★モイラの名画座★

< 新しい記事

新着記事一覧(全1143件)

過去の記事 >

2007.08.31

骨太な社会派ホームドラマ★「わが谷は緑なりき」

(4)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

きょうは、「駅馬車」「荒野の決闘」など西部劇の大傑作や、
社会を告発した辛口のホームドラマ「怒りの葡萄」などで知られ、
映像の詩人と呼ばれたジョン・フォード監督の命日。
そんな彼が、英国ウエールズの炭坑一家を、10歳の末っ子の目を通して描き、
作品賞など６部門のオスカーに輝いた名作といえば‥‥これですね。

わが谷は緑なりき(DVD) ◆20%OFF！

19世紀のウエールズの炭坑町。モーガン一家の男たちは、末っ子のヒューを除いて皆炭坑夫として働き、
一人娘のアンハラド（モーリン・オハラ）は、老母とともに台所仕事にいそしむ毎日。
決して裕福ではなかったが、幸せだった一家に翳がさしたのは、
炭坑主が労働者たちの賃金値下げを断行してから。
ヒューの兄たちは組合を作り、値下げに真っ向から反対。
あげくにパパ・モーガンが炭坑主側を味方しているといううわさが流れ、それがもとで、家族にも亀裂が‥‥
そんな折、炭鉱町の牧師グラフィードはアンハラドに心を寄せるようになるが、
炭坑主の息子もアンハラドに目をつけていた。
田舎牧師の自分より、大金持ちの炭坑主の息子の嫁になるほうが彼女にとって幸せと、
グラフィードは身をひくが、一介の炭坑夫の娘にすぎぬアンハラドを、炭坑主の妻が嫌うのであった‥‥

英国特有の階級社会への怒り、搾取される者たちの苦悩が随所に描かれ、
ややもするとただ重いだけの作品になりがちなのを、
世間ずれしていない10歳の少年の澄んだ目線から描いているので、
最後まで襟を正しながらも、楽しんで観ることができました。
ヒュー少年の姉アンハラドを思う心がすばらしいです！
家族愛をこれほど美しく、きめ細かく描いた映画も、そうはないでしょう‥‥
モノクロの映像なのに、炭坑町の谷が本当に鮮やかな緑色に見えてくるのだから不思議。
ジョン･フォード・マジックというやつでしょうか？
「白黒の古い映画なんて観たくな～い！」なんておっしゃるあなた、
この映画を観たら、価値観変わりますよ、きっと。

ジョン･フォードはアイルランド系で、それゆえに差別も受けてきたことでしょう。
差別、搾取される側の心情を映像で表現するのが、上手ですね。

★もっと、ジョン･フォード監督！★