★モイラの名画座★

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2007.12.11

貧しき者たちへの愛のまなざし★「赤ひげ」

(5)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

こんばんは、万年映画少女のモイラでございます。
今夜の映画は、邦画ファン、否、映画ファンなら一度は観たことのある
黒澤明監督のヒューマニズム溢れる大作
「赤ひげ」 ('65年　東宝）です。

黒澤明DVDコレクション::赤ひげ

長崎で３年間オランダ医学を学び、幕府の御番医になるべく江戸に帰った保本登（加山雄三）は、
自分の意思とは裏腹に、初老の院長・赤ひげ（三船敏郎）が切り盛りする小石川養生所（当時の慈善病院）で働くはめに。
薬代も払えない貧しい患者ばかりを抱え、昼夜の別なく薄給で働かされ、
およそ御番医とは正反対の、非エリートコースの養生所の仕事‥‥
登は養生所での毎日がいやでいやでたまらなかったが‥‥

原作は山本周五郎の「赤ひげ診療譚」。
なんら誇るべきものを持たぬ、貧しい人たちへのあたたかなまなざし‥‥
貧しさや不幸な境遇にうちのめされている人々への涙‥‥
生活と闘いながらも、人間らしく、たくましく生きる庶民たちへの限りなき愛‥‥
いずれも周五郎先生が得意とするテーマでしたよね。
その周五郎ワールドを、黒澤明監督が３時間あまりの
それは見事はヒューマニズム大作に仕立てています。

赤ひげが医師としても人間としても出来すぎているのが、多少鼻につきましたが、
富をむさぼる者、自分の保身ばかり考えている役人どもへの痛烈な批判は
まったくモイラも同感でした。
赤ひげが吐き捨てるようにつぶやくセリフに、こんなのがあります。
「好かん！役人というやつは、どんな無法なことでも、どんな残酷なことでも
お上の名で公然と押し付ける！
（中略）しかしよく考えてみれば、役人ほど哀れなものはない。
自分の地位を保つためには、上にへつらって何でもする。
人間としてはもっとも貧困で、無知なやつらだ！」
「生きる」「悪い奴ほどよく眠る」でも、黒澤監督は役人批判を繰り広げてましたが、
この方、ほんっとに役人嫌いだったんですね‥‥

自分とは全く別世界の人間だと切り捨てていた貧しい人々を徐々に受け入れ、
医師として、否、人間として大きく成長する若き医師・登。
御番医にもなれるような秀才でありながら、あえて陽のあたらない養生所の医師として生きる森半太夫（土屋嘉男）。
いじめ抜かれ、犬以下の扱いを受け、誰にも心を開こうとしなかった少女おとよ（二木てるみ　名演です！）。
登場人物がみな実に生き生きと描かれています。
おとよと泥棒の少年の心の交流も、泣けました。

感動ばかりでなく、勇気も与えられる映画です。
大借金抱えて、友人や家族にも去られたけど、
この映画を観て、「もう一度生きてみよう！」と思い立った人、いるんじゃないかしら？
年間３万人もの自殺者が出るこの国‥‥（異常事態としか思えません）
こういう映画の無料上映会をあちこちで開催したら、
少しは自殺者の数が減るのでは‥‥？

そうそう、↓も生きる原動力になりますよ！（なんちって‥‥）