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2007.03.23

戦争をするのは大人！子どもに罪はない！★「禁じられた遊び」

(8)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

有史以来、世界各地では戦争が絶えません。
そして、戦争の犠牲になるのはいつも弱い子どもたち…！
なんと痛ましいことでしょう！大人が勝手に始めた戦争に、何の関係もない、将来ある子どもたちが巻き込まれるなんて…！
きょうの映画は、子どもの目線から、戦争を鋭く告発した名作「禁じられた遊び」（'51年　仏）です。

【世界名作映画DVD】禁じられた遊び

第二次世界大戦中の1940年、パリ。５歳の少女ポーレット（ブリジット・フォッセー）は、ドイツ軍の空襲から逃げ惑う中、
パパとママ、愛犬のジョッグを機銃掃射で無惨に殺されてしまいます。
死んだジョッグを抱いて、途方に暮れて川べりを歩くポーレットに、牛飼いの少年ミシェルが優しく声をかけ、
ミシェルの両親や兄、姉も、戦争で両親をなくしたポーレットに同情し、彼女はミシェルの家に寝起きすることになります。
いつも大きな兄姉たちにに囲まれていた末っ子のミシェルは、妹ができて大喜び。
ポーレットとミシェルは風車小屋にジョッグのお墓を作り、小枝で十字架を立てます。
教会に行ったことのなかったポーレットは、十字架に不思議な魅力を感じ、
また、地元の神父からお祈りの仕方を教わり、ますます十字架に興味を抱きます。
「お墓にジョッグ一人ではかわいそう…」そう思ったポーレットとミシェルは、
死んだ動物を集めては、お墓を作りますが、十字架が足りません。
そこでミシェルは、霊柩車の十字架をもぎとったり、教会の十字架を盗もうとしたり、
果ては、墓地の十字架を次々引き抜いては、動物のお墓に立てます。　
お墓の十字架が増えて、ポーレットは大喜び。しかし大人たちは、墓地の十字架が引き抜かれて大騒ぎ……！

墓地の十字架を引き抜いて動物のお墓に立てる遊びなんて、
大人が行う戦争に比べたら、はるかに他愛なく、罪のないものだ…！　
それが、ルネ・クレマン監督のメッセージでしょうね。
「居酒屋」「海の牙」「太陽がいっぱい」
中でも最も有名で、多くの観客の涙を誘ったのは、この「禁じられた遊び」でしょう。

ブリジット・フォッセー演じるポーレットの仕草ひとつひとつ… 死んだジョッグを痛ましげに抱く様子、ミシェルの家のベッドで疲れて眠り込む姿、ミシェルと明るく生き生きと遊ぶ姿などが、実に丹念に描かれているのに、モイラはまず感動しました。
仲の悪い隣家の息子と恋仲になった姉に脅しをかけるミシェルのいたずら小僧ぶりも、名演！暗く、悲しく、重くなりがちなこの作品に、面白みを加えています。
無骨な牛飼いのミシェルの父も、彼より一歩下がってついてきているような物静かな母も、いかにも昔のフランスの田舎にいそうな人物で、リアリティ満点！
ミシェルの兄や姉たちの性格も、上手に描き分けていましたね。

でも、モイラの胸に焼きついて離れないのは、やっぱりあのラスト・シーンですよ。
大きな駅の構内で、赤十字に引き取られていくポーレットが、
近くの女性が「ミシェル！」と呼ぶ声を聞いてはっとなり、
「ミシェル…ミシェル…ママ…ママ…」と泣きながら、構内の人並みをかきわけてミシェルとママを探し歩くあのシーン…
モイラは小５の時、両親に連れられてこの映画を公民館かどこかで観たのですが、
もう涙、涙、涙でしたね。
映画の全篇に流れる、ナルシソ・イエペスの哀愁あふれるギターの旋律が、この作品の悲しさをかきたてています。

お子さんのおられるお父様お母様がた、
この「禁じられた遊び」は、ご家族でごらんになるのに最適の映画です！

★もっとルネ・クレマン監督！★