趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

October 3, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
喜朱拾遺承恩拜命赴任上都 劉長卿
詔書徴拜脱荷裳、身去東山閉草堂。
■(「門」のなかに「昌」。ショウ)闔九天通奏(一作楚)籍、華亭一鶴在朝行。
滄洲離別風煙遠、青瑣幽深漏刻長。
今日卻迴垂釣處、海鴎相見已高翔。
【韻字】裳・堂・行・長・翔(平声、陽韻)。
【訓読文】
朱拾遺の恩を承けて命を拝し上都に赴任するを喜ぶ。
詔書徴拝せられて荷裳を脱ぎ、身は東山を去つて草堂を閉づ。

滄洲離別風煙遠く、青瑣幽深漏刻長し。
今日卻つて釣を垂れし処を迴れば、海鴎相見て已に高く翔ぶ。
【注】
○朱拾遺 朱放。「拾遺」は、天子をいさめる官。
○拝命 官職に任ぜられる。
○上都 長安。
○詔書 みことのりを記した文書。
○徴拝 呼び出して官職につける。
○荷裳 隠者の服。
○東山 浙江省上虞県の西南に在り。晋の謝安が隠れた所。
○草堂 草葺きの家。

○九天 皇居。宮中。皇城の門は九重であるからいう。
○奏籍 宮門の通行証。
○華亭 今の江蘇省松江県の西の平原村。晋の陸機は華亭の人なり。害に遇ったとき嘆じて曰く、「華亭鶴唳、豈復た聞くべけんや」と。 華亭の一鶴は、隠者のたとえ。
○朝行 朝廷の列。
○滄洲 いなかの水辺。

○風煙 風に舞う塵。
○青瑣 青い図柄で彫刻した宮門。
○幽深 奥深い。
○漏刻 水時計。
○卻 あべこべに。
○迴 めぐる。
○海鴎相見已高翔 カモメが私を見て高く飛んで逃げる。カモメといつも戯れていた若者が、その父親から「わたしがカモメをペットにするから捕まえてこい」と言われて海に出かけたところ、カモメが寄りつかなかったという『列子』に見える話にもとづく。
【訳】
朱拾遺が天子のご恩を承けて官職に任ぜられ、長安に赴任するのを嬉しく思って詠んだ詩。
詔書届いて官職をたまわることと相成りて隠者の服を脱ぎ捨てて、草堂閉じて山を去る。
通行証を宮門の門番に見せ宮に入り、かつての隠者は朝廷の行列にその雄姿在り。
いなかの水辺あとにして自然の景色に遠ざかり、青く塗りたる宮門の奥に時告ぐ水時計。
今日あべこべに釣糸を垂れた所にきてみれば、海の鴎は君を見て空高く翔び逃げるだろ。





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Last updated  October 8, 2007 05:24:45 PM
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