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私の家に毎日遊びに来るおじさんがいる
私が夕方仕事から帰宅すると、こたつに入りみかんを食べているマークハントのようなおじさんが目に入る
何事もなかったかのようにお風呂にお湯を溜めていると、玄関の閉まる音がした
犬の散歩に行ったようだ
最初はおじさんの顔を見るだけで歯を剥き出しにしていた愛犬も、
今じゃメトロノームのようにリズミカルに尻ごと動いている
歯の生え変わり時期に痒みを抑えきれず家中かじり倒し血だらけになってジャレ合っていたあの頃
初めての誕生日に犬用ケーキを買い鼻に生クリームをつけながらお気に入りの靴の中にうんkをしたあの頃
盗み食いが原因で大喧嘩をし一日中無視していたら、なんか折ったみたい、と言わんばかりに足を引きずりだし仮病を習得したあの頃
雷に脅えベットに潜り込んで一緒に一夜を過ごしたあの頃
そんな愛犬が世帯主でもないおじさんに尻ごとブリブリしているのだ
「あたし帰ったよ ほら、おいで」とジャーキーをちらつかせても
キラキラとした目にはウンチバックを持っているマークハントしか映っていない
私の中にメラメラと沸き立つ感情が生まれた
台所では血圧の高いおじさん用に母が鼻歌を歌いながら食事を作っている
テーブルにはテレビが1番良く見える位置に陣取っているおじさんがいた
「早見優とヤックンって昔絶対デキてたよ」と母と会話をしていても
「は!?早めになんだって!?」と耳が悪いくせに会話に入ってくる
「いや、だからぁー!早見優とぉー!」毎回大きな声で同じ事を2度言わせるのだ
「ああ!そりゃお前パブロンだよ しかし竹下景子はいい女だな~!」
こういったドリフのような会話にはうんざりしていた
なので通販で補聴器を買ってやった
これで私のジョークも普通に笑ってもらえるだろうと、いつものように食卓につく
「いやぁ~今日は蒸すわ、蒸し蒸しするわ」と肩からかけたタオルで顔を拭きながら
パンツ一枚での登場に震える拳で何度も膝を叩いた
「この補聴器のおかげでお前も部屋で変な事できなくなったな!ははは!」
「チッ」
「お、お前今・・・・」
おっと!聞こえたのか!私の舌打ちが聞こえたのか!
舌打ちが聞こえてしまった事より、いい買い物をしたという喜びがあった
「お前今 屁こいただろ」
あんたはいつも直感で買う もっと厳選しなきゃ
親友の言葉を思い出した
でも今回は
「光を知らなければ見なくていいこともあった」 とcoccoが歌っていたように
「性能のいい補聴器がなければ聞かなくていいこともあった」
という直感があったのかもしれない