趣味の漢詩と日本文学

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December 9, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
秋夜有懷高三十五適,兼呈空上人(一作皇甫冉詩)
晩節逢君趣道深、結茅栽樹近東林。
吾師幾度曾摩頂、高士何年遂發心。
北渚三更聞過雁、西城萬里動寒砧。
不見支公與玄度、相思擁膝坐長吟。
【韻字】深・林・心・砧・吟(平声、侵韻)。
【訓読文】
秋夜有懷高三十五適を懐ふこと有り、兼ねて空上人に呈す。(一作皇甫冉詩)
晩節君に逢ひて道に趣くこと深く、結茅樹を栽うること東林に近し。

北渚三更に過雁を聞き、西城万里寒砧を動かす。
見ず支公と玄度とを、相思膝を擁して坐ろに長吟す。
【注】
○高三十五適 盛唐の詩人。高適。三十五は排行。字は達夫、または仲武。諡は忠。性格は磊落。若い頃は家業を怠り、落ちぶれて食客となっていたが、玄宗の時に有道科に挙げられ、封丘尉となった。のちに官をやめて河右に行き、河西節度使の哥舒翰の幕僚となった。また侍御史となり、蜀に乱を避けた玄宗に随行し、永王の軍を討伐平定す。蜀が乱れと蜀州・彭州の刺史となり、西川節度使となった。長安に帰って刑部侍郎・散騎常侍となり、代宗の時に渤海侯に封ぜられ、没す。五十歳で詩に志し、名声を得た。著に『高常侍集』がある。
○兼 同時に。
○呈 差し上げる。
○空上人 隠空上人。
○晩節 晩年。
○逢君 高適。
○道 仏道。
○結茅 茅屋を構える。

○吾師 空上人。
○幾度 何度。
○曾 かつて。
○摩頂 頭をなでる。仏教では戒を授けるときに行う。
○高士 高潔の人士。高適を指す。

○遂 とうとう。
○発心 菩提を求める心をおこす。
○北渚 きたの水辺。
○三更 真夜中。
○過雁 渡りゆく雁の声。
○西城 西の町。
○万里 とおく。
○寒砧 冬着の準備のために砧うつ音。
○支公 晋の高僧、支遁。
○玄度 晋の高士、許詢。
○相思 相手のことに思いをはせる。
○擁膝 膝を抱える。
○長吟 長く声をひいてうなる。
【訳】
秋の夜に高適を思いだし、同時に空上人に差し上げた詩。
晩年君と出会って仏道になじみ、お寺の近くに茅屋を構え庭に樹を植えた。
吾が師は何度頭をなででくれたことやら、高潔な君はいったいいつ菩提心をおこしたのかしら。
北の水辺では夜中に飛びすぎる雁の声を聞き、西の町から遠く砧打つ音がひびく。
上人さまとも君とも長い間あっておらぬが、君らのことを思いつつ膝を抱えて詩をばよむ。





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Last updated  December 15, 2007 01:40:40 PM
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