趣味の漢詩と日本文学

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January 31, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】故中務の宮の、北の方うせたまひての後、ちひさき君たちをひきぐして、三条右大臣殿にすみたまひけり。
【注】
・故中務の宮=醍醐天皇の皇子、代明親王。中務卿を務めた。(生年不祥……937年)中務卿は、天皇の侍従として、詔勅の文案作成・国史の監修・女官の選考をはじめ、宮中の事務や皇居の警護などを掌った中務省の長官。
・三条右大臣殿=藤原定方邸。
【訳】故中務の宮が、奥様がお亡くなりになって後、小さいお子様たちをひき連れて、奥様の実家の三条右大臣殿のお屋敷にお住まいになったとさ。


【本文】御いみなどすぐしては、つゐにひとりは過し給まじかりければ、かの北の方の御おとうと九君を、やがてえたまはむとなんおぼしけるを、「なにかは、さも」と親はらからもおぼしたりけるに、
【訳】服喪期間などを過ごしたあとは、結局男親ひとりではお過ごしなされそうもなかったので、例の奥方の妹にあたる第九女を、すぐに妻となさろうとお考えになったのを、「どうして差し支えがありましょう、それもよろしいでしょう」と親兄弟もお思いになっていたが、

【本文】いかがありけん、左兵衛の督の君、侍従に物したまひけるころ、その御文もて來となむきき給ける。
【注】

【訳】どうなさったのだろうか、左兵衛の督の君藤原師尹さまが、侍従でいらっしゃったころ、その御手紙を第九女のもとに持って来たりしているとお聞きになったとさ。

【本文】さて心づきなしとやおぼしけむ、もとの宮になむわたりたまひにける。その時に宮すむ所の御もとより、

なき人の巣守にだにもなるべきをいまはとかへる今日の悲しさ

【注】
・宮すむ所=藤原定方のむすめ、仁善子。三条御息所。
【訳】ところで、気に入らないとお考えになったのだろうか、もとのご自宅にお帰りになってしまったとさ。その時に、三条御息所の所から、

せめて亡き人の残していったヒナの面倒だけでもみるつもりでおりましたのに、いまはここにはもう住めないと、羽が抜け替わる鷹のように、あなたが自宅へ帰る今日の悲しさといったらありません。

【本文】宮の御かへし、

すもりにとおもふ心はとどむれどかひあるべくもなしとこそきけ

となむありける。
【訳】中務の宮の御返事に、

と歌を作ったとさ。






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Last updated  January 31, 2011 09:10:00 PM
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