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長押綴

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2010.10.04

＊外の世界に続く扉はいつも闇しかなかった。
　外に出たって碌に生きていけるか分からなかった。
　だから僕たちは中で暮らし続けた。

　毒が入っていてもご飯はご飯だから。賢ければ取り除ける筈だから。
　生意気でも弱くもなければ殴られないから。賢ければ傷を残さないで居られる筈だから。

　いずれ滅びる外に逃げるなんていう選択肢はなかった。
　17年生きることよりも、死ぬかもしれなくてもいちかばちかの未来を、それ以上生きる事を選んだ。

　それは贅沢だと言われた。レールを敷かれているのは楽だと。
　果たしてそうなんだろうか。楽で、幸せ？自由がないことが？

　……自殺をすることは、追い詰められているのか。
　自殺をしようと考えられることは、自由なのか。

　それさえ僕らには分からない。

　ロープは繋ぐもの、ナイフは切るもの。
　ロープは縛るもの、ナイフは切り捨てるもの。
　僕たちは縛られることを、繋がりが切れる事を恐れた。
　まるで母親の胎内でへその緒を愛おしく思うように。

　温かい羊水の中で、僕らは形をとりきれなかった兄弟を吸収した。

　その分まで生きないといけない。
　最早生きる世界などはどうでもいいけれど、背負うものは、せめて削られなかったものだけは、生かさないといけない。

　それこそが僕らの生きる意味、使命なんじゃないか。

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