幸せな50代を作りましょ♪

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サン・ピエールの未亡人



ジュリエット・ビノシュ主演のフランス映画。
19世紀のフランス第二共和制下。カナダ東部の仏領の島、サン・ピエール島で起きた殺人事件の訴訟記録(実話かどうかは不明)に基づき、ストーリーが展開していく。
事件の発端は実に安易で、タラ漁の猟師たちが酔った勢いで船長を殺害する。なぜ殺害したか、は本人たちもよくわからない。とても簡単な裁判が行われ、主犯(とおぼしき、程度の判断)のニールは死刑と決まる。
決まったはいいが、死刑執行手段がない。そこで、フランス本国にギロチンと死刑執行人を手配してもらうよう、依頼する。その手続きだけで、何ヶ月もかかり、その間、軍隊の隊長がネールを監視する。
問題はここから。ダニエル・オトゥール扮するキャプテンの奥方がマダム・ラと呼ばれるジュリエット・ビノシュ。自分に正直で、犯罪者であろうが普通の人間としてニールと接していく。二人の住居の中庭にニールの独房があり、マダムはニールに自分の奉仕活動の手助けを頼む。島には未亡人が多く、男手を必要としており、雪かきをしたり、屋根を直したり、マダムに言われるように労働するニール。ある時は酒場の移転で起きた事故を体当たりで防ぎ、いまやニールは島民の人気者。それが、死刑判決を下した裁判長には面白くない。
上流階級の集まりで、マダムは堂々と、裁判長とか総督とか、いわゆるお偉いさんに向かってニールの死刑執行に反対する。マダムとニールの関係をおもしろおかしく茶化されたり、マダムの行動を規制するように意見されても、キャプテンは従うどころか、妻を侮辱するものは許さないと公言する。
季節は変わり、相変わらずマダムとニールは奉仕活動を続けている。そんな時、ようやく別の島から中古のギロチンが送られてくる。死刑執行人を島で募るが、当然希望者はいない。が、何も知らない別の島からの移住者が、裁判長たちに言いくるめられて、執行人のお役目を引き受ける。妻と幼子をかかえて貯えもないその男は、高い賃金と、断れば保護はないという脅しに負けたのだ。
島民の暴動を懸念した裁判長は、キャプテンに鎮圧を依頼する。キャプテンは、民衆に銃は向けない、と断る。ここで、裁判長はキャプテンに反乱罪の汚名を着せ、本国に書面を送る。
キャプテンの交代要員が寄越され、キャプテンは本国へ送還される。そこには銃殺刑が待ち受けている。
すべて承知で、キャプテンと本国に帰るマダム。
島ではニールの死刑が執行され、パリではキャプテンの銃殺刑が執行される。
共和制の支配が揺らぎ、政府は反逆に非常に敏感になっていた。正義も人権も、議論される時代ではなかったのだ。

普通のストーリー性に富んだ映画と違い、見る者が期待するようなエンディングにはなっていない。島民の声に動かされて再審が行われ、ニールの刑が軽くなるとか、キャプテンの正義が通り、腐敗した高級官僚は更迭される、というようなことは起こらない。
大きなメッセージ性も見当たらない。が、随所に、細やかなメッセージが隠されている。
たとえば、罪を犯したものも環境によって更生していくのだ、とか、貧しいが故に人は人の道を外れることもある、とか・・。それらのメッセージは見る者の置かれている状況によって、いろいろに発せられているのかもしれない。

余談だが、Veuveは未亡人という意味と、隠語でギロチンという意味があるそうだ。
タイトルの"Veuve"は島の未亡人たちを指すのか、キャプテン処刑後のマダムを指すのが、はたまた皆がいろんな意味で待ち続けたギロチンそのものを指すのか、1回見たくらいでは判断がつかない。



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