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2007.08.10

暴力とセックスとベートーベン★「時計じかけのオレンジ」

(10)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

鬼才スタンリー･キューブリック監督が'71年に放ち、世界中の映画ファンをあっと言わせた怪作‥‥
アンソニー・バージェス原作、マルコム・マクドウェル主演、
その名も‥‥ 「時計じかけのオレンジ」！

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近未来、人々が生活の糧を得るための労働から解放され、暮らしが安定する反面、
道徳的には頽廃しきった英京ロンドン。
そのロンドンの夜の街を、エドワード朝の奇抜な衣装に身を包んだ不良少年のグループが闊歩。
リーダーは、暴行とレイプとベートーベンの第九が三度の飯より好きな、サイコパス少年アレックス（マルコム・マクドウェル）。
「雨に唄えば」を唄いながら、橋の下で眠るホームレスの老人をボコボコにしたり、
民家に押し入り、ちょっときれいな奥さんを輪姦、亭主を袋叩きにして半身不随にしたり‥‥
やりたい放題の毎日を送っていたけれど、仲間割れがきっかけで、
アレックスはとうとう逮捕。鬼のような看守に四六時中監視される刑務所に。
しかし、獄中生活を送っていたアレックスに、当局側の凶暴な性格を180度変えてしまうという実験のモルモット役が舞い込んできたのだ‥‥

公開された当初、「あまりに暴力的」とか言って、露骨に眉をひそめた評論家がいたそうですね。
「はあ‥‥？バカじゃない?!」と思います。だって人間の暴力性を題材にした映画なんだもの、当然でしょ。
暴力を根こそぎ撲滅するという、聞こえはいいけれど、実は超管理社会とある種のファシズムを強行しようとするお偉方へのアンチテーゼだってことも、わからないのかなあと思いました。

冒頭から話の展開がまったく見えないのが、ワクワクドキドキものでしたね。
衣装もそうですが、インテリアやちょっとした小道具にも近未来っぽさが出ていて、
鬼才キューブリック監督のこだわりが見られましたね。
モイラが鮮明に覚えているのは、女性の裸像の乳首からミルクが噴出し、
それをアレックスが飲むシーン、
今のタワーレコードの内部にちょっと似たレコード店で、
アレックスがナンパした女の子２人の１人が舐めていた虹色の棒状のキャンディ。
そして、真正面に映る「2001年宇宙の旅」のサントラ版のジャケ。心憎い遊びです。
アレックスが好んで使う英語とロシア語をミックスした言葉もおもしろいし、
（"in out in out!"はすぐ覚えました）
音楽の使われ方が非常にユニークでしたね。
第九もさることながら、ナンパした女の子たちとの３Pで、
よく運動会の徒競走のBGMに使われるロッシーニの「歌劇ウイリアム・テル序曲」が流れるのには、ちょっと笑いました。
刑務所の「囚人用賛美歌」の歌詞も、思わず噴き出してしまいました。

３６年も前の映画ですが、いまだに観ていてまったく古さを感じません。
否、むしろ、少年グループによるホームレス受難（先日も東京でありましたね）、若者たちによる集団レイプなどの凶悪犯罪の増加、
ニートと呼ばれる青少年たちの急増など、まるで現代社会を予言していたように思えます。
すごい映画があったものです‥‥ほんとに‥‥

★鬼才キューブリックの世界★