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2007.05.28

国に利用された男たち★「シルミド」

(2)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

南北分断から半世紀あまりが過ぎた朝鮮半島‥‥
一家離散など、分断による悲劇は、今もあとを断ちませんが、
中でもすさまじいのは、韓国政府が極秘で結成させていた、
北朝鮮のトップ・金日成暗殺のための特殊部隊、 684部隊の悲劇ではないでしょうか‥‥
きょうの名画は、韓国ソウルで起こったシルミド事件の事実をもとに作られた名作
「シルミド」（'03年　韓国）です！

ソル・ギョング／シルミド

'68年、殺人罪で死刑判決を受けた囚人インチャン（ソル・ギョング）は、
ある日突然、他の死刑囚たちとともに監獄から出され、
軍服の男たちによって、仁川沖の無人島シルミド（実尾島）へ連れて行かれた。
インチャンらを島へ乗せていった船は、その場で爆破され、
何が何だかわからず、唖然となる死刑囚たちは、軍服の男たちに告げられた。
「極悪人ども、きょうからお前たちは、金日成の首をとるための特殊部隊、 684部隊の隊員だ！」
むりやり軍服を着せられたインチャンたちは、隊長のチェ・ジェヒョン（アン・ソンギ）の指揮下、
超苛酷な訓練を受けるはめに‥‥！
始終監視され、脱出不可能な孤島での壮絶な訓練の日々‥‥
しかし、この孤島にしか居場所のないインチャンたちは、よく耐え、
３年あまりが過ぎた頃、金日成暗殺のために、いつでも出動可能な特殊部隊員となった。
ところが‥‥韓国政府は今まで敵視していた北朝鮮に対し、太陽政策をとるようになり、
もはや不要となったシルミドの684部隊の隊員たちを、全員抹殺することに‥‥！
「畜生！さんざん国に利用されたあげく、殺されるのか?! 」
インチャンたち隊員は、反乱を起こしてシルミドを脱出し、
一般市民を巻き込んだ、とてつもない行動に出るのだが‥‥

死刑囚や凶悪犯を極秘で孤島に送り込んで、軍事訓練をさせる‥‥
平和なわが国では、映画や小説の世界でしかありえないことですが、
３８度線で分断され、今なお停戦状態にある韓国では、
こういうことが本当にあったんですね。事実は小説よりも奇なりです、ほんと。
「ペパーミント・キャンディ」「オアシス」などの名作で、持ち前の抜群な演技力を発揮したソル・ギョングが、
この作品でも、悲劇の男を熱演しています。
クライマックスでは、国に利用され、翻弄された男たちの哀しみと怒りが、
非常に象徴的に描写されていましたね。
ジェヒョン隊長を演じた、韓国映画界の名優アン・ソンギも、
国の命令と、自分が育てた隊員たちへの愛情の板ばさみになって苦悩するエリート軍人の悲哀を、
ベテラン俳優らしく、上手に表現していました。
隊員たちの抹殺に真っ向から反対する部下役のホ・ジュノも、「さすが演技派‥‥」と言うような名演でした。

監督は、ヒット作品「トゥ・カップス」シリーズのカン・ウソク。
アクションを得意とする監督らしく、シルミドでの苛酷な訓練のシーンは壮観。
クライマックスのバス乗っ取りのシーンも、緊迫感100パーセントでした！
冒頭、インチャンの裁判から、極秘の「出所」までが、やや冗漫でダレていましたけど、
上質な社会派映画として、いろいろ学び、考えさせられ、
また、格調高いアクション映画としても、十分楽しめます。

「シルミド」は韓国で空前の大ヒット。
映画の中のセリフ「ヨギヌン・シルミドヤ！（ここはシルミドだ！）」が、
流行語となったそうです。

★ソル・ギョング主演作品★