気になる作家  た行

気になる作家 た行 


高樹のぶ子 

 「時を青く染めて」「その細き道」「億夜」「蘭の影」

 以前は自己陶酔的な感じがして、苦手だったのになぜか、読みたくなってしまっていた。恋愛をどーんと主題としたものはだれの作品であっても物足りなさを感じた時代もあったし。
 しかし、歳月を経て、恋愛というものから遠ざかってしまった今、中年の愛をとことん描くこの人の作品に夢や希望を感じる。これから本腰をいれて読んでいこうかと思う。



太宰治   

 「人間失格」「斜陽」「晩年」「新樹の言葉」「トカトントン」「グッド・バイ」「女生徒」「御伽草子」

 学生時代、よく読んだ。最近は現実的な作品(ミステリーが多いのに?)を読むことが多いので、すっかり遠ざかっている。
 が、高校時代だったか、「女生徒」を読んだ時は、この人どうしてこんなに女心がわかるのだろうかとうなってしまった。わかってもらった…などと妙に感動もした。
 自己の弱さ、醜さをさらけだし、虚無にさいなまれながらも、常に悩みつきつめていった生き方。「人間失格」や「斜陽」は何度も読んだが、今読んだらどんな思いがするだろうか?


高野悦子

 「20歳の原点」「20歳の原点ノート」「20歳の原点序章」

 学生運動の時代、立命館大学の学生で20歳で鉄道自殺を図った女性。時代背景の影響もあるのかもしれないが、普通の女の子、大学生として京都での一人暮らし、歴史の勉強、学生運動、友人との交流のなかで、自己の確立を模索し、悩んだり、苦しんだりしながら、日々日記をしたためていた。自分を追いつめていく中、凄絶で静謐な詩を書き、自虐的になりながらも進んでいこうとしていた。
 「20歳の原点ノート」や「20歳の原点序章」はそれ以前の快活な中学生から高校生までの日記で成長の過程がうかがえるものである。
 中学から大学時代、何度も読んだ。真摯で多感な生き方にひかれ、どうして死をえらばねばならなかったのか考えた。


田辺聖子 

 「お目にかかれて満足です」「愛してよろしいですか」「風をください」「お気に入りの孤独」「夢のように日が過ぎて」「おかあさん疲れたよ」「しんこ細工の猿や雉」「不倫は家庭の常備薬」「うつつを抜かして」「薔薇の雨」

 敬愛している!心酔している!お聖ワールド大好きだ!いつも帰るべくして帰るとあたたかく迎えてくれ、物語の世界へ誘ってくれる。
 大阪弁でサガンを書きたいという思いで紡がれた物語の数々…いろいろな男女の物語、ハイミスの思いと生き方、結婚生活について…人生の機微や恋愛のうつろい、時間の流れが描かれていく。ユーモアやペーソスで包まれていて元気がでる小説が多いが、悲哀やせつなさ、虚無もしっかりととらえられている。
 何度も何度も読み返している作品が多い。


谷川俊太郎  

「谷川俊太郎詩集」

 若さと愛と静けさに満ちた詩の数々。生や夢やさまざまな思いが、空から宇宙にひろがっていく。特に初期の詩集は素敵だ。
 また、ことばあそびなどの試みや絵本も楽しい。 


谷崎潤一郎  

「卍」「痴人の愛」「細雪」

 愛の逆説とでもいうのか、娘より妻に、しかも長年よりそった糟糠の妻に今なおひそかに性愛を感じる「卍」が鮮烈だった。「痴人の愛」とはまた違った愛の狂気というのか。さまざまな愛のありさま、ミステリアスに繊細に格調高くしっとりと描かれていて興味深い。



俵万智

 「サラダ記念日」「恋する伊勢物語」「俵万智と読む現代恋歌100首」

実はこの人苦手という気がするのに読みたくなる。この人の素直で賢くて可愛くておっとり、ピュア…つていうのは天性であるが、意識的な自己演出でもあるような気がするのだ。私のコンプレックスのせいかもしれないが。それでも読んでしまうのは、エッセイなど、同世代でわかりやすい感覚でじょうずにまとめられているからだ。
 それと私の好きなのは、歌や古典の解釈。ひとたびこの人に読み解かれると、どんな歌もみずみずしいうるおいをおびてその持ち味を生き生きと発揮しだし、おおらかにはばたき始めるようだ。
 言葉のすばらしさ、短歌という表現の可能性をみずからひきだし、たたえるところにも惹かれる。




千葉敦子 

「ニューウーマン」「ニューヨークの24時間」「寄りかかっては生きられない」「「死への準備」日記」

 対面したらエネルギーにうちのめされそうになるだろう。プライド高く、厳しい前向きな人。私は苦手なはずである。しかし、この人はどこまでも誠実で真摯で私は射抜かれてしまう。
 ジャーナリスティックな記事は実は読んだことがない。しかし、エッセイは日常生活においての時間の使い方や食事の工夫、仕事や男女の関係、ひとりの人間としてのあり方についてなど、おちついた雰囲気で語られていて読みやすい。また女性の生き方に一石を投じるようで、今でも新しい。
 死に極限まで冷静に向かっていたところにもこみあげてくるものがある。


辻仁成

「冷静と情熱のあいだ」「ニュートンの林檎」「そこに僕がいた」「サヨナライツカ」

 まだ読み始めて日が浅い。別れても忘れられない女性を思う純朴な男性の思いをつづるストーリーが多い。つい私など、これほどだれかに思われてみたいと思ってしまうが… そしてナルシストなまでに少年の心、ピュアな思いなどをベースにする。
 それにしても私生活がクローズアップされているので、読む目が影響されてしまいそうだ。
 なかなかよい…ということになるか、げんなりしてしまうか、もうちょっと読まねば定まりそうにない。人々の批評も賛否両論のようだ。




寺山修司  

「書を捨てよ、町に出よう」「寺山修司短歌集」「不思議図書館」「誰か故郷を思はざる」「青女論」「ぼくが狼だった頃」「赤糸で縫いとじられた物語」

 大好きだ!時々とびこんでいく。前衛的で斬新だが、永遠の真理を鋭くつかんでいる。奇妙なおもしろさ。ぞくぞくわくわく血湧き肉踊る。
 自己の歴史や母子のつながりへの執着を基盤にもちながら、自分とは?人間とは?人間関係とは?自由とは?文学とは?演劇とは?ギャンブルとは?などと問いかけながらひとつひとつ分析・検証を独自の見解と思索で大胆に打ち出していく。
 その心地よさ…
 短歌もよく読みたくなる。夏草の上でひんやりとした感触を味わうようなみずみずしい恋愛歌もあれば、暗闇の中で自己の血の流れを確かめるようなおどろおどろしい歌も多い。
 映画や演劇も観たい!

時実新子

「有夫恋」

 失礼な言い方だが、本に載っている顔写真を見ると、気のよさそうな普通のおばさんに見える。が、エネルギッシュですぱっとするどい切り口で恋情をとらえる。
子どもをおぶっての夫以外の男性との逢引や授業参観の時飾ってあったおかあさんの絵が、机に向かって背中を見せているところだった…というのがすごい!


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