★モイラの名画座★

< 新しい記事

新着記事一覧(全1143件)

過去の記事 >

2007.06.30

裁判劇の金字塔！★「十二人の怒れる男」

(4)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

日本でも昭和３年から１８年まで存在していた陪審員制度。
法律の専門家ではない一般市民１２人が、被告人の有罪・無罪を決定するまでの喧々囂々、
ハラハラドキドキのサスペンスを描いた傑作が、シドニー･ルメット監督のこの作品です！

十二人の怒れる男(DVD) ◆20%OFF！

スラム街に住む移民の少年が、父親殺しで起訴され、
有罪、無罪の判断が、１２人の陪審員にゆだねられた。
証拠などから、有罪は明々白々と思われていたが、
陪審員のひとり（ヘンリー・フォンダ）が、無罪を主張した。
これをきっかけに、他の陪審員たちが次々と反論。
人種問題、親子の問題なども絡み、評議は続くのだった‥‥

労働者、教師、、広告屋、退職した老人など、どこにでもいる普通の人たちが、
被告人の少年の有罪、無罪について、それぞれの立場から議論する姿が、
議論に慣れていない日本人のモイラには、とても新鮮に目に映りました。
移民にあからさまな差別意識を抱いている奴がいたり、
評議よりもヤンキーズのナイト･ゲームが気になる不真面目な奴がいたり、
自分の息子の話を持ち出して、有罪を感情的に主張するおっさんがいたりしますが、
それはそれで、大変リアリティがありました。
それに比べて主役のヘンリー･フォンダは、ちょっとカッコよすぎ。
でもまあ、彼がいなければ、この作品が成り立たないのですが、
それにしても、ちょっと皆をぐいぐいリードしすぎで、
もうちょっと控えめでもいいんじゃないかなあと、思いましたね。

１２人全員一致でなければ、評決が出せない陪審員制度。
無罪がたったひとりだったのが、ナイフの傷口、証人の証言の信憑性などから、
二人、三人と増えてゆく過程は、実に観る側の納得の行くもので、
なおかつ、サスペンスに満ち溢れています。
レジナルド・ローズの脚本も、何度も読み返しましたが、
いやあ、実に秀逸です！「この作品を超える裁判劇が、今後出現するかなあ？」と思ったくらい。
舞台はほとんど陪審員評議室。
これほど舞台設定にお金のかかっていないハリウッド映画も、珍しいんじゃないでしょうか‥‥
ラストがとても印象的でした。

娯楽作品もいいけれど、時にはこんな重厚な社会派作品もいいものです！

★もっとシドニー･ルメット監督！★