陽のあたらない若者の叫び★「チルスとマンス」

2007.12.15

こんばんは、映画狂のモイラでございます。
今夜の映画は、ちょっとシリアスな韓国の社会派作品‥‥とでも言いましょうか。
パク・クアンス監督の「チルスとマンス」 ('87年）です‥‥

　韓国映画/チルスとマンス DVD (韓国版)

チルス（パク・チュンフン）は生まれも貧しく、学歴もなく、
取り柄といえば絵の腕前だけだが、ひょうきんで楽天的な明るい若者。
渡米した姉を頼って自分もアメリカへ行き、一旗あげるのが彼の大きな夢。
そんなチルスは、ある時、ビルの屋上の看板描きの仕事で、
４０近い、いつも暗い翳がつきまとう男マンス（アン・ソンギ）と組むことに。
チルスははじめ、否定的なものの見方ばかりする根暗なマンスに反撥を覚えるが、
よくよく自分自身を振り返れば、惚れた女子大生にはソデにされるわ、
渡米した姉からは連絡が途絶えるわ、
良いことなんてほとんどなにもありゃしない‥‥
かたやマンスは、父親が政治犯として刑務所で服役中ということで
世間から後ろ指をさされ、
汲々と生きている男。
さえない若者と、世をどこかすねた中年男は、互いの悩みを打ち明けていくうちに
自分たちを人間扱いしない社会に対する憤懣が爆発し‥‥

どれほど努力しても、度重なる不運や、さまざまな要因から
陽のあたらない人生を歩かされている人間の苦悩や悲哀
愛を以って描いた秀作でもあり、
また、世の片隅でひっそりと生きる人々を
人間扱いすらしない社会に対する猛烈な怒りをぶちまけた傑作です。
アン・ソンギ、パク・チュンフンという
韓流四天王とは桁違いの演技力をもった名優が、その本領を発揮していましたね。
ラストが皮肉っぽいというか、やるせなさすぎて泣けるというか‥‥
いや、これはもう観た人じゃないと、わからないでしょう。
チルスの楽天的な想像のシーンが、効果的に使われていました。
パク・クアンス監督の、これが初監督作品とは思えません。
モイラはこの作品を、韓国映画祭で観たのですが、
チルスとマンスに、「負けるなよ、こんなクソッタレの世の中に！」というエールを贈りたくなりました。

ああ、このお店で儲けたら、韓国に行って、
おいしい韓国料理をたんまり食べて、韓国映画をたくさん観たいなあ‥‥
　　　　　　　　　　　　　↓↓↓