貧しい美青年の完全犯罪?!★「太陽がいっぱい」

2007.01.23

(4)

映画ファンなら、誰でも一度は観た、あるいは題名だけでも知っている
ルネ・クレマン監督、アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」（'59年）！

【DVD】太陽がいっぱい 4Kリストア版アラン・ドロン [DABA-5286]

ドロン演じる貧しいアメリカの青年トムが、大金持ちの旦那にとり入り、
イタリアで酒や女遊びに明け暮れる旦那のドラ息子フィリップを、なんとか国に帰るように仕向けろという命を受け、
フィリップと、地中海沿岸の観光地で行動を共にするけれど…
彼はことあるごとに、育ちの卑しいトムを見下す。
嫉妬に狂うトム。そしていつしか…
フィリップが見せびらかすように持っている高級スーツ、靴、バッグ、
ヨット、親父さんの莫大な財産…
そして…繊細で美しいフィリップの恋人マルジュ（マリー・ラフォレ）…
貧しさゆえに、手を伸ばしても手に入れられなかった「輝く太陽のような人生」を、
全部手に入れたい…！何もかも奪いたい…！
そんな思いが爆発し、トムはフィリップをヨットの上で刺殺し、遺体をシートでくるみ、荒れ狂う海に投げ捨てた…！

フィリップのサインを完璧に真似できるようになり、パスポートも偽造し、
フィリップの高級ブランドの服を身につけ、
すっかりフィリップになりきったトム。
しかし…！それを訝る人物がいて、トムは不本意ながら、第二の犯罪に手を染めなければならなくなった…！

いやあ、サスペンス映画の王道を行く作品ですね。
ヨット、ナイフ、タイプライターといった小道具が、実に上手に使われています。
幕開けのヴェネツィアをはじめ、地中海沿岸のロケもすばらしい！
でも、一番美しかったのが、なんといってもアラン・ドロンが、
沈んだ顔でギターを抱えたマリー・ラフォレに、上目遣いで囁く場面です。
「マルジュ、ぼくのために歌って…ぼくのために弾いて…」
あの時のドロンの情熱を秘めた瞳！彼のような美男子に、あんな目つきでうったえられかけたら、
モイラはもちろん、たいていの女性はもうメロメロですよ…！
（女性にもてなくて落ち込んでいる男性たち、このドロンの目つきを練習してみてはいかがでしょう？）

ラストのどんでん返しも、いきなり背負い投げを喰らわされた思いでしたね。
海辺で昼間からグラスを傾け、この上ない幸福感にひたり、「太陽がいっぱいだ…」と、青空をあおぐドロンの顔も、すばらしく良かった！
ただ気になったのは、冒頭、トムがフィリップとヴェネツィアでいたずらを重ねるシーンが、ちょっと長いこと、
トムがホテルの部屋で、スライドを使ってフィリップのサインを真似る練習をするシーンが、少し説明的でくどいことでしたね。
でも、この作品は世界映画史上に残る名作です！

★もっとアラン・ドロン！★