趣味の漢詩と日本文学

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January 3, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】監の命婦、朝拝の威儀の命婦にていでたりけるを、弾正のみこ見たまうて、にはかにまどひ懸想したまひけり。御文ありける御かへり事に、

うちつけにまどふ心ときくからに慰めやすくおもほゆるかな

みこの御歌はいかがありけむ、わすれにけり

【注】
・監の命婦=父兄が近衛府の将監だった女房。
・朝拝=元日の辰の刻に百官が大極殿にあつまり、帝に年頭の祝いの言葉を申し上げる儀式。
・威儀の命婦=元日の朝賀や即位式の時に天皇が大極殿の高御座(たかみくら)にお座りになるのに先立って高御座の左右に座り、威儀を添える女房。左右とも四位・五位各一人の計四人がつとめ、礼服を着用した。
・弾正のみこ=章明親王。醍醐天皇の子。上総の守・大宰の帥・兵部卿・弾正尹などをつとめた。(924……990年)
・懸想=思いをかける。恋い慕うこと。


監の命婦が朝廷の朝拝の儀式のときに、威儀の命婦の役として姿を見せたのを、弾正のみこ章明親王がご覧になって、とつぜん心が乱れて恋慕なさったとさ。親王さまから命婦に御手紙があったが、その返事のなかに、

うちつけにまどふ心ときくからに慰めやすくおもほゆるかな

急に恋に落ちたと聞きましたから、きっとわたしをからかいやすい女だとお思いになっているんでしょうねえ、またあなたの気持ちも遊びのつもりだから冷めやすいのだと思われますよ。

という歌が書かれていたとさ。

親王の歌はどんな内容だったかしら、もう、わすれてしまったとさ。





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Last updated  January 3, 2011 07:20:36 PM
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