リカちゃん
私自身はお人形遊びがそれほど好きではなかった。それよりも外で走り回る方だった。けれど、私の次女は幼い頃お人形が好きだった。彼女は洋服も、ひらひらのレースやワンピースを好んで着た。おもちゃも、リカちゃんハウスの類いのものが好みで幾つか持っていた。
当時、私と子供たちは、私の祖母が生前使っていた部屋で寝起きをしていた。仏壇と床の間と掛け軸のある部屋の方には津軽塗りの座卓があり、純和風だった。その座卓の上にリカちゃんハウスを置き、リカちゃんの衣装を並べ、障子に透かされた淡い光の中で遊ぶ幼い女の子、というのは私には何となく隠微な光景に映った。
ところで、彼女がおなかにいる頃、なぜだか私は彼女に「りか」という名前を付けようと思っていた。しかし、産まれてみると、なんだか雰囲気が違ったので、りかちゃんにはしなかった。そしていまの名前は、りかちゃんに似ていなくもない。
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