Laub🍃

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2011.02.25
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カテゴリ: 💫復活裏
 ツナが死んだ。
 そう聞いたとき、
「なんで」

 と俺の口から毀れた言葉と泣き出しそうな顔をする俺の裏側で、どこか喜んでいる俺が居た。
 俺だけじゃない、同じようにそう言われたツナを愛する奴らの何人かはそうやって少し我らが主を手に入れられない事への納得する手段を手に入れた筈だ。
 そして変わっていくツナを見ずに済むこと、変わっていく自分を見られずに済むことに、安堵さえしただろう。
 主の居ないマフィアごっこ、母親の居ないままごと。
 敵討ちをして、ツナの所に行くというのもいいかと思っていた俺に、続けてそいつはこう言った。
「慌てないでください、仮死状態ですから」


 ……

「なんだ、びっくりさせんなよ~~!!」
「だけど、死んでるように振る舞ってほしいんです」
「あ、ああ、分かったぜ!」

 …仮死状態ってのは…嘘じゃ、ねえんだろうな。……あー、なんつーか、取り越し苦労っつーか、なんつーか。

「これ、他の守護者も知ってんのー?そんな言い方してたらブチ切れそうな奴とか先走っちまう奴いんじゃねーの」
「雲雀さんは協力者です。骸さんには言ってないのにばれました。獄寺さんには「嘘だ!!」と言われましたが…本当に「嘘です」と言ったら手入れしていたダイナマイトをぽろりと落としまして危うく基地が一部爆発するところでした」
「おいおいおいおいあぶねーな」
 4番目。ま、順当なとこか。

 きっとこれは、ツナが本当に死んでしまった時、どんな手段であれその背を追いかける順番と、一緒だ。

 俺がツナの一番になれたのは、あの一回きり。

 吸い込まれそうな空に、二人して飛んだ、あいつの目には俺しか、俺の目にはあいつしか映っていなかった、あの時だけなんだろう。

 そうだとしてもツナの傍を離れられない俺も俺なんだけどな。

「大丈夫ですか」
「……ああ。安心して、ついな~。みっともないとこ見せてごめんな」


 雨。雨の海に沈んでいく。

 空に飛んでいく球を見上げていた野球少年だった頃とは違って、足元はいつも雨と、赤い液体でぬかるんでいる。それでもいい、あいつが空に飛んでどこへでも行けるように手助けをすることができれば、ホームランを打って球が空に吸い込まれるよりも、ずっと俺は満足なんだ。

 願わくば、生涯俺を打者であり続けさせてくれ。
 手に入ってくれないんならーーーー
 いつまでも、叶わない夢を、空を、追いかけさせてくれよ、ツナ。



 そうだね、一緒に生きようーーと、ツナの声が聞こえた気がした。





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最終更新日  2016.08.20 14:19:19
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