La Vie・音楽とともに ~標高1,000mの高原だより~
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夜という妖怪が 真黒い(まっくろい)王座によって 悠々とあたりを覆い 只悪心の天使ばかりうろつく 朦朧(ぼんやり)と淋しい道を通り 遠く仄暗いチウレから 時間と空間を超えて荘厳にひろがる荒涼と怪しい郷から 漸く私はこの国に着いたエドガー・アラン・ポーの「幻の郷~Dream Land」。この詩を初めて知ったのは、内田善美さんの傑作「星の時計のLiddell」で。「ぶ~け」に連載されていた当時でございます。瀟洒な豪邸に、夜な夜な現れる少女の幽霊が、この荘厳で不吉な詩を暗唱してみせる場面は、壮大なこの物語の核~キーワード~にもなっています。神秘的でアカデミックな彼(内田氏)の画の世界は、女性のみならず、感性豊かな男性をも魅了し、寡作で知られた彼の名声は、引退された今もなお健在でございます。OLの頃、会社の旅行で訪れた鎌倉。小町通りの一軒の古本屋さんで、ポーの詩集を見つけました。古い新潮文庫の本で、黄色の帯が付いているもので、カバーはありません。昭和43年3月10日12刷。本の名も「ポオ詩集」でございます。定価60円。売値は300円くらいでした。「これは掘り出しもの」と意気揚々と買って帰り、今もここにあります。チウレ(Thule)とは、古代人が世界の北端にあると信じていた国の名前。こんな頃からわたくしの北欧好きは始まっていたのかもしれません。晩秋の長い夜、毎年必ず書棚から出してくる1冊でございます。
November 7, 2006
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