レムリアからの転生旅行者

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神坂俊一郎

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Jul 8, 2019

あるサヴァン症候群の男のお話　33

テーマ：人生について(173)

カテゴリ：サヴァン症候群

さて、あわやというところで何とか無事で済んだ優佳さんでしたが、夜一人になると、自分の馬鹿さ加減に腹が立つよりも泣けてきました。
一郎君、絶対に約束は守る人ですし、間違っても私を襲うような人間ではないのです。
「今夜は僕の側から離れるな。」という警告は、明らかに私が危ない目に遭うことを予知したうえでのことだったと思われますし、それをわかっていて逃げ出して危ない目に遭った私は、愚かとしか言いようがない。
うーん、明日どんな顔で彼に会って謝ればいいのだろう。
すると、彼ならきっと「その顔しかないだろう。」と言いそうな気がして、少し笑えて気が楽になりました。
まあ、いいか。何とか無事だったから。
確かにこの顔、ほっぺが少し腫れているのが気になるけど、この顔しかないんだから。
顔もわからない男に襲われたことを告白する勇気は絶対持てないけど、素直に謝ることだけはできるだろう。
普通の女子大生なら、こんな場合でなくともデートの度にお化粧して化けようと考えるところだと思いますが、何と優佳さん、常にすっぴんでしたから、そんな考えも浮かばなかった、いや、化粧道具すら持っていませんでしたから、思いつかなかったのです。

優佳さん、真智さんに言われたことを思い出しました。
どういう意味かわからなかったから聞き返すと、彼に、どんなに化けても一目で見破られた話でした。
彼女も普段は薄化粧で、私は化けるほどお化粧したところは一度も見たことがないんだけど、一度だけばっちりお化粧して、眼鏡ではなくコンタクトレンズに変えて、ミニスカートはいて来たことがあったんだそうだ。
彼女のミニスカートって、似合うかどうかは別にして、何時もスラックスかロングのフレアスカート姿でしたから、想像もつきません。
それで、他の京大生たちは、彼女が誰だか全くわからず、「誰だあれは。」とごそごそ噂しているので痛快な気分になっていたら、一郎君だけが、「おや、聖護院さん、今日はヤングな装いで、お化粧もしているんだね。」と一目で見破ったんだって。
その後二度とその格好はしていないと言うんだから、彼女、一郎君に見せたくておしゃれしたのだろうし、一目で見破られてショックだったのだろう。
つまり、彼に気があったからこその行為だったんだろう。
一郎さんと付き合おうと決心した時に、真智さんに一郎さんのことを好きなんじゃないですかと確かめたら、否定しなかったどころか、「ある面ラブラブだと思うんだけど、私、聖護院家の方が大事で、一郎さん長男だし、結婚するには障害が多いから、恋人候補から除外したわ。」って、あっけらかんと答えてくれたんだった。
その時は、見事な割り切りだと感心した私だったけど、自分がその立場になってみると、真智さんのようにはいかないことがよくわかった。
お父さんもお母さんも、私が一郎さんと付き合うことを反対している。
一郎さん、私の両親の立場もよく理解できるような感じで、私の希望ではあったんだけど、プラトニックラブをきちんと守ってくれている。

とにかく誠実な紳士、その一言に尽きるし、それって私の理想なんだ。
私が彼と付き合う時、「何といっても信じられないほどいい人だから、優佳がいいと思うなら薦めるけど、普通の人間の心情を解しないところがあるよ。」と真智さんに言われたし、付き合ってみてそのとおりであることもよくわかった。
でも、大学4年生で、あれほどの紳士は居ない。
それだけではない。
悪意は言うに及ばず、およそ人間の持つネガティブな感情全てに無縁な人間なのだ。

まあ、預言者一郎さんだから、私のことを決して悪いようにはしないだろう。
明日は、思い切って謝ろう。
そう決心して眠った優佳さんでした。

続く。
画像は、可愛いトメコです。