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1月20日 私は駅の階段を ものすごい勢いで駆け上がっていた。
こんな 一段抜かしで 風を切るなんて 何年ぶりだ。
航平は電車を一緒に降りてから どこへ行ったか分からない。
航平のためなのに、今は航平にかまっていられない。
下車した大勢のお客さんの中で、必死に私の背中を追いかけていることだろう。
大○駅から 次の駅にある 勇者の会場まで6分で行かなくてはならない。
54分に電車が駅を出て、11時までに名前を書かなくてはならない。
電車の扉が開くと同時に飛び出し、階段をクリアしたところで
急に足が重くなり、思うように動いてくれない。(でも、時間が・・・時間が・・・)
周りの人に 自分の異変が分からないように 平気な振りをして改札を出、
建物に向かう。
その時 私の心臓が悲鳴を上げた。(年だよ!年だよ!もう限界だ!)
私の足は止まってしまった。
そこへ航平が後ろから現れた。
「ママァ~」 航平は私の姿を見て、もう走らなくても間に合うのかと
安心したように
「ボクは持久走だと思って、走ってきたよ!」 と言ってきた。
(これは持久走じゃない!)
「バカ! 航平はもっと走れ! ママは走れなくなっちゃったんだよ。
航平は 場所が分かるでしょ。
ひとりで行って、名前 書いてきな!」
そう言われても、ヨロヨロしている私の側から 前へ進む気配がない。
(もう、この
のんきなおバカは 私が走らないと 走らないのか!
間に合わないんだようー!!)
心の中で 叫んだ。
半分 怒りながら、半分 呆れながら 私は走り出した。
いや、気持ちは 走っていたが 本当は倒れそうだった。
(笑われる。 ここで倒れたら 笑われるぞ。
ここで倒れたら、人が集まって・・・ ムシキングのエントリーのために
走って倒れたなんて・・・ ダメだ。 普通にしなくっちゃ。
フラフラしちゃダメだ。 倒れちゃダメだ!)
向こうに 会場が見えてきた。 人が はみ出しているのが分かる。
現場に着くと、お店の人を探した。
「えー 間もなくお時間になります」 マイクの声が聞こえた。
(どこ? どこに行けばいいんだ!)
周りの人が見えてなかった。
すると 「はい。 大丈夫ですよ」 と 忍者の格好したお兄さんが
サッと 名前を書くボードをくれた。
私の横にはA.S君のお母さんがいて 「あぁ~] と声を掛けてくれたのだが
きっと 私の目は 空中を見ていて
A.S君のお母さんと視線が合っていなかっただろう。
呼吸は乱れに乱れ、ペンを持つ手はフニャフニャ 足はカクカク
それでも、とりあえず 名前は書いた。
私は 「航平 後は抽選で名前が呼ばれるか ちゃんと聞いておくんだよ」
と 言い残し、もうひとつ 私を縛り付けていたものから 解き放たれるため
お手洗いへ向かった。
携帯で 航のちちにも 間に合ったことを伝え 会場に戻ると
航平は 太鼓の達人のバチを持って 遊んでいる。
周りには ゼッケンをつけている 子供さんがいる。
「航平 ちゃんと聞いてたの? ダメだったの?」
「うん」
「本当? あんた 遊んでて 聞き逃したんじゃないの?」
「ううん。 ダメだった」
(あんな 思いをしたのに! なんでこの子は こんなに簡単に軽く答えるのだ!
なんで あんたは 太鼓のバチを持ってるの。 あんたはもー )
(こんな時のために 体力作りしなくちゃだめかな~?)
抽選漏れしたことを 航のちちに携帯で伝えながら 一瞬 本気で そう考えた。