみがそう言い終わると、ちょうどチャイムが鳴りはじめました。*****午後3時半、掃除も終えて下校時間です。一足先に掃除を終えたクレアは、高学年の教室前で待っています。しばらくするとふぁみたちが出てきました。「あ、クレアちゃん…」「ねーふぁーちゃん、さっきなんで逃げたの?」そう詰め寄られたふぁみは、おどおどしながら答えました。「あー… ごめん、ちょっとびっくりしちゃって」さらに追及するクレア。「なんで?」ふぁみは既にしどろもどろです。「…いや…なんとな…く、かな…えへへ」「…よくわかんない」むすっとふくれるクレア。怒りをあらわにした視線を、ふぁみ以外の三人にも向けました。「みんなもどこ行ってたのよ」「ん?いろいろとね」みなみは平然と答えました。「それよかさ…」そして少し声を落として尋ねました。「クレアちゃん、クラスの友達は?」クレアは唇を尖らせます。「いるけどさぁ。いいじゃん、そんなこと。…それよりさ、それよりさぁ、くれあ、テスト満点だったんだよー?」そういって堰を切ったように、ふぁみとみなみに喋り始めるクレア。「…」みゅうとこえだは互いに顔を見合わせました。「じゃ、MAHO堂に行きましょう」みゅうはまだ話しつづけるクレアを促します。「そーだねっ!」クレアはニッコリ微笑んでぱたぱたと走っていきました。その後ろ姿を見て、四人はなんとか切りぬけた解放感とも、ため息ともつかぬ息を吐きました。*****午後四時すぎ、MAHO堂――全員が無言、イヤな沈黙。たまにお客が来たときに、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」などの言葉を発するだけ。「どうしたんだろ」そんな彼女たちのあまりな雰囲気を見て、りずむは不審そうにチュチュに尋ねました。「さあ?ケンカでもしたんじゃないの?」そんな時、しびれを切らしたクレアが口を開きました。「なんでふぁーちゃんたち、お話しないの?」「…」話し掛けられたふぁみは、すがるように隣にいるみなみを見ます。その目をジッと見つめ、小さくため息をつきました。ふぁみは次にみゅうを見ました。小さく肯くみゅう。こえだも肯いています。その様子を見て、ふぁみもまた肯き、クレアに話し掛けました。「…ごめん、クレアちゃん」「?」クレアは不思議そうな目でふぁみを見つめます。「さっきのことなんだけどさ」「うん」「クレアちゃんがあたしらとばっかりいるから、クラスで友達できてないんじゃないかって思って…さ」ふぁみは申し訳なさそうに呟いた。「だから、隠れてたの」「…あたしらが教室にいなかったら、クレアちゃん教室に諦めて戻るかなって思って」そう付けくわえるみなみ。「あー…そうだったんだ」内心少しぎくっとするクレア。「でも、大丈夫だよ?くれあ、クラスに友達いるもん。かがみんとか、うっちーとか」クレアはみなみに向かってそう言いました。「小西さんと内村さんだね。それは知ってる。でもね…休み時間のたびにうちのクラス来てるでしょ?」みなみは、できるだけ無表情にクレアを諭しました。「あれ、ちょっとまずいんじゃないかな」「まずい…?」みなみを見るクレアの視線が、少し険しくなりました。「これからは、クラスでやる行事とかも多くなるからさ、ね?」みなみの隣で、ふぁみはできるだけ優しい口調で話し掛けました。「うん。それにね、私達とはここでいっぱいお話できるでしょ?」みゅうは、にこっと微笑みます。そのみゅうをちらっと見るみなみ。「…だから、学校にいるときは、クラスのお友だちと仲良くしたほうがいいんじゃないかなって」「ええ」こえだも同意します。「…」俯くクレア。そしてぽつりと一言。「…もしかしてクレアのこと邪魔?」その言葉にぴくっと反応するみなみ。「いいえ、そうじゃありませんわ」こえだは顔を横に大きく振りました。「そう。邪魔じゃないよ。ただ、クレアちゃんのことを考えるとね…」とふぁみ。それにみなみも肯きます。「やっぱりそれがいいと思うんだ」…「…そっか」半ばしぶしぶ納得し、半ば納得行かないという感じの表情で、四人から離れていくクレア。「…」そんな五人の様子を、りずむは二階のロフトから、半ば心配そうに見下ろしていました。上から見ると、店舗部の中でみなみとふぁみがレジの中、みゅうとこえだがその近くにたむろし、クレアはレジの正反対、食堂部屋の近くでぽつんとしています。(どうするのかしら…)「どうするのかな?あの子たち」チュチュは、まるでりずむの心を読んだかのように尋ねました。「…うん」りずむはそれ以上何も言わず、クレアに、それからみなみに目をやりました。「…ま、これも勉強か」チュチュはそう呟くと、どこかへ行ってしまいました。*****その夜、クレアはベッドの中、昼間のことを考えていました。ひとりぼっちで食べる昼食。ううん、一人で食べるのは寂しくない。でも、ともだちがいないのは、寂しい。ともだち…っていったい、何?みゅーちゃんたちは…ともだち?それとも…脈絡なく頭を過ぎる事柄。混沌とした、漠然とした寂しさ、何かよく分からない感覚。そんな冷たさの中、いつの間にかクレアは眠りに落ちていました。
Nov 15, 2006
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名前も知らない赤い実ひとつ大きな木の枝 ぶら下がっている風に吹くたび落ちそうになる でも枝が 葉が 根が そして木が小さな小さな赤い実ひとつ守って育て愛しんでるその実の甘さは受けた愛その実の酸っぱさ…辛い出来事瑞々しさは弾むこころが動いた軌跡いろいろ混ざって実を結んだの夜の星空 見上げてみると昔の光が 今も見えてる雨が降るたび思い出すバラのお花の歌と一緒にいまだ小さなこの体にさえいっぱい想いが詰まってる蔓で繋がるかりそめの絆でもそれだけが真実の糸胸に溢れる温かな愛 今でもここに私の中に共にある胸に手を当て聞いてみる私の鼓動はあなたの鼓動胸の中の赤い果実は今も確かに時を刻んで次の世界へ引き継がれるの…今日の朝方 赤い実落ちてた甘く熟した柔らかな赤い果実は大地に帰り再び芽吹く新たな木として次は私が育てる番だね語り掛ける私の声は何故か少し震えていた*****今日、りずむさんのお部屋でお料理のレシピ本を探した、その後。裏庭の扉が開いていたので少し出てみた。三本立っている左側の木の枝に、明らかに人間界のものとは違う実がついていた。真っ赤な、半透明の果実。蔓で寄生しているように見える。一見すればわかる、魔女界の果実。名前は知らないけど…。大きな木に蔓で巻き付く、魔法の果実。なんか、少し私が重なって見えた。*****…とかいうようなことをりずむさんに話したら、「それを詞にしてみたら?」って。だから、書いてみた。いまから、りずむさんに見せる。少し恥ずかしいけど、一番最初はりずむさんに読んでもらうって決めていたから。
Nov 12, 2006
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午前四時。「…」突然目を覚ましたみなみ。「四時か…」右隣ではみゅうが寝息をたて、左側ではふぁみが珍しくおとなしい格好でいびきをかいています。その向こうではこえだが、ベッドに目をやるとクレアがそれぞれ静かに眠っています。「…」みなみはむくっと上半身を起こし、垂れた前髪を掻き上げながら、ちらりとみゅうの寝顔を見ました。みゅうの銀髪が、窓から差し込む淡い月と星の光を反射しています。(…銀色)小さく呟くと、ゆっくりと立ち上がり、ドアの方に向かいました。そしてできるだけ音を立てないように、ドアを開け、部屋を出てその扉をまたそっと、静かに閉めました。MAHO堂宿舎部分のさらに裏手にある、裏庭。ここには三本の大きな木があります。その真ん中の一本にもたれながら、みなみは空を眺めました。(なんか蒸し暑いなぁ…)それから視線を落とし、自分の掌を見つめながら、ふたたび空にかざします。「…銀色」ぽつり、そう呟きました。「みなみちゃん」その時声が聞こえました。ふっと振り向くと、パジャマの上に美空小指定のジャージの上を羽織ったみゅうが立っていました。「みゅう…」空にかざした手を隠すように下ろし、尋ねます。「起こしちゃった?」「…うん。 というか、わたし、物音には敏感だから」にこっと笑うみゅう。*****緩やかな、生温い風が木の葉を揺らします。「ねえ、さっきのこと、怒ってる?」「ん? …ううん」みゅうは小さく首を横に振ります。下ろした長い髪の毛がそれに合わせて踊りました。一瞬の間のあと、少し上擦った声で呟くみなみ。「…あたしがちゅーしようとしたら、固まったよね」みゅうは横目でみなみを見ながら、「え?…そりゃあ… 恥ずかしいっていうか。 あたりまえでしょ?」「ほんとに?」みなみはみゅうの顔を見ました。「…恥ずかしいってだけ?」「うん」迷い無く断言するみゅう。「…そっか。ならいいや。 あたしの思いすごしだったのかも、ね」「?」みゅうはみなみの顔を、不思議そうな顔で見つめます。「みなみちゃんって、ちょっとヘンなとこ、あるよね」「うん」迷い無く断言するみなみ。「ふふ、自覚してるんだ。 やっぱり、ちょっとヘン」みゅうはくすっと微笑みました。「でも、そういうみなみちゃん… 好きだな、あたし」「告白か?」みなみは、空を見上げたまま尋ねます。「ええ」みゅうは即答します。「そうか。 …ってマジ!?」みなみにしては珍しい、素で見せる驚きの表情。それを見たみゅうは、「冗談よ。さっきの仕返し」と、さっきよりもほんのちょっとだけ大きな声をあげ、笑いました。「…」黙りこんでみゅうの顔を睨むみなみ。でも、そのみゅうの頬は、少し赤くなっていました。(無理してそんな復讐しなくても)みなみはため息をつきました。そして、ぼそっと呟きます。「さっきさ、みゅうの寝顔見てたんだけどさ」「ん?」「ほんと、きれいだよね」「何を…」こんどはみゅうが声を上げました。「可愛いんじゃなくて、きれい。美しい」「ちょちょちょちょ…みなみちゃん!?」顔を真っ赤にして叫ぶみゅう。「惚れた」「は?」再び固まるみゅう。「冗談」みなみはべーっと舌を出しました。「復讐の反撃」「全く…」とみゅうが言いかけると、「…半分だけね。半分は本当よ」みなみはさっきと同じ、素の表情で呟きました。「!? …もうっ」と、口を尖らせるみゅう。(っていうかどっちの半分よ)
Nov 4, 2006
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再び数秒の沈黙。みゅうは固まったまま黒い地面の、ある一点を凝視し、みなみは細い月とたくさんの星が瞬いている空をじっと眺めています。唐突にみなみが口を開きました。「…ねえ、歌詞作らない?二人でさ。 サンドウィッチの」「え?」「合作。今、ここで新作を」「ええ!?いきなり!?」「うん」「ダメよぉ、そんな急には出てこないわよー」みなみは肩ごしにみゅうの顔を見ました。「今、みゅうの心、動いてる。 あたしが動かした。 で、あたしの心も、動いてる」「?」「だから、できるよ」「うー…」考えこむみゅう。「適当に、順番に思った言葉、繋ぎあわせよう?」「そんなのでいいの?」「いいの。なんとかなるなる。 じゃ、あたしからいくよ」そういうと、みなみは咳払いをし、少しだけメロディを付けるように、嘯きはじめました。 宴終わって 夜空見上げる あたしは一人(? んー…)それに応じてみゅうもまた囁くように応じました。 遠くから あなたを見つめる 影一人(あ、いけそう)みゅうはそう感じると、少し嬉しくなりました。そして交互に、流れるように、背中を向けあったまま… 気付かぬ振りして 口ずさむ 気付かぬ振りして 耳すます 分からぬように 言の葉紡ぐ あなたの気持ち 受けとめる「…」二人は一瞬無言になりました。「続き、いくよ」みなみはそう告げると、すぐに続けました。 一歩近付き あなたを見つめる まっすぐに 歌声尽きて 溢れる涙 止め処なく 気付いて欲しい わたしの気持ち 気付いて欲しい わたしの喜び 涙を拭う その手をとって 微笑む頬に 口付けられた(やばい、やばいってこの方向は)みなみは少し焦っています。「…続ける?」「ん」とても小さな、でも一分の否定もないみゅうの声。(もう行くとこまで行っちゃえ!)みなみは喉に力を込めました。 銀色の闇 生み出す鉱脈 尽きることない 永久の月 真紅の糸が 織りなす奇跡 溢れ続ける 甘い夢 夢の世界にいるみたい 真夜中過ぎの二人の時間 夢とは違う あなたの温もり 身体中で感じているから 宴終わって 夜空見上げる あなたと二人 近くから あなたを見つめる 瞳の影を 絡めた指は もう解けない 交わした約束 朽ちることない 至福が誘う 涙の色は 月と同じ色してる 指にきらめく あなたの涙 月から零れた 一滴 *****「…」みゅうとみなみは、木を挟んで背中合わせになって俯いています。二人とも、耳まで真っ赤にして。「…」「…」「言いだしっぺのあたしが言うのも変だけどさ、 …すっごい恥ずかしい」みなみでさえ、みゅうの顔を見ることができません。「うん」小さく肯くのが精一杯のみゅう。なるべく感情を込めない、上擦った声で、二人は言葉を交わします。「…どんどんやばい方向に向かってさ」「そうね」「でも自然に浮かんでくるのよね」「うんわたしも」「魔法かな?」「魔法かも。お月さま出てるし」「そうだね。月って魔法の源っていうし」「ほっそいお月さまだけど」「そうね」「それとか晩ご飯のスープのせいかな?」「あああれね。なんか魔法のスープっぽかったし」「なんかそんなかんじかも」「サラダもおいしかったよね」「うん。ハーブ好き」「そういえばさあ」「ん?」「ラブソングってできるときこんななのかな」「さあわたしにはわからないわ」「そうねあたしもよくわからない」「あははみなみちゃんもなのね」再び黙りこむ二人。「ってか…これ、ボツだよね」少し落ち着いたみなみが、小さな声で呟きました。「ええ。 というか、内密に」「おう」「それじゃ、寝ましょうか」「ん」ふたりはぎこちなく扉の方へ向かいました。なるべく互いの顔を見ずに。扉を開ける寸前、みなみが低い声で言いました。「みゅう」「ん?」「これからも、よろしくね」「…ええ」「長くなる…と思うけど」「ええ」また無言になる二人。(やっぱり思いすごしだったのかな。 こんなにすらすら出てくるなんて…)がちゃっと扉を開け、階段を上っていきました。(というかなんでこんな方向に!?)「…まあいいや。おやすみ、みゅう」「みなみちゃん、おやすみ」・・・*****翌朝。「おはよー、おねーちゃん」「…ん? …おふわぁあぁ…よ」ふぁみの声で目を覚ましたみなみは、大きくあくびしながら目を擦りました。「あら、みなみさん、眠れませんでしたの?」こえだが服を着ながらみなみに問いかけます。「ん?んー… うん」まだ寝惚けているみなみは肯きます。ぴしゃっと顔を叩くと、立ち上がりました。そしてばばっと着替え完了。「はやいな」ふぁみが呆れるほどのスピードでした。「…」ちらっと見ると、まだ眠っているみゅう。「こほん」小さな咳払いをしたみなみは、「みーゆ、起きなさい朝ですよー」と、みゅうの母親の口調を真似て叩き起こします。すると…「あー…あ…おかーさん?おは… ? …あれ?」やがて目を覚ましたみゅう。「あはは、みゅーちゃん寝惚けてるー」クレアが指さして笑います。「え?あ…そっか、ここは学校」さらに寝惚けているみゅうの言葉に「ぶっ」と吹き出すふぁみ。「違う違う。MAHO堂だよ」その時部屋の外からチュチュの声がしました。「起きてるー?あさごはんよー」「はぁい」と返事するクレア。「だって。みゅーちゃん、はやく着替えてー」「あー…そうね」*****「おはよう、みんな」クレアが食堂の扉を開けると、魔女服の上にそのままエプロンをつけたりずむが朝食の準備をしていました。「りずむさんおはようございまっす」ぺこっと頭を下げるみなみ。「ん、みなみちゃんおはよ」サラダボールを手にしたりずむはそれに答えます。不意にりずむはみなみに尋ねました。「あ…そういえば、昨日の夜中、裏庭で何してたの?」「げっ」びくっとするみなみ。「げっ…って」そう呟きつつ、ふぁみがみなみを見ます。「私が帰ってきた時に、ちょうど出ていったっぽいけど。 そういえばみゅうちゃん…もいたわよね?」 何気なくりずむはみゅうに質します。「う」みゅうも言葉に詰まりました。「うっ、って言った?ねー」と、わざとらしく尋ねるクレア。みなみは少し狼狽えながら、いかにも説明口調という感じであたふたしながら、またそれを隠すようにふぁみに言いました。「いやさ、あたし、なんか目ぇ覚めちゃったから、裏庭で月眺めてたのよ。 きれーだったでしょ?昨日の月。 そしたらみゅうを起こしちゃったみたいでさ。みゅうも出てきて。 で、ちょっとおしゃべりしてたの」「おねーちゃんがそんな長ゼリフ珍しいね」ふぁみが呟きます。「そう?」「しかもなんかえっらいカタいし」「それに、昨日はほとんど新月でしたけど?」「…あーおなかすいた」極めて不自然に、みなみは食卓につきました。「ますます怪しいですわ」こえだがみなみとみゅうをじろーっと睨みました。「ひみつの相談でもしてたの?」ふぁみがみゅうに尋ねます。「うん」思わず肯いてしまうみゅう。しかしすぐに首を横に振って否定します。そんなみゅうとみなみを見たりずむは、くすっと笑い、「そんなことより先に朝食朝食。 お味噌汁が冷めちゃうわ」「あ、そうだ」ふぁみはすぐさまテーブルにつきました。「ってかおねーちゃん食べるのはやい!!」すでに丸干しをかじっているみなみに注意を加えます。みゅうは、そんなみなみをじっと見つめていました。そして、小さく微笑むとみなみの隣りに座り、一緒に丸干しをかじりました。「あーみゅーちゃんまでー」クレアが指をさし、大声で非難しました。「はいはい。あわてないあわてない。 …はい、準備完了。いただきましょう」今だ立っていたこえだとクレアが、そして最後にりずむが席につきました。「それじゃあ、いただきましょうか…」「いただきます」「で、りずむさん」まず水を一杯飲みおわったふぁみが尋ねます。「ん?」「ステーキは?」「ないわよ」あっさりと答えるりずむ。うなだれるふぁみ。「あほかあんたは」みなみは五本目の丸干しを囓りながら言いました。「朝からステーキって」こえだも呆れ顔です。「だって昨日は食べ損ねたしー」みゅうはそんなふぁみに、そしてみなみに視線を送ります。みなみもそれに気付き、小さく肯いて答えました。「あーまたみゅーちゃんとみぃちゃんなんかしてるー」それに気付いたクレアが囃したてました。「そういえばさぁ、さっきのつづきだけどー」ふぁみもにやぁっと笑みを浮かべました。騒がしい朝の宴、開始です。
Nov 4, 2006
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5月4日。今日はMAHO堂でお泊まり会。*****18:30。まずは夕食。・・・「さあ、できたわよー」と、りずむとこえだは、昼頃から二人で作っていたパーティー料理を食堂室に運んできました。庭で育てているハーブをふんだんに使ったサラダ、よくわからないものをいっぱい煮込んだ、魔女特製スープ。ライ麦のパン。梅干し、納豆、冷や奴。そして、ステーキ。ほか、いろいろ。「すごい色のスープだ」みなみは何故か目を輝かせています。「うわぁ…」その隣で唖然とするみゅう。「すすすすすっすすすすすすステーキ」よだれ垂らし放題のふぁみ。「よだれ」こえだはふぁみに短く注意します。「はぁい、じゃあ…」りずむは指を弾きました。一気に消える明かり。カーテンもシャッという音をたて閉まりました。真っ暗な部屋。きゃっきゃとざわめく五人。「うふふ」りずむがもう一度指を弾くと火花があがり、ロウソクに火がつきました。色とりどりの炎。「はい☆」りずむが指を弾くたびに炎の数が増えていきます。「きれー…」ふぁみは目を潤ませています。その隣りでりずむをぼーっと見ているこえだ。それに気付いたりずむは「あら、どうしたの?」と尋ねました。「え?いや、すごいなぁって」「うふふ、魔女だもん私」「魔女、か…」そう呟きながら、こえだはりずむの指先を凝視しています。「ステーキー!!!」突然隣のふぁみが発狂しました。宴開始の合図です。*****宴終了。いつも通りふぁみはステーキを口にできませんでした。午後八時半、魔女界への入口。「ごめんね、今日はちょっと大事な用があるから、 魔女界に行かなきゃならないの。 明日の朝には戻ってくるから。 …あとはチュチュ、お願いね」「おっけー」空中であぐらをかいていたチュチュは、こくんと肯きました。その隣では既にパジャマ姿のクレアが手を振っています。「はーい、いってらっしゃい、りずむさん」「行ってらっしゃい」他の四人も同様に。にこっと微笑み、りずむは魔女界への扉の中へ入っていきました。すると間もなく、扉はすっと閉じてしまいました。「…んじゃ」チュチュがそのままの体勢でくるんと五人の方を振り向き。びしっと指差しました。「夜は魔女の時間!!! だから遊ぼう!!!!」「おーっ!!!!」五人も拳を天に突き上げます。「…」変な静寂。「…で、何するの?」ふぁみはチュチュに尋ねます。「…何しよっか?」「決めてなかったの!?」「んじゃ王道。枕投げ」みなみはいつの間にか見習い服に着替えています。「みなみちゃん、いつの間に」みゅうは気の抜けた声を上げました。「ピピット…プーリット…プリタン…ペーペルト!! 枕よ、たくさん出てこい!!!」ぼわん、という音と共に、大量の枕が現れました。「…」ぽか~んと絶句している四人とチュチュ。「…おねーちゃん、アホでしょ?」ふぁみは山積みになった枕を眺めて呟きました。「何!? …ピピットプリットプリタンペペルトっ!! 枕よ、ふぁみに向かって飛んでいけ!!」みなみは呪文を早口で唱え、ポロンを振りかざしました。枕はつぎつぎにふぁみに向かって飛んでいきます。「ううううわああ! クレアちゃんなんとかして!!!」そんな様子をみていたクレアも、「うん、それじゃふぁーちゃんくれあもいっくよぉ~っ! えい!!」クレアは魔法でバットをいっぱい出しました。「これで打ちかえして…」しかし時すでに遅く、みなみが放った枕は全てふぁみに命中していました。「ありゃ」
Nov 3, 2006
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*****そんなこんなで夜11時すぎ。狂乱の時間も過ぎ、クレアは既に夢の中、その他四人も順番に入浴中。最初に入浴を終えたこえだは一人、中庭にいました。(わたくしにも…)秘かに見習い服に着替えます。「火ぐらい、出せますわよね」息をすぅっと吐き出します。そして…「えいっ」かすっ…何も起こりません。というか、ぱちん、という音さえ鳴りませんでした。「もう一回…」ぱちん☆今度は音は鳴りましたが、ただそれだけ。「やっぱり無理なのかなぁ」少し息を大きく吸いこんで三回目の挑戦。「三度目の正直…」ぱちん☆やはり何も起こりません。「やっぱり呪文唱えないといけないみたいですわね」そう呟きながら、何気なく指を鳴らしました。ぱちん☆そうすると、一瞬だけ火花が散りました。「え?」「あれ?けーちゃんこんなとこで何してんの?」タオルで髪を拭きながらふぁみがやって来ました。「あ、ふぁみさん。 さっき指弾いたら火花が…」「え?そうなんだ」「ええ。でも火花だけで」「あ、けーちゃん魔力少ないからー」「…うるさいですわ爆発女」「んならさ」ふぁみはこえだの右手を両手でぎゅっと握りました。「な!?」「これでやってみて? あたしの魔力、おすそわけ」にこっと微笑むふぁみ。「できるんですの?そんなこと」「知らないよ。だからやってみてって」「わかりましたわ。 …じゃあ」こえだは目を軽く閉じ、鼻で少し息を吸いこみました。隣で手を握るふぁみの、洗いたての髪の香り。そして、握った手の温かさ。ちらっと見ると、ふぁみと視線が合いました。「いけるよ」(いけるかも…)素直にそう感じることができた自分に対する、ほんの少しの喜びを感じながら、こえだはすぅっと息を吐き出しました。「いきますわよ」にやりと笑みを浮かべ、そして…「えいっ☆」ぱちっ!その途端、小さな火花が起こりました……のはずが、ぽん、という甲高い音と共に、銀色に光る煙のような炎が、ふわっと立ち上りました。「… …うわっ!!!」一瞬遅れて、同時に飛びのく二人。「どうしたの!?」その閃光に気付いたチュチュが猛スピードで飛んできました。ふぁみが頬を掻きながら説明します。「え?いや、 りずむさんの真似して指弾いて火ぃ出そうとしたら」「なんかすごいのが出ちゃいまして…」と、前髪を焦がしたこえだが、それに続けました。「なんで見習いなのに呪文も無しで魔法が…??」チュチュは理解し難いという表情で二人を眺めています。「まあ、ケガはない…みたいね」「うん、やけども何とかしなかった…よね?けーちゃん」「ええ、ご心配おかけいたしました。 前髪が焦げちゃいましたが」「あらら」ふぁみはその前髪を指でつまみました。すると騒ぎを聞きつけたみなみとみゅうもやって来ました。「なに?また爆発?」・・・「へぇ、こえだちゃんがねぇ」みなみはこえだの指に目をやりました。「…指、普通なのにね」「あたりまえでしょ」ふぁみがすかさずツッコみます。「どうやったの?」みゅうはふぁみに尋ねました。「んとね、けーちゃんが指弾いた」「ふぁみさんが魔力あげるーとか言ってわたくしの手を握って…」「…へぇ」みなみの目が輝きました。そしてみゅうのところにつかつかと歩み寄り、「みゅう、やってみ?」そういってその手を握りました。「は?」「指ぱちんて、ほれ」「…」しかたないという顔で、みゅうは指を弾いてみました。ぱちん☆「…音出たな、一発で」みなみはぼそっと呟きました。「わたしもびっくりしてる」みゅうはそう答えます。「そっちかい」とふぁみ。それに続けてこえだが、「…でも火は出ませんわね」と言うと、みなみは突然、「じゃあこう…」ぎゅうっとみゅうに抱きつきました。「手握るより魔力おっけーでしょ?」みなみはそう言いながら八重歯剥きだしでにこっと笑いました。「!?」そんな突然の行動にとまどうみゅう。「みなみちゃん!?え!? 魔力おっけーって…」「…やってみ」低く抑えた声で、諭すように促すみなみ。「う…うん」ぱちん☆音は鳴りましたが、火花一つ出ません。「やっぱダメじゃん」ふぁみは頭の後で手を組み、ぼーっと二人を眺めています。「じゃあ、もっとぎゅーっと…」「いたたた…みなみちゃん痛いってば」「止めなくていいんですの?」こえだはふぁみに尋ねます。「いいのいいの。なんか面白そうだから」「そんなぁ~」みゅうが悲鳴をあげます。「…」そんな四人を、腕組みしてじっと見ているチュチュ。「ほい」というみなみの掛け声で、みゅうは三度指を弾きますが、結果は変わらず。「そっか。それなら…」突然みなみはみゅうの顔に顔を近付け…「!!?」びくっとして声も出せず固まってしまったみゅう。「おねーちゃん!!」我慢できずにふぁみが声を上げました。それとほぼ同時に、「…というのは冗談」そっと顔を離すみなみ。「っていうかやっぱだめだね。 …あたしらのほうが魔力強いはずなのに」ふぁみとこえだを見るみなみ。「ふぁみとこえだちゃんにできたからあたしらも… って思ったんだけど… …ん?」「…」みゅうは頬を赤らめたまま、硬直しています。「あれ?」みなみはみゅうの顔を見つめました。「…」無言で、約3秒。そしてさらに顔を近付け、7秒。「……」「おね…」ふぁみがそう言いかけた途端、「…さて、部屋に戻ろうか」と、一人部屋に戻ろうとするみなみ。「おねーちゃん、こんな状況でほったらかしか!!」ふぁみはみなみの腕を掴んで止めました。「あ、あれ?」と同時にみゅうも正気を取りもどしました。「みゅうさん、あちらの世界から戻ってきましたわよ」こえだは二人にそう呼び掛けます。「あ…みゅう、ごめんね」みなみは申し訳なさそうな顔で謝りました。「ちょっとやりすぎたね」「ん? ううん、大丈夫…」「でもさぁ…あそこまで固まる?」 ふぁみはそう言いながら、近くにいたこえだの顔に顔をぐっと近付けました。「こうやって顔近付k…」べちっ。互いの鼻がぶつかる寸前でこえだのビンタ。掌底気味に、見事に顎に入りました。「わたくしはあれぐらいでは固まりませんわ。 っていうかふぁみさん。あなたの行動はお見通しですわよ。 分かりやすすぎます!」「さよか…」一撃KOされるふぁみ。「お部屋に戻りましょう?」そう言って、 目を回しているふぁみを引きずっていくこえだ。「いいの?あの二人」「いいんじゃない? あいつらいつもああいう感じだしさ」みゅうの顔を見るとまだ少し赤みが残っています。「…あたしらも、戻ろっか」「うん」小さく肯いてみなみについていくみゅう。ほんの少し、わからないぐらいに距離を置いて。「よくわからないわね、あの子たち。 ほんとに…」チュチュはそう呟くと空を見上げました。青い夜空に黒い影となった木の枝。「… ま、いっか」そう言って、閉ざされた魔女界の扉を見つめました。「まだ、ひと月経たないんだから、ね」*****午前一時、クレアの部屋。(ふぁみさん…)隣で寝息…というかものすごいいびきを立てているふぁみを半ば閉じかけた目で見ているこえだ。(さっきは…やり過ぎたかな)掌に残るふぁみの顎の感触を反芻します。誰に対しても素直になれなかった自分。さっき初めて一瞬だけ素直になれた気がした。その時感じた手の柔らかな温もり。薪がぱちっと爆ぜたような感覚。そして、きゅっと暖かくなった心。そっとふぁみの手に、手を伸ばす。躊躇うように、一瞬動きを止める。そして、その手の甲に手を添え、呟く。「ありがとう」…たったこの一言を言うのに、しかも相手は寝ているのに。 二時間もかかった。何故…?(はぁ…)と、こえだは小さくため息をつき、でもほんの少し満足げに、急速に重くなっていく瞼を閉じました。「おやすみなさい…」
Nov 3, 2006
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夜の空気に私を映して見えた姿はいったい誰なの?私を見ている私としか言えない気持ちがもどかしいだからさざなみ立ててみる息をそっと空に吹きかけ風で水面を揺らすように夜の空気に波を作るの波に歪んだ私を見ている私の姿を歪んでないってそんなことが言えるのだろうか…はぁ…考えてもわからないさざなみみたいに何もない風に誘われ 生まれ出る水面を漂う どこまでも夜の果てに辿りつくまで千年生きれば分かるのかな?それともずっと分からないのかそれさえ分からぬ私は まるで夜の水面を漂う波ねどこかへどこかに流れていくの…千年先には分かっているの?それとも永久に分からないのか諦め顔で空を見上げる夜の水面を漂う波が静かにきらきら流れていくの…もいちど空に息をつく生まれる波紋終わることない旅の始まり*****ふぁみ:「おねーちゃん、熱でもあるの?」みなみ:「何が?」ふぁみ:「いやだっていろいろと変じゃん」みなみ:「変言うな。 私はなんかかゆくなるようなのが好きなのよ」みゅう:「みなみちゃんらしいわね」みなみ:「ほれみろ」ふぁみ:「まあいいけどね」こえだ:「…っていうか、千年先ってどちらにしても 死んでますわね、わたくしたちは」クレア:「くれあは生きてるよー、たぶん」みなみ:「…だね」ふぁみ:「クレアちゃんは人間じゃないからねぇ」みゅう:「そっか…じゃあ、私達も魔女になれば…」ふぁみ:「長生きできるねっ!」こえだ:「ええ。…っていうかみなみさん?」みなみ:「ん? …ああ、ちょっとね、考え事してたの」ふぁみ:「ふーん… どーせたい焼きかりんご飴でしょ?」みなみ:「…いや、今日はどちらかというとガトーショコラ」ふぁみ:「なんか似合わないよ」みなみ:「!? …そういうことを言う口はこの口か!?」ふぁみ:「いふゃいいふゃい…」みなみ:「…あれ?」ふぁみ:「ったく…六年の癖に手加減ってものを…ってどしたの?」みなみ:「ふぁみのほっぺたってこんな柔らかかったっけ? 太った?最近」ふぁみ:「え!?」みなみ:「すごい伸びるし」みゅう:「どれどれ…」ふぁみ:「にゃっ!?」こえだ:「じゃ、わたくしも」ふぁみ:「いふゃっ!!へーひゃん!!てかげん!!てかげん!!」クレア:「じゃあクレアはあごー」ふぁみ:「!?」みなみ:「いやクレアちゃん、そこは伸びないから。 そういや首の皮とか伸びそうだな…どれ」りずむ:「おやつ持ってきた… …!?」
Nov 2, 2006
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どれみ:「…近いうちに、悲しいことが起こるかもしれないけど」ハナ:「ほえ?」どれみ:「ハナちゃんは、あたしの娘だから、ね?」ハナ :「どれみ…? 何言ってる…の?」
Oct 31, 2006
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人間界の時間で言うと、午後八時過ぎ。そろそろハナの守り役であるマジョリズム帰宅の時間です。彼女の居室は城内にあるわけですが、それでもいまだ幼いハナにとっては、寂しいことには変わりなく、いつものように少し渋っています。*****リズム:「では、ハナちゃん。 また明日です」ハナ :「…りずむ、帰っちゃやだ」リズム:「ハナちゃん、わがまま言わないで」ハナ :「…だって」リズム:「明日の朝、必ず来ます」ハナ :「… じゃあ、やくそく」リズム:「はい。 指切りです」ハナ :「ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼん… …はのまなくていいや」リズム:「ふふ…やさしいですね、ハナちゃんは」ハナ :「えへへ。 だってりずむがいたいのは、ハナちゃんいやだもん」リズム:「ハナちゃん…」ハナ :「うんっ。だから、はりはのまなくていいよ。 でもまってるからね」リズム:「絶対、来ます。 …何があっても」ハナ :「うん」リズム:「それではおやすみなさい、ハナちゃん」ハナ :「ん、おやすみなさい、 …りずむ…」リズム:「??」ハナ :「ううん、なんでもない」廊下を歩いていくマジョリズム。その後ろ姿をじっと見つめているハナ。(りずむママ…おやすみなさい)廊下の一番奥、ぼやけたように広がる闇の中に、融けるように消えていったマジョリズムに向かって、ハナは小さく、そう呟きました。(「ママ」…か)さっきの呟き声より、さらに小さなため息をついたハナは、部屋に戻ると後ろ手にドアを閉めました。そのままドアにもたれ、天窓から夜の空を見上げると、いつもと同じく微笑んでいる月。…静かな、長い夜。*****だいたいハナ5歳・マジョリズム15歳ぐらい、すなわち2005年ぐらいを想定しています。
Oct 26, 2006
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???:「ふぁみさん、ですね?」ふぁみ:「…?はい…。 ってあなたは…誰?」???:「近いうちにお会いすることになるでしょう」ふぁみ:「は?」???:「その時に…あらためましてご挨拶させていただきます… それでは」ふぁみ:「え?ちょ…ちょっと? …消えちゃった… … おばけ?幽霊?」*****ふぁみ:「…ってなことがあってさぁ」みなみ:「魔女だろ、どう考えても」りずむ:「どんな人だった?」ふぁみ:「んー…なんかよくわからなかった。 あ、でもあんまやな感じはしなかったよ」クレア:「そうなんですの?」みゅう:「でも気を付けてね、アブない人多いっていうから」ふぁみ:「だねぇ」りずむ:(まさかこっちの世界にまで手を出してくる…ってことは …ありえない…とは言いきれないけど)クレア:「りずむさんどうしたの?」こえだ:「何か心配事でも?」りずむ:「ん?…ああ、大丈夫。 たぶん違うわ」ふぁみ:「何と?」りずむ:「え?…あー …魔女?」みなみ:「?」ふぁみ:「じゃあ変質者かなぁ」りずむ:「たぶんね」ふぁみ:「それなら気をつけなきゃ」りずむ:「みんなも、気を付けてね」一同 :「はーい」りずむ:(パルフェ…か…あるいは一緒にいたあの魔女か… もしかしたら女王様? でもそれだったら私に何も知らせないってことは… ほんと誰だろう…)
Oct 22, 2006
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色のない世界。暑苦しいのに、悪寒がする。不規則に拍動する脈のような響き。その間を縫うように、どこからか声がする…(私を置いて行かないで)(置いて行ったのはあなたでしょう…)(そうね…)(手を伸ばせば…届くのかな?)誰の声かはっきりしない、ぼやけた声。自分の声かどうかも、わからない。(私に聞かないで!!!…もう会えないわ)(今、何て言ったの?)(さようなら)(さようなら)「…」夜明け前。外はまだ真っ暗。パルフェは静かに目を開け、暗く沈み込む寝室の天井を眺めた。(夢の続きみたいに、暗い…)頬を手の甲で撫でてみる。濡れていた。「…馬鹿みたい」小さく呟き、鼻をすする。「パルフェ」「!?」急に耳許に聞こえたのは、お付きの妖精トゥトゥの声。「ヤな夢見たの?」「…うん、そう」「どんな?」「たぶん、友達とお別れする夢」「マジョリズム?」「…わからない」淡々と繰り返される囁き声。それが途切れた。窓の外では早まった鶏が鳴く声がした。「後悔してる?」トゥトゥはさらに小さな声で尋ねた。「…ううん」声にならない声を発し、首を横に振るパルフェ。そして再び身を横たえた。シーツの擦れる音。「嘘…」そう呟きながら、その枕許に座り込むトゥトゥ。「嘘、かもね。でも本当でも、あるのよ…」そう言いながら、再び目を閉じるパルフェ。「…私はパルフェの妖精だから」トゥトゥはその耳許で囁いた。「妖精、だから」*****マジョルナの家。ちょうどルナとリリは朝食を摂っている。「…リリ、あなたもそろそろ魔女試験受けてみたら? その方がいいと思うわ」「でも、そうしたら…」「馬鹿ね、私は一人でも大丈夫だし、 それに魔女になっても、あなたどこかへ行っちゃうわけじゃないでしょう?」「うん、でもね…」少し困ったような顔をするリリ。「ま、いいわ。 妖精の方がいいってのもあるかもしれないからね。 …私は生まれつき魔女だからわからないけど」「ええ」リリは肯いた。「私は妖精だから」少し笑顔を作り、黙りこむリリ。ルナはそれをちらっと見てからパンを口に運んだ。*****午前一一時。パルフェはルナを伴い、魔女図書館中央の塔81階、マジョリードの執務室にいた。「…私は女王様を裏切るつもりはない!」マジョリードは椅子から立ち上がり、パルフェに向かって強い口調で言った。「何故に背かねばならぬのか…」冷笑さえ浮かべるマジョリード。「…馬鹿げている」「マジョリード様…」パルフェは宥め諭すように口を開いた。「急進的すぎる変化に、魔女界が、魔女達がついていっておりません。 すなわち…各所に歪みが生じてきているのです」冷ややかな目でパルフェを睨む。「…それは聞いておる。いろいろとな」「それらは女王様の拙速に過ぎる“改革”が引き起こしたもの」「…」マジョリードは再び椅子に腰かけた。「それで?」「ですからこの『改革』の流れを一旦止める必要があるのです」「そのために女王様に退位を迫るのか」「はい」パルフェは肯いた。「わけがわからぬ。 それこそ短絡的な暴挙ではないか?」パルフェは首を横に振る。「今の制度上、女王様が居られてはそれは叶わぬこと…マジョリード様ともあろうお方がそのようなことお分かりになられぬはず、ありますまい」そして少し睨むように目を細めた。(そう、あなた方旧元老が女王の権力の増長を招いた)パルフェの後で控えているルナもまたその「旧元老」の一人を見た。「…しかしな」反論しようとするマジョリードの言葉を遮るように、パルフェは声音を強めた。「マジョリード様、あなたにとって大切なのは、 魔女界か、それとも女王様か」その声をさらに打ち消すようにマジョリードは答えた。「無論魔女界だ。 しかし、女王様がいなければ魔女界は成り立たぬ。 そして今の女王様は脈々たる魔女界の女王としての『正統』を受け継いだ方。 軽々しく廃立するわけにはいかぬ。それこそ秩序が崩れる」「そうでしょうか?」ふう、と一つため息をつき、パルフェは窓の外を指差した。「今の女王は、女王たる資格さえ失いつつあります」「?」マジョリードの表情が険しくなった。「マジョリード様…この空の色をご覧下さい。 すでに色が薄れてきております。 これは女王様の魔力に翳りが生じてきている証拠。 そして、我々が生まれ出てくる薔薇の花の成長もまた鈍くなってきている…」マジョリードは目を開いて窓の外を見、それからパルフェの顔をチラリと見た。少し大袈裟な身ぶりをとるパルフェ。「そして魔女界各地に見られる不穏の空気… これらはみな女王様の力が衰え、統治が乱れ… 結果、各所に生じた歪みがもたらしたものです」パルフェの左眼がちりっと火花をあげた。「全て女王様の弱体化によるものなのです。 いくら『正統』であるとはいえ、このまま進めば…」パルフェは熱を帯びてきた左眼を閉じた。「…恐らく近い内に災厄が訪れるでしょう」「予言者か、お前は」マジョリードは鼻で笑った。パルフェが苦笑しながらも異を唱えようとすると、突然ルナが口を開いた。「マジョリード様、あなたは人間界との交流を望んでおられる」マジョリードは鋭い視線をルナに向ける。「ん?人間と交流…?」そして肯いた。「うむ、そうだな。 人間とはもっと理解しあわねばならぬからな」ルナは、その言葉を鼻で笑った。「…何がおかしい?」抑えた口調とは裏腹の、烈しい眼光をルナに突き刺した。ルナはその視線を受け流しながら進み出で、口を開いた。「果たして…分かりあえるでしょうか?」そう言いながらルナは、マジョリードとは異なった冷ややかな視線を送った。それからマジョリードが遮れるように、わざとゆっくりと言葉を発した。「聞くところによると、貴女様は以前人間を…」マジョリードはルナから少し目をそらした。「…それは私の誤解だった。 私を傷付けないでおこうとする人間の優しさ…」その言葉を、ルナは遮った。「優しさ…」息をふぅっと吐いた。顔右半分を覆っているヴェールが少し捲れ上がる。「人間は…表面では笑顔を作り、我々魔女の歓心を得ようとする。 そして我々が持つ能力だけを利用し、陰では嘲笑し、使い捨てにする… それから迫害し…傷付け…」(?)パルフェはルナの言葉に少し違和感をおぼえた。「さらには…命さえ奪う」ますます語気を強めるルナの口許を、じっと見つめるパルフェ。いつもならその視線に気付くはずだが、今日は気付かない。「そんな者共と交流を持とうとするのは…」(珍しいな、ルナが感情的になるとは)心なしかルナの瞳は血走り、赤みを帯びている。その眼光にも、いつものような冷たさが無い。「…愚の骨頂」「お前は私を愚か者と言うのか」マジョリードは激昂のあまり、逆に声にならない声で呟いた。(何を考えているのか、ルナ)マジョパルフェはその真意を測りかね、腹立たしげにルナを見た。こんどはルナが視線を合わせてきた。そして少し目を伏せた。パルフェはため息をついた。(ルナの言葉は正しくない…しかしここでマジョリードを敵にまわすわけには…)パルフェは静かにルナの言葉を継いだ。「…ルナの言葉は失礼に過ぎます。 しかし彼女が言うこともまた正しい…」「お前まで私を…」静かに首を横に振るパルフェ。「いいえ、そうではなく… 彼女が言うような人間は多いということです。 現に私も留学中に…少なからず見て参りました」パルフェは左手小指に輝く指輪をちらりと見てから話し始めた。「例えば特に私が大学にいた時」マジョリードの瞳を真っ直ぐに見つめて続けた。「大学で一番の友人…親友だと思っていた人間に、 私は魔女だと打ちあけました」少し微笑みを浮かべるパルフェ。「その人間は、私が魔女でも友達だよと言いました。 私は…その人間を信頼しました」ちらりとパルフェを見るルナ。「しかし…その数日後… 同級生たちは私を見ながら… …笑っていました。 何か変なものを見るような目で、私を見て」パルフェは一瞬マジョリードの顔から視線を外し、少し息を整えた。「…私が人ならぬ魔女だということは、既に広まっていたのです」そして左手の小指の小さなガーネットの指輪を手で隠すようにしながら呟いた。「その時、私は気付きました。 人間とはこういう生き物なんだと。 …しかし、私は今までと同じように振る舞いました」マジョリードはパルフェの表情が徐々に悲痛な色を帯びていくのを見てとった。「そんな私に対して人間達は…」乾いた唇を舌で潤し、続けた。「…私はいろいろな嫌がらせを受けました。 結果、大学に…いいえ、その街に…居られなくなりました…」「パルフェ…」「…人間とは…こういう…」喉に何かがつかえたような声。「もうよい」マジョリードはパルフェの声を押し留めた。「…」小さく息を吐くパルフェ。その横で少し驚いたような表情を浮かべているルナ。マジョリードはパルフェの吐息が終わるのを見とどけてから、静かに窓の外を再び眺めた。確かに、以前のような鮮やかな色が、徐々に失われつつある空。「…そうか…」机の上で手を組み、小さくため息をつくマジョリード。パルフェは声を整え、続けた。「かくの如き人間達との交流をこのまま続けていけば… もちろん我々にも得るところはあるでしょう」そして声を少し強めた。「…しかし、それ以上に多大なる被害がもたらされるでしょう。 私もまたそう考えています…」そして真正面からマジョリードを見据えた。「そして女王様は、このような方針を作り上げたのです」そう言いながらパルフェは一歩近付き、さらに言った。「このような方針を女王様が採りつづける限り、 魔女界に安寧が訪れることはないでしょう。 ですから、魔女界の為に…」「女王様の力が衰えているということもお忘れなく」目を閉じ、パルフェの言葉を聞いていたルナもまたそう付けたした。マジョリードは二人の顔を交互に睨んだ。そして目を閉じ、しばらく考えた。「わかった。 もしかしたら、本気で考えてみる必要があるかもしれぬ。 …ただ事は重大。 もう少し時間をくれないだろうか、パルフェ」「それは…」肯くパルフェ。「しかし、このことは内密に」「当たり前だ」マジョリードはそういうと再び窓の外を眺めた。(果たして本当に女王様の力が弱まっておるのか… それとも私の目が曇ったのか)パルフェとルナは、そんなマジョリードに一礼して部屋を出た。
Oct 21, 2006
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*****塔の中央を貫く螺旋階段を降りていく二人。後をついていくルナは、不意にパルフェに話し掛けた。「パルフェ様、先ほどは申し訳ございませんでした」「ん? …ああ、気にしなくてもいいわよ」そう言いつつも立ち止まるパルフェ。「…でもちょっと変だったわね」そして振り返る。「申し訳ございません」ルナはパルフェの目をしばらく見つめてから、深々と頭を下げた。(これ以上聞かないでくれ、か)再び階段を降り始めるパルフェ。それに続いて階段を降りていくルナ。無言の二人。所々に開いている窓から差し込む薄暗い光。何度か、何十度かその光を浴びて降り続ける。九階ホールに出た。ここから下が一般の書庫・閲覧室となっている。「ふぅ…」(全く…エレベーター付けて貰いたいわ…魔法も使えないし…)という感じで一つ大きくため息をつくパルフェ。ルナを見ると、いつも通りの無表情。「…」そんな彼女にパルフェは少し微笑みかけながら、周りに配慮しつつ小声で話し掛けた。「またお昼どう?」ルナは少し目を見ひらいた後、「…ご一緒いたします」静かに肯いた。そしてまた歩きだす二人。*****図書館正面入口前。「ちょうどお昼前ね」ずっと前人間界で買った懐中時計を見ながら、パルフェは呟いた。「それにしてもほんと薄暗いわね」「はい」と、ルナは不意に何かを思い出したようにパルフェの顔を見た。「そうだ、パルフェ様」そう言いながら指を弾いた。現れたのは小瓶に入った植物の葉。「?」「これ、“魔女の爪”です」パルフェはそれをじっと見つめながら呟いた。「ああ、聞いたことあるわ」ルナはその小瓶をそっと差しだした。「差しあげます」「ん?」少し理解できないという表情でルナの顔を見あげた。「パルフェ様も目のお怪我が…」パルフェは、感情をほとんど読み取れないルナの表情のうちにも、ほんの少しだけ優しい目の光が残っているように感じた。「あ、ありがと。 そうよ、さっきも少しちりっと痛んだのよね。 …でも、いいの?」「はい、どうぞ」パルフェはその小瓶を受けとった。「ん。 それじゃ、使わせてもらうわ」パルフェが指を鳴らすと、その瓶は霧のように消え、代わりにほうきが現れた。「じゃ、行きましょうか」「はい」ルナもほうきに腰かけ、二人はいつものレストラン目指して飛びたった。*****夜―「…」青白い月が照りつける、ベッドの上。パルフェは眠れずにいた。枕許ではトゥトゥが丸まって眠っている。「よく眠ってるわね」くすっと笑う。「…んにゃ?」トゥトゥが目を覚ました。「ごめん、起こしちゃった?」「うん」素直に肯くトゥトゥ。「パルフェは眠れないの?」同じように肯くパルフェ。「…」無言でトゥトゥを見つめる。「パルフェ…どうしたの? 今朝も元気なかったけど、帰ってきてから……もっと元気ないよ?」トゥトゥは心配そうにパルフェに話し掛けた。「実はね…」昼間の出来事を話し始めた。「留学してたときそんなことがあったんだ。 初めて聞いた…」ため息を付くトゥトゥ。「うん」パルフェは寂しそうに微笑んだ。「…そうなんだ、人間ってやっぱ良くないね…」トゥトゥがそう言いかけると、「ううん」パルフェは首を横に振った。「本当はね、私とその友達との会話、他の人間に聞かれていただけなの」ちらりと指輪に目をやった。「私の味方をしてくれた人間も、少なくなかった」そして指輪を撫でる。その目と指の動きを、チュチュはじっと見つめていた。「でもね、その人たちも私と同じ嫌がらせを受けるようになったの。 だから、私は」パルフェはチュチュの顔を見た。「去った…?」チュチュがそう尋ねると、パルフェは小さく肯いた。そして続けた。「私が大学を…その街を去るとき、友達、泣いて謝ってた。彼女、何も悪くないのに…」小さく息をつく。「『あたしがびっくりして大声で“魔女だったの!?”って叫んだからだ』、って」目を閉じる。「で、この指輪をくれたの。お別れの印にってね」再び目を開け、指輪を示した。「彼女がしていた指輪なの」プラチナのリングに小さなガーネットが嵌めこまれた、質素ともいえる指輪。少し曇った石の部分を親指でそっと拭った。「今日、嘘ついちゃった。 …ううん、嘘じゃないけど。やっぱり嘘。 …もう私にこの指輪を着けている資格はないわ」そう言って、パルフェは指輪を外した。「ともだち、踏みにじっちゃった」ぎゅっと握り締める。「…」チュチュはその手の甲を静かに撫でた。「パルフェ…じゃあ、その指輪、あたしが預かってる」にこっと微笑む。「そうね」その表情を見たパルフェも、ほんの微かに口許を弛めた。そして指輪を託した。「あたしは、パルフェがどんなになっても、 あたしにどういうことをしても… …最後まで味方だから」「!… …」パルフェは、微笑んだ表情のまま泣いていた。「泣かせる…つもりなの?私を」「もう泣いてるね」悪戯っぽく呟くチュチュ。「…これは目が痛いだけよ」「くすり…いる?」「…馬鹿」もう少しで夜が明ける。また鶏が鳴いた。*****同じ頃、ルナもまた空を見上げていた。(…)昼の失態。(私にしては珍しい…ふふ)冷ややかな笑みを浮かべるルナ。(たまにはいいかもしれないな)「私にも今だ強い感情が残っている…か」左手を胸の前に差しだした。真っ白の光がその上に集まり、やがて水晶玉となった。淡い水色、少し歪んだ球状の水晶玉。「…魔女、私は」ぽつりと呟いた。その時気配を感じた。「ルナ」リリの声。「ん?リリ… 起きてたの?」リリはすーっと滑るように、ルナの顔の前を横切るように飛び、ルナの左肩に腰かけた。「うん。 ルナ…」「何?」小声で尋ねるルナ。リリはちらっと一瞬ルナの瞳を見て、月に目を泳がせた。「…やっぱいい」ルナは水晶玉をしまい、その左手でリリの額を指で撫で、妖しく微笑んだ。「うふふ、気になるけど…」リリはその指にそっと触れ、尋ねた。「欲しいもの、ある?」「急ね」そう言って再び空を眺めるルナ。「ある?」もう一度尋ねた。「んー… ハナの命かな?」ルナは何気なく呟く。「…」リリは顔を背けた。「… 冗談よ、冗談」リリの反応が思った以上に強かったため、ほんの少し戸惑うルナ。「あんたがつくるお菓子が食べたいわ」「…作ってあげるわ、明日」リリは喉の奥から、搾りだすようにそう呟くと、部屋へ入っていった。遠くの方で、「おやすみ」と聞こえた気がした。「…おやすみ」ルナはそう言いながら、少し苛立たしげに空を見た。(リリ…どういうことよその態度は…)いつものように笑っている月。舌打ちをし、それからその行為を後悔するように小さくため息をついた。(リリのお菓子か…)「お菓子… バターとバニラの香り…」すぅっと鼻から夜風を吸いこんだ。(…どこか懐かしいな)そう心の中で思った瞬間、心の中に何かが生まれた感じがした。嫌な、強烈な嫌悪感を生み出す、何か得体の知れないもの。異物で腹の中をかきまわされるような、胃が押しあげられるような感覚。ルナは急に吐き気を催した。「うっ…!!」あわてて洗面所へ駆け込んだ。「…」リリはそんなルナを見ないようにぎゅっとかたく目を閉ざした。嘔吐の音が聞こえる。耳を塞いだ。リリは涙が止まらなかった。(どうすればいいの?)やがてルナが戻ってきた。リリは自分を覗き込んでいる視線を感じた。しかし、目を開けなかった。するとルナが離れていく気配がした。しばらくすると布が擦れるような音。ベッドが軋む音。小さなため息、咳払い。それから「ごめん、リリ」というとても小さな声がした。そんな気がした。五分も経たない内に、寝息が聞こえてきた。(…私、どうすれば…)リリは、背中を向け丸まって眠るルナを見ながら自問した。「…」ふらふらと飛んでいき、眠るルナの枕もとに座りこんだ。*****火に包まれている建物。周りには見物人と消防隊。怒号と叫び声。そして火が燃えさかり、建物が崩れる音。その建物の中にルナはいた。炎と煙の中、半ば意識を失っているルナ。小さく呟いた。「ごめん、ジャン。もう会えない」梁が崩れてくる。右半身を押し潰す。炎がその身を焦がしていく。やがて白い闇がルナの視界を遮った。*****リリは苦しそうに眠るルナの額をそっと撫でた。その掌が焼け爛れた部分に触れると、一瞬動きを止めた。そして呟いた。「魔女になれば…少しは手伝えるのかな… 妖精であることを捨てて… 魔女に…なれば…」窓からは少しくすんだ月の光が差し込んでいる。その光に問いかけた。 「どうすれば…いいのかな…」
Oct 21, 2006
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一方作業場で凹んでいるりずむ。チュ :「りずむ、練習見てあげなくていいの?」りずむ:「やっぱり宣伝にもっと力を…チュ :「…はぁ… … おいこらマジョリズムーっ!!!!!」りずむ:「え?」チュ :「まったくもう… だからあの子たちの練習よ」りずむ:「あ…あ、そうね。 …で、今何時?」チュ :「もう六時前よ」りずむ:「え?うそっ!?」チュ :「ほんとよ」りずむ:「ああ、 …はぁ…チュ :「あ、誰か来た」クレア:「りずむさぁん」りずむ:「うわ!? …あ、クレアちゃん」クレア:「何びっくりしてるんですか?」りずむ:「ごめん」クレア:「そんなことより、こっちこっち」りずむ:「え?何?」チュ :「中庭に?」クレア:「そう、一緒に来てー」クレア:「ここ、このへんのベンチに座っててくださいね。じゃ」りずむ:「“じゃ”って… …あら」チュ :「あの子たちステージにいるわね」りずむ:「そうね。何するんだろ…」チュ :「演奏でも聴かせてくれるのかしら?」りずむ:「まさか…まだ早いわよ。 曲決まったの今日でしょう?」みゅう:「・・・、・・・・・・!」りずむ:「何か言ってるみたいだけど… 聞こえないわ。なんで?」チュ :「なんで?って… 結界よ。結界」りずむ:「けっ…か あ、そっか。忘れてた」チュ :「あんたがかけてんでしょーが」りずむ:「うるさいわねー… じゃ、解除(ぱちん☆)」みゅう:「…りずむさーん」りずむ:「なぁにー?」みなみ:「やっと聞こえたみたいだね」みゅう:「うん。 …りずむさん、聞こえますか?」りずむ:「ええ」みなみ:「いまから歌いまーす」りずむ:「え?」クレア:「りずむさん元気ないからー!」ふぁみ:「まだあたしたちうまくできないけど」こえだ:「心込めて歌いますわ」みゅう:「だから…」五人 :「聴いてください! サンドウィッチ初ライブ!」りずむ:「ライブ…」チュ :「うわ…ほんとにやる気よあの子たち…」りずむ:「ねぇ?」みなみ:「りずむさん、音漏れ防止装置おねがいしまーす」りずむ:「音漏れ…? …って何?」チュ :「だから…結界でしょーが!!!」りずむ:「あ(ぱちん☆)」クレア:「じゅんびおっけー? それじゃいきます、『春』!」******ボーカルはみゅうとクレア、それにまだ楽器が十分に操れないふぁみとこえだもコーラスとして参加。クレアのよく透る歌声を、みゅうの柔らかい声が包み込み、それにこえだの華やかな声と、少しざらついた、力強いふぁみの歌声が色を添えています。…しかし四人の歌声を支える伴奏は、ハイテンション過ぎるみゅうのドラムと、クレアが奏でるふわっとしたベースの音。そこにこれまた奔放すぎるみなみのギターが乗っかり、かな~りアンバランスな感じです。*****りずむ:「…」チュ :「あら、りずむ」りずむ:「えへへ…なんでかな…? すごい…泣ける」チュ :「…まだ演奏そのものはアレだけど」りずむ:「ええ。でも… そんなことより、彼女たちの心。 十分に温かい…それが届いた」チュ :「…そうね」りずむ:「あの子たちなら…」チュ :「りずむ…」*****ふぁみ:「どうでしたかー?」りずむ:「…みんな、作業場に来て」クレア:「なんですか?」みなみ:「なんか声が…」みゅう;「うん。 …いま行きまーす」*****みゅう:「来ましたー」りずむ:「ありがとう…」ふぁみ:「ってうわっ!」みゅう:「ちょ…え? なんで泣いてるんですか?」こえだ:「りずむさん…」りずむ:「これが答えよ。 あなたたちの演奏、私の心に強く響いた。 元気出たわ。 ホントにありがとう」クレア:「びっくりしたよー…」みゅう:「そう言ってくださるとうれしいです」みなみ:「えへへ」こえだ:「私も嬉しいですわ」チュ :「ま、もうちょっと練習は必要だけど、ね」りずむ:「ええ。 女王様にお聴かせするまで、あともう1ヶ月もありません」みなみ:「あ、そっか」こえだ:「あまり時間、ありませんわね…」ふぁみ:「だね… 一日一時間ぐらいの練習でいけるのかなぁ?」りずむ:「でも、焦らなくても大丈夫。 魔法の楽器に慣れさえすれば、あとはきもちの問題」ふぁみ:「気持ち?」こえだ:「こころの?」りずむ:「そう。こころのきもち。 心のね、感情とかをね」ふぁみ:「うん」りずむ:「きもちの力とかを…えっと…魔法に変えて、 そしてそれを音楽とかなんとか」みゅう:「?」みなみ:「りずむさん、あんまりよくわかってない?」りずむ:「!!」ふぁみ:「図星か」りずむ:「だ…だって私…魔法音楽学とか苦手だったし… 楽器の演奏は得意だったのよ!? 理論とかそういうのがダメなのよ」ふぁみ:「そうだったんだー」みなみ:「りずむさん、落ち着いて、落ち着いて」みゅう:「クレアちゃんは?」クレア:「くれあは得意だよ?こないだの試験も97点だった」みゅう:「すごーい」クレア:「えへへ」ふぁみ:「んじゃさ、りずむさんの言いたかったことってどういうことなの?」クレア:「んー… えっとね、心の中から生まれ出てくる感情とか気持ちを、そのまま 体の中にある魔力腺を通して、指とか手、あるいは口などに集中させ、 これまた自分の意識から具現化された有機体である魔法楽器に シンクロさせるとなんちゃらかんちゃら…」みゅう:「…ま…全くわからないわ…」りずむ:「でしょ?でしょ?」みなみ:「しかしりずむさんは八十歳、あたしらは十歳ちょっと」りずむ:「ああもう歳のことはダメっ!言わないで! と…ともあれ、魔法の楽器に慣れさえすれば大丈夫なの!」クレア:「ですね」みゅう:「そうなんだ…」ふぁみ:「ま、楽器の練習あるのみってことだよね」チュ :「そう」ふぁみ:「んじゃがんばろー」一同 :「おー」ふぁみ:「っていうか、ぶっちゃけりずむさんって学校のとき成績あんまり良くなかった?」りずむ:「う」*****思わぬ弱点が暴露されてしまったりずむ。そんな彼女に、より親近感をおぼえるふぁみでした。ふぁみが、バツ悪そうにそむけたりずむの横顔をじっと見つめていると、どこかでカラスが鳴きました。「おうちにかえらなきゃ」もひとつカラスが鳴きました。「…そうね、お疲れさま。ありがとう」りずむはふぁみに微笑みかけました。それからほかの四人にも。(この子たちなら…)
Oct 19, 2006
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りずむの部屋に来たみゅうとクレア。クレア:「えっと…魔法のミシンの取説…」みゅう:「あら、これ何かしら」クレア:「あ、みゅうちゃん何? 何か見つけたのー?」みゅう:「これ。このノートに」クレア:「魔法文字だねー」みゅう:「読める?」クレア:「うん、でも古いね。 今じゃ見ない字もあるっぽい」*****春の陽差しに慣れた体に真冬の風は寒すぎて風邪を引いてしまいそう鼻をぐすっとすすりながらひとり呟く 風の中青い夜は大好きだけれどひとりぼっちは寂しいの冷たい雪も融けて消えてくどこへ行ってしまったのひとり呟く 雪の中振り返れば すぐそこにある暖かな家 ともだち そして私の一番大切な人帰りたいけど帰りたいけど…先が見えない薄暗い森湿った霧がたちこめる黒い吐息が私を犯すもう戻れない 昔の私に新たな仲間が 待っているもう戻れない 帰りたいけど戻れないの 遅いのよ *****クレア:「だって」みゅう:「また詩?」クレア:「っぽいね」みゅう:「りずむさんの?」クレア:「じゃないとおもう。 字ぃ違う」みゅう:「じゃあ誰の?」クレア:「わかんない。 でもクレアなんかやだこの詩」みゅう:「なんで?」クレア:「なんか凍えそう」みゅう:「そういえばなんか… あれ、あとは全部真っ白だ」クレア:「一つ作ってやる気なくしたんだよきっと」みゅう:「あはは… でも、なんかほんと寂しい感じするね」クレア:「あ、なんかここにサインみたいのがある」みゅう:「ん?あ、ほんと。 なんか三日月みたいね」クレア:「何かなこれ」みゅう:「さあ… あ、これよこれ。 魔法ミシンの説明書」クレア:「ほんとだ、よく分かったねみゅうちゃん」みゅう:「うん、魔法文字ちょっと勉強してるから。 さっきのはわからなかったけどね」クレア:「そうなんだ。よかったらくれあ教えてあげるよ?」みゅう:「ありがとう、じゃまたお願い。 …っていうか、こんどうちに遊びに来ない?」クレア:「え、いいの?」みゅう:「もちろんよ」クレア:「わー、楽しみだなー… 絶対だよ?」みゅう:「ええ。 じゃ、戻りましょうか。 みんな待ってる」クレア:「うんっ!」
Oct 18, 2006
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夕方四時五十七分。カラスが鳴いています。間もなくMAHO堂閉店の時間です。・・・りずむ「…」ふぁみ:「…でさ、曲は昼決めた感じでおっけー?」みゅう:「細かいところは、やりながら考えましょう?」みなみ:「そだね」チュ :「はぁい五時よ~っ!! お疲れさま~」みゅう:「お疲れさま、チュチュ」クレア:「んじゃ練習だー」ふぁみ:「りずむさんもおつかれ… …てない?あれ?」りずむ:「…」みなみ:「…今日、お客さんゼロだったから」みゅう:「りずむさん、こんな日もありますよ…」りずむ:「いつもなら一人ぐらい…ひとり…」みなみ:「…だめだこりゃ」クレア:「りずむさぁん? だいじょぶですか?」りずむ:「ん? …あ、練習ね、行ってらっしゃい。 これ鍵、はい」クレア:「…だって」りずむ:「いっそのこと転業…いやダメよ。 こういうお店が私の夢だったんだもの… …あ、それなら雑貨も置いたお菓子屋さんとか… うーん…」ふぁみ:「…マジへこんでるね」みなみ:「だね」チュ :「あなたたち、ここはいいから練習してきなさいよ。 りずむのことはあたしに任せて」みゅう:「…」チュ :「りずむたまにああなるのよ。 だから心配しないで、ね?」こえだ:「…わかりましたわ」ふぁみ:「んじゃ、行こっか」クレア:「…うん」*****中庭、池を隔てた向こう側にあるステージ。ここが「サンドウィッチ」の稽古場です。ふぁみたちは魔法で楽器を出し、準備完了。こえだ:「…そういえば誰が歌うんですの?」みなみ:「そうだね、歌の人決めようよ」ふぁみ:「へーい、歌いたい人いる?」クレア:「くれあ歌いたいな♪」こえだ:「積極的ですわね」クレア:「くれあ歌好きだもん。 こほん… ♪ちっさくかおだっす かっわいいはなのめぇえ~♪ …ね?どう?」こえだ:「ふ…ふーん、下手ではないですわね」みなみ:「っていうか素でうまいな。採用ー」みゅう:「採用ってみなみちゃん」ふぁみ:「クレアちゃんが作曲だしね、それは異議ないよ。ね?」こえだ:「ええ」ふぁみ:「みゅうさんは?」みゅう:「え?わたし?」ふぁみ:「うん。作詞のときいっぱい書いてたでしょ?」みゅう:「それはそうだけど… …んー…そだ。 みなみちゃんは?」みなみ:「…」みゅう:「? どうしたの?」みなみ:「…んじゃあたし歌うからみゅうも」みゅう:「え?『んじゃ』って…」みなみ:「イエスかノーか半分か」みゅう:「それじゃ… …イエス」クレア:「はんぶん? …って、何? ふぁーちゃん、どゆこと?」ふぁみ:「クレアちゃん、深く考えない方がいいよ」みなみ:「ふぁみ、あんたは?」ふぁみ:「あー、あたしはだめだよ。 キーボードもまだぼっかんぼっかんいってるからさ。 だからけーちゃんもだね」こえだ:「…くやしいですが」みなみ:「そっか、んじゃ三人が歌兼任ってことで」ふぁみ:「じゃあ始めよっか」みなみ:「おう」みゅう:「まずはパート練習ね」みなみ:「あたしはまず歌だな。 …メロディはどんな感じだっけか…」ふぁみ:「…ん、だいたいよくなってき(どかん)」こえだ:「ダメですわね」ふぁみ:「…もう一回…」みゅう:「でもほんと手足が勝手に動くって不思議な感じよね」クレア:「でしょ?」みゅう:「最初はなんかちょっと恐かったけど」クレア:「今は?」みゅう:「…今は… 今はね? ほら、なんかだんだん気持ちよくなって… 気持ちよくなってきたぁぁああああ!!! ほらほらほらぁ!!」クレア:「あややや…ふぁーちゃんふぁーちゃん」ふぁみ:「え?なぁ… っぬわっ!!? …性格変わってる」こえだ:「っていうかかなり恐いですわ」ふぁみ:「しかもすっごい音!!!」みゅう:「あははははは!!」こえだ:「ふぁみさん、早くそのスティックを取り上げて!!」ふぁみ:「え?なんであたしが!?」クレア:「はやく~!」ふぁみ:「あーわかったわかっtぐえっ!!・・・ふぁみ:「…ひどい目にあった…」みゅう:「ごめんね、ふぁみちゃん」みなみ:「よし。だいたい分かった。 …ふう… ちっさくかおだっすぅ~♪…」みゅう:「ん?」ふぁみ:「おお」こえだ:「みなみさん?」・・・みなみ:「よし、歌はOK」ふぁみ:「そういやおねえちゃんの歌の声って初めて聞くけどさ」クレア:「そうなの?」ふぁみ:「うん。 結構かわいいね」みなみ:「おう。 魔のキャンディボイスとはあたしのことよ」みゅう:「魔!?」ふぁみ:「キャンディ…っていうか、りんご飴?」こえだ:「魔かどうかはともかく、色気はありますわね」ふぁみ:「うん。普段とは大違いだね」みなみ:「うふん」ふぁみ:「うふんて」みなみ:「じゃあ…ギターを片手に一杯」ふぁみ:「何を」みなみ:「…演奏♪」・・・演奏終了。みゅう:「もうギターの方はいい感じね」こえだ:「ええ、上手ですわ」ふぁみ:「いいなぁ、うまいなぁ」クレア:「あのね、これはね、みぃちゃんの魔法の力がね、 とってもすごいってことなんだよ?」ふぁみ:「だね。 うらやましいよほんと」みなみ:「♪りんご飴で敵を打つ~」ふぁみ:「ってなんだそりゃ」みゅう:「そんなことしたら痛いわよ」みなみ:「…」みゅう:「ん?」みなみ:「… りんご飴~♪… …ふぁみ:「どしたの?」みなみ:「♪りんご~ …やっぱだめか」ふぁみ:「だから、どーしたの?おねえちゃんってば」みなみ:「…いやね、歌の所くると指が動かなくなる」ふぁみ:「ん?」こえだ:「それって、弾きながら歌えないってことですの?」みなみ:「そうなる… …あ、忘れてた。 あたし、二つのこと同時にできないんだった」みゅう:「そうなの?」みなみ:「うん、ほら」クレア:「あやや…ほんとだ」ふぁみ:「おねーちゃん、そういやこういうの不器用だったよね… …っていうか忘れるかなそういうこと」みなみ:「テレビ見ながらご飯食べられないよ?」ふぁみ:「しかもそれちょっと違うし」みなみ:「…っつーわけだから、歌はクレアちゃんとみゅうでってことで」みゅう:「えー?みなみちゃん歌わないの?」みなみ:「だから無理だって」ふぁみ:「こほん。 おねーちゃん、逃げちゃダメだよ?」みなみ:「うん。逃げない。次の曲までにはなんとかする」ふぁみ:「んー… なんか引っ掛かるけど…」みなみ:「…」ふぁみ:「ま…しかたない?」こえだ:「ですわね…」みなみ:「…絶対に、なんとかする。 してみせる…」クレア:「燃えてるね」みゅう:「みなみちゃん… あ」みなみ:「ん?」みゅう:「でも、でもでも。 よく考えたらわたしドラム叩きながら歌うの?」みなみ:「うん、そうなるね」みゅう:「そぉんなぁ~… できるわけないわよ… 息切れしちゃうし」クレア:「だいじょうぶだよ。 魔法でやったら息切れはしないよ?」みゅう:「でも…」クレア:「だいじょうぶだって」みゅう:「…」ふぁみ:「あたしが言うのもなんだけどさ、できるって」こえだ:「ほんと説得力ゼロですわね」ふぁみ:「るっさいなぁ」みゅう:「…じゃあ… …ってどんな曲だったっけ?」クレア:「はいはい、みゅうちゃんこんなの」・・・三分後。みゅう:「んー…わかった」みなみ:「早いな」みゅう:「じゃあ行くわよ…」ふぁみ:「はい、スティック」みゅう:「ありがと。 よし。 ♪ちっさくかおだす~ … …*****みなみ:「みゅうすげぇー」ふぁみ:「魔法使うの慣れてるっていうか…」クレア:「魔女でもなかなかいないよ、はじめてでこんなにできるひとって」ふぁみ:「ほんと、素質あるよ絶対」みゅう:「…あはは、そんな…」みなみ:「…」こえだ:「しかし…よくあんなややこしいの演奏できますわね」ふぁみ:「うん。歌も全然ヘンになってないし」クレア:「すごいすごーい」みゅう:「…しっかしもの足りない、何かがもの足りないのよ!」ふぁみ:「何が?」みゅう:「こう、こうね? ダカダカダカって!!」クレア:「え?」みゅう:「ふん!!! うぉおおおおおおおおお!!!!」」みなみ:「あ、みゅうが壊れた」クレア:「うるさぁーい!」こえだ:「二回目ですわ…」みゅう:「そうよ、こんな感じよ。 あはははは!! いいわぁ…もっとスピード上げるわよ!?」クレア:「こわいよぉ」ふぁみ:「ちょっと、それじゃついていけないよ?」みなみ:「みゅうにこんな一面があったとは」みゅう:「あははははははははは ♪うつらうつらと~…ゆめのなか~」こえだ:「…でも声はそのまんまなんですのね」ふぁみ:「歌のテンポもね」みなみ:「なんだか気合い入ってるのか気ぃ抜けてるのか…」ふぁみ:「ねー、おねーちゃん」みなみ:「ん?」ふぁみ:「このバンドどっちに向かってる?」みなみ:「さぁ… ってかみゅう面白いな」ふぁみ:「そんなこと言ってる場合か」クレア:「ちゃんと女王様にお聴かせできるのかなぁ?」こえだ:「…知りませんわよ」みゅう:「あはははは!」ふぁみ:「そろそろ止めないと」こえだ:「ええ。 ふぁみちゃん、出番ですわ!」クレア:「スティックを取り上げて!」ふぁみ:「な!? またあたし!?」みなみ:「がんばれー」ふぁみ:「そんなぁ…」クレア:「はやくー」ふぁみ:「わかったよぉ… みゅうsぐえぇ…」みなみ:「救急箱の用意」*****みゅう:「ごめんね、ふぁみちゃん」ふぁみ:「子供はこうやってオトナになっていくんだね…」みなみ:「なんだそりゃ」みゅう:「あ、そうだ。 ねえみんな」ふぁみ:「いきなり素に戻ったけど」みなみ:「で、なに?」みゅう:「うん。 …あのね…りずむさんのことだけど…」ふぁみ:「ん?」みなみ:「ああ…」みゅう:「元気付けるためにさ、歌、プレゼントしない?」みなみ:「ん、いいねぇそれ」クレア:「じゃあ、くれありずむさんに知らせてくるー」で、初ライブ開始。ふぁみ:「演奏できないのに…」こえだ:「どうするんですの?」・・・
Oct 18, 2006
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買ってきました。 「紙の中で、読子さんがとても幸せそうです」という表記には笑わせていただきました。モノの出来も個人的には満足いくものでした。なお、メガネの替えが一つ、エッチングのが二つついています。
Oct 17, 2006
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