”名も知れぬ人たちへ”・【転13】

・・・『幻想』という名の絵・・・

我が家にグランドピアノが来たのは,昨年の暮れだった。
値段はすこし張ったがそれでもランクは下の方だった。
でも娘と約束した手前,買ってやらないと親のメンツにかかわる。
理由は,『幻想即行曲』を弾くようになったらグランドピアノだなって私が言ったことがあった。
それは今から3年も4年も前のこと。
"お父さんの好きなショパンの幻想即行曲に挑戦できるようになったら
グランドピアノ,買ってやるよー"少し楽観的な言葉を娘にかけた。
そのときは,まさかなーって思っていたが。

でもその約束は私も忘れた訳ではない。
我が家の新築の時,しっかりとグランドピアノが入るように基礎や床を強化していた。
そのときがやってきた・・・ピアノ嫌いだって言ってたけどよくここまで上達したな,と
妻と話をしていた。娘には内緒にして,突然見せてやろうと画策した。
娘が突然に沸いて出てきたそのグランドピアノを見て"すげー,すげー"だって。
目をきらきらさせながらソロソロと鍵盤に指を置いたそうだ。
このとき私は単身赴任だったからメールでしかわからない,ピアノの写真を添付して。

そのうれしさがこの『幻想』という絵にこめられている,と私は思う。
宝だ。

妻もこの絵を見て,"うまいねー,すごいなー"って言っていた。
ビデオを通して・・・。

文化祭・・・来年,一緒に見に行けたらなー,見せてやりたいなー,と思う。

・・・こんな思いは『幻想』なのかな・・・
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