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お兄ちゃんの思い出 水寺秋人(21)、水寺隼人(15)の兄をやっています。今日は日曜日、学校も休みということで、俺は2階にある自分の部屋の掃除をしていた。もともと散らかっていたわけではないのだが、レポートの締め切りが先日あったせいか本棚に立てかけられてある辞書とかが上下逆さまや、倒れていたりと少し汚かった。特にやることもなかったので、本棚の整理を中心に掃除を始めたのだ。ちなみに可愛い可愛い弟の隼人はリビングでテレビを見ている。なんでも友達から借りてきたDVDらしいが・・・。そんなもの見てる暇があったら、お兄ちゃんとどこか遊びにはいってくれないのだろうか。秋人はそんなことを思いながら本棚に入っている本をいったん出そうとした。それほどの量じゃないし、どうせなら全部出して、綺麗に生理整頓をしようと思ったのだ。すると本棚の奥から大事な大事なものを取り出した。アルバムだ。そう、密かに秋人が隼人を撮り、「~隼人メモリーズ~」っといいうくだらない題名をつけて保存しているものだった。本人にとってはくだらなくはないのだろう。そのアルバムは「誕生編」~「中学3年生編」まであった。以前、隼人に見つかって没収されそうになり、本棚の奥へと隠したのだ。秋人は「~隼人メモリーズ 幼稚園編~」というのをパラパラっとめくって1枚1枚、写真を見ていった。写真を見る秋人の顔は緩みっぱなしだった。俺がこんなにブラコ・・・いやいや、弟想いなのも隼人を守ってあげたいとい気持ちからなのだが、いつも空回り。母さんのお腹にいたころから、今か今かと隼人の誕生を待っていた。その時俺は6歳だった。両親からも自分はお兄ちゃんになるのだから、弟を守ってあげないとなっと言い聞かされていた。そのときはそれほど、この言葉を気にしていなかったのだが、隼人が生まれてからその言葉は切実なものになっていた。父に連れられ行った先には生まれたばかりの隼人がいた。自分よりも小さな顔、目、鼻、口、手、足。お兄ちゃんになったんだっという実感よりも、この小さな生き物を守ってやらなくちゃっと思った。そうだ、この時から俺の華麗なる努力が始まったのだ。初めてしゃべる言葉は「お兄ちゃん」にしたかったために必死で覚えさせようと毎日「お兄ちゃん」と連呼していたのだが、隼人が初めて言った言葉は「ワン」だった。っとうか「ワァ」に近かったが。近所の犬をみるたびに母さんが「ワンワン」っと言っていたので、これを覚えてしまったのだろう。俺は犬に負けたのだ。あの時のくやしさといったら、今でも覚えている。隼人が小学生になったとき、俺は中学生になった。俺は隼人に悪い虫が付かないようにできる限りの事はした。登下校は一緒に帰り(おかげで中学は帰宅部だ)、隼人が友達と遊ぶ時は尾行した。あるときそんな俺に隼人が言った。「ウザイ」俺はこのとき、どれだけ泣いたか。隼人がついに反抗期になったと焦ったものだ。いつかはくると思っていたがこんなに早くくるとは思っていなかったため、ショックはでかかった。ふと、秋人は隼人とツーショットで写っている写真を見て微笑んだ。近くの公園でキャッチボールをしたときの写真だ。この時、隼人は年長さんで5歳だ。よく、学校から帰った俺をつかまえて「お兄ちゃん、キャッチボールしよう!」と近づいて来たものだ。休日で自分が部屋にこもっているときも、精一杯の声を張り上げ「おにーちゃん!キャッチボール!」と自分の部屋のドアから可愛い顔をのぞかせていたものだ。「兄貴ーーー!!」そう、こうやって、俺のことを呼んで・・・・・「コンビニでジュース買ってきて」…可愛らしい顔を覗かせて言ったものだ…。ENDHome
2011年07月04日
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今日は何の日?街だけではなく、学校でもピンク色に包まれている今日。2月14日。隼人は別にこの日を特別視するわけでもなく、いつも通り過ごし、家に帰る。学校では、翔がチョコをもらえて喜んでいたが、本命からはもらえなかったっと落ち込んでいた。隼人もいくつかはチョコをもらったけど、それはすべて義理だろう。女子もいろいろと大変だな。と思いつつお返しはどうしようと考えていた。家についてから、自分の部屋でチョコをくれた人の名前を紙に書き上げ、それぞれのお返しを考えていた。すると、コンコンとノックの音が聴こえ、視線は紙のまま「どうぞ」と返事をした。ガチっと扉が開く音と同時に入ってきたのは、予想していた通り、兄の秋人であった。秋人は10人中10人がかっこいいと答えるであろう美形の持ち主なのだが欠点がある。それは、超が付くほどのブラコンなのだ。「は~やと!今日は何の日かな?」「・・・聖ヴァレンティヌスが殺された日だっけ?」「ちがーーーーう!!!!華の男子高校生がなんでそんな簡素な夢の無い発言なんだ!!! いかん!いかんぞ!そんなのでは!!隼人!!!」「いや、別に良くなくていいよ・・・」「・・・・それはさておいて、今日はバレンタインデーだろ?隼人?」自分で答えるなら、質問するなよと心の中で思ったが、口には出さないでおいた。秋人は目をキラキラさせて、満面の笑みで両手を隼人に差し出している。隼人は「あーはいはい」っと言って、鞄をゴゾゴゾっとあさって、秋人の手のひらに消しゴムを置いた。「ちがーーーーーーう!!!!消しゴムじゃない!!!」「あれ?消しゴム借りに来たんじゃないの?」「さっきまでバレンタインの話してて、なんで消しゴムになるの!!!!隼人~。」隼人の名前を呼ぶ声は半泣きだった。隼人は「はぁ~」っとため息をつくと、またゴソゴソっと鞄をあさって、ハイっと秋人の目当てであろう物を渡した。それを受け取ると秋人はすぐさま笑顔になり隼人に抱きついた。「隼人~ありがとんーーー!」「いや、そんなんで喜ばれても・・・チロ●チョコ1個で・・・」「何をいってるんだい!気持ちの問題さ!!!」そう、隼人が渡したのはチョコレート。毎年毎年、秋人がバレンタインにせがみにくるので、一昨年ぐらいからチロ●チョコをやっている。だいたい、日本では、女の子が好きな男の子にチョコを渡す日ではないのか。と初めは隼人も飽きれていたが、チョコ1個で秋人が静かになるんだったら安いものだと割り切っている。「ん?それより、この机の上にあるチョコはいったいどうしたんだい?」「これ?クラスの女子とかに貰った。」「なにーーーーーーーー!え、は、え?えぇ?なんだって?隼人こんなにも貰ったのかい!?」「なんでそんなにも慌ててるんだよ。皆、義理だって。兄貴の方がたくさんもらっただろう?」「隼人、心配するな。『俺には可愛い可愛い弟がいるので君の気持ちには答えられないよ』 と言って、すべてチョコを断ったぞ。」「・・・・・・・・・・・・。」「って、ちがーーーう!俺のことはどうでもいいんだ! 隼人がもらったチョコが義理だって!そんなことあるわけないだろ! みろ!この可愛らしいラッピングはなんだ!しかも、手作り!? 誰だ!この私の可愛い可愛い弟をたぶらかす奴は!!!!」「いや、だから・・・・・。」「隼人ぉぉぉぉ!!お前まさか好きな奴とかいるのか?いるとかいうんじゃないよな?な?な?」「え、別にいな・・・」いないと隼人が答える前に秋人は「いやーーー隼人が穢れたー!」っと叫びながら部屋を飛び出してしまった。止めようと思ったが、それもめんどくさいので、やめておいた。秋人が暴走した時は必ず、母が止めてくれるからだ。案の定、数秒後に母の怒鳴り声と、秋人の泣き声が聞えてきた。ENDHome
2011年07月02日
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生徒会と隼人 もう春といういうのに、肌寒い日。隼人は屋上で昼食をとるのを止めて、教室で食べる事にした。翔は勝手に隼人の前の席の人のイスを借りて座り、隼人と昼食を共にしていた。さほど話すことも無く、他愛も無い話を2,3して黙々と食べていた。この沈黙にも似た時間は長くは続かなかった。ピーンポーンパーンポーンと校内放送が流れだした。たいてい、生徒の呼び出しなどに使われる。隼人は今まで1回も呼び出しなどされたこともなく、またされるようなこともしていないので自分には関係ないと、箸を止めなかった。「生徒の呼び出しをします。1年の水寺隼人君、水寺隼人君。至急生徒会室まで来てください。 繰り返します------・・・」隼人は驚きのあまりにむせた。口に含んでいるご飯が飛び出しそうになった。生徒会と言えば、みんなの憧れ的存在。特に今期の生徒会長は顔良し、頭良し、スタイル良し。誰にでも優しくて、この学校のスターだ。その生徒会長から直々にお呼び出しがかかったのだ。「お、おい。隼人。お前何かしでかしたのか??」「え、え・・いや。何もしてな・・い。多分・・・。」目の前で心配そうな顔をしている翔。「でも・・・まぁ。悪い事で呼び出されるってわけじゃないし・・・」とフォローの言葉をかけてくれるが、頭に入ってきやしない。悪い事じゃなければ、良い事?いや、悪い事も良い事も何もしていない。隼人は心臓がドクンドクンとなっている音が聞えた。すぐに立ち上がり走って生徒会室に向かった。周りの生徒もチラチラと隼人のことを見ている。放送ひとつでこの有様。生徒会長のすごさ、圧倒的な存在感というものをあらためて実感した。隼人は生徒会室の前で止まり、大きく深呼吸をした。吸って、吐いて。何回か繰り返し、呼吸が整ってきたところで、ドアをノックした。「どうぞー。」という生徒会長の声が聞えた。「失礼します。」と言いながらドアを開ける手は少し震えていた。「よく、来てくれたね。」別に怒った様子は無かった。いつものように穏やかに雰囲気で、にこにことしている。「あの・・・なぜ俺が生徒会室に・・・」「実はね、聞いて欲しい事があるんだ。突然で驚くかもしれないが聞いてくれ。 生徒会では今、深刻な問題があってね。君に協力してほしくて・・・。」「し、深刻な!?」「はー・・そうなんだよ。本当に困ってるんだ。一刻を争う問題だ。」隼人は困った。こんな問題を自分が解決できるのだろうかと。あの生徒会長ですら悩ませる問題。いったい何なのか。少し興味もあった。「じ、自分にできることなら・・・協力します。」「本当かい?助かるよ。 実はね、うちの会計がバカ・・・いやいや、仕事をしなくてね。 仕事が溜まる溜まる。まぁ、バカ・・・いやいや要領が悪いんだろうね。 何度注意してもダメなんだ。要するにバカなんだ。」そう一気に話した生徒会長の顔は今まで見たことがなかったぐらいすごかった。目はつりあがり、背後には黒いオーラが見え、いつもより天パの髪がうねっており口元は笑っているが目は笑っていない。温厚で優しい生徒会長はいなかった。「・・・で、水寺隼人君。」「へっ!?あ、はい!」「君に会計補佐をやってもらいたいんだよ。」「は、はいー!!!・・・・・へ?」あまりにも怖さに、思わず会計補佐を引き受けてしまった。自分のこと・・・兄貴のことで精一杯なのに、また悩みの種が増えてしまった隼人は大きくため息をついた。ほんの一瞬で自分は人生のレールを踏み外したと思った。生徒会会計補佐をしてほしいという、生徒会長のお願いに断れず引き受けてしまった。目の前には嬉しそうにしている、いつもの生徒会長がいる。さきほど見せていた、鬼のような形相は幻だったのだろうか。「それでね・・・会計のやつを今呼んでいるからね」とここに来たら紹介してくれると言う。生徒会会計、どんな人なのかすごく興味があった。この人の補佐をしないといけないわけだが、本来、補佐という役職は無い。補佐をつけないくらい、忙しい人なのか、それとも、生徒会長が「バカ」と言っていた通り本当にバカでどうしようも無いやつなのか。でも、仕事ができないやつが、生徒会に入れるのだろうか。そう考えている時だった。いきなり、ドンという音とともに生徒会室の扉が開き、何かが飛び出てきた。よく見ると人だ。生徒会長の方を見ると、さきほどの笑顔はどこへやら、再び鬼化した顔が。「部屋に入るときはノックをしろと言っただろ。あ゛ぁ?何度言ったら分かるんだ、コノヤロウ。」生徒会室に突然入ってきた人物に向かって説教をしだす生徒会長。相手は正座して小さくなっている。顔良し、頭良し、スタイル良し。誰にでも優しくて、この学校のスターの生徒会長とは思えない一面。ただ驚くばかりだ。じっと説教されている人物を見てみた。髪の毛は染めているのか茶髪で髪をワックスで逆立てている。もしかして、この人が生徒会長が言っていた、会計の人では・・・。あまりにもジロジロと見ていたせいか、目が合ってしまった。「あっ、こんにち・・・」「貴様ー!何者だー!!」挨拶をする間もなく、相手は俺を指差し「くせものーー!」と叫びだす。どうしたらいいのか、分からずオロオロとしていると、生徒会長の怒りの拳骨が相手に舞い降りた。ゴツンと物凄い音。痛いのか頭をかかえて、うずくまっている。「隼人くん、すまないね。うちのものが。恥ずかしい話、あれがうちの会計なんだ」生徒会長は右手を額にあて、ため息をついた。そして、いろいろと説明してくれた。彼は、生徒会会計の2年で日丸勇気という名前で、どうやら今期の会計は立候補者がおらず、生徒からの推薦で1番投票が多かった日丸に決まった。日丸が会計になったのはいいもの、会計の仕事はそっちのけで、遊んだりいたずらをしたりと役に立たないらしい。今まで生徒会長が会計の仕事までこなし、フォローしてきたが、だんだん会長の仕事の方も忙しくなってきて、手に負えなくなったため、補佐を入れようということになったのだ。それが、俺だ。 「先生にお願いして、補佐を入れることを許可してもらったのはいいものの、誰にしようか迷っていたんだ。日丸みたいなやつをフォローするのは普通の人ではできない。補佐を入れて、すぐに辞めてもらっても困る。そんなんとき、君とお兄さんを正門の辺で目撃してね。失礼かもしれないが、お兄さんとうちの日丸が・・・」「・・・同類みたいって言いたいんですね。」確かに日丸先輩と、うちの兄貴、秋人は似ているかも。テンションというか、ウザさが似てるというか・・・。「・・・いや、本当失礼な考えだったかもしれない。けど、あのお兄さんを華麗にあしらう君をみて、この人ならうちの会計補佐をできるのでは・・・。と思ってね。」「・・・否定できなとこが痛いです。」兄貴のことはウザいと思っていたけど、そのウザさが更に面倒なことを引き寄せたなと、益々、苦労が絶えない。きっと生徒会に入ったことを兄貴に報告すると、「お前と一緒にいる時間が減ってしまうー!」と泣き出すだろうな。これから、学校では日丸先輩、家では兄貴の面倒をみないといけないと思うと泣きそうになった・・・。あっ、そういえば、生徒会長の名前なんだっけ・・・。END
2011年07月01日
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お父さんの憂鬱と幸せ結婚し、2年目で子供ができた。秋人と名付け、すごく可愛がった。仕事が終わったら駆け足で家へ帰り、秋人をお風呂に入れたり、オムツをかえてやったりと世話をする。純粋な目で俺を見つめ、笑ってくれるその顔はまるで天使のようだった。幸せな日々は続き、秋人は何も問題無くすくすくと育ち、6歳になった。その時にはすでに妻のお腹には新たな命が宿っていた。生まれてきた赤ん坊はまたもや、男の子。秋人が生まれてきたときと同じように幸せな気分でいっぱいだった。秋人に「お兄ちゃんになるのだから弟を守ってあげなないとね。」と妻の春菜とともに言い聞かせた。秋人は始めは実感がなかったのか、きょとんとした顔をしていたが、弟が生まれてから兄の自覚がでたのか、いつも側にいた。名前は隼人と名づけた。いつも、俺のそばにいて、遊ぼうと言っていた秋人も隼人が生まれてからずっと隼人と一緒にいる。たまに隼人のほっぺをつついたら、手を握っていたりしている。なんだか、隼人に秋人を取られた気分だった。秋人は俺と遊ぶよりも隼人の面倒をみたがった。まさか、もう親離れというか父親離れがくるとは思わなかった。俺がどっか遊びに行くか?と尋ねても、「隼人と一緒に家にいる」とか何か欲しいものがあるか?と尋ねても、「隼人の写真をとりたいからデジカメが欲しい」とかお父さんと風呂に入ろうか?と尋ねても「隼人と一緒に入るから」とかすべて帰ってくる答えは隼人関係。無性に寂しくなった。こうなったら、秋人ではなく、隼人になついてもらおうと、俺も秋人同様に隼人にべったりといつもひっついた。おかげで、「俺が隼人の世話をするー!」と秋人とたびたび隼人の取り合いになった。そのたびに、妻に怒られた。今では、隼人も大きくなり15歳。秋人は21歳。相変わらず秋人は隼人にべったりで、見事なブラコンとなっていた。隼人はそんな兄が煩わしいのか、たまに言い争いが隼人の部屋から聞える。俺は隼人が大きくなって手がかからなくなってから、昔のようにはべったりひっつかなくなった。それは、秋人が隼人にかまいっぱなしのせいで、いつも隼人の機嫌が悪いからだ。つまり、ここで俺まで隼人に親ばかぶりを発揮すれば隼人は確実に俺を嫌がる。ここは、かっこよくクールな父親として隼人に接しようと決心した。そのおかげで、隼人は俺にはよく話しかけてくれる。学校であったことや、ささいな出来事など、お父さんと子供の楽しい会話というのがあった。秋人とはあまりこういうことが無かったので、この一時が俺の幸せだ。しかし、秋人は俺の本性を知っているので影では隼人の取り合いである。隼人と楽しく話している最中にちょっかいだしてきたりと邪魔に入ってくるのだが、俺がこっそりと隼人に内緒で定期入れに入れている隼人の写真を秋人にみつかり、弱みを握られたいま、邪魔をしても文句を言えない。ちなみにその写真は隼人の小学校のときの写真で満面の笑みを浮かべている。1番のお気に入りの写真だ。仕事場でたまに見ている、隼人の写真。それが俺の元気の源だ。俺の職場は郵便局で、最近一緒の職場の女性に嫌がらせを受けているのだ。しかし、この写真を見ると仕事、頑張るぞ!っという気が起きる。嫌がらせというか、もしかしたら俺の事を恐れているのかもしれない。生まれつき目つきが悪いためよく避けられたものだ。この目つきのせいか、なぜか甘いものが好きではないというイメージがあるらしく、いつもコーヒーを入れてもらっても砂糖がついてこない。実は、甘党なのに。こんなことがあっていいのか!砂糖はいりますか?と聞かれたこともない。ただ当たり前のようにブラックのコーヒーを置いていくのだ。これを嫌がらせといわずになんという!砂糖がほしい。と言おうとすると、言い終わる前になぜか赤面で早足で逃げられる。そんなに俺と話すのも嫌なのか!俺が話しかけたぐらいで顔を赤くするまで怒るなよ!コーヒーを入れてくるのは嬉しいのだが、せめて俺の話を聞いて欲しい。しかも自分で淹れようとすると必ず、女性職員がきて、「私がやります!座っててください」と言い俺は待つことしかできなかった。この前たまたま女性職員が話しているのを立ち聞きしたのが・・・。「次、私が朝倉さんにコーヒー淹れてあげにいくわ!」「何抜け駆けしてるのよ!私が次にいくわ。」「いや、私よ!」と俺に淹れるコーヒーの話をしていた。そんなに俺に嫌がらせをするためにコーヒーを淹れたいのか。ちょっと泣けてくる。同僚の男性職員に相談したのだが、「贅沢な悩みっすね」と意味の分からない答えが返ってきた。「どういう意味だ?」と聞いても、「どんだけ鈍いんだ」としか返ってこなかった。他にもこの目つきのせいで、嫌な思いをしたことがある。あれは俺が高校生の時。学校からの帰り道で、捨て犬を見つけたのだ。まだ子犬でとても可愛くて、キュンキュン鳴いていた。俺は大の動物好き、特に犬好きなので、迷わず子犬を抱き上げ撫でていた。その様子を俺の友達が見ており、次の日に学校で「お前が子犬を抱くと、なんか犯罪の臭いがする」と真顔で言われ、深く傷ついた。その子犬は家で飼うことになったが、絶対に人前で撫でる事はしなかった。それ以来、俺は犬を人前で触れなくなった。こんなちょっぴり可哀相な俺。けれど、妻も子供もいて幸せな日々を送っていると思う。「・・・うさん!!・・お父さん!」「ダメだ、完全に物思いにふけっている。」「どうしたんだろう?父さんがボーっとしているなんて珍しい。」「そうか?まぁ、こんな親父はほっといて、隼人はお兄ちゃんと遊びましょうか!」「は?嫌だよ。俺はこれから翔と出かけるの。」「え!?聞いてないよそんなこと!?」「だって言ってないもん。お父さんに出かけるって伝えようと思ったのに。兄貴、そういうことだから、お父さんに言っといてよ。じゃ~ね~。」「ちょ、ま、待ちなさい!隼人!お兄ちゃんも連れて行ってー!」隼人は言いたいことだけ言って、さっさと玄関へと去ってゆく。それを慌てて追いかける秋人。その様子を呆れ顔で見つめる春菜。水寺家は今日も皆、幸せそうです。END
2011年06月29日
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文化祭の災難今日は学校の文化祭。隼人の通う白百合学園は姉妹校である南台高校と合同の文化祭となった。隼人は華やかに飾られた正門を見ながら、文化祭準備期間のことを思い返していた。生徒会会計補佐の隼人は文化祭の費用の計算、クラスでの出し物の準備、生徒会合同の出し物の準備等と目の回る忙しさだった。毎日20時まで学校に残り作業した。そして、毎日あの兄に迎えにこられた。隼人の兄、秋人は超がつくほどのブラコンで隼人がこんな夜遅くに帰るなんて危ない!と頼んでもないのに迎えに来たのだ。隼人思い返すだけでうんざりするとため息をつきクラスへと急ぐ。隼人のクラスの出し物は喫茶店だった。裁縫が得意な女子が何人かいて、ウェイター、ウェイトレスの衣装が本格的だ。隼人は文化祭開始時刻の10時~11までの1時間ほどウェイターの仕事の当番でそのあとは生徒会の方に手伝いにいかないといけなかった。隼人がクラスに入った時にはすでにもう何人か来ていた。今の時刻は9時。昨日の段階で下準備は終えているので、あとは開始時刻まで服を着替え料理の準備をしないといけない。料理全般は女子担当だ。隼人は着替えを手早く済ませると、時間がまだ余っていたので女子の手伝いをした。ガヤガヤガヤと外が騒がしくなってきて、ふと時計をみると10時だ。「ウェイターの仕事頑張って」と女子たちに言われ、自分の持ち場にもどった。「隼人ー!」と呼ばれて振り向けば、隼人と同じ衣装を身にまとった翔がいた。「おはよ」「おはよ、隼人、格好きまってるじゃん!ひゅーかっこいい!」「お前も同じ格好だろ・・・」10時半になると客も少しずつ増えてきた。仕事にも慣れてきたころ廊下が騒がしくなった。特に女子の声が聞こえる。「あの人かっこよくない?」「誰?どこの人?」とそういう言葉が断片的に聞こえた。なんだ?と隼人が顔を廊下の方に向けると、ガラっと教室の扉が開いた。「いらっしゃいませー」と言おうとした隼人の口は最後までそのセリフを発することはなく、変わりに「ゲェ!!」と短い言葉を発した。「は~~や~~とーーーーん!来ちゃったーーーー!!!!」「隼人、久しぶり。」そう言って入ってきた男2人組。一人は絶対に今会いたくないブラコン兄、秋人でもう一人は秋人の友達、村町浩二ことムラだ。「なんで来たんだよこのバカがーー!!!」「あ、隼人のお兄さんじゃん」翔の言葉にクラスメイトが反応する。「隼人くんあんなかっこいいお兄さんいたんだー」と聞こえたが、隼人はそれどころではない。「はやとーーー!なんだいその格好は!かっこいい!素敵!」と秋人は隼人に抱きつこうとする。しかし、抱きつく前に、隼人のパンチが見事に秋人の顎に決まった。「痛いなー・・なにするんだよ隼人。隼人の愛はちょっと痛いよ」「何するんだよはこっちのセリフだ!あと愛とか言うな!」顎をさすりながらも秋人の顔は満面の笑みだ。その様子を見ていた村町が隼人があまりにも可哀そうだと思い、「まだ隼人お話するー!」と言う秋人を無理矢理引きずり、イスに座らせる。「だいたいねーなんでムラがついてくるわけ?俺は一人で隼人に会いにきたかったんですけどーねー!」「はいはい、分かったから」という2人のやり取りを隼人はうんざりした顔で見ていた。隣にいた翔から肩にポンと手を置かれ「がんばれ」と憐れんだ顔で言われた。「隼人ーー注文!注文!!」とハートを飛ばしながら言う秋人にムスとした顔で近づく隼人。「・・・注文は何ですか、このやろー」「そんな顔しちゃいやだなー隼人」「・・・なんだかゴメンね隼人。俺が止めればよかった」ゴメンと謝るムラに対して、隼人は「浩二さんの責任じゃないですよ、謝らないでください」と手を顔の前でパタパタと左右に振る。「隼人ー隼人ー!」「何だよ、注文決まったのかよ。さっさと言えよ」「俺チーズケーキとアイスティーと・・・」「まだ何か頼むのか、早く言え、そしてさっさと帰れ。」「隼人のスマイルくださーーーい!」嬉しそうに言う秋人に、隼人はプチンとなにかがキレた。「このーーー!!」「痛い!・・痛いよ隼人!!」「痛くしているんだー!」隼人は全力で秋人の頬をつねり続けたのだった。END
2011年02月12日
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忘れ物にはご用心! ある日の土曜日。その日は兄の秋人も家にはおらず、静かな時を弟である隼人はかみしめていた。秋人は「超」がつくほどのブラコンでいつもはうるさいって言うほど、自分にかまってくるのだが、今日は朝から学校の図書館に行くらしい。なんでも、秋人の友達がレポートの手伝いをしてくれと泣きついてきたらしい。ああ見えても秋人は頭がいい。よく友達に勉強面で頼られるみたいだ。世の中間違っているっと隼人は思いながら、いつもより静かなリビングへといき、自分のであろう朝ごはんを作ってくれている母親に「おはよう」っと挨拶をした。「あら、隼人、おはよう。土曜なのに起きるの早いのね」「そりゃ、朝から『折角の日曜なのに隼人と過ごせないなんてー!!』って大声で騒がれてたら いくらなんでも目が覚めるよ。」「秋人は隼人のことが大好きだからね」「あれは変人だよ」テーブルにご飯、味噌汁、焼き魚を並べながら母さんが笑っている。隼人にとっては笑い事では無く、ただ苦笑いをするだけだ。すると母さんが「あっ」急に何か思い出したかのように声をあげた。味噌汁をすすりながら、母さんの方に目をやると目があった。「隼人、今からお兄ちゃんの学校に行って、これを渡してきてくれない?」「え?何?学生証?嫌だよ…。」「そんなこと言わないで。お兄ちゃん、今日学校の図書館利用するって言ってたでしょ? 学生証が無いと入れないのよ。母さんこれから出かけないといけないし。」「兄貴が学生証なくても、俺が困ら無いから持って行く理由が無いね。」そう言ったら、「それもそうねぇ」っと納得している母さんを見て「いいのかよ!」っと心で突っ込んでしまったのは秘密だ。どうしましょう。っと困っている母さんを見て、「わかった。持って行くよ」っと言ってしまったことに後悔するのはそれから1時間後だった。電車にゆられ、駅から徒歩10分程度のとこに秋人が通っている大学があった。場所は知っていても、来るのは初めてだった。学園祭とか無理矢理つれて来られるかと思っていたのだが予想していたのとはまったく逆で、秋人は隼人を学校へと連れて来たがらなかった。別に隼人も行きたいとも思わなかったのでどうでもよかったのだが…。「やべぇ、思ったより広い。どうやって兄貴みつければいいんだ。 携帯、家に忘れてきてしまったし…。」連絡とれなくても、あのアホな雰囲気をキャッチできると思ったが甘かった。大学が広すぎた。どこへ行けばいいんだろうっと校舎のあたりをウロウロとしていた。すると、急に「どうしたの?」っと背後から声をかけられた。「え?」「さっきからウロウロしているみたいだけど、どうしたの?迷子?」そう声をかけてきたのは、ここの学生なのだろう、先生にしては若い。無造作に伸ばされた髪、耳にはピアスが2つついていた。「いえ、兄貴が忘れ物したみたいで、それを届けに…」「へー。ってよく見ると君、かっこいいね。女の子にもてるでしょ?」「い、いえ。そんなことは…」「そんなことはあるでしょ?」そう言うと、男はにっこりっと笑みをみせた。明らかにからかわれてる、っと隼人は思っただが、自分の兄貴よりはましだろうっと思い直した。隼人は図書館の場所を聞こうと、言葉を発しようとしたが…よく知った人物の声が先に響き渡った。「こらーーー!!!ムラー!!お前、人にレポート押し付けてそんな所で何をしとるんじゃー!」「いや~悪い悪い。俺はだな、ただ、迷子の子猫を案内して差し上げようと…」「な~にが、迷子の子猫だよ!そうやって、いっつもいっつも女の子をくどきやがって!」怒声をまきちらしながら、走ってきたのは間違いなく隼人が探している人物だった。隼人は走り迫ってくる兄とそれを受け流している「ムラ」と呼ばれた人物をただ見ていることしか出来なかった。「ムラ!ナンパなんかしてる暇があるんだったら、レポートをしろ!手伝ってやらねーぞ!」「まぁまぁ、落ち着いてよ、アキちゃん。文句は後で聞いてあげるからさ」「アキちゃんって言うなって言ってるだろ!」隼人は「ムラ」っと言う人が羨ましくなった。あの秋人をここまで困らせる事ができるなんて、なんとすごい人なんだ。っと場違いながらにも思っていた。「だいたいな、迷子の子猫ちゃんって、誰なんだ……よ…隼人!」「そうそう、この子。この子が迷子の子猫ちゃんだよって、隼人!?あの隼人くんか!?」なんだろう、この2人のテンションは。絶対朝から会いたくない部類に入る。隼人は「あはははは」っと乾いた笑いをした。「はやとーーーん!どうしたんだい!まさか俺に会いたくなってここまで来てくれたのかい?」「違うわ、ボケェ!」隼人を見つけた瞬間、秋人は抱きつこうとし、飛びついたがそれは隼人の顔面パンチによって阻止された。「痛いじゃないかー」っとブツブツ言っていたが隼人に会えたことが嬉しいのかにこにこしていた。気持ち悪いことこの上ない。隼人はさっさと帰ろうと学生証を秋人に渡した。「ありがとう。隼人!これがなかったせいで、図書館に入れなくて空き教室でやってたんだ。 これで、レポートがはかどる。愛してるよ~隼人。」「あぁ、わかったわかった。最後の一言が余計だがな。」「なぁ、お楽しみ中悪いんだけど、そろそろ紹介してよ」水寺兄弟のやりとりを見ていた「ムラ」が話に割り込んだ。「楽しんでませんから」っと答える隼人と、「楽しいよん。」っと笑顔で答える秋人がなんとも不釣合いだ。「え~っと、ムラ、この可愛い可愛い子が俺の弟で隼人。 隼人、こっちが、俺のと…知り合いで村町、通称『ムラ』ね。 隼人、こいつには気をつけなよ。こつはね、ナンパ魔だからね。 いつも盛ってるの。近寄るだけで妊娠するから近づいたらだめだよ。 ちなみに、いつもムラムラしてそうだから『ムラ』って呼ばれてるんだよ。」「なんで、『友達』っていいかけてやめるんだよ。 しかも村町って言う名前だから『ムラ』って呼ばれてるんじゃなかったのか!?」「きーこーえーまーせーん」隼人の肩に手をおき抱き寄せ、ムラから守るような体制で秋人が互いの紹介をした。ムラの言葉には耳を貸さないっという感じで、両手で両耳をふさぎ「あーあー」っと言い出す始末だ。小学生の喧嘩を見ているみたいだった。「初めまして、村町さん。俺、水寺隼人って言います。いつもバカ兄がお世話になっています。」「おっ!できた弟君なことで。俺の名前は村町浩二。 浩二って呼んでくれ。隼人。」「おい、さりげなく、下の名前で呼ばせるなよ! 俺だって呼んでもらったこと無いのに!しかも俺の弟を呼び捨てにするな! 隼人様っと言え!この「ムラムラ」め!」「へ~そういうこと言うんだ。だったら…」ニヤリっと薄笑いを浮かべたかと思うとムラは誰かに電話をしだした。しかも複数に。すると、電話してすぐにドドドドドドドドっという足音がきこえだした。しかもこっちに向かっている。隼人は秋人をチラっと見たら「まさか…」っと呟いて、かなり青ざめていた様子だった。「おぉ!きたきた、こっちだー!こっちー!」「きゃームラ!どこどこ?秋人の弟って!」「例の隼人君だっけ?俺にもみせろー!」と、ムラに呼ばれたであろう人々が集まってきた。男2人、女3人、計5人が電話して1,2分もたたないうちにやってきて隼人は唖然とするだけだった。「ぎゃーお前らなんでくるんだよー!隼人は見せないからなー!」そんな秋人の叫びもむなしく、バコっと秋人は跳ね除けられ床とキスした状態だ。その上を何人かが踏んでいったが、お構い無しだ。隼人は逃げる事も出来ず、ムラが呼んできた人たち囲まれた。「いやん。お肌すべすべ。可愛いー。」「秋人が自慢するだけあるな。」「うんうん。毎日、弟の自慢話させられているけど、これだったらしたくなるな。」「自慢話ばっかりで、1度もあわせてくれないんだもん。秋人は」「隼人くん、彼女いるのー?」っと、顔や体をペタペタと触られ、ジロジロみられ、隼人は冷や汗をかいてきた。もうはや、毎日自分の自慢話をしていることを知り、突っ込む余裕さえもなかった。「この、愚民どもーーー!!!隼人に触るなーー!!!」いつの間にか復活した秋人が隼人の手をつかみ、引っ張って自分の方によせた。助かった…っと隼人は思い、初めて秋人に感謝した。っと思ったのだが…「えー、このかっこ可愛い子が俺の弟の隼人だ!呼び捨てはするな!お触りは禁止だ! 半径5メートル以内に近づくな!!!」っと秋人の言葉に隼人は切れ、「お前はだまっとれー!」っと見事にアッパーが決まった。それを見ていた、ムラたちは「おぉ!」っとお見事っと言わんばかりの顔でパチパチっと拍手をした。それから隼人が秋人と口をきかなくなり、泣いてあやまる秋人の姿が目撃されたとかされないとか。END
2011年02月12日
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「帰り道にご注意 」今の季節は春。気持ちのいい風と、ほどよい太陽の光を肌で感じるいい季節。春といっても卒業、入学シーズンでもなく、慌しい行事から少し過ぎ去った5月だ。俺は、授業が終わると、颯爽と帰る。これには理由がある。しかし、今日は、そうすることができなかった。翔に呼び止められたのである。本当は聞かなかったふりをして帰りたかった。でも、できなかった。相手が真正面から話しかけてきたからだ。しかもご丁寧に、右手を俺の左肩にポンっとのせて。「は~やと。たまには一緒に帰ろうぜ。どうせ同じ方向だろ。 お前、学校終わるとすぐに帰りやがって。俺、帰り道、ちょー寂しい」翔は手で目頭を押さえ泣きまねをした。傍から見ればただのじゃれあいだが、隼人は翔に気づかれない程度の舌打ちをした。早く帰らなければ。そう脳が警告する。そんなことを隼人が思っているとは、知るはずも無い翔は隼人と帰る気満々だ。むしろ隼人の腕を掴み、下駄箱へと向かおうとしている。「なぁ、翔。一緒に帰るのはまた今度にしろ。」「え?何で?ってかお前、俺と友達になって1回も一緒に帰ってねーじゃん。 俺がたまに誘っても断りやがって!」なんで、ここまで自分と帰りたいのかっと尋ねたい気持ちが湧き出てきた隼人だったが、そんな暇は無いと、強制突破。自分の腕を掴んでいる翔の手を払いもうダッシュで下駄箱へといく。隼人の後ろからはなぜかすごい形相で翔が追いかけてきていた。「待て~!!!!!!隼人!!この野郎!!」どっからどうみてもヤクザにしか見えない顔で追いかけてくる。先生に廊下は走るな!っと叫ばれてもお構いなしだ。できれば、自分だって、普通の高校生みたいに、友達と話しながら帰ったり、寄り道して帰ったりしたい。しかし、それはできない。絶対知られたくないことがあるからだ。わざわざ、家から少し離れた高校を受験したのも、知られたくないことがあるからだ。また1から学校生活を楽しみたい。そう思ったから、知り合いのいない高校を受験したというのに。隼人は急いで靴をはき、靴の踵の部分を踏んだままだが、そのまま正門へと走っていく。それでも後ろからは翔が相変わらずものすごい形相で追いかけてくる。途中、警察に捕まるんじゃないかと、思うくらいだ。そのときは、赤の他人のふりをしようっと隼人は思った。やっと、正門を抜ける、よし、もう誰もいない。奴がいない。大丈夫だ。と安心して走るスピードを落としたのがいけなかった。「隼人ーー。」語尾にハートマークが付くんではないかというくらいの感じで名前を呼ばれた。そう、翔とは違う人物に。俺が決して他の、っというより友達に知られたくない人物の声。「はやとぉーーーん!!!」その人物はまるで、女の子が好きなタレントを見つけたみたいな声だし隼人の腰に抱きついた。タックルと言った方があっているかのような抱擁で隼人は苦しそうな顔をしている。後ろから追いかけてきていた、翔も追いついていたが、今起こっていることに驚いてただ呆然と見ていた。隼人に抱きついた人物が女の子だったらまだしも、男の子。というより男性。見た感じ、のほほ~んっとした優しそうな人物で大人しそうなイメージ。隼人より少し身長も高く…たしか隼人は178センチだったような。しかも、隼人がまだ、可愛い系だったらまだしも、どっちかっというとかっこいい系。目つきが元から悪く、目もキリリとしていて、何もしていないのによく不良に絡まれる。そんな2人が抱き合っている。というか隼人はものすごい嫌がっている。今にも人を殺しそうな勢いの目で抱きついた人物を見ている。「隼人ー!!今帰りか?迎えにきてやったぞ。さみしかっただろ?虐められてないか?」「学校には慣れたか?友達はできたか?…」と一人で永遠に話しかけてくる。隼人はまだ抱きついているその人物を必死にはがそうとしていた。唖然としていた、翔も隼人が困っているのに気づいたのか、駆け寄ってきて隼人に引っ付いている人物を一緒にはながしている。「おい、お前、隼人から離れろよ。嫌がってるだろ」「君は誰だね?も、もしかして隼人のお友達?」「質問はいいからとっとと離れんかい、このバカ野郎!」2人の力でなんとかはがすことに成功したが、その人物は今度は翔に質問攻めだ。「隼人のお友達?」「同じクラス?」「隼人は学校楽しそう?」翔はその迫力に押されていた。その様子を横目で見ていた隼人だが、いつになっても質問をやめないので怒りがこみ上げてきた。「いい加減にしろよ!!!翔から離れろ!このバカ兄貴!!!」隼人はそういうと、拳骨でおもいっきり頭を殴った。それはそれはいい音がした。バコっと。「痛いーーーー。なにすんのさ、隼人!俺はな可愛い可愛い弟を心配してだな…」「それが大きなお世話だ!帰れ!そして二度と俺に顔を見せるな!」「ひどーーーい。ねぇ、ねぇ、翔君、今の聞いた?隼人が反抗期になったー。」「翔に話かけるな。しかも名前で呼ぶな、いい迷惑だ。」そんなやりとりを見ていて、翔が口を開いた。「なぁ、隼人、この人って…お前の…」「お兄ちゃんです!水寺 秋人っていいます!よろしく。」翔の言葉にそう答えたのは隼人ではなく、お兄ちゃんだった。END
2011年01月21日
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*はちゃMECHA★ブラコンの登場人物*水寺 隼人(みずでら はやと)・15歳(高校1年生)・身長178センチ・犬アレルギー(くしゃみがでる)・やや目つき悪し⇒不良にからまれた経験あり・髪の毛を染めようとしたら兄に泣きつかれ黒のまま・ピアスをしようとしたら兄に泣きつかれ穴をあけることできず・クールに見えるが表情豊か・成績は上の下・結構もてるが本人気づかず・コンプレックスは兄の存在・人に頼られるタイプ水寺 秋人(みずでら あきと)・21歳(大学3年生)・身長182センチ・髪の毛は金髪に近い茶髪。地毛。(母親譲り)・とにかく隼人が可愛くてしかたがない・普通の表情時は目つきが悪いが隼人を見つけると顔がゆるみっぱなし・黙っとけばかっこいいとよく言われる・友達には欠かさず隼人の自慢話をする・趣味は隼人のアルバム作成・成績は上の上・中学、高校と放課後は隼人の監視のため帰宅部。もちろん大学も。水寺 公一(みずでら こういち)・秋人・隼人の父親・45歳・甘い物好きだが、周りには隠している・実はコーヒーはブラックでは飲めない・犬が大好きだが隼人がアレルギーのため飼えない・秋人同様、隼人が好きだが表に出さない・職場ではモテルが気づいていない。 ⇒自分の客をたまに同じ職場の女性に横取りされるため、職場で自分は嫌われている と思っているが、実は公一から女の客を近づかせないためにやっているだけ。村町 浩二(むらまち こうじ)・21歳(大学3年生)・身長185センチ・通称ムラ・秋人の友達…お知り合い?笑・女好きのナンパ好き・髪の毛は無造作ヘア・髪の毛の色はいろんな色に染めたりするがいまは金髪・左耳にピアス2つ・やる気があるのか無いのかよく分からん奴・こう見えても中高と野球をやっていたため少し肌黒め*YUKAIな生徒会!?の登場人物*■白百合学園高等部生徒会メンバー■ 西園寺 光(さいおんじ みつる)・高校3年生・4月17日生まれ・生徒会長・身長178.5センチ・中学3年のときも生徒会長・会計の日丸とは犬猿の仲?・いつもは温厚な性格・学校の憧れ的存在田中 葉市(たなか よういち)・高校3年・6月5日生まれ・生徒会副会長・身長180センチ・ハエ叩きをよく持ち歩いている・中学3年のときも副会長・面倒見がよい・苦労人日丸 勇気(ひのまる ゆうき)・高校2年・5月5日生まれ・生徒会会計・バカ&KY・イタズラ大好き・ナルシスト?・生徒会長の座を狙う水寺 隼人(みずでら はやと)・高校1年・生徒会会計補佐・はちゃMECHA★ブラコンの主人公(繊細設定は、はちゃMEの登場人物参照)■南台高校生徒会メンバー■鷹岡 真崎(たかおか まさき)・高校3年・生徒会長加納 圭(かのう けい)・高校3年・生徒会副会長椎名 守(しいな まもる)・高校2年・生徒会書記Home
2011年01月21日
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一、憂鬱な日ジリジリジリジリというけたたましく目覚ましの音が鳴り響く。昴は手探りで枕元にあった時計を探すと、時計のボタンを押す。鳴り響いていた音は止み、静かになった。体が重そうに起き上がり、昴は右横にあるカーテンに手を伸ばすと勢いよく開ける。日の光が容赦なくふりかかり、昴の白色混じりの髪は光を反射させる。昴は切れ長な目を細めると窓も開けた。「あぁ、今日も憂鬱な日が始まる」誰に言ったわけでもない昴の呟きは外から聞こえる、車の騒音によってかき消された。昴は顔を洗い、歯を磨くと、高校の制服へと着替え、学校へと向かう。朝は食欲がなく、昴はいつも朝食をとらなかった。学校へ向かう途中、昴と同じ高校の生徒たちや、小学生、中学生、ゴミだしをしている近所の人たちが、昴を見ると、好奇の目を向けたり、目をそらしたり、指をさしたりした。昴の顔は鼻筋がすっと通っており、切れ長な目で怖そうに見えるが、かっこいい顔をしている。しかし、髪の毛が白色のせいや昴の無愛想な態度で、不良と思われることが多かった。こういう周りの態度には慣れている昴は、気にすることもなく、ゆっくりと学校へと足を進める。昴は2-3と書かれた教室へと入る。教室にいるクラスメイトは昴が教室に入ったのを見ると、こそこそと昴を見ながら話し始める。昴は小学5年生の時に母親を亡くし、ショックのせいかストレスのせいか次第に髪が白色に変わっていった。段々、白に変わっていく髪の毛、そして次第に遠ざかっていく、友達やクラスメイト。この髪の毛の色でイジメにあったこともあった。始めは悲しんだ昴だが、あることをきっかけに、どでもいいように感じるようになっていた。明るかった昴は無口で無愛想になり、中学になっても、高校生の今でも変わることはない。唯一傍にいてくれた父親は先月、病気で亡くなり、今では父親が残してくれたわずかな遺産で1人でアパートに暮らしている。昼休みなると、昴はいつものように屋上へと向かう。5月だが、まだ肌寒く、屋上で昼食をとる人はいないからだ。1人でいたい昴にとってはうってつけの場所だった。屋上へ行く途中に購買に寄り、売れ残りのジャムパンとお茶を買う。屋上へと続く階段に1歩踏み出したとき、後から「朝倉くん!」と昴を呼ぶ女の子の声がした。昴は振り向くとそこには2人女の子が立っていた。昴と同じ赤色のバッジをつけているのを見ると2年生だと分かったが、クラスメイトでは無かった。「何か用?」昴はぶっきら棒に答える。肩ぐらいの長さの髪にパーマをかけ、色も茶色に染めている女の子が「えっと…」と言いながら昴の前に弁当箱を差し出す。たまにだが、昴に好意をよせて、こうやって弁当をくれたり、話をかけてくる女の子がいるのだが昴には、ただの自分への好奇心だろうとしかとることが出来なかった。「いらないから」まだ、女の子に弁当をあげるとも食べてとも言われていないが、昴はさっさと屋上に行きたかったので女の子の言葉を聞かずに言う。昴はそれだけ言うと屋上へと足を進めた。弁当を差し出した女の子の隣に立っていた、ショートカットの女の子が怒鳴っているのがちらっと見えたが、昴は気にすることもなく、足を進めた。屋上へと繋がっている扉を開けると青空が広がり風がソヨソヨとふいている。暑くて汗が出そうだが、風がふいて引いていく。昴は数少ない日陰を見つけるとそこへ足を向けてすわる。お尻がひんやりとした。「あ~ダルイ…」昴は無意識に言った。先ほど買ってきたジャムパンにはまだ手をつけず、さっきの出来事を振り返る。どうして、あの女子生徒は自分に近づいてくるのか。どうして自分と関わろうとするのか。自分は1人でいたいのに。昴は不思議でたまらなかった。ふと視線を扉へと向けたときだった。「昴!探したよ!」叫びながら、昴のほうへと走ってやって来る男が1人。真っ黒な髪は日光にあたり天使の輪が出来ている。「俺は探していない」昴は男へ視線を向けずに言う。「昴は探してなくても俺は探したっつーの!」昴の前までやって来た男は怒っているのか拗ねているのか、口を尖らせ、眉間に皺をよせている。昴が転校してきてから、昴のとこにいつもやって来ては、話をかけてくる。昴はこの男とあまり顔を合わせたくなかった。追い払っても、無視しても昴を見かけると必ず話をかけてくるのだ。朝の挨拶から、生物の先生は怖いだとか、今日の体育はサッカーだとかくだらない話をしてくる。今までの会話を思いだしながら昴はふと疑問に思った。「名前なんだっけ?」つばさに尋ねたわけではないが、つい口にでてしまった。「何だよ!人の名前忘れやがって!俺の名前はつ・ば・さ!!!伊神つばさだ!」「あー名前なんてどうでもいい。何の用だよサッサとどっか行け」うっかり名前を聞いてしまった事に昴は後悔しつつ、つばさに向けてシッシっと手を払った。「嫌だよー!俺は今から昴とご飯食べるんだい!」つばさは何故か胸をそらせえばり口調で言った。昴に右手人差し指を差すというポーズ付きだ。「誰がてめぇと食べるって言った?ってか人に指差すなと親に教えられなかったのか?」昴は差された指を叩いて言う。そして何事もなかったようにジャムパンを食べる始める。「俺が一緒に食べるって決めたの!指差したのは悪かったよ…ごめん!って無視かよ!」つばさの言葉を聞いているのかいないのか、昴は黙々と食べている。「だぁー!無視するなよ!っと言うわけで俺もいただきまーす!」つばさは昴の隣に座ると、持ってきている弁当を食べ始めた。昴は今までの経験からつばさに何を言っても無駄と思い無視した。「ね、昴。今日は弁当じゃないんだね」つばさは昴が食べているジャムパンに目をやる。「気が向いた時にしか作らない」昴はぶっきら棒に答える。それでも、昴が答えてくれたことが嬉しかったのか、つばさは笑っていた。「前、昴がくれた、卵焼き美味しかったな。また食べたいな」「あれは、お前にあげたんじゃない。お前が勝手に取ったんだ」昴はお茶を一口飲む。よく冷えていて、喉がすごく潤う。「ねぇ、ねぇ、また作ってきてよ。弁当!昴って料理上手だよねー」つばさは隣にいる昴の制服の裾をひっぱりながら言う。「面倒くさい」なぜ、つばさにあげるために作らなければならないのか、と苛々しながら昴は言う。「えー!作ってよ!作って!作って!作ってー!」つばさは、小学生のように駄々をこね、顔を左右にふり、手足をじたばたさせている。昴はそんなつばさを見て、ため息をついた。1人で静かにいたいのに、いつも邪魔するつばさに腹が立つが、何を言っても無駄なので昴は諦めていた。「わかったから、静かにしろ。気が向いたら作る」昴の言葉につばさは目を大きく見開き「やったー!」と両手をあげて喜ぶ。昴はその間に食べ終えたジャムパンの袋やお茶のパックのゴミなどレジ袋にまとめ、立ち上がる。つばさが「え!?もう教室に戻るの?」という言葉を聞き流し、昴は屋上から去って行った。BackH17.8月13日H22.3月14日 修正
2010年02月01日
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いらっしゃいませ。管理人の若狭 昴です。当ブログはオリジナル小説を載せていきます。著作権を捨てておりませんので無断転送・無断転写禁止です。読まれて気分を害されても責任を負えませんのでご注意ください。誤字脱字のご報告、感想などは喜んで受付けております。マナーをよく守り、足をお運びください。この文は改正されることがありますので、随時目を通されてください。(H22.1.28 )
2010年01月28日
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