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片腕の男が沼地の様子を見に行った後、集落を歩いているとロッドが話しかけてきた。
ロッド:「よう、調子はどうだい?まだ通れなかっただろう。」
片腕の男:「あぁ、まだ足で渡るには厳しいようだったよ。」
ロッドが巻きタバコに火をつけながら言う。男にも渡そうとしたが男は断った。
ロッド:「最近アートとよく一緒にいるみたいじゃないか、アートの事が気に入ったか?」
片腕の男は急いで答える。
片腕の男:「ば!バカを言うな!なんでそんな!」
ロッドは大きく笑いながら、
ロッド:「ハハハ!あんたウソをつくのはヘタクソみたいだな。」
片腕の男も我慢しきれず顔が歪み、そして笑ってしまった。そして少し沈黙が続いた後に、
ロッド:「あのこも元々は目は見えていたんだ。それが徐々に視力を失っていってね・・・。」
ロッドがタバコを地面で消しながら続ける、
ロッド:「あの子もあんたみたいに突然集落にあらわれたんだ。たぶんブリッジのバカ貴族あたりが邪魔になったんで捨てたんだろ。それをあの子はあきらめずここまで歩いてきたんだ。」
片腕の男:「それであんたたち夫婦が育てるんだな。」
ロッドは2本目のタバコに火をつけながら、
ロッド:「あぁ、・・・・・あの子には生きる力をもらったなぁ・・・」
ロッドがアートを引き取って数ヶ月後の話、
ロッド:「アート!そこにある斧をとってくれないか!」
するとアートはしばらく周りを見渡した後に。
アート:「あ!足元にあった!よ~し!う~ん・・・・・・持ち上がらないよ~;;」
そうすると集落の人々もそれを見て笑った。
ロッド:「ハハハ!冗談だよ。さぁ!これをお前にやろう!」
そういうとロッドは鞄から一輪の小さな花をアートに渡した。
アート:「うわぁ!綺麗!お父さんありがとう!!」
ロッドはニコッと笑う、そして一人の女の人を呼ぶ。
ロッド:「エマ!先にアートを連れて帰っていてくれ!」
エマと呼ばれた女性がアートの手をひきながら、
エマ:「はいはい、さぁ、一緒に帰ろう。」
アート:「うん!お母さん!」
そういって二人は手をつなぎながら家に向かった。
その晩、アートが寝静まった頃に、ロッドがエマに、
ロッド:「やはりアートの視力はどんどん悪くなっていっているようだ。」
エマは悲しそうな表情になりながら、
エマ:「なんであんなにいい子がこんなめに・・・。」
ロッドが静かに眠るアートを見つめながら、
ロッド:「明日、セント神父のところに二人でいってくるよ。」
翌朝、ロッドとアートは集落の外れに住むセント神父のとこに向かった。セント神父はブリッジヘッドからの使者で、医学の知識も豊富なため、集落の人々にとって欠かせない存在である。
セント神父のとこにつくとロッドはアートを入り口のとこに置いたまま中に入っていく、
ロッド:「セント神父・・・やはりアートの目は徐々に視力を失っているようです。どうすればいいでしょうか?」
セント神父:「そうか・・・」
そして入り口で昨日ロッドにもらった花を嬉しそうに見つめるアートを神父は呼ぶ。すると元気よく、
アート:「はい!ちょっと待ってね~・・」
と、足元がよく見えてないのか、ゆっくりとアートが神父のところに歩いていく。
セント神父:「さぁ、アート、目を見せてみなさい・・・・・・・・ふむ。」
セント神父が何か言おうとした時、
アート:「ねぇねぇ!この花すごいんだよ!昨日は赤色だったのに今日は白と黒色になったんだ!そういえば今日ここにくるときも色んなとこが白と黒になってたなぁ~!」
それを聞いて察したロッドは涙が止まらなかった。
ロッド:「さぁ、今日はもう帰ろう、セント神父ありがとうございました。」
アート:「お父さん!泣き虫さんのとこには天使さんは来ないんだよ!だからアート泣かないんだ!!」
ロッドは涙を拭きながら、
ロッド:「そうだな!天使さんに嫌われちゃうな!さぁ!帰って風呂に入るぞ!!」
そういって二人はセント神父のもとを去った。その二人の後姿を見ながら、
セント神父:「あの家族に神のご加護を・・・」
その夜、ロッドとエマがアートを呼ぶ。
ロッド:「アート、大事な大事な話があるんだ。聞いてくれるかい?」
アートは笑顔で答える。
アート:「うん!いいよ!」
ロッドは水を一口含み続ける、
ロッド:「何も隠さずに言うね。アートはね、もうすぐ目が見えなくなっちゃうんだ・・・、それをお父さんもお母さんもどうすることもできないんだ・・・本当にすまない・・・・」
突然のことでアートは理解できていないのかキョトンとした顔でロッドとエマを見つめる。
ロッド:「綺麗なお花も、なにもかも見えなくなっちゃうんだ。だから・・・・」
ロッドが続けて言おうとしたところにアートが喋りだす。
アート:「そっか、だから最近アートあんまり周りが見えないんだね・・・でもね、見えなくなってもアートは生きてるんでしょ?だったらいいんだ!アート泣かないからいつか天使さんが来てくれて治してくれるよ!それにアート、見えなくなるより、お父さんとお母さんの悲しいお顔見るほうがやだな・・・」
ロッドとエマが大きな涙を流しながらギュッとアートを抱きしめる。
ロッド:「どんなことがあろうと!お父さんとお母さんがお前を守るから!これ以上お前を悲しませたりしないから!」
アート:「見えなくなっても・・・見えなくなってもアートは生きてるから大丈夫なんだよ!でも、お父さんとお母さんのやさいいお顔見れなくなるのはやだよ。」
そういうとアートも大きな声で泣き出してしまった・・・・・・
そして数日後、アートの目の前から光は消えてしまった。
しかし、3人の絆はより深く、確かなものに変わっていった。
ロッドが2本目のタバコを地面で消す。
片腕の男:「そんなことがあったのか・・・・、やはりあの子は強いな・・・。」
ロッドは胸を張って言う。
ロッド:「当たり前だろ!俺の娘だ!!そしてこの集落の宝だ!!」
片腕の男はこの時一つの大きな覚悟を決める。
ロッド:「さぁ、あんたももうすぐここを出るんだろ。その時が来るまでゆっくりしなよ。」
そういうとロッドは自分の家の方に歩いていった。
そしてまた集落に夜が訪れる。
もうすぐ来るであろうナーガの破壊に怯えながら人々は眠りにつく・・・・・。