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2008.03.07

岩下志麻、気迫の熱演！★「五辨の椿」

(8)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

野村芳太郎監督岩下志麻のコンビは、「影の車」「鬼畜」などの傑作を数多く生みましたが、
中でも'64年の「五辨の椿」は、傑作中の傑作ではないかと、
モイラはしみじみ思います。

岩下志麻／五瓣の椿

遊び好きで淫乱な母（左幸子）に苦しめられ、苦悩の果てに病死した父（加藤嘉）の無念を晴らすべく、
母と通じた男たちに色仕掛けで近づき、平うちの銀かんざしで次々と殺す娘・おしの（岩下志麻）。
おしのを追いながらも、彼女の情念と深い哀しみに、どこか共感してしまう与力の青木（加藤剛）。
３時間近くの長い映画ですが、出だしの芝居（近松の「恋飛脚大和往来」）、
真っ赤な椿の花に覆われた池、おしのの哀しみを象徴するかのような白い雪など、
映像の美しさにまず感服しました。
山本周五郎の原作を上手に脚色した、名脚本家・井手雅人氏の筆力にも感服。
配役もすばらしいことこの上なし。
乙女の清らかさや潔癖さを持ち合わせながら、色気をふんだんに放ち、
一転、復讐心に燃える恐ろしい娘を演じたうら若き岩下志麻の演技力には、もう脱帽です！
この方は生まれながらの女優さんなんでしょうね。
彼女は若いころから、せりふの通りがよくて、とても聞き取りやすい。
今の若手女優は、何をしゃべってんだかわからない人が結構いるので、
よく見習うべきです。
与力役の加藤剛も、味がありましたね。
左幸子のモンスター級の淫乱ぶりもすごかったし（こんな母親じゃ殺したくもなります）、
西村晃も得意の小悪党ぶりを熱演していました。

演出もさることながら、俳優の名演技を引き出す達人だった野村芳太郎監督。
さすが、無声映画時代の役者から監督になったお父上・野村芳亭の血を受け継いでいるだけのことはあります。
ああ、このモイラももっと、映画人だった父の血を受け継ぎたかったものです。

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