かりん御殿

かりん御殿

November 20, 2003
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カテゴリ: 旧(時事/社会/家庭)
ロンドンで行われた反ブッシュ反戦デモは、小雨にもかかわらず

だが、トルコ英領事館と英系銀行(HSBC・香港上海銀行)への爆破テロ事件によって
本来、見出し的ニュースとなるはずだったのが、後ろの方に追いやられていた。
宣伝効果は、デモよりもテロ、という皮肉な結果だ。
好戦的政治家達が「テロには屈しない」と誇らしげに叫ぶ時
「テロにはテロ」という言葉が浮かぶ。戦争も闘争も全てテロだ。
国策の一部だろうが、テロ対策だろうが、人の命を奪う行動は全てテロだ。
もはや狩猟の時代ではない。領地争いの時代ではない。

結局は、共食いによって自らの未来を葬ることになるのではないだろうか?


今回のトルコのテロは自爆によるものだった。
自爆テロリスト....Suicide bomberと耳にするたびに私は、太平洋戦争での
「人間魚雷」「神風特攻隊」に思いを馳せる。

私の父は学徒出陣をした。
戦局の緊迫によって、まず、文系そして最終的には理系の大学生も
戦地へ送られることになったのだ。
父は、多くを語らなかったが、学徒出陣をした大学生は
上官から常にビンタをくらったり、何かにつけしごかれたらしい。
大した理由も無く兵隊(戦友)どうしを向き合わせて往復ビンタを繰り返す、
そんなことは日常茶飯事だったそうだ。


人を笑わせることに長けていたので、じき、上官から気に入られ
家畜の世話の担当にまわされて、比較的ラクな待遇となり終戦を迎えたが
戦争で、家族や、友人・知人をたくさん亡くした。
私の伯父は、命はながらえたが、片足を失った。
長崎で被爆した親戚もたくさんいた。



参拝したかどうかは覚えていない。
今は、どうなのか、全くわからないのだが
靖国神社には、当時、境内(?)に、戦車や大砲の模型(?)が置かれていて
私や兄は、よじ登って遊ぶのが好きだった。
だが、何より、印象に残っているのは、その側に建つ「展示館」だ。

子供時代のことで、記憶が不確かなのだが、ここには、
血染めの軍服や日章旗、戦地からの手紙などが展示されていたと思う。
靖国神社全体を覆う何か重苦しい雰囲気がここには集中していた。
怖いのに目を離せなかった。
背筋を正しながら見なければいけないのを感じた。

靖国神社は、近年、参拝問題の一環で政治的な位置を与えられている様に思う。
しかし、私にとって、靖国神社こそは、反戦の象徴なのだ。
私は、靖国神社の中をさまよう戦没者達の霊を、子供心に感じ取っていた。
血は、いくら乾き、変色していようとも血だった。
成長して、「きけわだつみのこえ」や「ひめゆりの塔」や
戦争映画などに触れた際、展示館の血や霊が心の中で蘇ってくるのを感じたし
「人間魚雷」の存在を知った時は、その絶望的閉塞感が戦慄とともに想像できたのだ。


私が幼少の頃には、まだ、「傷痍軍人さん」がいた。
戦争で、手や足を失った軍人が、人の集まるところで
アコーディオンを弾きながら歌ったりしてお金を集めるのだ。
浅草寺に初詣に行けば、必ず、遭遇したし、渋谷駅の側で見かけたこともある。
子供心に、軍人さんの木や金属のフックでできたような
(それこそ海賊フックのような)初歩的な義手や義足が、とにかく怖かった。
アコーディオンの音が聞こえると、今でも、ぎくっとする。

おそらく、昭和30年代末から40年代初の経験だと思うが
その頃の日本には、まだ、戦争の影がくっきり残っていたのだ。
私にとって、戦争は、歴史の本で学ぶ字の世界ではなく、
血染めの軍服や、亡くなった特攻隊の若者が書いた手紙や
傷痍軍人さんの義肢と白い服・カーキ色の復員帽や
アコーディオンの音として、実態化されていた。


自爆テロから、私は、どうしても特攻隊の若者達を思い浮かべる。
誰が正しい、誰がテロだ、ということではなく、
命で命を散らす、その悲劇に、荒涼とした世界の将来が見える。


父は、また、彼岸の頃になると私達を連れて、千鳥ヶ渕へ行った。
ここには戦没者墓苑がある。展示館や記念碑もあったかもしれない。
だが、私の心に残っているのは、一面の彼岸花だ。
美しい美しい彼岸花だ。
皇居のお堀に向かって咲く一面の赤い蝶の様な彼岸花だ。
人が死んで蝶となり、その蝶が花となった......
彼岸花は、そんなことを連想させる花だ。
今でも、千鳥ヶ渕のあたりには、彼岸花が咲くのだろうか?





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Last updated  August 28, 2004 12:17:24 AM
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