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適応制御
本書の第1章では,適応制御の位置づけをロバスト制御との対比を含めて紹介し,現在の制御理論研究のなかで適応制御手法がどのような考え方に基づいてその機能の実現を目指しているかを紹介しています.
第2章では,広い意味での適応制御に含まれる代表的な考え方と原理的な構造や実現方法を制御系の構成を示す図や,基本的な式を使って説明しています.
第3章では,制御を実施中に実時間で制御系のパラメータが変化する適応制御系の安定性がどのような理論によって保証可能かを,非線形系を対象とする2種類の安定性理論と関連付けて説明しています(パラメータが変化する制御系の安定性はすべての時刻でRouth–Hurwitz法のような制御系の安定判別法で安定であるだけでは保証されません).
また,パラメータを変化させた結果を直接観測できない問題を回避する条件(正実性の条件)についても示しています.
第4章では,1980年代に第3章で紹介した安定性理論に基づいて,その安定性が証明された制御パラメータの実時間修正アルゴリズム(適応アルゴリズム)の基本を連続時間系と離散時間系について導出しています.
第5章では第4章の適応アルゴリズムと組み合わせることで,実際に制御対象のパラメータが未知な場合に適用可能な制御系の構成法を連続時間,離散時間,そして確率的外乱が存在する場合に対して示しました.
ここで紹介した手法は,理想状態では制御対象のパラメータが全く未知であっても,常に制御目的が完全に達成できる特性を持っていますが(その証明はかなり複雑なため付録に詳細を示しています),その理論には多くの制御工学的仮定があり,そのままでは多くの現実的状況に対応が難しいことが分かります.
そこで,基礎的な設計手法が完成後,多くの研究者が,より実際的な状況に適用可能なように基礎手法を発展させた経過を紹介するのが第6章です.
第6章では,まず,基礎的な適応制御系の設計手法で制御工学的仮定として設定されていた,制御対象の「最小位相性」という問題を解決する手法を取り上げました.
本書で取り上げている適応制御手法は最近注目されている「モデルベースト制御」の考え方に基づいていますが,当初仮定したモデルを前提とした問題の解決法だけでなく,適応制御に適したモデル構造についても検討しています.
つぎに,制御を実施する場合に必ず問題となる「外乱」を適応制御ではどのように扱ってきたか,また,例えば最近のネットワーク制御などではかならず発生する「むだ時間」に対する対象方法,非線形の制御対象に対する適応制御系の設計手法の例などを紹介しています.
第7章では,基礎的な手法であっても,適用対象との組み合わせを考慮すると適応制御手法が応用においても有効であった例を示しました.しかし,これらの成功例は特定の対象を選び,対象に対応した適応制御系を実装たものであり,そのまま,基礎的適応制御手法が一般的に有効であることの証明には不十分です. そこで,次章では適応制御手法を実用化しようとした場合,共通的に考慮すべき実装上の注意をまとめました.
第8章では,Matlabのような制御用のツールが身近になった現在であっても,理論をその本質的性質を保ったまま応用するのに必要な実装上の注意点をまとめました.この点は重要で,安易な実装は適応制御手法に限らず高性能を実現しうる理論の評価を誤る原因になることを注意してください.
第9章では前章で述べた実装上の注意点を,適応制御応用の際のガイドラインとしてまとめ,それにそって適応制御の一手法を産業用機械に応用して成果を上げた例も示しました.
第10章では本書で紹介した基礎的な適応制御手法を基に発展した,理論や実装,応用の今後の可能性,そして限界についても述べました.
発売日:2020年12月01日頃
著者/編集:水野 直樹
出版社:コロナ社
ページ数:200p
ISBN:9784339032352
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