Laub🍃

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2011.09.25
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カテゴリ: ◎2次裏漫
あの子は、真っ先にいつだって飛び出していく。
だから真っ先にぶつかるし、転ぶし、場合によっては殴られる。
僕はそこで立ち止まったあの子にようやっと追いついて、絆創膏を貼って来る日常を過ごしていた。
いつも一緒だったから、いつも手が届かない所を手伝うのは僕の役目だったんだ。
だから僕はあの子の古傷がいつ何が原因で出来たのか覚えていた。
いつも傷付けられてもへこたれないで、他の傷付けられる人を庇おうとするあの子は、僕のヒーローだった。
ついでに言うならあの子に喧嘩を売るために、あの子に見られたいが為に僕を虐める彼は僕からすると少し子供のようにも見えた。



彼とあの子が殴り合ったと聞いた。
あの子を心配したけれど、彼を羨ましくも思った。

お揃いの生々しい殴り跡は勲章のようだった。
そういえば、最近はあの子は怪我をあまりしなくなったような気がする。
僕が勉強ばかりしているから、あまり顔を合わせないからかもしれないけど。
うまく怪我を避けるように注意深くなったからなのか。
見えない所の傷が、あるいは心の傷が代わりに増えるようになったのかな。



最近、代わりにどこか血と泥の臭いがたまにまとわりつくようになった。
あいつの臭いだ。
そして、あの朝の臭いだ。
殺す側の臭いだった。
あいつとあの子は同類としての絆を築いていた。
僕が逃げ出したことだった。





血とどこか不吉な臭いを漂わせる先生は、傷付ける側だった。

あの子と傷付け合うかと問われた。
うまく意味を呑みこめずぼうっとしていると、あの子も同じように黙ったままだった、頑張れよとだけ言って先生は立ち去った。

どこかほっとしている自分が居た。

あの子は、銃で的は撃っても、人を傷付ける側じゃないんだと。




顔を洗う度に実感するそれをどこか寂しくも思った。


傷跡は、記憶だ。
傷付けることは、教え伝えることだ。
傷付けられることは、知り学ぶことだ。

僕は何がしたいのか。
あの子に目にもの見せたいのか。自力で受かりたいのか。
それともあの子に傷をつける覚悟でもって、鬱憤をぶつけたかったのか。

分からないままだ。
けれどこうして僕がじくじくと痛む傷を気にする時、あの子も気にしていたらいいと少し思った。





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最終更新日  2017.04.04 22:49:08
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