見知らぬ食材






おいしいものを食べるのも旅の醍醐味です。


見知らぬ食材


今回の目的地は南紀。実は、自分はおいしい地酒とご飯があればどこでもいい。お風呂が温泉だったら申し分なし。そういう人間。だが、今回ばかりはそうとばかりも言っていられない。だって、パンダなのだ。パンダが、世界の珍獣パンダが紀伊半島にいると言うのだ。白浜はちょっと遠いけれど、これは行くしかない。そんな訳で今回の旅行は決定された。

 前日、同期の飲み会があったのでちょっと起きるのが辛い。が、飲んでしまって起きるのが辛いなんて言ったらくろさんに叱られること必至なので何でもない振りをして起きる。荷物はあらかじめ用意しておいたので、身支度だけ整えて、さあ、出発。昼と夜に思う存分飲むためには、午前中要員としてがんばらなければならない。まずは運転に集中。

 国道1号線を西へ。豊明インターから伊勢湾岸道を通り、名港トリトンを眺めながら走る。土曜日の朝だっていうのにトラックが多いのが気になるけれど、なかなか順調。

「くろさん、今日のお昼はどこで食べるの?」

「この調子なら尾鷲辺りかな。」

熱心にガイドブックをめくるくろさん。吟味した結果、寿司に決定。尾鷲市役所近くの「一重(いちじゅう)」という寿司屋へ行く。

 ちょっと分かりにくく時間をとられたけれど何とか到着。自分は美味コースという寿司7カンのコース、くろさんは握り10カンと細巻き1本の特上寿司を注文した。この2つ同じ3,000円。つまり、自分の方がネタがいいってことですね。そこまでは分かったけれど、大将が

「美味コースはネタだけじゃなくて、ワサビもいいんですよ。」

と言う。くろさんは普通の練りワサビだけれど、美味コースは本ワサビ。それは楽しみ。そして、もちろん冷酒も注文。地酒のいいのがなかったので八海山の純米吟醸酒。

 最初に出てきたのはアオリイカ。イカソーメンのように細く切った白い身がシャリの上に乗っている。新鮮だからソーメン状にしてもおいしいのかな、と思いつつ口に入れる。確かに歯ごたえが良い。が、それより本ワサビ!ツンと鼻に抜ける香りは爽やかで、喉の奥に甘みさえ感じる。このワサビならネタが少々悪くたっておいしく感じられるんじゃないの?

 次に出たのはイサキ。くろさんも同じものだったので本ワサビのおいしさを知ってもらおうと思い、交換。案の定

「ウマイ」

と、悔しそうな顔になった。

 次はホタテ。そしてその次に出てきたのが鬼海老。少しだけ醤油をつけて食べてください、という大将の言葉に従い、ネタ部分に少し醤油をつけ口へ。この鬼海老、海老という名前だけれど味は蟹に近い。しかも、蟹と蟹味噌を混ぜた感じのクリーミーな口解け。くーっ!むちゃくちゃうまいぜ!!!

 次はウニ。ウニといえば北海道だけれど、ここでは尾鷲湾のウニを使っていると言う。北海道のウニに比べると甘みは足りない分、磯の香りが強くする。日本酒にはこちらの方が合うかな。次は、はも。これも初めて食べます。骨を切った身の上に梅肉を乗せていただきます。そして最後は大トロ。実を言えば、大トロはどこでも食べられるし、できれば最後は白身で締めたかったところだけれど仕方がない。口の中を日本酒できれいにしてはい、ごちそうさま。ちなみにお椀は蜆の赤出汁でした。





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