Laub🍃

Laub🍃

2010.07.28
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カテゴリ: 🌾7種2次裏



僕も、幼馴染もどちらもはぁはぁといつ絶えるとも知れない熱い吐息を漏らしていた。

幼馴染の顔や喉を絶え間なく伝う汗が、潤んだ目が、弱弱しい声がどうしようもなく愛おしくて、僕が唯一今幼馴染の目の前に居る、認識されているという事実が嬉しくて、自分の熱も高まった。

まるで昔あの山を登り切った時のような高揚感。

ーそう思っていたら、僕も熱に侵されてしまったんだけど。

風邪。

だけどいつも無駄に薬を飲まされているのにこういう時市販の風邪薬なんてもらえない。
自分で作るか友達が作ってくれたものを飲んで直さないといけない。
そうやって自分でどうにかできない者に未来に行く資格はないからだ。



そうして、幼馴染であり親友であるあの子との仲が一層深まったような気がした。





今日は、酷く寒い日だ。

幼馴染は僕の前でぐっすりと眠っている。

疲れ果てたのか、安全な所に辿り着いてすぐのことだった。

お休みという間もなく。ずっと気を張っていたんだろう。
いつも強気な幼馴染がこうした姿を見せてくれることが気を許されているようでうれしかった。


ーそうだ。この間に、周囲の探索をして、食料捜しなんてしていたら、僕を見直してくれるかもしれない。

そして、もっと頼ってくれるかも。


ー誰よりも。

ーあいつ、なんかよりも。




うきうきと歩き出した僕を、目覚めた幼馴染が怒ることを僕はまだ知らなかった。














今になって、思う。

あの時起きてこちらを詰った顔と、洞窟に落ちたあと、僕の裏切りを疑った顔が重なるのは、きっと。

僕が傍に居なかったからのことなんだろう。

傍にずっといなかったから不安にさせてしまった、だからあれは僕への罰なんだ。


だけど。



また一人にさせてしまう。


隣にあいつも、あいつも居るだろうけど、僕はもう居ない。

残酷なことを僕はしたのかもしれない。
こうなる前に送り出せていれば。-いや、そもそも、こんな局面で再会なんてしなければ。

ー…上で、僕が、力尽きていれば。
迎えに来たあいつともしかしたら戻れていたかもしれないのに。


そんな後悔を抱くのは、後悔で押しつぶさなければいけないものがあるせいかもしれない。

ー嬉しいんだ。どうしようもなく。

自分が欠けること、大事な人を残すこと、残す人の心に残ることが。

僕に最後に手を伸ばした君の顔が、僕の命を嘆願する君の声が、洞窟内に響き渡る君の熱い涙声が、どうしようもなく僕の体を熱くする。
あの暑い日に見た君の涙が、あの寒い日に見た君の怒る声がフラッシュバックする。

辛くない、痛くない、哀しくない、寒くない。

腹の熱さに。

心の熱さに。

夏の暑さに浮かされながら。

眠るように、耳に喝采のように響く声と共に幕を下そう。





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最終更新日  2017.12.16 22:46:54
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