Laub🍃

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2012.05.01
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
思えば俺は幼い頃からその人にテストをしていたような気がする。
 不真面目なようでいて真面目に流された俺とは違う、真っ直ぐすぎる道を歩むことを選んだその人は愚かしくて、うざったくて、けれどどこか羨ましかった。

 だからずっとテストをした。

 その人がずっと綺麗で居られるのかと。
 その人の奥にある獣が目を覚まさないで居られるのかと。
 俺も飼っているその獣は臆病で子供っぽくて汚くて無様で恐ろしいものだった。
 その人の獣はその人に手懐けられていて、その人がよしと言った時だけ放たれるのだった。

 いつしか俺はその人にテストをすることをやめていた。
 いつも誰かの代わりに傷付こうとする、大事なものを守る為に武器をとるその人の哀しいほどの綺麗さは信じられると思ったのだ。


 ずっとずっとかけられていた負荷に、ついにぽきんと折れてしまったのかもしれない。

 その人を背に乗せて、獣は荒野を走り獲物に牙を向ける。

 泣いて想いを言葉に出来ないその人に代わって、獣が咆哮を上げる。


 だから俺はその人をひきとめる傍ら、かつてのその人がやっていたように、その人を守る為に武器を取ることにした。
 その人が綺麗に動けるようにするまでの間少しだけの守るつもりだった。


 答えなくていい時を、間違いだろうとついていく手足を捧げていた。

 ……だがその人は俺が戻すまでもなく、勝手に他の奴に綺麗にされた。

 ……この苛立ちは、そのせいか。
 いや、関係ない。
 きっとその人が奴を助ける為に身を投げ出そうと、傷付こうとしているから、それだけだ。







今日も俺はその人を見ている。
今や抱きしめなくてもその人は自分で踏みとどまれる。

その人は答えを探し続けている。
今日もその人は俺を見ていない。


その人の歩いた跡に答えができる。





テストを続けていた。

その人は答えではなかった。

今や俺も、その人も、答えなど知らない世界にいる。

答え合わせは今わの際か、
それとも。






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最終更新日  2017.11.09 05:37:09
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