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新しい年が明け、雅彦はすっかり年末年始の忙しさから解放された。寒い空気が漂う中、初日の出を見に行くことはなかったが、心の中では新たなスタートを切る準備ができていた。
この年末、彼はこれまで以上に多くの人たちと関わり、感謝の気持ちを形にすることの大切さを実感した。そして、その感謝が自分にとっても大きな意味を持つことを心から感じるようになった。
その年の始まり、雅彦は初めての仕事始めの日、いつもと違う感覚で出社していた。以前はただ義務感でこなしていた仕事が、今では人との繋がりの一部として感じられるようになっていた。
午前中、久しぶりに上司の高田部長から声をかけられた。
「大田君、ちょっと時間あるか?」
雅彦はすぐに返事をし、部長の部屋に向かう。
「どうしたんですか?」
部長は少し考え込んだような表情をしてから、話し始めた。
「実は、君が昨年のお歳暮で送ってくれた焼き菓子、すごく好評だったんだ。特に取引先の皆さんに喜ばれてね。」
雅彦は驚きながらも笑顔で答えた。
「そんな、特に大したことはしていませんよ。少しでもお世話になった気持ちを伝えたかっただけですから。」
「いや、でも君の気配りが結果的に大きなプラスになったんだよ。取引先との関係がさらに良くなったし、何よりも感謝の気持ちをしっかり伝えることが、いかに重要かを再認識した。」
雅彦はその言葉に驚くとともに、心の中で温かいものを感じた。自分が行った小さな気遣いが、目に見える形で成果を生んでいたことに、思わず胸が熱くなった。
その後、取引先からも年始の挨拶が届き、さらに感謝の意を表す機会が増えていった。次第に、雅彦は感謝の気持ちをもっと広げていこうと心に決めた。職場内外での繋がりを深め、人と人とをつなげる架け橋となるような存在になりたい。
そして、その年、雅彦はある決意を胸に、上司に提案した。
「部長、今年は取引先との関係をさらに強化するために、定期的に交流の場を設けるのはどうでしょうか?例えば、年に数回の交流会や感謝の会を開いて、感謝を直接伝え合う機会を作れたらいいなと思うんです。」
高田部長はしばらく黙って考えた後、穏やかに言った。
「いい提案だね、大田君。感謝を伝え合うことが、結局は信頼を深める一番の方法だと思うよ。君が言うように、そういった場を持つことでお互いの信頼がさらに強くなるだろう。」
雅彦はその言葉に、自分の考えが間違っていなかったことに確信を持ち、胸を張った。
年が進むにつれ、雅彦の提案は次第に現実のものとなり、取引先との定期的な交流会は好評を博した。自分の行動が周囲に影響を与え、そしてその結果が実を結ぶことに、雅彦は深い充実感を感じていた。
ある日の午後、雅彦はふと母から届いた手紙を開封した。手紙にはこう書かれていた。
「あなたが最近、周りの人たちに感謝を伝える姿を見て、とても嬉しく思っています。それを見て、私ももっと感謝の気持ちを伝えたいと思うようになりました。」
雅彦はその手紙を読み終えると、思わず涙がこぼれた。母の言葉が、今まで以上に深く胸に響いた。自分が少しでも母に影響を与えることができたのだと思うと、その思いはとても嬉しく、また、責任感も感じた。
「ありがとう、母さん。」
雅彦はそのまま、手紙を胸に抱きしめた。
その後、雅彦は新たな目標を持って歩み始めた。それは、どんな小さなことでも感謝を忘れずに行動し、その感謝が大きな力になることを実感しているからこそ、日々の中でそれを大切にしていくことだった。
お歳暮を通じて学んだ「感謝を形にする」という考え方が、雅彦の人生に新たな光を与えてくれていた。そして、それはこれから先の人生でも大切にしていくべき宝物となった。
完
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