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2004年05月17日
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カテゴリ: お酒の話
「焼酎ください」とだけ言って、あるお客が入ってきた。
どんな焼酎が欲しいのか良く分からないが、焼酎ブームが
盛り上がり始めてからというもの、こういう言い方をするお客は珍しくない。

とりあえずお客が何を求めているかを探らなくてはいけない。

一般の方はあまりご存じないが、焼酎には大まかに言って
「甲類」「乙類」という分類がある。

「甲類」とは主に無味無臭・透明に近いもので、
『純』・『大五郎』・『鏡月』などがコレに当たる。

反対に「乙類」の方は、素材の風味がそのまま生きているもので、


ただお客にしてみれば甲であろうが乙であろうが、そんなのは
どうでもいいことだから、「甲ですか?それとも乙ですか?」
なんていう訊き方は出来ないし、訊いてみたところで余計混乱を招くだけだ。

そこで私は、
「どういう飲み方をされますか?」
と、飲み方から種類を割り出す作戦に出た。

ここで「お湯割り」と来れば、まず間違いなく「乙類」だろうし、
「サワー割り」と来ればほぼ「甲類」でキマリだ。

お湯割りの場合、常温の時よりもストレートに香りが立ち昇るので、
イモや麦のように香りの強いものでないと、アルコール臭ばかりが鼻についてしまうし、
反対に無味無臭の「甲類」ならサワーなどで何らかの味を付けた方が


それ以外の「水割り」とか「ロック」などのような、甲・乙共通の飲み方で来られると
改めて絞り直す必要が生じるが、とりあえず選択肢はここでグッと少なくなるはずだ。

「お湯割りだよ!」
お客のその一言でとりあえず「甲類」の線は消えた、と思った。
本格焼酎に違いない!



「何焼酎がよろしいでしょうか?」
そう言っても「う~ん」と棚を目で探るだけ。人の言うことなど全然聴いてない。

しばらくするとお客がこういった。

「あの、『なんやら月』ってのはない?」

『なんやら月』っ??
ウチにある「乙類」焼酎で『月』の字がつくのは麦焼酎の『月の女神』というものだけだ。
でもそれとは違うという。
じゃあ、ウチにない商品か?

ここでお客がさらに言ったのは、

「あの、パックのやつだよ!」
「え、紙パックですか?」

紙パックの本格焼酎となると、ホントに限られてしまう。
已む無く紙パックの本格焼酎のコーナーへ案内すると、

「いや、こんなパックじゃなくて、ほら、あの、透明のヤツ!」

透明のパック? ひょっとしてペットボトルのこと?
でもペットボトルに入った「乙類」焼酎なんて聞いた事ないぞ!

しばし「ワケわかんない」状態に陥ったその時、
背後から「あ、これこれ!」と言うお客の声。
お客が手にしたのはなんと、『鏡月グリーン』の2.7L入りペットボトルだ。
まぎれもなく、私が「コレは無い」と確信した「甲類」焼酎じゃないか。

次の瞬間思ったことは、「この人、これをお湯割りで飲むの?」
私の頭の中には、「甲類」焼酎をお湯割りで飲む、という選択肢は無かったからだ。

よっぽどお客に聞いてみようかと思ったが、あくまで飲み方はお客の自由だし、
ヘンなことを訊いて気を悪くされるのは避けたかったから、
そのまま黙って『鏡月グリーン』の2.7L入りペットボトルを売った。

時として私の常識の範疇を逸脱したお客にめぐり合うことがある。

酒屋としてはお客に対して正しい(という表現もクセ者だが)飲み方を
提案していくのも仕事のうちだが、お客にとっては大きなお世話だったりもするし、
その境界の線引きは非常に微妙な問題だ。

でもとりあえずお客の飲み方に対して、
あまり先入観を持つのは止めた方がいいんだろうなあ。
お客の飲み方を尊重しつつも、そこからさらに一歩進んだ提案が
出来れば一番良いのだが、それが非常に難しい。





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最終更新日  2004年05月17日 22時18分46秒
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