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有栖川有栖先生の作品は、どのシリーズも(ノンシリーズも)魅力的ですが、
代表的なシリーズと言われれば、初期から描かれている2大シリーズ、
江神二郎 先輩が探偵役を担う「学生アリス」シリーズと、
犯罪社会学者 火村英生 先生が活躍する「作家アリス」シリーズ
になるでしょう。
『砂男』は、この2つのシリーズから2つずつ、ノンシリーズの短編2つの計6編からなる短編集。
砂男 (文春文庫) [ 有栖川 有栖 ]
「女か猫か」☆
「推理研VSパズル研」☆
「ミステリ作家とその弟子」
「海より深い川」★
「砂男」★
「小さな謎、解きます」
☆は「学生アリス」、★は「作家アリス」の作品になります。
「女か猫か」☆
ちょっと不思議な学生ストーリー。
密室で彼の頬に傷をつけたのは、「女か猫か」
ラストのライブシーンの描写もかっこよくて、青春群像みたいな作品になっています。
「推理研VSパズル研」☆
パズル研の出題した論理パズルの問題に挑戦する、推理研の面々。
鮮やかに解かれるパズル。推理研の矜持を示す「蛇足」。
ミステリとパズルの違い、その張り合いぶりが上質な笑いにつながっています。
そうしておきながら、最後の二人の会話で、物語を抒情的に締めるのですから…とても上品な作品です。
「ミステリ作家とその弟子」
ノンシリーズ作品。
「ミステリの創り方」としても勉強になりますし、
時刻表ミステリ好きな有栖川先生の「ご意見」が垣間見えるのが面白い。
で、これらの要素をあわせて、ちゃんと「小説」に仕立てていますものね…。
星新一先生の投稿アンソロジーとかにありそうな、寓話的な作品でした。
「海より深い川」★
このタイトルのフレーズが、無関係に見えた二つの事件を結びつけていく物語。
謎が解けた時に分かる、この言葉の意味が、なんとも切なく人間臭い。
有栖川先生の人間観察力というか優しさがにじみ出ている良作です。
「砂男」★
短編集の表題だけあって、有栖川ミステリな作品。
「砂男」に関する都市伝説、死体にふりまかれた砂の謎、建物の周囲にも撒かれる砂…。
それぞれの謎を、ひとつずつ解き明かすことで、見えてくる犯人像、そして被害者の姿。
動機がね、切ないなぁ…。
合理的な理詰め一辺倒ではなく、こういう情緒的な理屈まで推理に組み込まれるのが、有栖川ミステリに惹かれる理由なのかもしれません。
「小さな謎、解きます」
有栖川先生のライトなファンとしては、今回も良い読書の時間を与えて頂いて感謝、という気持ちです。
ミステリなので、悲しいお話、切ないお話も多くあるのですが、それにもかかわらず読後感が良いことが有栖川ミステリの特長だな、と思います。
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