Laub🍃

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2011.04.13
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カテゴリ: 🌾7種2次裏



青とも藍色ともつかない空を見て、呟いた。

何か欠けているものがある。





欠けた色。満たされない想い。
それを補わなければいけない。
そうしなければ、光の洪水が産まれない。
暗く暖かな産道から、白くてまぶしい外へ出られない。

いや、出なくてもいい。





日々色は足されていく。
それは会話から生み出される。










「……逃げる、ねえ。……海の近くの村で?無人島で?……遠くへ逃げるなら、車にしろ電車にしろ……海外にしろ、お金が必要よね」
「…何せ、これだけの大人数だからな」

「自分達の人生で、どれだけ金や社会というものが影響しているのか実感したよ」
「ハル……」

「『繭ちゃんに会いたい』って、小瑠璃、言ってたんだ。たまに酷く魘されて飛び起きた後の小瑠璃を、何度抱き締めたか分からない。だけどそれでも小瑠璃は救われない。……俺はいつか音楽で、その願いを補えたらと思ってたんだ。……だけどそれって、結局自己満足だったのかもな」

「救われてたよ、小瑠璃さんは。……飛んでる時もよく、ハルくんの音楽が聞こえたら、耳を傾けてた」



よく聞こえる音の感覚は紫。
風の感覚は黄色。



それは何気ない願望から生み出される。




「外の世界…」
「好きな場所」
「好きな服」
「普通の家族」

「自由」

「テレビで見たあれが、現実のものになるなんてな」
「ああ、それと、外の世界なら、流れてる時ちょうどのニュースとか、好きな番組とか選んで見られるんだよな」
「楽しみだなあ」



郷愁を齎す橙。




それは少しの笑いから生まれる。


「ないものはないんだから、考えるだけ無駄じゃないの」
竹の細枝を落としながら虹子さんが言う。
「外の世界の大人ってめんどくさいこと考えるんだなー」
痛み始めた飯に納豆を混ぜて臭いを誤魔化しながらあかざくんが言う。
「ま、あるもんでなんとかしてこうぜ!」
漬物もどきを川の水で洗いながらちゃっかり4銃士の一人が言う。

「ほう」
「……なんだよ」

秋ヲさんと蝉丸は関心した様子で笑う。

「夏のAにも、こういう奴ら、いたんじゃんか」


活気に萌える緑。






そして今日も僕らは色に囲まれている。
青空が何故空虚なのか、分かった気がする。
きっと、こうした暖かな声を響かせ、楽し気な声が囚われることなく自由に跳ね回る為なんだろう。









和気藹々とした様子を見守っているさなか、誰かが「いてっ」と声を上げた。

「木のとげが刺さった」
「そんなに細いとげじゃないし、途中で折れてないから大丈夫」
「血が出てきた……」



あか。



僕はなんとはなしに、脱出したあの日のことを思い出していた。







あの日、少人数で別れて行動することになった時。

『う な み』

小さく呟いた小瑠璃さんの小さな小さな背中からは想像もつかない程大きな殺気がぶわりと漏れ出た。

小瑠璃さんは、居眠りをしながら見張り番をしていた卯浪先生にすり足で近付きながら何かを取り出す。
幽霊画のモデルにしたいなあ、なんて場違いなことを思っていた僕に、小瑠璃さんは唐突に話しかけてきた。

「ちまきちゃん、ハルを別の所に…そこの小部屋でいい、放り込んで」
「小瑠璃!?」
「……え?」
「鍵も閉めてね。大丈夫。すぐ終わる」

戸惑いつつも、ハルくんを扉の外へ追い出し、先ほどくすねた鍵で施錠する。

「……!!」

ハルくんの声が聞こえなくなった。
音楽家として大事な筈の手を強く奮い、声を枯らしている。……ちょっと心配になってきた。
「……本当にどうしたの?」
「……巻き込んでごめんね、ちまきちゃん。……ちょっと衝撃が強いと思うから。…ああ、でも、ハルには聞こえちゃうかな」




耳良いから、と呟いて、小瑠璃さんは斧を振り下ろした。









染料みたいで、結構綺麗だった。


あれを使って描いた絵は、子どもの頃父に聞いた怖い話のように魂が宿るんだろうか。

案外、綺麗だった。
……あれなら、画材にする気持ちも分かる。





生命と憎悪の表現に、あれだけ適切な色もない。








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最終更新日  2018.02.28 03:11:15
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