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2007.04.14

心あたたまるラブ･ストーリー★「幸福の黄色いハンカチ」

(4)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

きょうは、春の北海道を舞台にした名作を紹介します。
監督は寅さんシリーズの山田洋次、主演は東映任侠映画で一世を風靡した高倉健。
その名も‥‥ 「幸福の黄色いハンカチ」（'77年　松竹）！

幸福の黄色いハンカチ

失恋の傷を癒すため、退職金をはたいて買った真っ赤なスポーツカーで、
東京から道東へと旅に出た欽也（武田鉄矢）は、
やはり失恋の癒しの旅に出ていた若い娘･朱美（桃井かおり）をひっかけ、モノにしようとする。
途中、オホーツク海が見渡せる網走で、どこか翳のある中年男・勇作（高倉健）が、ひょんなことから同乗。
互いに素性のわからぬ若い男女と中年男の、奇妙なドライブの旅が始まる。
道中、車が畑の溝にはまって、身動きがとれなくなったり、欽也がチンピラにからまれて殴られたり‥‥
そんな中、次第に心を開いてゆく３人。だが勇作は、決して自分の過去を語らない。
ところが、勇作がスポーツカーの運転を替わった直後、警察の検問にぶちあたり、
欽也と朱美は、勇作に殺人の前科があり、網走刑務所を出所したばかりの身の上であることを、知ってしまう‥‥
そして、勇作は服役中に妻･光枝（倍賞千恵子）とは離婚したものの、
「もし俺のことを待っていてくれるのならば、家の前に立てた竿に、黄色いハンカチをぶらさげておいてくれ」という手紙を光枝に送っていたのだ。

原作は、アメリカのコラムニスト、ピート・ハミルが、ニューヨーク・ポスト紙に書いたエッセイ。
そのエッセイは「幸福の黄色いリボン」という唄になり、山田洋次監督はその唄を聞いて、
４年もの間、映画化の構想をあたためていたそうです。
舞台を春の北海道東部に設定し、高倉健という、不器用で寡黙な男を演じたらナンバーワンの俳優、
松竹の看板女優で演技力も抜群の倍賞千恵子、
演技経験のまったくないフォーク歌手の武田鉄矢、若手だけれど異色で演技派の声が高かった桃井かおりという、ユニークなキャスティングが功を奏し、
第一級の映画が出来ました！
道東のオホーツク海、夕張の炭鉱などの風景も、美しく撮れていて、寅さんシリーズで毎回見せる人情の機微も、上手に見せていました。
特にあのラスト･シーンは、日本映画史上に燦然と輝く名場面ですよね！
欽也、朱美、勇作‥‥３人とも陽のあたらない傷だらけの人生を送ってきて、
彼らの心の傷も上手に描いていましたね。

武田鉄矢は、山田監督から「映画に出てほしい」という電話を受けた時、
何かの間違いだと思って、「あのう、僕、フォーク歌手ですよ」と答えたそうです。
'74年に「母に捧げるバラード」が大ヒットし、たちまち時の人になり、その年の紅白歌合戦にも出場したけれど、
そのあとは泣かず飛ばず‥‥一時期は生活のため、知人のスナックでアルバイトをしていたそうです。
それがこの映画で、今度は俳優デビュー。２年後には「金八先生」として主役で大ブレイク！いやあ～、人の運命なんてわからないものです。
でも鉄矢氏、この映画の中では、本当に運転していないんですよね。その頃、まだ運転免許を持っていなかったから。
彼が運転免許を取得したのは、４０才をすぎてからだそうです。

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