旅のあとさき
旅の予習に、旅から帰って興味をもって、あるいはまだ行くあては全然ないのにただなんとなく、世界のいろんなところについて知りたくて読んだ本。または、読んだらある場所に関心が湧いてしまった本など。
【アルプス・シャモニー】
■ ヒト、山に登る(柏瀬祐之)
☆☆☆ / 白水Uブックス・187P
山登りが好きで読んだ本。やっぱり山登りは楽しい。シャモニーに立つ、モンブラン初登頂にちなんだ銅像の秘密が書いてある。とはいえそれは最初の一章だけで、「登る」ということから発して、広く歴史や宇宙に、留まることなく広がっていく筆者の思考はなかなかあっぱれ。ウケを狙ったか、言葉遣いがぞんざいなのが読んでいて不愉快。(2003.7.30)
【アルメニア・インド】
■ ジプシーの来た道 原郷のインド・アルメニア(市川捷護)
☆☆☆ / 白水社・231P
元レコード会社のディレクターが、日本の猿回しなどを発端に放浪の民の芸能について興味を持ち、ジプシーのルーツを求めてアルメニアとインドを旅した記録。そもそも、こんなことを仕事にしている方の存在に驚く。アルメニアというよく知らない国のレポートも面白かったが、インド編はインドの懐の深さを見るようで、読み応えがあった。インドの蛇つかい、絶滅しているらしく残念。(2003.7.26)
【パリ】
■ マレの街角(アレックス・カーメル)
☆☆☆ / 白水社・191P
【パリ】
■ パリ史の裏通り(堀井敏夫)
☆☆☆ / 白水Uブックス・272P
2冊のパリに関する歴史エッセイ。行く前に読むと、きっと街歩きがしっとりする。わたしは行ったあとに読んだ。
「マレ~」は、若い自分にパリに魅せられ、ついにマレ地区にアパルトマンを買ったアメリカ人作家の本。自分の住む建て物の歴史を調べるうちに、数百年の間の人々の暮らしが目の前に広がってくる。なかなか趣きのあるロマンチックな本だった。(2003.7.23)
「パリ史~」は、関西の大学で教えてきたフランス社会政策がご専門の先生の本。インターネットで調べていたら授業中にいくつかの「名言」を残している人らしい。この本には特に突拍子もない発言はないけれど、率直で丁寧で愛情深い書きっぷりには、たぶんお人柄が表れているのだろう。(2003.7.21)
【ウィーン】
■ エリーザベト 美しき皇妃の伝説(ブリギッテ・ハーマン)
☆☆ / 朝日新聞社・上339P、下329P
皇帝フランツ・ヨーゼフに一目ぼれされ、ハプスブルグ家に嫁入りし、崩壊近いオーストりア・ハンガリー帝国の皇妃となった世にも稀な美貌のお姫様の伝記。キャンディ・キャンディ風の表紙とは打ってかわって、身勝手で暇で拒食症の女の話だった。エリザベートなのか、エリザーベトなのか、読んでいる間に何度もわからなくなり、疲れた。
【プラハ】
■ ビールと古本のプラハ(千野栄一)
☆☆☆☆ / 白水Uブックス・187P
久しぶりに好きなエッセイに出会った。チェコ語学者で翻訳家の著者が、社会主義崩壊後(「ビロード革命」後)のプラハに、数回訪れた際の記録。私は クンデラ
を1~2冊読んだことがあるだけで、チェコについては全く知識がなく、出てくる作家も作品もビールの銘柄も、知らない単語だらけだったが、なぜか心の襞にしみ込むような痛みと懐かしさを感じた。「ペンギンの話」秀逸!(2003.5.17)