北海道 0
四国地方 0
九州地方 0
商店街 0
全116件 (116件中 51-100件目)
まず滅多なことでは行くことのない小田急江ノ島線沿線ーって先日も出かけていますがそれは日中のことでしたーのとある駅のそばにある機関に出張となったので、こんな絶好の機会を見逃すわけにも行かぬと、仕事後の貴重な時間を有効に使うために事前のリサーチは無粋とは知りつつもそうも言っておられぬ。この晩巡る酒場のリストを携えて予定よりずっと早く用件が済んでウキウキとした気分で主張先を出ようとしたところで相手先の方に呼び止められ、一杯どうかねと呑みに誘われたのでした。さて、ぼくにとっては余程のことがない限りは、(1)自分のプランを優先する、(2)誘いを適当に切り上げる、(3)誘いは断らない、のどのタイプでしょうか。書いていてもどうでもいいことだと思いはしますが、正解は(3)なのでありました。普段とは違う環境で呑むことで何らかの発見があるかもとかではなく、単に縁薄い人たちと呑むことが楽しいからです。なんだかいつもと違うこと言うでいるようですがまあそんな程度のいい加減さが好きなのです。目標を立ててそれに準じて呑むなんてのはやはりノルマのある仕事みたいでどうも性に合わないのですー実は先日ノルマ消化のような呑みをして失敗したばかりー。 前置きが長くなりすぎました。向かったのは湘南台駅から歩いて数分の「加お里 西口支店」、屋号だけ見るとなんだかよく分からんお店ですが実はお寿司屋さんなのでありました。寿司屋で呑むなんて機会のまずないぼくにとっては、それだけで舞い上がるに十分に条件が揃ってしまいました。そしてネット上では値段が不明瞭とか、量が必要以上に多いとかあまり芳しからぬ噂が飛び交っていますがいきなり出された刺し身盛りの豪勢なことよ!まぐろだのアワビだの普段は躊躇する品が多い中、ぼくがもっとも興奮したのがシャコなのでした。知人の人体解剖に従事する悪友の話を聞くと多くの人が鼻白んで手を出さなくなるのですが、その話題を吹聴せずとも好んで食すのはぼくばかりなのが分かるとゆっくり味わって見たくもなるのでした。その後も凄まじい饗宴が繰り広げられるわけですが、それは写真を見ていただければお察しいただけることでしょう。もっとじっくり味わえばよかったなあ。そんなわけで勘定は不明。いずれぼくの月の小遣いが吹っ飛ぶことは間違いなさそうです。 それだけ酒と肴を満喫すればとっとと帰るべきですが、本能的に長後駅にて下車してしまったのでした。「柳川」という酒場放浪記の紹介した酒場くらいは立ち寄っておこうと思ったようなのです。どうにかこうにか辿り着いたこの酒場は静まりきっていて半分店を閉めかけていたようです。店内も当然空いていてカウンターに着くと自宅まで遥かに遠くしかもへべれけになっていたことが不安に拍車をかけたのか、妙に寂しい気持ちになってぐっと酔いも回るのてした。長後駅の辺りはまたいろいろと面白そうな店もありそうなのでまた訪れたいものです。
2015/01/22
コメント(0)
善行駅という駅をご存知でしょうか。ぼくも先日まで聞いたこともなく当然ながら場所の見当もまるでつきませんでした。とあるホームページでたまたますごい食堂を目にしてしまい矢も盾もたまらず遠路はるばる出向くことにしたのでした。この駅は小田急江ノ島線の藤沢駅から2駅だけ新宿寄りというほとんど乗降することのない江ノ島線でもとりわけ途中下車する機会の少ないーというかこれまでなかったー駅です。相模原で乗り換えた電車の車窓風景はとても神奈川県のものとは思われません。より西側を走る小田原線よりも田舎びて感じられます。畑と山と言うよりはせいぜい丘陵と言った程度の登り下りの多い人家も疎らな景色の中に善良駅はありました。駅を降りると車窓から予想されたよりは整備されているもののやけに閑散としたロータリーとそこから伸びる目抜き通りに商店が何軒かあるだけてす。ほとんど人気のないロータリーに一軒の喫茶店があったので寄り道してみることにします。 一軒家2階にある「紅茶の樹」です。入ってみてびっくり、ここだけはたいそう賑やかで、近所の老婦人たちの会食を兼ねた寄り合いをやっているようです。店の雰囲気はよくある自宅の一部を店にしたような可愛らしい(らしい)小物が飾られたり、販売されている雑貨屋を兼ねたお店でした。ご婦人たちがちらちらこちらを眺めているようで落ち着かず早々に店を出ました。近くには閉店した喫茶店跡もありました。 さて、向かったのは「玉屋食堂」という昼間だけ営業する古い食堂です。以下ネットで調べた浅い情報となります。この食堂が入っている神奈川県立センターの外れにある洋館は、元は藤沢カントリー倶楽部のクラブハウスだったそうです。昭和8年に建てられたこの建物を設計したのが、フランク・ロイド・ライトの弟子であったアントニー・レイモンドで、現存する建物の幾つかは登録有形文化財に指定されていて、津市のレーモンドホール、宝塚市の小林聖心女子学院本館、富士カントリークラブなどがあるようです。などという事は、少し調べれば分かることなのでこれくらいにして、人気の全くない洋館に辿り着き本当にこんな立派な建物の二階が食堂なのかと訝りながら屋内の立派な階段を見上げるとどうやら営業しているようです。古い体育館のような高い天井に呆けたように見入ってしまいます。二面にわたってガラス張りとなっていて採光もバッチリ、射し込む光線が、控えめながらも手間を惜しまぬ体であつらえられた意匠を際立ててくれます。母子二人だけがお客さん、広いホールの中心に置かれたストーブの側で食事していました。売り場で食券を求めると缶のビールとチューハイが冷蔵庫で冷えています。つい、一緒に購入します。しばらくして厨房カウンターから声が掛けられます。カレーライスを頼んだのですが、おつまみと言って煮物の小鉢を頂きました。建物の古めかしさにこれ以上ないくらいに嵌っている郷愁漂うカレーでした。いつまでも食堂として現役で使っていただけることを願います。
2015/01/07
コメント(0)
例えば仮に久方振りに会うことになった友人と東京で待ち合わせることになったとします。そんな場合に何とか東京駅で遭遇できる可能性は案外高いはずです。それが他の大都市、札幌やら名古屋やら大阪であっても何とかなりそうな気がします。が、こと横浜において遭遇できる可能性は極めて低そう。なぜなら横浜を知る多くの人はそれぞれに想起する横浜のイメージが多様であることーある人は赤レンガ倉庫、とある人は野毛の呑み屋街、中華街や伊勢佐木町を思い浮かべる人も多いでしょうー、そんな個性あるランドマークの多い町にあって横浜駅周辺は何ともとらえどころのない横浜を象徴するにはあまりにも印象が希薄であります。あえてそんな町に出向いたのは好き好んでというわけでは当然なく、ちょっとした用事があったからに過ぎません。「 所用の時間に早すぎるので少し時間を潰さねばなりません。しばらくつまらないと言えども知らぬ町ではない町の変化を眺めているとにわかに空腹を感じたので横浜西口店」に入りました。ガラガラの店内奥で、昼らしくカレーライスなんぞ注文してみたら、おやおや昼間でも呑めるようです。こうした店が夜になると呑みがメインとなる二毛作をしているのはよく見掛けるようになりましたが、昼前から呑めるのは何軒か知ってはいるものの少数派だと思われます。薄暗い店内から道行く人々を眺めるのは楽しいものですが、日中から酒を呑む姿を同じく眺められていると考えるとあまりみっともいいものではないななんてのんきに考えたりします。ここで長っ尻するのは見苦しいので、人心地付くと程々に店を出るのでした。
2014/12/19
コメント(0)
特に予定を立てずに思いつくままに彷徨うのが本当は旅の最高の贅沢だとはわかってはいるものの、敢えて言うまでもなく金銭面と時間的な制約がどうしても行動を規範してしまうのが実情です。そんな訳で今回はちょっと贅沢して大雑把に京急線の沿線、ただ所用を済ませるともう夕方近くになったので、品川からそう遠くへは行けそうにありません。早速時間的な制約に晒されているのですが、これはまあ致し方ありますまい。ボケっと電車に揺られていて、ああここには一度、結構な酩酊状態になってからオオバコの有名居酒屋にお邪魔したことがあるだけだったと思い出し、下車してみることにしました。ここからは、適当に北上して品川方面を目指すことにしましょうか。 勝手知らぬ鶴見市場駅周辺ではありますがおおよその方向感覚が掴みやすいのは、昼間だと物足りなくとも暗くなってからはむしろ助かります。しばらく歩くと「亜露麻」という喫茶店がありました。店は閉店の準備に掛かろうというところですが、常連らしき男性がおられたこともあり無事入店をすることができました。正統派のシックなお店で、キッチュなキワモノ感が乏しいのがやや残念ですが良いお店です。 日が沈みすっかり暗くなったのでそろそろ酒場が恋しくなってきました。ようやく八丁畷駅に着くと、ここはあまり京急沿線の雰囲気とは違っていて、その理由はなんとなくわかっているもののうまく表現できそうにないので取り敢えずは放置することにします。駅前に「富士」という喫茶店がありました。瞬間、喫茶店はもういいかと躊躇するもののせっかくの機会をふいにしてしまい次のチャンスの到来を待つことはいろんな意味で遺恨を残しそうに思われたので、やはり入ってみることにしました。店内はそこそこお客さんが入っていて受ける印象はスナックに寄っています。どうしてある喫茶店がスナックみたいに感じられるかをふと考えてみれば、絨毯というかカーペットの赤紫が直感的にもたらすことが一因としてあるようです。実際のスナックがそうとは限らないのに不思議なものです。こちらのマスター、ものすごく感じがよくて、ちょっと質問しただけなのに丁寧にあれこれと聞かせてくれるのでした。 踏切を渡ると風景は一転、途端に良いムードの呑み屋街が出没します。一巡した限りこれと言って気になる店はありませんがこの呑み屋街を見逃すことはできません。その一軒「呑処 わさび」という店を特に理由なく選んでお邪魔することにしました。不思議とこの夜の記憶には、霞がかかっていてすべてうろ覚えなのですが、確かコの字のカウンターだけの狭いお店だったようです。女将さんが一人でやっていて、愛想が良いわけでもないらしく、ぼんやり物思いにふけりつつ酒を呑み進めます。肴は何を貰ったんだろう、やはり思い出せません。ただしばらくして来店したお客さんもやはりどこまでも押し黙っていて、異様なほどの孤独感に晒されたことだけは、奇妙に生々しい記憶として脳裏に刻まれたのでした。いつもであればあと二、三軒、八丁畷でハシゴするところですがどうにもこの夜のこの町には不穏な気分となり、ひたすら夜道を盲滅法に川崎方面に向かって歩きます。そこで偶然素晴らしい酒場に出会えたといえば小林秀雄みたいで嘘くさくもかっこいいわけですが、そんなことはけしてなく、たまたま川崎新町駅を通ってこの駅名のそばに好奇心をくすぐられる酒場があったことを思い出したまでのこと。 そのお店とは「もつやき 煮込み 鳥田屋(島田商店)」です。思いのほかに立派な店構えに想像とは違うぞの感に襲われますが、それでもなかなか風格を感じさせるお店です。店外には客たちの賑々しい声が溢れています。沈鬱な気分の時はこれくらい活気のある酒場でちょうど良かったのかもしれません。建屋の外観からの様子がすっかり暗くなってしまいハッキリとした輪郭や風合いを確認できなかったのは返す返すも残念、その気になればいつでも行けるとはいえ、そうそう口で言うほどおいそれと行けるわけではありません。もっとフットワークを軽くせねばならないですね。ほとんどの客が数人のグループで、地元の職人風の若い人たちが多かったため、やかましいことこの上なしです。先程までの寂寥感はどこへやら、沈鬱な気分など吹き飛んでしまい誠に勝手なことながら、憤慨するのでありました。若い大将もまたやたらと声がでかくてなんだかとても偉そうなのが気になります。でもそれを補って余りある旨さと安さがある限り、客足の途切れることはなさそうです。
2014/12/08
コメント(0)
鶴見には、何度も来ているのに不思議なことにその全容が掴みにくく、おおよその勝手はわかっていると思っていましたが、見逃していた一帯があって、駅東口の北側にはこれまであまり来た覚えがありません。恐らくこれが初めてなのでしょう。これまで行かなかったということは、呑み屋街を察知するセンサーが機能しなかったということです。あまり期待はできそうにありません。なんて偉そうにさも立派なセンサーを持っているようなことを書いていますが、そんなものが当てにならないことは重々承知していて、大事なのはとにかく組まなく町を歩くマメさと、失敗を恐れずいかなる店に入ることをも躊躇せぬ向こう見ずさが必要なだけです。 さて、ひとまずは京急沿線を中心に数店舗があるチェーン系優良立ち呑み店「立ち飲み とっちゃん 鶴見店」に入ることにします。この系列とても人気があるようでどの店舗もいつでも盛況です。こちらもやはりそこそこの賑わいです。カウンターの先には数名が利用できるテーブルもあったように記憶します。酒の値段はそこそこですが、肴は安くて充実しているのが人気の理由なのでしょう。特にもつ刺しが手頃で、日頃滅多なことでは手を出さないのですが、この店ほど安いと特別好きでもないのにふと食べてみたくなります。お隣りのオヤジ、店の方の評判がイマイチのようです。それもそのはず、あまり注文もしないのに酔っ払うのが速いこと、そればかりでなく店のお姉さんに隙あらばちょっかいを出そうと身構えているのがあからさまなのです。これじゃ店の方に煙たがられても致し方ないところですが、当人は至って平然としており、毛ほども嫌われているとは思ってもいないようです。これだけ図太いと生きててさぞ楽しかろうなあ。 「大衆酒蔵 カッパ」は京浜東北線の車内から見えていて、実はだからこそ勝手知らぬコチラ方面を目指したわけでありました。「カッパ」という屋号のお店は都内に数多くあって、その由来は定かではありませんがもしかすると酒蔵メーカー黄桜の小島功のCMキャラクターが起源というお店も多いのではないでしょうか。蔵造り風の一軒家がこれぞ居酒屋という風格さえ備えていて、実際こんな風情ある住居に暮らしたことはありませんが、故郷に帰ったかのような懐かしささえ感じます。期待にソワソワしながら扉を開くと、想像そのままの店内に興奮しながらも、何やら違和感を感じずにはおられません。って、その違和感の理由ははっきりしていて、お客さんが一人もいないのです。これまで、「カッパ」という屋号のお店で席の空きがあることは稀だったので、なんだかはぐらかされたような心持ちになります。どうしてこうも空いているのか、その懸念はすぐに明らかになるのですが、店の経営が変わって今は居抜きで入った方がやっているようなのです。しかも韓国人?らしき女性が一人でやっていて、感じが悪いわけではないのですが、愛想のないことこの上なし。しばらく呑むといたたまれなく早々に席を立ったのでした。
2014/11/06
コメント(0)
さて、到着した時点ではうら寂しいほどに商店が開いておらず、人の影すらほとんど見受けられなかったのに、夕方前になると1店、2店と続々と店のシャッターが上げられ、わずか30分前とは打って変わった様子となります。とは言え活気があるというには程遠く、多少駅前の商店街とも呼べぬほどの通りに人の往来が見られるようになる程度です。 そんな通りの1店は、軒先で焼き鳥を焼く惣菜店で焼き場の裏手には各種の惣菜がガラスケースの陳列棚に並びます。仕切りの先には飲食できる一角があるので、店のおばちゃんに聞くと中での飲食も大丈夫とのこと。「食料品の店 浅野(浅野商店)」もまた午後3時30分頃が開店のようです。奥はテーブル席が5卓ほどあり案外ゆったりとした配置となっています。おばちゃんにウーロンハイと焼鳥5本の盛り合わせを注文、串はどれでもいいかねとの問にお任せしますとお答えしました。ちっとも洗練されてませんが、甘過ぎもなく辛過ぎもなく、でもしっかり味の濃い焼鳥は若干小振りなもののなぜか癖になるようなときどき食べたくなるような味です。タイプは違いますが国技館サービスの焼鳥とその辺は近いかもしれません。人っ子一人来るではなく、店頭で焼き鳥を注文する人、予約する人たちとおばちゃんの会話を肴についくつろいでしまい酒が進みました。 新しい大きなマンションの一階にある「本多政晴商店」も開店前にはシャッターが閉まっています。曜日によって4時30分もしくは5時の開店となるようです。この日は4時半の開店です。店の前には開店待ちのお客さんが一人います。開店を待ちきれない客のいる店は悪いはずはないはず。シャッターが開くと想像していなかった光景が広がります、って言うといささか大袈裟ですが意表を突かれたことには違いありません。というのも酒の小売りはしていないらしく、広い店内に所狭しと張り巡らされたそのカウンターは、渋谷の例の立ち呑み店に負けず劣らずの大きさです。結局見届けることは出来ませんでしたが、この角打ちにびっしりと客の入るさまを思い浮かべるとゾクゾクさせられます。それにしてもこんな真新しい高級感さえ感じさせるマンションの1階にこれほどまでの呑ん兵衛スペースが広がっているとは驚愕を感じずにはいられません。酒も肴も角打ちの基準を超えて充実していたことは記憶にありますが、何よりこの異様なほどに拡張した角打ちスペースに瞠目し、他の記憶は曖昧なのでした。--- ここからは別の日のお話。どこぞやで呑んだあと、花月園前に辿り着いていました。夕方の賑わいからは一転、夜の花月園前はお寒いのでした。一軒ちょっと味のある居酒屋がありました。「季節の味処 増喜」というお店。まあこれが他の町にあったなら見過ごしていたかもしれない程度にごくごくありふれていますが、居酒屋らしい店の少ない界隈では貴重な店のようで、ほとんどカウンター席は埋まっています。まあせいぜいが5、6席程度しかありませんけど。その日はO氏と一緒だったのですが、この人何度か言ってるかもしれませんがカラオケが大嫌い。こうした土地のこういう店ではカラオケはどうしても欠かせないようです。われわれが郷に従ったかといえばそんなこともなく、ちょっと気の利いた肴を摘みに、夜の花月園前はちょっと退屈だなと思わざるを得ないのでした。
2014/10/08
コメント(0)
最近、アド街で花月園前駅ー念のためお断りしておくと京浜急行電鉄の各駅停車のみ停車する小さな駅ですーが特集されてしまったので、今になってこうして報告するとマスコミに踊らされているようでなんだか気乗りしないのですが、このブログが一応は個人的な備忘録としての役割を捨てていない以上は残しておくのもありだろうと開き直ることにしました。大体においてすべてのテレビ番組をフォローできているわけでもないし、自分だけはすごい酒場に出会ったと自己満足に酔ってみたりしても、前夜にどこかのテレビ番組で放映されているかもしれのだから気にしていたってしょうがない。などとグズグズ言い訳していてもご覧頂いている方には迷惑至極に違いないので遅まきながら最初のお店から報告します。 ところが日中からやっていると思っていた数軒あるらしき角打ちは、時間差で営業を開始するようです。しょうがないのでしばらく散歩して時間を潰すことにします。すると折よく「コーヒーショップ ココ」なる喫茶店あり。ここもまたアド街で紹介されてしまうわけですが、そんなことはどうでもいい。駅はずれのもしかすると国道駅が最寄りという立地にあるまことに地元密着ののんびりした喫茶店でありました。これといって奇を衒っていたりするわけではないのに、どうしても隠しきれぬ歴史が気持ちを緩めてくれます。高齢でも元気なママさんが韓国ドラマにかぶりつく姿を眺めながら、この土地の角打ちもこんな緩い空気に満たされているのだろうと期待が高まります。 まずは、午後3時に開店の「江戸屋 斉藤商店」にお邪魔しました。開店まではシャッターも閉ざされ、本当に営業するのか、いささか不安を感じます。一応小売もやっているようですがほとんど倉庫のような店内の奥にはテーブルが置かれ、これまでほとんど経験したことのない奇妙な雰囲気です。角打ち稼業がメインとなっているようです。そんなこともあって、刺身があったり、10月からは煮込みもあるようでなかなか本格的です。母娘でやってるお店なこともあってかぼくに続いて入ってこられたのは、30歳そこそこの女性客でした。一応は男のぼくがいても、ぼくなどいないかのような様子できわどい話を赤裸々に語り、耳が痛いのなんのって。こちらは相撲中継に見入っているふりでもするしかないのでした。でも店の方が席を立つと女性客から視線を浴びせられているように感じるのはやっぱり図々しいかなあ。 30分ちょっと滞在して、次にお邪魔したのは「相模屋岸酒店」てす。外見には個人商店としては規模も大きく、厳しい経営状況と聞く酒販業としては店舗も古びてなくこざっぱりしていて、端的に味気なく思われます。しかし土地からというのが適当なのかはともかくとして、ここはしっかり小売の営業もしていますが、独立した立ち飲みスペースがあります。ガラス戸には午後3時30分から営業との貼り紙がありました。開店時間を10分ほど過ぎてからお邪魔するとすでに5名のオヤジたちが賑々しく語りかつ呑むのでした。細長いスペースの奥には手作りの肴が盛り付けられた小皿が並び、ここで酒と肴を見繕うようです。両壁面には奥行きのないカウンターが設けられています。場所を確保して店の雰囲気を味わいつつ、人々の様子を眺めます。長老たちはビールケースに腰を下ろし、720ml瓶の焼酎をカウンターにある自由に使える氷と水で割り、本当に呑んでいるのかと訝しく思うほどに遅々としたペースの呑みで一杯呑むのに30分、もしくはもっと掛かってもおかしくない程に感じられます。腰を下ろした彼らは、店が閉まるまでここに居続けるのでしょうか。その姿を思うとなんだかたまらなく物悲しく思われるのでした。
2014/10/07
コメント(0)
大口での充実した喫茶時間を過ごし終えたら、いよいよ居酒屋時間のスタートです。昼食時を過ぎて飲食店も掻き入れ時を過ぎて落ち着きを取り戻していると判断し、地元では知られたらしい中華料理店にお邪魔します。 「寺尾屋食堂」の前にやってくるとなんの事はないつい近頃開店したばかりのような味気ない店がありました。前回大口に来た時には、古い店舗が創業当時とそのままに違いなかろう枯れた佇まいを留めていましたがお休みでした。ことによるとその時が改装のタイミングだったのかもしれません。他所を探そうかとも思いましたが、その気になっていたこともあり空腹が我慢できぬほどに激しくなっています。とりあえず入るとぽつりぽつり客がいて、カウンターを勧められます。テーブルは2卓とも空いてるしわざわざこんな窮屈な人の出入りする入口付近の席じゃなくてもいいのではと思いもしますがまあいいか。名物は7個で150円のニコニコプライスの大口餃子てす。ラーメンには、食が細っているぼくには大変ありがたい小中大のサイズがあって小サイズを注文、焼酎ロックもお願いします。お隣の買い物帰りのマダムは餃子とラーメンでしたが、セットにするとそれに小ライスも付くようです。餃子もラーメンも昔ながらの味というのが適当なこれといった特徴はありませんがそれでいいのです。これで店の雰囲気さえかつての雰囲気が残っていたらかなり気分良く過ごせたのではないかと、いささか残念です。 続いて立ち寄った「石川屋酒店」は、一見するとアーケード商店街にあるごくありふれた酒屋さんでしかありませんが、その脇にはしっかりと独立した立ち飲みスペースが設けてあり、店舗内に無理無理テーブルを据えて角打ちでございと居直る店が多い都内のものとは一線を画し、嬉しくなります。カウンター奥には常連の中年男性がどっしり腰を据えて呑んでおり、水商売のお姉さんらしき顔馴染みと言葉を交わしています。ご機嫌な兄さんはぼくにもお愛想を投げてよこします。店主も店の奥から顔を覗かせ気持ちの良い挨拶をしてくれます。カウンターの中には娘さんが酒や肴の支度をしてくれます。肴も数品ですが調理したものもあって、腹はくちいので6ピーチーズだけにしましたが、勤務後の夕暮れ時の空腹も満たしてくれそうです。人通りのまばらな商店街をぼんやり眺めながら呑む至福にいつもより酒の回りがよいように感じられます。 ほろ酔い気分で京急の子安駅方面にのんびりと歩いていくと、高架に沿って商店街が伸びています。スナック長屋の一軒は喫茶店ですがあまり気乗りがしなかったのでそのまま進むと、住宅街に踏み入ることになりそうで面倒なので引き返そうとしたところ古びた酒屋さんがありました。もしや角打ちではなかろうかとみせを覗き込むと案の定、角打ちのカウンターがありました。レジの前に佇むお婆さんに声を掛けると呑んでも良いとのことなので早速冷蔵庫から緑茶ハイとおかきのパックを購入するとカウンターに移るのでした。「美加登屋酒店」という酒屋さんです。ご丁寧にグラスを準備してくれます。冷蔵庫を見るとお新香やゆで卵、納豆、豆腐などが入っていて皿に乗せる程度なのでしょうがそれでも乾きものだけでないということが嬉しくさせてくれます。人通りも全くなく古くて静謐な開け放たれた店で独り呑むと孤独さが去来しつつ、不思議と穏やかな心持ちに浸れるのでした。
2014/09/29
コメント(0)
とある平日の昼間、仕事をサボって子安駅にやって来ました。このブログをご覧の方であればああ、「市民酒場 諸星」にでも行くんだろうなと思われたことでしょう。当然ぼくも時間があえばお邪魔するに違いない、東神奈川で「みのかん」にでも寄って、いい加減に時間を潰して、ひとしきり酔ってからのこのハシゴなんてこれまで行ったことのない方には折り紙付きでお勧めしたくもなる訳ですが、今度は喫茶店巡りが主眼なのでその贅沢はまたの機会とします。目当ての喫茶店は、大口駅が最寄りですがいきなり駅前に出現しては興ざめなので、JRの子安駅からぶらぶらと向かうことにしました。 せっかくなので「諸星」を建物だけでも眺めておこうと目と鼻の先にある 京急新子安駅を横目に踏切を渡ると 「諸星」のお隣の建物の2階に 「喫茶 やまぐち」がありました。目指すお店に向かう前にここて逸る気持ちをなだめるためにも立ち寄っておくことにしました。階段を上がると思ったよりずっと正統派の喫茶空気広がっていました。ペンダントライトやパテーションも控えめではありますがセンスの良さが感じ取れます。いつもであれば店内を一望できる席を選ぶのですがぽつりぽつりとお客さんもいるので空いていた窓際席に腰掛けます。窓際からの眺めは眺望には恵まれず、人の往来もあまりなくさほど面白いわけではありませんが不思議に憩えるのでした。しょっぱなからある意味理想的といえる駅前喫茶と出会い幸先は良さそうです。 大口の商店街は数年前の同じ季節の似たような時間帯に来ていたことを今にして思い出します。当時、地獄のような私生活を送る旧友と数年振りに落ち合って、どうしたわけか、子安から川崎に向けて呑み歩いたのでした。そんなわけで商店街が楽しいことは記憶に新しかったので、横浜線の線路に沿って大口駅を目指します。駅までの風景は格別のことはありませが、駅前について急に鄙びて感じられるのも不思議な気がします。ロータリーの先には「喫茶 水乃江」がありますが、どうも営業はやめてしまわれたようです。事前の調べでは近くに良さそうな喫茶店が悲願とする以外にもあるようですが、この界隈の地番が枝なしのであったため随分無駄に歩くことになりました。 目当ての喫茶店は、 「喫茶室 鹿鳴館」というお店です。諦めてこちらに向かうことにしましたがそれらしき場所には、小ぢんまりして鹿鳴館というのはいくらなんでも無理がありそうな洋館造りの玄関がありました。こちらもさんざん探し回った挙句にようやく見つけることができたのは、先程の小さな外灯のある洋館の裏手だったのでした。正面に回るとやはり鹿鳴館を冠するには可愛らしすぎる洋館ですが、それでも店内の豪奢さへの期待が高まります。瞬間、玄関を間違えて店仕舞いしたふうに誤解しますが、窓から期待通りのペンダントライトの灯りが漏れ溢れていて慌てふためき扉を潜ります。鹿鳴館と云うには幾分手狭で、むしろ華族たちが鹿鳴館の隠し部屋でよからぬ会合を催すのに適したような、秘密めいた雰囲気が溜まりません。普段であれば直線的なしゃちこばった席の配列に、気に入りつつも苦言を呈したくなるところですが、こちらのムードにはぼくなんぞの戯けた一言など一蹴するだけの貫禄を感じました。ところで、執事ならざる店主は至って気さくで、天使のような無垢なる笑顔を絶やさず店の長い歴史を語ってくれるのでした。 あっ、商店街の外れに「喫茶 水乃江」がありました。移転されたようです。一応お邪魔してみたのですが駅前の店舗が想起させる純喫茶の名残はその片鱗すら窺えず非常に寂しい。やむを得ないこととはいえ古い店がどんどん姿を買えるのを間も当たりするのにはまだ慣れることができません。 アーケード街にある「COFFEE & TEA Fuji」は閉店していて残念ですが、かつては商店街を利用する多くの買い物客の止まり木として愛されていたに違いありません。 路地の中に「COFFEE & RESTAURANT ロデオ」がありました。近頃は滅多に見ることはなくなりましたが、店舗だけではなく、路地を挟んだお向かいにも小さな看板が誂えられています。熱海など温泉街の路地なんかで今でも時折見かけることがありますが、都心の呑み屋街でもほとんど見なくなりました。さて店内はというとこれは期待以上に良い雰囲気、ぐっと控えめな照明も変化があって、窓からの明かりも店内の家具や内装にヴェールをまとわせているかの様に効果的です。なにより嬉しい仕掛けが控えめな、階段3段ばかりの中2階と言うにはやや低くなったスペースのあることで、この絶妙な高さを設計したことによって却って視線の交錯を廃したプライヴァシーに配していてセンスの一旦が感じ取れます。 以上大口の喫茶店事情はけして充実しているとは言えぬまでもまだ喫茶好きなら一度は行っておきたい店舗が健在で未訪の方にはぜひお出掛けいただきたいものです。
2014/09/28
コメント(0)
滅多に利用しない小田急線に揺られ、やって来たのは登戸です。人生を通しても片手に余る程度しか訪れたことのない町で訳なく心が踊ります。おぼろげな記憶では、南武線と交錯するこの駅の周辺は雑然としていて、このブログを書き始めて以降、訪れていなかったのが不思議なくらいです。浮足立つ気分をとりあえずは封印です。所用を済ませるまでは、なるべく愉しみは視界から遮ることにしたいものです。所用の最中、呑みの誘いあり。どうにも断りづらい誘いだったのでどうしても行かねばなりません。極力目を瞑ると言っても行き掛けに駅前でもっか進行中の再開発を目にしてしまった以上は、まだ町が活気付くには早い時間ですが、どこでもいいので入ってみることにしました。 この夕方にようやく差し掛かったほどの時間で開いているのはチェーン店ばかりと相場が決まっていますが、幸いにも立ち呑み屋が開いていました。まずは駅前ロータリー裏手のマーケットー多分…今では飲食店がメインーにある「立ち寄りや(TACHIYORI-YA)」に入ってみることにします。広くて飾り気なくカラーンとしたまるっきり愛想のないお店、客が入ればそれなりの雰囲気が出るのでしょうが今は一人で呑むのが侘びしいばかり。この侘びしさ、けして嫌いではありませんが、時間に追われる身としてはそうそう長居する店ではなさそうです。折角のマーケット?跡という立地をもったいなくも活かしきれていないように感じられました。 ロータリーに移動すると、これを求めていたのです、いかにもこの地にしぶとく根付いているらしき廃墟寸前といった体の「立ち呑み 盛田家」がありました。こういう全く存在を認知していなかった古い酒場を見ると必要以上に興奮してしまいます。せいぜい10名も入れば一杯になりそうな店内は、早くも満席手前といった風です。流行る気持ちをなだめつつ入店、券売機にて精算する流儀であるなと、いそいそ小銭を投入。いくら小銭を導入しても食券のボタンが光ることはなく、やむなく札を導入するも今度は客の一人から札はダメだよと教えられる始末。やむなく厨房で忙しげに立ち働く女将さんに現金を受け付けてもらいました。カウンターは常連で割り込む好きもないのでトイレに面した狭いカウンターに落ち着きます。いや~、それにしても大した寂れっぷり、ロータリー内は元の店舗が仮設プレハブ店舗にて営業を続けていますが、ここが再開発範囲に含まれなかったのが奇跡とも思えるほどです。暗くどんよりした気配が漂いますが、客の一人が数十年ぶりにこの町を訪ねたらしく、あまりの変わり様に驚きを隠しもしません。ぼくもその話題に飛び込みたいところですが、待ち合わせのことなど忘れ去ってしまいそうなので遠慮します。ところで、やはり似たような枯れた佇まいが魅力のお隣りの「太田屋」はこちらと経営は一緒とのことでした。
2014/08/21
コメント(0)
ゆるりゆるりと気分は良くなってきましたがせっかくの生麦、しかも明日は休みということもあったのでこれだけで引き上げるのはもったいない。事前にひと回りしてまだ数軒良さそうな酒場があることを確認しています。もっとも気になったお店は「麒麟」,「大将」からもほんの目と鼻の先にあるお店でした。 「大衆酒場 大番」です。左右2箇所の入口があり,左側から入ってみるとお客さんでびっしり。意表を突かれたのですが,こちらは立呑み屋さんだったのですね。右手の入口側には多少のスペースがあるようなので,出直します。入口付近のコの字の隅っこになんとか場所を確保することができました。いやあ,それにしてもこちらの雰囲気は抜群です。老いも若きも,男も女も皆等しく和気あいあいの和やかさで,いかにも場末の立呑み屋という佇まいにも関わらず,日頃はこうした酒場とは無縁そうな若いカップルから,何十年も通い詰めているような熟年夫婦?まで多種多様な方たちが目一杯愉しんでいる姿を見るのは酒場道楽の最大の喜びかもしれません。しかも特にすごいのは熟年夫婦の食べっぷりです。カウンターにはもとは何が入っていたのか,どんぶりやら平皿などが積み上げられていて,とても2人では食べ切れないほどです。大体がこちらの一皿の盛りは滅法ボリュームがあるのでした。それ以上に特筆すべきはメインの肴が魚介系であることで、その質が驚愕の旨さ。これはただ単に素材が新鮮なだけでは出せない味に違いありません。脇に立つ時折顔を出すらしいおっちゃんが若主人らしき兄さんに貸し売りしてよとねだっています。あんたに貸すとめったに顔出さないじゃんと厳しくたしなめていますが、前回貸してあげたようなので人情にも厚い素晴らしい酒場だったのでした。ホント近くにほしいなあ、とつくづく感じさせられました。 最後に駅前のメインストリートにある「大衆酒場 トン幸」に向かいました。すると路地にまであふれる程の人混みがあります。何だ何だ!一体どうしたことだ、ここはそれほどまでのすごい酒場だったのか、そんなことなら先にここに来ておくべきだったかと思わずT氏と顔を見合わせます。驚愕しつつ諦め気味に店に近づくと、大盛況だったのはお隣の新しいもつ焼屋でした。そのお店の煩わしいほどの賑わいは眉をしかめたくなるほどでしたがそれはまた後の話です。この繁盛ぶりは気にならぬでもありませんが、いずれ入れそうもありません。所詮われわれに若者ばかりの店など似合うわけもなし、予定通り「トン幸」の暖簾をくぐるのでした。やはり想像していたまんまの懐かしの居酒屋空間が待ち受けていたのでした。この典型的なチェーン系居酒屋が繁華街を席巻するまではそれこそどんな駅前の路地裏にでもあった当時は、こんな普通のあまりにもありふれた居酒屋に喜びを感じる時代が訪れようとは思ってもいませんでした。高くもなく安くもなく、特別うまい肴があるわけでもないこうした酒場は近い将来、お隣のような若者が騒ぐばかりの店に淘汰されるのだろうかと思うと、こうした酒場をめぐり続けねばならないなと、独りよがりの使命感に駆られるのでした。
2014/06/12
コメント(0)
生麦に前回やって来たのは一体いつのことだったか、今は亡き友人とキリンのビール工場で当時はそこがどこにあるのかもはっきりと分からぬままになんだかやけに遠いところに連れて行かれるものだと、帰りの道程を考えるとうんざりな事だと思ったことだけが記憶に残っています。当時は呑むためにわざわざ電車を乗り継いで行くなんてことは思いもよらなかったようです。そう思い起こしてみるとそこにはもう一人の男がいました。その男はある日、唐突にーあくまでぼくらにとって唐突だっただけで本人には十分なだけの理由があったはずー失踪してしまったのでした。まあ、そんなことは個人的な回想でしかないので、思い出話は程々に生麦の今を報告することにします。 夕方にO氏ととある酒場で待ち合わせました。所要を済ませて駆け付けます。久しぶりに降り立った生麦はビール工場目当てだった当時と違って全くうらびれたいかにも京急線沿線の街に思われたのでした。改札が違うだけで町の様相が全く違って見えることはままあることですがかすかに記憶に残るだけの町でこのギャップに出会えたことは幸か不幸か、ともかく待ち合わせの店に急ぎつつも時折視界を過る廃屋に溜息ついたり、興奮したりを繰り返すのでした。 結局、時代の流れに必死の抵抗を試みているようにも感じられる町並みに導かれるように歩いていると、地図など眺めずデタラメに歩いたにも関わらず当の待合せの店に辿り着いていたのでした。まあ、町の規模が手狭であり、迷いようもなかったわけですが。 立ち呑み屋と聞いていたそのお店はバラック風で,4枚あるサッシの引き戸を開くと全体がずるずると連動して開きます。外れの入口を開けてしまったようです。仕切り直して脇の引き戸を開けてみるとすんなり開きました。酒場の入口を誤ってしまったときのバチの悪さにはいまだ慣れることができません。一見客だと悟られるのが恥ずかしいというのが原因なのかは判然としないところ。実際には店のばあさんや客のじいさんもまったく気にする風もなくホッと一息。T氏はカウンターですでに呑み始めています。しかもなぜたか座っています。カウンターにパイプ椅子が、立てかけてありますね。ああ、忘れていましたがこちらは「やきとり・立呑コーナー 麒麟」というお店です。立ち呑み屋はあくまで立って呑ませねばならぬと言い張る原理主義者もいるようですが、ぼくは雰囲気さえ良ければそれで充分なのです。加えて婆さんの味わいー断るまでもなく婆さんをしゃぶってみたわけではありませんーの素敵さにすっかり参ってしまいました。しかもこの婆さん、お喋りが大好き。思ったほどには歴史はない店でしたがこの婆さん一人いるだけて納得の年季を店に漂わせていました。 その長屋のお隣もなかなかの佇まいで思わずお邪魔することにします。「串焼 大将」というとても凡庸な名前のお店です。店名が必ずしも店の凡庸を表すわけではありませんが、自分の店を出すんだという意気込みとしてあまりに無頓着なのも気になるものです。仮にこの酒場が大将と呼ばれる店主がやっているとすればそれはそれで鬱陶しいですし、そう呼ばれたいと思っているなら傲慢な気がします。ともあれ店に入るとアララ、いかにも大将って風貌の店主がいるのでした。お隣と同じような造りのカウンターだけの店内で、それでも結構手を入れているようで、「麒麟」よりは随分平凡な印象です。まあ、そうは言っても他の町では稀にしか見られぬ佇まいでひとまずは納得です。おっ、お通しはところてんです。梅雨入り目前の重苦しい空気にウンザリした体にスッと染み入るようです。ところてんに限らず、酒場の肴って自宅で摘んでも虚しい気分になることが多いのですが、こうした雰囲気のある酒場ではなぜかおいしく感じられるのです。それだからこそ日々酒場に帰ってしまうのでしょう。
2014/06/11
コメント(0)
大船の町はぶらりと散歩していると古い町並みも残っているし、思わず立ち寄りたくなるような居酒屋もそこここにあったりして、そんな町でもっとも懐かしささえ感じさせてくれるのが「かんのん(観音食堂)」だったわけですが、美点と同時にどうにも許しがたい一面もあるという愛憎半ばするような宙ぶらりんな気分にさせられたのでした。もやもやとした矛盾した気分を引き摺って帰ってしまっては、この大船の町に再び訪れる機会をまた当分の間逸してしまいかねないのでもう一軒お邪魔しておくことにしました。 駅前に立呑み屋があるのを見掛けていたので、そこに行ってみようかと歩き始めるやすぐ目の前の古い一軒家の中で立呑みしている人たちがいるのが目に入りました。「倉庄」という看板も立派で、店の造りもとても立呑み屋とは思えないので好奇心に駆られるままにお邪魔することにしました。高齢の夫婦がやっているお店でお客さんは男性2名と女性3名と女性上位ということは安心感があるのはもちろんホッとできるようななにがしかがあって心地よく過ごせるのではないかと期待が高まります。品書きを眺めるとそばメニューがいくつかあって、どうやらもともとは立ち食いそばのお店だったようです。今でもそばはありそうですが、みな銘々に好みの酒を呑んでいます。お隣のオヤジは角の水割りの瓶を何本も空けているらしくかなりの酔っ払い振りですが、うら若きお隣の女性はさほど気に掛ける様子もなく下ネタ満載のオヤジの喋りにも適当に調子を合わせて付き合っているのが大いに感心しました。こんな素敵な女性がいる酒場ならオヤジじゃなくても通いたくなるよなあなどとS氏と視線を交わしてみたりします。値段は酒がちょっとお高めで、それでなのかは確認しませんでしたがS氏が珍しくも一番安価な焼酎をロックで注文しました。彼女たちにかっこつけて見せたのかもね。便所を拝借するため店の奥に進むと厨房の裏手の部屋らしき場所から年齢・国籍不詳の男たちのひそひそ声が漏れ聞こえてきます。常連はここで呑むことお許されているのでしょうか。ちょっとミステリアスな雰囲気です。鈴木清純の「探偵事務所23 くたばれ悪党ども」のワンシーンを思い浮かべつつ想像を膨らましたりして用を足したのでした。店の方たちは無口というわけではなく適所で話題に口を挟んだりするのですが、その絶妙かつ的確な間が居心地良さにつながっているのかもしれませんが、それにしても彼女たちは何故おこのお店に通い詰めているのかは結局わからぬままなのでした。 もう少し大船を散策したいところですが、改めて訪れることを心に刻み込み、もう一駅だけ途中下車することにしました。もう帰るつもりだったらしいS氏を促し戸塚駅にて下車します。ああ、戸塚という町はこんな町だったかと思わず嘆息するほどに開発されつくされていて、橋の向こうのちょっとだけマシに見えた酒場もGWど真ん中のこの日はお休みでした。もはやどこだっていいと捨て鉢な気分でお邪魔したのは駅に直結する商業ビルの中にある「七福」というお店です。それこそどこにでもありそうなチェーン店風の大型店舗ではありますが、ぴかぴかのビル内にあってはべたべたと必要以上に張り紙を巡らせているのが居酒屋っぽさをいくらかは感じさせてくれます。そんなまあどうってことのないお店ではありましたが、案外客の入りはよく家族連れなどで賑わっていました。お勧めメニューにあったエンガワの炙ったのなんか、ボリュームもあるし、脂ものっていて、しかもその脂をひと炙りするといった一工夫でさっぱりと食べられたりして、思ったよりがんばっているのでした。でもやっぱり店の雰囲気がこれじゃあねえ、駅構内の飲食店で列車待ちしているような落ち着かない気分になるのでした。 今回の旅は馴染の土地だと思っていた町がまったく別の一面を覗かせてくれたりして思わぬ収穫をいくつも得ることができましたが、比較的容易に足を延ばせる神奈川県に入ってからは、都心とのアクセスの良さと都市機能の集中から一層のベットタウン化が加速しているように見受けられました。町から活気が失われて利便性のみが高くなることを住民たちは本当に望んでいるのでしょうか。尻すぼみな気分を残しつつも今回の旅はこれにて終了となるのでした。
2014/05/19
コメント(2)
藤沢の酒場との相性の悪さは昨日たらたらと綴ったのですが,続いてのお店でもそれは繰り返されることになったのでした。わざわざ「肉の佐藤」と似たような雰囲気のお店に立て続けで入ってしまうなんて愚かな所業をしてしまうなんて,さすがに疲労が溜まっていたのでしょうか。どうもそれだけの理由ではなさそうです。藤沢の町とのソリが合わないことが最大の要因のように思われてなりません。 どこの酒場に入ったかというと「藤沢大衆酒場 南口やきとん」でした。「南口やきとん」という屋号,まあ在り来たりではありますが,どうしても浅草橋の「西口やきとん」を想起させずにはおられません。店の雰囲気は全然違っていますが,パイプ椅子とか簡易テーブルで安っぽさを演出している辺りは意識しているのではないでしょうか。肝心のもつ焼もちょっと珍しい部位もあったりして,その部位の名称はすっかり失念して入るものの見慣れぬ串を頼んでみました。確かに食感や味わいにはこれまであまり経験したことのないものでしたが,体調があまり優れないからであればいいのですが,なんだか異様に生臭く感じられたのでした。お客さんはほぼ満席で入れ替わりも早いのですが途切れることなく次々と入っていて人気はかなりあるようでした。藤沢の方たちの味覚にはこの程度の焼き加減がおいしく感じられるのかもしれません。焼物は随分早く出てくるのに勘定はやたらと待たされるのが不満と言えば不満でした。 藤沢には見切りをつけることにしました。S氏などもう当分藤沢に来ることはないであろうとまで言い切っていましたが,「久昇」のすばらしさだけは念を押しておきました。で,次なる駅は大船駅。どうしてだか大船駅で下車する機会にこのところ恵まれず,10年振り位の下車をしたのでした。松竹大船撮影所のあること知られた大船ですが,そこも1995年には鎌倉シネマワールドが開設するものの2000年には閉所してしまいました。 そんな映画人が闊歩していたであろう町の古株の酒場が「かんのん(観音食堂)」です。この酒場というか食堂の存在は随分以前から知ってはいたものの,この地を訪れて実際にコカコーラのホーロー看板を見るまで大船にあったことなどすっかり忘れてしまっていました。昭和25年魚屋として創業,昭和35年食堂に業態を変更した確かに老舗店であります。おもむろに店に入るとわれわれが2名でと申し出たにも関わらず,店のおばちゃんはこちらを気に掛けるでもなく,放置され続けます。なんとも所在ない気持ちで立ち尽くすこと5分,食事や飲酒を終えた皿がそのままの空席もいくつもあるにも関わらず,今片付けますからちょっと待ってくださいの一言もなく,なんともこれは困った店に入ってしまったもんだと脳裏に後悔が過ります。それでもしばらく待たされると気にかけていないことはなかったようで,奥のテーブルに通されます。この店のおばちゃんたちの様子を観察すると持ち場がきっちりと決まっていて,手が空いてる人がいても自分の仕事以外は一切手を出さないというなんとも融通の利かないシステムが導入されているようです。勝手知ったる常連たちは知らん顔で皿の放置されている席に気ままに腰を下ろしています。さすがに操業が魚屋だったこともあり,小肌などの生物はなかなかの味です。それにしても品書きを眺めるに値段の付け方が都内の酒場とは相場がまったく違っていて,えびよりもいかのフライやら天ぷらなどの方が値が張るというのは違和感があります。どれだけ立派ないかフライを食べるべきものやら注文してみたくなりますが,やっぱりやめておくことにしました。
2014/05/17
コメント(0)
さて,小田原駅を後にして辻堂駅に向かいます。これといって繁華街があるわけでもない辻堂駅に下車したのは辻堂海水浴場で海でも眺めようとしゃれこんだわけではなく,海浜公園でS氏とキャッチボールをしたりしようなんてわけではまったくなく,酒場放浪記でも放映された(らしい)老舗おでん店を訪ねるのが目的なのでした。海岸線までひたすらまっすぐ伸びる道をすでに3日目となり,さすがに会話も途絶えがちになるS氏とだらだらと歩き続けます。さして面白い飲食店もなくいい加減嫌になってきました。やがて前方に公園らしき緑地が目に入って,ああようやく海のそばにやって来たのだなとほっとしました。ところがそこはまったく別の入口でした。さらに1Km程の道のりを言葉少なに歩き続けます。ようやく遠目にそれらしき店が見えてきました。 何軒かの飲食店が並んでいる中に目的の「ひげでん 本店」があります。行楽地の食堂というか海の家により近い感じの古ぼけた即席な造りの安普請な店舗ばかりがある中で,この「ひげでん」だけは立派なお店です。安普請店舗の一軒は「ひげでん」の別店舗のようで,営業しているようです。ところが本店のほうは開店が17時からということでシャッターが閉まっています。時刻は今15時45分。開店までかなりの時間があります。これは喫茶店でも入って時間を潰すか,ボロ長屋の食堂もしくは「ひげでん」の別館に入るしかなさそうです。食堂は海から上がって来たやかましいオヤジたちで混み合っているので避けたいところ,別館から本館へのハシゴもなんだか虚しい。そういうわけでやむを得ずぶらぶらと喫茶店探しをすることにしました。が,探せど喫茶店らしき店舗はなく,公園内のレストハウスに喫茶コーナーがある程度。こんなところ時間潰しをするのもお金の無駄とベンチに腰掛けひたすら時間をやり過ごします。(……) 虚しく退屈な長い時間を過ごしようやく開店の時を迎えました。シャッターが開いた途端に入るのはなんだか待ち構えていたようでこっ恥かしいのできっちり60秒秒後に店に入りました。4階建ての店構えから広々とした店内を想像していましたが,存外に狭くL字のカウンター10席程度にテーブルが2卓のみです。そのテーブル席も予約で埋まっていて,冷蔵庫だかに貼られた予約のメモには2名と犬1匹なんて書かれてしました。登録商標となっているらしいおでんを見繕ってもらい,それは確かにけっこうなお味でしたが,都心の高級店並みの値段なら宣なるかな。でも駅からも遠い海辺のそばにどうしておでん屋があるのか怪訝な気持ちでいましたが,急速に冷え込んだこの日の夕暮時,おでんを食べてみてわかりました。海水浴で冷え切った体をおでんがほかほかと温めてくれるのです。これは海水浴後に味わうとその味も有難味ももっと切実に体感できたのでしょう。 さて,辻堂駅でもう一軒と駅の北側を眺めますが,いつの間にやら著しい変化を遂げていて,まったく立ち寄る気に慣れない味気ない町に変貌していました。しからば早々に立ち去るべし。次の下車駅は藤沢駅です。藤沢駅もあの名店以外はこれといった酒場のないことは経験済み。まずはその名店で長く修業したという方が独立してオープンした居酒屋にお邪魔してみることにします。うれしいことに営業しています。勇んで店に入ると予約はなさっていますか,本日予約で一杯なんです,とのこと。最後こそは旨いものを食って帰ろうと意気込んでやって来たのに無念。それにしても予約しないと入れないなんて居酒屋としてはどんなもんなのと逆ギレしちまいました。「酒肴彩 昇」ってやはり人気店なんだなあ,1度は行ってみたいので次回は予約しとこ。せっかくなので,「酒処・喰処 久昇 本店」を覗いてみますがこちらはお休み。さらに藤沢では貴重なボロ酒場「やきとり 一徳」は明かりが付いていますが,休みとのこと。藤沢という町とは相性が悪いようです。 やむをえず「肉の佐藤」というお店があったので入ってみることにしました。特にどってことのないお店でした。あまりにありふれ過ぎて語るべき何ものもありません。しかも3名グループのおっさんたちが我が物顔でけたたましい笑い声をあげていてゆっくり呑む気になりません。さらに店の若い従業員までが非常識なほどの大音量の笑いっぷりで心底うんざり。他の独り客も振り返ってやかましい連中のことを眺めやっては怒り心頭の面持ちをされています。店は先ほど書いたようにごくごく普通ですが,この騒がしさもあって印象はかなり悪くなりました。 やはり藤沢は性に合わないようです。が,実はもう一軒だけ立ち寄ったのでした。でも続きはまた明日。
2014/05/16
コメント(0)
さて,いい加減引き揚げればいいのについ立呑み屋をはす向かいに見掛けてしまってはもうダメです。ふらふらと引き寄せられるように店内に吸い込まれてしまいました。 「駿河路((株)駿河路酒食品店)」というお店。ネットで調べて判明したのですが,もとは酒屋さんだったのが商売替えして立呑み屋となったのでしょうか。若い店主独りのお店で,4,5名ほどのお客さんが入っています。店内はかつての酒食品店だったころの名残はさほどとどめてはいないようですが,暗めの照明がそれなりに味わいのあるお店に感じさせます。若いサラリーマン2人組以外は独り客だけで,皆さん会話をするでもなく,読書をするでもなく独り静かに呑まれていて,静寂に包まれています。壁にはどうしてだかキューブリックの「時計じかけのオレンジ」のポスターが数枚貼られていて,ちょっと気になって店主に伺うことも考えましたが静寂を破るのに気が引け静かに2杯ばかりいただき店を後にしたのでした。 さて,引き上げるかと駅に向かっていくと見逃していた「立呑み 俺のshotaro 庄太郎」を見掛けてしまいました。目にした以上は寄らぬわけにはいきません。もともとは「串焼37」というお店だったようで,その後に居抜きで入居し開店後まださほどの歳月は経ていないようです。店名も「俺の……」となっていたり,「shotaro」とアルファベットを織り交ぜていたりと軽めな命名ですが,店内は以前の様子を継承しているのでしょう,広いカウンターが見晴らしが利いて,かなり入っている客たちのいろんな酔っ払い方を楽しく眺めつつのんびり過ごします。女性独りで切り盛りしていて,これほどのキャパシティを対応するのはなかなかのやり手のようです。ぼくの注文もあっという間に届けられました。くつろぎ切って過ごしていると隣に立つ,お調子者風の若者が親しげに語りかけてきます。あまりにも軽い態度なのでちょっと警戒感を強めますが,どうやら本当に能天気な若者だったようです。地元でよく呑んでいるらしくて,近くにいい立呑み屋がもう一軒あるのでぜひ行きましょうよとしきりに誘うので,ついつい話に乗っかってさらにハシゴすることになったのでした。 駅を背にして数百メートル,やって来たのは「立呑処 酔舎 本店 」です。ここも「庄太郎」同様にかなりのオオバコです。歩いている最中もお調子者の大林洋風のおにいちゃんのお喋りはやむことがありません。なんとも陽気な奴だなあなんて思いながら,こちらもなんだか愉快になっています。彼にとってはこちらこそ行きつけのようで店の方ともご機嫌に会話しています。さすがに長く店を続けているだけあって,「庄太郎」よりも常連さんが店を占めています。ほとんど身動きするのもやっとのような混雑で,でもそれが不快に感じられぬほどの心地よさ。しばし耳元でしゃべり続けるお兄ちゃんの矢継ぎ早のお喋りも耳に入らぬまま,惚れ惚れしつつウーロンハイを傾けます。しばしぼんやりした後,突如はっと気づきます。そういえば財布がほぼ空っぽなんでした。しかもSUICAのチャージもほぼ残額がゼロに近くなりました。これはこれ以上呑み続けるわけにはいきません。お兄ちゃんが友人を呼んだからもう少しゆっくりしていけばと言うのですが,その誘いを断ち切って帰宅することにしたのでした。 とまあ南武線の小旅行,思った以上に収穫があったわけですが,今回歩いたのは駅間距離がわずか10Kmほど歩いただけですし,駅数も8駅,残りはまだ23Kmもありますし,駅数も残り17駅とまだ1/3しか歩き通せていません。この先もまだまだ魅力的な町がありそうです。次回が今から楽しみです。
2014/04/18
コメント(0)
さて,すっかり存在感をなくしているA氏ですがまだまだ一緒に行動しています。実際おっさん二人で一日行動を共にしてあんまり親しげにしているのも見た目にはよろしくないものですし,お喋りなぼくでもそれほど盛り上げるほどの話題もないのでした。それに,A氏はどちらかというと寡黙なほうで,この日交わした会話も実際のところあまり印象にないのでした。まあぼくもしょうもないことばかり喋っているので,どっちもどっちですけど。いずれにせよさすがに夜も更けてきてはさらに会話もなくなりつつあります。そんな状況でもまだ次の駅を目指すのでした。 辿り着いたのは,尻手駅です。この日通過した駅でもとりわけ寂しいうらびれた駅前風景ですが,それなのにもっとも惹かれたのが尻手駅名のはやはりこの駅前が場末感をもっとも漂わせているからでしょうか。そんな駅の改札を出て真ん前にあるのが「新川屋酒店」です。酒屋さんの店舗の脇にちゃんと立飲みコーナーを設けているのがすばらしい。大阪ではよく見掛けるスタイルでありますが,都内でここまでしっかりと立ち呑み屋然とした構えで営業しているのはあまり見掛けません。都内の角打ちと言えば店舗と地続きの片隅で―実際は多くが店舗の真っただ中にビールケースが置かれているだけだったりすることも多い―,酒屋さんそのまんまの環境の中で呑むということが非常に多いケースですが,ここはしっかりと立ち呑み屋になっているのでした。当然,こうした店なので乾き物に缶詰しかないなんてことはなくて,手造りの肴も豊富に用意されています。頼んだぬか漬けはよく使ってるよとのご主人の言葉をあまり気にもせず注文してみたら,これが恐ろしく酸っぱい,ではなくてしょっぱいのでした。いや~,ぼくも東北で何年も生活してどえらくしょっぺえ漬物やら干物なんかを食べてきましたが,このぬか漬けのしょっぱさは飛びぬけていました。ここは日本酒といきたいところですが,せっかく復活した体調を壊してはどうにもならぬのでウーロンハイで我慢します。A氏はこのしょっぱさには耐えられなかったようで,1枚手を付けただけ。これはお茶漬けなんかに入れればおいしくいただけそうです。ともかくこれだけのいい雰囲気なのでお客さんも多く,大満足のお店でした。 ここで突如A氏がギブアップ宣言。ぼくはまだ1,2軒は巡りたいので駅の裏手の呑み屋街に写ります。よさそうなお店が並びますが,スナックっぽい店も多いので無難でかつ渋い佇まいの「一平」にお邪魔することにしました。カウンター席とテーブル席のごくありきたりの造りのお店ですが,年季を積んだ味わいがしっかりと感じ取れます。オヤジさんとその奥さんらしき方も気軽にしゃべりかけるというタイプではありませんがほんのり暖かい雰囲気です。ほとんどの席が塞がっています。カウンター席は独り客ばかりですが,遅れて入ったぼくはその輪に入り込むことなく黙々と呑むことにしました。お通しのまぐろの山掛けに焼鳥がなかなかけっこうな味です。相変わらずのウーロンハイをちびりちびり呑むこの日初めての孤独でありながらまったく寂しさを感じない満ち足りた時間を過ごすことができました。
2014/04/17
コメント(0)
武蔵新城駅から鹿島田駅まではわずか5駅,6km程度です。土曜日の夕暮れ時の南武線は閑散としているものと思い込んでいましたが,思った以上に混雑しています。武蔵小杉駅でその多くは下車しますが,入れ替わりに川崎駅に向かうと思われる新たな客でまたもや車内は一杯になります。武蔵新城駅では胃腸の具合がよくなくていつものようには気分よく酒が呑めなかったのですが,鹿島田駅に着いてもやはり調子は上がって来ません。それでもわざわざ鹿島田駅で下車したのは日中通りがかった鹿島田駅そばの古い酒場らしい酒場と懐かしい呑み屋街らしい呑み屋街に立ち寄るためです。 ここに来ておかねばいつまたやって来れるかという悲壮な心持で訪れたのは「みやこ鳥」でした。店先には焼台があって,いつもならもつ焼が放つ芳しい香りと煙に恍惚となってしまうところですが,胃もたれがそうなることを許してはくれません。それでもボロな店構えに我慢できずに入店します。カウンターのみ12席ほど,2名の先客があります。店内も期待に違わぬいい枯れ具合です。手前のカウンターが人気があるようなので,自然に奥の席に誘われます。店内もばっちり眺められ,表を通行する人々も望める絶好のポジションです。ウーロンハイにもつ焼を注文して,一息つきます。落ち着いてみるとなんだかかぐわしいというかはっきり言うと小便臭い匂いがむんむんと充満しています。もっとも換気の悪い位置だったようです。これはちょっとした消臭剤程度では消し去ることのできない強烈な異臭です。なるほど常連のおっさんたちが手前の席を好むわけです。雰囲気は抜群でもつ焼もなかなかでしたが,くつろぐにはやや難ありでした。たまらずひとしりき呑み食いすると店を後にしたのでした。 店を出ると空気のおいしさに一安心。あまりのさわやかさに幸か不幸か胃腸のもたれもどこかに吹っ飛んでしまったようです。新鮮な空気は二日酔いの朝の一杯の水と同じく玉露どころか酒にも勝るものだと感じたものでした。 ようやく気分が盛り上がって来たので,こちらもどうしても訪れてみたかったマーケット風の呑み屋街に行ってみることにしました。駅の向こう側は打って変わって再開発で巨大ビル建設ラッシュになっていますが,わずかではありますがヤミ市を思わせる一画があって,昼に見掛けた際は思わず興奮してしまって,これは何があっても夜の景色も見ておかねばと思っていたのでした。ごくごく小さな建物で店舗は5,6軒程度が軒を連ねる程度のものですが,若い店主がやっている店が多い中,店名を見る限りではもっとも若い人のお店のような「夢中」という表通りの店にお邪魔することにしました。ぎゅうぎゅうに詰め込めば50名以上は軽く収容できそうな広いお店ですが,先客は2名だけ。外観に違わぬバラック風の安普請のお店で堪らなくいい雰囲気。肴のメニューも豊富で数ある品々に目を奪われます。胃腸の具合は回復したもののより快方に向かうようウコン茶ハイを頼むことにしました。これがなんともすごい効き目で,さらに激しく快調になったのでした。それが吉と出るか凶と出るかは次回以降のお話となります。
2014/04/16
コメント(0)
4時を過ぎて、ようやく呑みの気分が高まってきました。「とり吉」を出たわれわれは再び武蔵新城の商店街をぶらつき始めます。すると歩き出してわずか数歩、焼鳥を焼いているらしき芳しい香りと煙が漂ってきます。脇道の細い路地に数軒の居酒屋があり、その向かいがその芳しさの発生源のようです。店先ではベビーカーを押すお兄さんが、猛烈な勢いで焼鳥を摘まんでいます。もしかするとテイクアウトのお店ですが、缶ビール位はあるんじゃないかとふらふらと近寄りますが、このお兄さんはあくまでも焼鳥だけを猛烈に摂取していたのでした。酒もなしで焼鳥を5本も6本も夕食前に食べるなんてまったくまぎらわしい奴だと腹の中で八つ当たりしてみたり。ふと振り返ると実際とは異なる袖看板の掲げられたお店が何やら誘惑的な張り紙を貼り出しています。 この店は「きふくや」というお店で写真ではまったく別のお店の看板ばかり目立ちますが、中華料理店のお隣の見るからに小さなお店。張り紙にはなんと16時から19時まで酒1杯と肴2品で500円とあります。これは随分と太っ腹なサービスです。店に入るとカウンター席がわずか6席ばかりのホントに狭いお店でした。以前はスナックだったのでしょうか、黒い合皮張りの開店スツールが居酒屋としては違和感を感じます。当然お得なセットメニューを注文します。生ビールでいいですかにはそれでいいですと答えると、これがまさしくちゃんとしたビールなのには当たり前のこととはいえうれしくなります。店内のメニューの片隅にお通し300円とあるので、肴2品以外にお通しが出るんだろうなと思っていると案の定、ブロッコリーとベーコンのにんにくソテーが出されます。うんなかなかおいしいしこれで300円なら止むをえまい、続いて出された赤魚の粕漬けも立派なもので、あと1品は何かと身構えると、これで500円のセットが出ましたとのお言葉。いや~、確かにこれは大変にお得でありました。ところで店の奥の壁に新聞の切り抜きと写真があって、その記事によると「きふくや」はもともとは昭和12年創業のお菓子屋さんだったらしく、写真は開店時にチンドン屋さんが店先で開店を宣伝する様子を撮影したもののようでした。詳しいお話を聞きたかったのですが、歩きすぎでぐったりしてしまって、お喋りする余力がありませんでした。またの機会の宿題とします。 せっかく武蔵新城に来たので、酒場放浪記で見た「居酒屋 生国」に行ってみることにしました。店の前に着くとまだ開店前。通りがかりの「とりふく」なる店の雰囲気が抜群に渋かったので、引き返してみるといつの間にか縄暖簾が下がっています。これはお邪魔しないわけには行かぬといそいそと引き戸を開けますが,まだ準備中。開店時に暖簾を下げるというルールは採用されていないようです。 そうなってはひとまずは「生国」にお邪魔するしかなさそうです。ちょうど開店時間になりました。細長いカウンターだけの店内です。あまり長居するつもりもないので,入ってすぐの席に腰を下ろします。先ほどからなんだか胃腸の具合がよろしくありません。歩きくたびれて内臓も疲弊してしまったようです。お通しのホタルイカの煮付けさえもが胃の負担となります。トマトと串焼きを数本だけ注文。酒は早々にウーロンハイに切り替えます。それにしても静かな店内です。店の方も職人気質なのか無愛想な印象です。しばらくしてご夫婦連れがやって来ましたが,それでも店が活気に包まれることはありません。妙な緊張感に覆われたのは開店早々で忙しかったのであろう,それに胃腸が重いことも多少なりとも影響していたのかもしれません。体調の悪い日に一見の店にお邪魔するのは控えた方が無難だったかもしれません。
2014/04/15
コメント(0)
南武線は川崎駅と立川駅までの35.5Km程の短い区間を結ぶJRの路線です。武蔵野線と府中本町駅で山手線の周囲をとりまくように接続しているので、うっかりすると府中本町駅から立川駅へと伸びていることを知らない方も多そうです。ともあれぼくの行動範囲にとっては南武線はめったなことでは利用する圏内になく、まったく慣れ親しむことのなかった路線の一つです。さて、どうして南武線を散歩してみることになったかと言うと、この日行動を共にすることになったいつものA氏と候補地をいくつか挙げていくうちに、A氏が珍しく強く南武線を希望したからという理由で、どうして南武線?という疑問にはさほどお答えできていないのですが、まあこちらとて興味があることには変わりがないので喜んで出向くことにしました。池袋駅からは湘南新宿ラインに乗車して武蔵小杉駅にて乗り換え、そうか、武蔵小杉も南武線の沿線上の駅だったのかと今更ながら思うほどに縁のない路線と言うことでしょうが、案外苦も無く南武線に乗り換えられたのでした。一度川崎駅に向かい、南武線の下りホームにて待合せ。川崎駅からお隣の尻手駅付近まではつい最近行ったばかりだったので、折り返して尻手駅にて下車します。 尻手駅近くまでは来たことがあるものの駅周辺にはまるで地縁がありません。あまり冴えない感じの商店があるばかりでしたが、よくよく観察するとなかなか古い面白そうな店があるのでした。角打ちらしき店もあります。駅の反対に向かうと枯れた風情漂う侘しげな飲食店街があります。これはいいですねえ。そのすぐそばには「尾原商店」というお肉屋さんがあって、夜の時間帯には串焼で缶ビールと言う立呑みもできるようになっているようです。これは夜になったら引き返して来るしかないなと後ろ髪を引かれつつ、次なる駅に向けて歩き出したのでした。 矢向駅までは住宅街となっており、やがて案外店舗数もある商店街が見えてきたときにはちょっとした喜びさえ感じます。商店街を行ったり来たりしながら、ぶらぶら歩いていると喫茶店篇で紹介した喫茶店「bon」を見つけました。そのお隣の中華料理店がなかなか良い雰囲気、店先に置かれた土曜日はラーメン200円という驚きの黒板を見つけてしまったので、ここで昼食を摂ることにします。「えびの飯店」です。店内に入るとちょっと脂ぎって、薄ら汚れも隠さない渋いお店です。実に豊富な短冊メニューを眺めるとどう見ても酒の肴であろう品の数々に目移りします。中華料理店だからと言って餃子やシュウマイではなくあくまでも日本の居酒屋メニューであるのがうれしいです。ゴーヤチャンプルーといかげそ揚げにビールを注文。お通しにこんにゃくの煮付けときぬかつぎをサービスしてくれます。こうしたちょっとしたものってうれしいものです。肴も見てくれはとてもいいとは思えぬのですが、うま味調味料の絶大なる効果を隠しもしないジャンクな味わいは酒の肴にぴったんこです。しかも量もたっぷりで200円のラーメンまではとても辿り着けそうにないほどです。ここは中華料理店などではなくまぎれもない居酒屋そのものなのでした。 満腹の腹を抱えてさらに歩き続けます。鹿島田駅近くではそのボロさ加減が魅力的な「みやこ鳥」を見掛け、さらに南武線の踏切を越えた先にマーケット跡のような呑み屋が軒を連ねたバラック風建物があり、鹿島田駅にも引き返さねばと語り合うのでした。平間駅と向河原駅にはさほど魅力を感じず、武蔵小杉駅も何度も来ているので素通り、武蔵中原駅にはあまりにも再開発されつくされた様にうんざりします。すっかりくたびれてしまいますが、なんとか武蔵新城に辿り着いた時はさすがにしばらく喫茶店の席に着くと黙り込んでしまったのでした。尻手駅から武蔵新城駅まで路線距離でも9Km近く、実際はそうとう迂回・寄り道・回り道をしているので少なくとも12,3Kmは歩いたのではないでしょうか。さほどの距離ではありませんが、二日酔いと疲労が溜まっていたので一層くたびれ方に拍車が掛かったのかもしれません。喫茶店で一憩後に商店街を散歩していると、4時前ですでに開店しているお店があったので、お邪魔してみることにしました。 この日、本格的な呑み始めの店になったのは「新城仲通り中央酒場 とり吉」というお店でした。店先の張り紙に立呑み席であれば最初の1杯が100円で肴も割引があるとのことです。当然店に入ってすぐの立呑みコーナーで呑み始めることにしました。この割引がなければちょっと高めの価格設定のように思われますが、奥の椅子席にもすでにお客さんが入っています。ここ1軒で腰を据えて呑もうということなのでしょうか。財布を気にすることなく呑めるとは羨ましい限り。はじめの1杯にはハイサワーを選びました。ハイサワー系とコダマ系のひととおりの割物が用意されていて、そこそこ店の方が研究熱心ということかもしれません。それにしても立呑みでお通しとはなんとも冴えません。冷奴になめたけが掛かっているもので、まあこれはこれで悪くはないのでしょうが、立呑みには不向きな品という気がします。串焼は値段の割には希少な部位も揃っていて、やや時間が掛かるのが難点ですが、味もサイズもお得感があるように思います。土曜日は昼からやってるようなので、どうしても昼間から居酒屋で呑みたいのだという時には使えそうです。
2014/04/14
コメント(0)
南武線の尻手駅を振り出しに武蔵新城駅まで歩き通した際に出逢った喫茶店について本日は報告します。旅の詳細をつらつらと綴るのは日を改めることとして、取り急ぎ昨日お邪魔した喫茶店で印象に残ったお店と見掛けたものの入れなかった喫茶店の外観写真などを簡単に紹介します。 尻手駅周辺には喫茶店は見当たらず、矢向駅に向かいます。ここでは早速、事前の調査にはなかった「珈琲専門店 しらい」に出逢えました。シックで品の良い正統派の喫茶店でした。装飾は控えめながら気持ちの良い空間設計がなされています。店の奥の団体席が1段高くなっているのがちょっと素敵でした。店の女性店主も丁寧な品のいい方でした。お勘定の際、マッチをいただきましたが、この起債によるとこの矢向店以外に入江町店があったようですが、サインペンで線が引かれすでに閉店しているようです。 駅を背に多摩川に向かって歩いていくと「coffee & pizza bon」がありました。お腹の具合がいまひとつなのでパス。「エミール」という上品なお店もありました。多摩川の河川敷までもうすぐという辺りに唐突に商店街が出現。この辺りはもう鹿島田駅が最寄りとなりそうです。スナック色の濃い「ユース」や「ふれあい」なんていう喫茶店もありますが、後者はもしかすると閉店してしまったのでしょうか。 鹿島田駅に向かっていくと「カフェテラス ミック」があります。外観が綺麗でまさにカフェテラスといったしゃれたムードですが、店内はぐっとシックで、けっこうな年季のあるお店のように感じられました。入り口付近は整然としたシンプルな席の配置となっています。窓からの採光も心地よく、シックでありながら暗くなり過ぎないのがよいです。ユニークなのが奥のドーム状の場所がサロンの一室のように独立した造りとなっていて、ここだけは窓からの光も届かず抑えた照明で照らされた隠し部屋のようなとても落ち着いた雰囲気で惹かれます。 駅を間もなくした商店街に「Coffee らんぶる」があります。こちらはガラス戸越しに店内が丸見えなのがもったいない。扉を開ける際のドキドキ感が削がれてしまっています。それでもゴブラン織りの豪奢なソファが印象的なお店です。 踏切を渡り南武線と横須賀線とに挟まれた地帯となり、ここから武蔵小杉駅にかけては再開発が驚くべき勢いで進んでいるようで、巨大ビルがそびえ、また建設中のものもたくさん見かけました。そんな場所でもまだかつてスナック街であったらしき店舗のいくつかが残されていて、「伊豆高原」はなんてことのないカフェのようですが、ガラス戸に貼られたコーヒーの文字は年季を感じさせます。地元の常連で大層賑わっていました。また、スナック喫茶とある「琴」もまた昼は喫茶店、夜はスナックという二足のわらじを履いているようです。 平間駅には「coffee shop PicO」というお店がありました。店内はごく平凡でしたが、店先でタバコを販売するスタイルが昭和の頃に典型なスタイルとして貴重に思われます。 向河原駅のそばに「自家焙煎珈琲店 fu's Coffee」があります。蔦の絡んだ外観は魅力がありますが、店内はいたって普通。豆の持ち帰りがメインのお店はこういうパターンが多いようです。駅のそばの「Cafe's むかいがわら」はいかにも小奇麗なお店なのでスルーします。武蔵小杉駅は最近何度か訪れたのでこちらもスルー、武蔵中原駅はチェーンのコーヒーショップばかりで歩くのに疲労を感じ始めていたので本当は休憩を入れたいところでしたが、もうひと踏ん張り、武蔵新城駅まで歩くことにしました。 武蔵新城駅は初めて訪れましたが、駅の南北に商店街が広がっていて、まるで面白みのない武蔵中原駅周辺とは一転、大変魅力にあふれた駅前風景が広がっています。そろそろ夕方の時間帯に差し掛かっているので居酒屋タイムを迎えるしばしの間、商店街にある喫茶店にお邪魔することにしました。「軽食・喫茶 カフェテラス V(ヴィ)」は商店街を見下ろせる絶好のポジションにあるオオバコの喫茶店です。シンプルな装飾ではありますが、どこか懐かしさを感じさせる心躍るような喫茶店でした。「珈琲店 男爵」も商店街の2階にあるお店、シックな家具が配置されています。北側の商店街の端っこにはチモトコーヒーの看板が楽しい「すなどけい」があります。でももっとも気になったのがTEAROOとMが欠落したレンガ造りの一軒家のお店「ローラン」で、外から店内を覗き込むとなかなか正統派の喫茶空間が残されているようですが、置き看板に稚拙な文字で「カラオケ ろーらん」と記されているのを見てしまうと気分が一気に萎えてしまいます。 といったわけで駆け足で南武線の川崎駅寄りの駅周辺喫茶事情を眺めてきましたが、武蔵小杉より東側にはまだまだ古い喫茶店が隠されていそうに思われました。次回からはいよいよ居酒屋巡りを開始することになります。
2014/04/13
コメント(0)
京急大師線の小旅行もようやくこれで最終回。先般「吉田類の酒場放浪記」で再放送されたお店にお邪魔したのでした。初詣の参拝者数第3位の川崎大師だけあって,正月早々ほぼすべての商店が営業をしています。しかも思ってもみなかったことですが,普段は夜のみの営業である居酒屋さんもことごとく開店しています。 というわけでありがたいことに夜まで待たずとも「やきとり 篭屋」に入ることができました。付近の居酒屋は軒先で焼鳥なんかを販売していて賑やかですが,こちらは暖簾が下がって,店内から明かりが漏れておりやっているのは間違いなさそうですがひっそりと静まり返っています。引き戸を開けて入るとちょうど1組がお勘定をしています。手前のテーブル席が空いたようです。奥の座敷はテーブルが4卓ありますが,これは塞がっています。カウンターは4席だけで腰を据えて呑む構えのようなので独りでテーブル席を独占する形になってしまいました。牛蒡と蓮根,人参のきんぴらともつ焼でのんびりと熱燗をいただきます。しばらくするとぼくと同様独り客が入ってこられたので,相席どうぞと声を掛けると自然と会話が始まります。話題はこの日の早朝に発生した有楽町駅前の火災のこと。交通機関が混乱したため,お互い面倒な思いをしてやって来たことなどに及ぶと,カウンター席の方達も口々にその話題で盛り上がり,ひと時の連帯感を楽しんだのでした。 東門前駅そばの「COFFEE みどり」で待つM氏はすっかり気に入ったようで,もうしばらく呑んでいても大丈夫そうです。しからばもう一軒,そばにある「とり石」という焼鳥屋さんにお邪魔することにしました。店頭の焼台で焼かれる焼鳥に人々は群がって,買ったその場でつまんでいます。ぼくは店内で1杯引っ掛けながら呑むことにします。カウンター8席,テーブル2卓だけの小さなお店で,この日の店内は女性が独りで切り盛りしています。サワーと焼鳥を注文。焼鳥は店頭で次から次へ焼かれているのであっという間に届けられます。忙しいので手元に届けられた焼鳥は発泡スチロールのお皿に乗せられています。忙しくとも店の方たちは陽気で仕事ぶりもてきぱきとしていて見ていて気持ちがいいです。カウンターの常連さんと一見さんが即席の飲み友達となって本当に幸せそうに呑んでいて見ていて心が温まります。ぼくの席のお向かいのテーブルでは家族連れがちょっとうるさいと思うほどにはしゃいでいますが,ちょうど席を立つ頃にこの息子のちっちゃいほうが,店内にいた人全員に天津甘栗を配って回って,ぼくにもお裾分けしてくれ,またまたほっこりと暖かい気分になるのでした。
2014/01/25
コメント(0)
京急線の大師線・空港線の酒場巡りが予定していたよりも長引いてしまっていますが,何とかあと2回でゴールとなりますので,今しばらくお付き合いください。 糀谷駅を後にして,京急蒲田駅を越えてしばらく進むと近頃,新橋辺りに続々と系列店を増やしているという「俺の……」の1軒に行き当たりました。もともとさほど興味があったわけではありませんが,新橋の各店は大盛況で入店もままならないとテレビの情報番組で見ていたこともあり,さらに興味の対象からは外れていました。蒲田のお店は「俺のやきとり 蒲田」と焼鳥をメインにした立飲みですが,たまたま日がよかったのか,はたまた激安店が目白押しの蒲田にあっては,日曜日の夜ということもあってかそこそこに混雑しているものの,まったく待たされることもなくすいっと入ることができそうでした。しからば1度位は立ち寄ってもよかろうということになりました。蒲田の立飲み屋としては例外的にさすがにこちらの客層は若者が目立っていて,しかも女性客も多いようです。従業員の方も若くてかわいい女性が多くて,いずれは彼女たち目当ての客たちも出没することが予想されます。酒も肴も値段的にはちょっと高くて,さすがに味はよかったのですが,オーダーから時間が掛かるのもサク呑み派には間が持たない思いです。恐らくは「俺のフレンチ」やら「俺のイタリアン」なんかの人気メニューらしき肴も扱っていて,これを目当てにするなら空いていて広い店舗を持つこちらに来るのが合理的な気がします。それにしても「俺の……」の「……」が早くも形骸化しているようでは立飲み店としての各店の個性がなくなってもったいないような気がします。 さて,新年,改めて訪れた川崎大師に続く川崎大師表参道商店街は,師走の閑散とした様子とは打って変わって,道幅一杯に人があふれて歩くのもままならないほどです。付近の居酒屋さんも,正月三が日は真昼間から店を開けているようです。前回は店を閉めていた「高木屋酒店」がうれしいことに開いているようです。普段は店内に角打ちスペースがあるのでしょうか。この日は店頭に長机を並べて清酒やどぶろくに加えて甘酒なども販売されていました。きっと普段であれば冷蔵庫から缶ビールやら缶チューハイを買って呑むスタイルでしょうが,せっかくなので,どぶろくをいただいてみることにしました。冷え込んでいたこともあって,暖を求めて甘酒を求める方たちも多く日頃の静かな商店街風景を思い浮かべる余裕もなく押し出されるようにして店を後にするしかないのでした。
2014/01/23
コメント(0)
この正月,川崎大師を再訪したことはすでに書きましたが,今回は人生から酒を捨ててしまったM氏と同行することになったので,喫茶店巡りがメインです。M氏は川崎大師ははじめてとのこと,初詣を兼ねて前回泣く泣く見過ごすことにした3軒のよさそうな喫茶店を巡ることにしました。その1軒,「フラワー」はすでに報告済みです。 1軒目は,「ティールーム 城亜」です。実は前回何度か通過した川崎大師駅の真正面にありながらも恥ずかしながら見過ごしてしまっていたお店で,今回は川崎大師駅前に直行バスでやってきたので,伏し穴だらけのぼくの目でもしっかり補足することができました。それにしても駅前一等地にあってしかもモルタル外壁の木造らしき味のある建物を見逃すなんて。角地にあるのではっきりわかりませんが,恐らく看板建築なのでしょうか。コーヒーカップが控えめに入口上部に飾られているのが可愛いです。店内のインテリアはシックでいい感じですが,初詣客で盛況なので,かなり雑然としていたため存分に観察することは叶いませんでしたが,レースのカーテンやキュートな形状のペンダントライトに落ち着いた皮張りの木製チェアと典型的な王道の純喫茶の装いです。窓越しに初詣客たちの雑踏を眺めるのは楽しいひと時です。いつか客足もまばらな際に訪れてゆっくりと過ごしてみたくなりました。 「コーヒー&軽食 Linden(りんでん)」は,駅前のごりやく通りをしばらく進んだ場所にあります。レンガ壁の上部にCOFFE &SNACKとあります。店の前にはキリンラガー樽生の立て看板があって,これは喫茶というよりもむしろスナック色が強いお店かもしれぬと恐る恐る店に入ると幸いにも予想以上の純喫茶でほっとするとともに店内風景に見入ってしまいます。白いソファが整然と並ぶコンパクトなお店で、シックな内装はまぎれもない純喫茶のそれです。昭和44年と歴史をそのままにとどめている空間は貴重なものに感じられます。軽食とありますが王道のナポリタンをはじめとした豊富な食事メニューが魅力。次回はお腹を空かせて訪れたいものです。 このすぐそばにも1976年?創業という「ムーンライズ」というちょっとよさそうな喫茶店がありましたが次回のお楽しみにしておきます。 ところで,前回歩いた際に川崎大師駅と浜川崎駅の中間,コリアンタウンのそばに「Cafe De ファシル」がありました。今回は見合わせましたがいつか訪れる機会はあるのでしょうが。なんといっても遠いですから。
2014/01/19
コメント(0)
川崎大師駅そばの立飲み屋を後にして商店街に寄り添ってどんどん南下します。しばらく歩いて,商店街が途切れたと思ってもまたしばらく住宅街を歩くと次なる商店街が現れるのです。それにしてもこの界隈にはどれほどの商店街があるのだろうと調べてみたら,今回歩き回った範囲内だけでも次の商店街があったようです。【川崎市商店街連合会】川崎大師表参道商業(協)大師駅前商栄会大師本通り商店会京急東門前駅大師銀座会川崎市東門前駅通り商店街(振)大師出来野商店会伊勢町本通り商店会川中島共栄会【田島商店街連合会】大島本通り商店会桜本商店街大島市場商友会大島商興会浜町商店会鋼管通り商栄会大島デパート商店会 と言ってもすべてが独立しているわけではなく,途切れることなく繋がっているもののありますが,それにしても随分充実しています。初詣に川崎大師に行った際は路線バスで向かったのですが,車道からではほとんど気づかなかったかもしれません。ともかく1Km程南下したこの辺りには川本三郎の文章では沖縄タウンがあるということでしたが,探せど見当たりません。確かに沖縄の方らしき姓の表札が掛かっていたり,沖縄料理らしき商店もちらほらとはありますが,沖縄タウンというほどではないようです。するとなにやら人がたむろしている酒屋さんを見つけました。当然これは角打ちなんでしょうね。早速立ち寄ることにしました。 看板に「(有)丸久 三島商店」とあります。この角打ちの存在はまるで知りませんでした。寒い中,オヤジたちは明るい店の外にはみ出して呑んでいます。冷蔵庫から自分で飲物を取り出すのかと思ったら,ここで呑むなら店の奥が空いてるから入ってと店の方に声を掛けられます。しっかりと角打ちスペース独立式のお店でした。細長い洞穴のように薄暗いスペースにはなぜだか客はおらず,常連たちはもっぱら店からはみ出して仲間たちと語らうのを好むようです。乾き物に缶詰に加えて,魚肉ソーセージなども豊富にあります。ゆで卵のようなちょっと手を掛けたものがあるだけでちょっとうれしい気分になれます。立飲みスペースの壁には清酒黄桜の清水崑が描くかっぱのポスターがびっしりと貼られていて,これを眺められるのも楽しいことです。よく見るとこのポスターの女のかっぱのお尻やおっぱいの箇所に何やら細かい文字で落書きがされていますが,なんのことやらさっぱりわかりませんでした。ともあれ,この角打ちはオヤジたちの社交場としての機能を立派に果たしているようでした。 さらに南に下り,うろうろしていると韓国料理店や焼肉屋さんが数店舗固まってある地域に辿り着きました。ここがコリアンタウンと呼ばれている場所なんでしょうか。在日韓国人会館(?)なるビルもあります。そんな一体と道路を挟んだところにやはり角打ちをやっていそうなムードがぷんぷんにおい立つ酒屋さんがありました。「豊田屋酒店」です。なんだか以前見たことのあるお店だなあと思ったのですが,随分前にJR南武線と鶴見線が合流する浜川崎駅を中心に歩いた際に立ち寄っていたようです。午後3時からの営業開始ということでまだ時間があったので,今回は見合わせることにしました。 せっかくなのでもう1軒位は川崎の角打ち行っておきたいので,以前川崎駅周辺の喫茶店巡りをした際に見掛けたものの,同行者が酒嫌いという不幸に酔って立ち寄れなかったお店を目指すことにしました。その酒屋の名は「千里屋酒店」と言って,記憶では川崎競馬場の駅側にあって,店の向かいが学校だったはずです。それだけの記憶があるのに探せど見つからない。30分近くうろうろしてようやく見つけた時は心底ほっとしたものです。やはり記憶通り小学校の真ん前にありました。店はガラス張りで店内は丸見え,ちょうど学校がやってる朝から夕方にかけた時間帯に営業しているのですが,ここで呑む大人たちは小学生にどのように見られているのでしょうか。まあ,そんな小学生の軽蔑含みの視線などどこ吹く風,古いカウンターに手をついて体重を預けるのがぼくなりの角打ちや立飲み屋でのリラックスポーズです。こちらのお店,角打ちオンリーで酒屋さんとしての営業はしていないようです。立地的にお客さんのほとんどは競馬帰り。交わされる話題はもちろん競馬の話ばかり。競馬にはまるで興味のないわれわれ―まったく登場しませんがA氏も一緒です―(かつては嫌いじゃなかったのですけど)は,もっぱら店内に飾られた古い玩具類に目が行ってしまいます。乾き物,缶詰はありますが,調理されたものはまるでなくおもちゃに囲まれていると正しく大人の駄菓子屋といった風情。見どころの多い愉快な角打ちでした。
2014/01/17
コメント(0)
喫茶編ですでに詳述しましたが,京急大師線の終着駅・小島新田駅を振り出しに大師出来野商店街を進みます。やがてまさにその一角を表現するのにこれ以上相応しい名付けはないであろう昭和マーケットなる八百屋などの商店の寄り集まった懐かしの風景が現れます。人の往来もまばらな商店街ですが未だに現役で店を開いているのは,このマーケットをなくてはならないと感じている方がまだおられるのでしょう。世の中には大型スーパーが増えていますが,自動車を持たない人たちにとってはこうした店は基調に違いありません。 そんな通りに「きくや」なるお食事処がありまして,休日の昼間ですがうれしいことに営業しています。朝から呑まず食わずなので迷うことなく立ち寄ることにします。店頭の欄間看板はオレンジ色も鮮やかで,紺暖簾も下ろしたてのようです。しかし店内は使い込まれたカウンターに丸椅子で町の雰囲気と違和感なく受け入れられます。さて,ホワイトボードには律儀に枠線の引かれた単品メニューが記載されています。厚揚げの麻婆豆腐なんていうちょっと変わった品もありますが,ほとんどは大衆食堂では定番の玉子焼きなどです。静寂の中,われわれも声を潜めがちにゆったりと呑んでいると,突然扉が開かれてギョッとします。入って来たのはまだ20歳に満たないような金髪の娘さんで,こんなお店に若い娘さんとは珍しいことだなあと思わず好奇の視線を向けてしまいますが,店の方の家族のようです。この彼女がいつか「きくや」の後を継ぐことはあるのだろうかと想像は膨らみます。 川崎大師をさらりと経由して,川崎大師駅に続く大師駅前商栄会を進むと川本三郎も立ち寄ったという「高木屋酒店」がありますが,この日はあいにくのお休み。川崎は随分数は減ったということですが,とは言ってもまだまだ角打ちが多く残されているようです。酒場放浪記で放映された「やきとり 篭屋」も当然ながらまだ開店前です。まだ午前中で時間もたっぷりあるので,川崎大師駅から南に向かっても商店街を歩いてみることにしました。数軒のよさそうな喫茶店がありますが,この日は通過,次回のお楽しみにします。が,こんな時間からやっている立飲み屋を見てしまっては避けて通るわけにはいきません。 「たちのみ家 大福」というお店です。立飲み屋というよりは,これといって変哲のないごくありふれた居酒屋のようなお店です。店内に入ると案の定,椅子が置かれていました。ただしテーブルがビールケースを積み上げたもので,カウンターも高めなので,かつて居酒屋だった店に居抜で入って立飲みをやってみたけれど町に馴染まず座り呑みの店に切り替えたといったところでしょうか。まださすがに時間も早いので先客は1名のみ,それでもホッピーの外を追加しているので,けっこうな時間を過ごしているようです。それにしてもこのお店,オヤジさん独りでやっているにも関わらず,肴の種類が豊富,特に魚介系も充実しており,いただいたアンキモは手造りらしく量もたっぷりで満足度が高いものでした。きっと夜になると多くのお客さんで賑わうんだろうと思わせられるよいお店でした。
2014/01/15
コメント(0)
川本三郎に『我もまた渚を枕 東京近郊ひとり旅』という著作があります。もともと映画評論家としてこの著者に馴染みがあります。といっても映画評論家としては,まったくぼくの琴線に触れることなくよい読者とは言えませんでしたが,最初の著作として刊行された『朝日のようにさわやかに 映画ランダム・ノート』の1部に,地方の映画館を巡るという1章があってこれは愛読したものです。さらに著者には何冊かの紀行本があって,特に『私の東京町歩き』などの東京都内の町歩きをテーマにしたものが知られていますが,むしろ『日本すみずみ紀行』などの地方の町ともいえない場所を綴ったものが面白く,興味を掻き立てられます。先般たまたま古書店で未読であった『我もまた渚を枕』を見掛け,その1章の「京急大師線沿線、工場街を歩く『川崎』」を特に面白く読み,昨年の暮れも差し迫った頃,A氏と大師線沿線を辿ってみることにしました。 川本氏は,京急川崎駅を振り出しに、関東でも指折りの風俗街、堀之内を抜けて川崎大師を参拝、その後、南下して大衆演芸場の大島劇場にて観劇、市電通りを進み、貨物線に沿って北上しています。われわれは,それとは逆に大師線の終着駅である小島新田駅からスタートすることにしました。小島新田駅の恐らく南側の「立呑みコーナー」なる店で軽く呑んだ後、北側にある(あった)と思われるとある食堂の主人から、この町には「(略)十三世帯、二十人いるかどうかだ」と聞かされた町は田町のことなのでしょうか。かつては貨物線と並行して南に伸びる塩浜が終着だったという大師線ですが、小島新田駅には終着駅らしいもの悲しさがあります。改札前のコンビニもキオスクのようにこぢんまりとしており,おあつらえ向きに両側には小規模なうらびれた呑み屋街もあります。この呑み屋街はまだ午前中ということもあって開いていませんでしたが,近く呑みに来てみたいと思わせられる哀愁が漂っていました。 しばらく線路沿いを進むと事前の調べでは,小島新田駅~産業道路駅付近には喫茶店がないと思っていましたが,1軒「ミネルバ」というのがあり,この日はあいにく休みですが,営業はしているようです。その向かいに「岡本ベーカリー」というお店があったので立ち寄ってみることにしました。コッペパンに様々な具材を挟んだパンだけのシンプルな品揃えですが,帰宅後食べてみるとこれが滅法おいしかったのでした。少し進むと神奈川1号横羽線,一般には産業道路と呼ばれているらしき大きな道路に行き当たります。歩道橋を渡ると,ここにもひらがな表記ではありますが「いせもと」があります。これを南下するとローソン前で工員らしきおじさんたちが寒い中酒盛りをしています。さらに南に進むと大師出来野商店街という商店街がありました。この時は気付かなかったのですが,この通りに馴染みのある喫茶店が営業していたようです。「三本コーヒーショップ」です。今では店を畳んでしまわれたようなのが残念です。いつしか商店街は大師銀座会商店街となっており,東門前駅に川崎市東門前駅通り商店街になります。 この後,呑みのほうで寄り道をしたのですが,順序は入れ子となりますが今日は日曜日なのでこの日立ち寄った最初の喫茶店から報告です。ここが界隈で立ち寄った喫茶店ではもっとも好きな1軒なので本当は後回しにしたいところですが,話がややこしくなるので順番に報告します。東門前町の商店街にある「COFFEE みどり」は,橙色のテント庇にR窓が印象的な喫茶店です。外見には窮屈そうで,常連さんばかりで長居しずらいようなお店に見えますが,店内に入ると予想外に広く,店の方との距離感も十分に保たれていて大変居心地がよいのです。椅子は重厚な木製で背もたれがクロスにくり抜かれたものはたびたび見かけますが,ここのものはとりわけ優雅です。川崎大師への参拝の休憩として立ち寄るにはここが第1のおすすめ店です。 川崎大師の入口前からは大師本通り商店会となり,さらに川崎大師駅に向けて川崎大師表参道商業と商店街は切り替わりますが,この入口の2階にあるのが,「喫茶&軽食 フラワー」です。実はこの先の喫茶店めぐりは,今回の小旅行の約10日後に改めて訪れています。初回はさほど喫茶店に関心のあるわけではないA氏の意中を察して泣く泣く見過ごしたのでした。外観を見るに際に階段を上り扉を開くと広がるのはまさにスナック文化華やかしき頃のケバケバしい赤紫を基調とした店内です。喫茶店とスナックとの境界はあってなきが如しということもあり,好みの分かれるところですが,ぼくにはちょっとスナック色が強すぎるように感じられました。客は一見の客に交じり,店の方の親族やらも集っているようで,子供たちが駆け回ったり正月らしいのどかさがあります。なぜか店内の壁には多くの色紙が貼られていて渡辺健などに交じって,なぜか何枚もの色紙があったのが井森美幸でした。こちらのお店となんらかの縁があるのでしょうか。窓外には初詣客が身動きできないほどに道を埋め尽くしておりますが,ここだけは別世界のようにのんびりした空気でした。
2014/01/12
コメント(0)
長らくお付き合いいただきましたが,今回こそ三浦半島の旅の最終回になります。暦上はまだまだつい先日のことですが,急に季節が早送りされて冬のような冷え込みになったこともあって随分前のことのように感じられます。この旅をした頃はまだ半袖で十分だったのですが,コートが必要な季節に一気に移行してしまいました。 さて,さほど楽しめなかった金沢文庫を後に横須賀中央駅に引き返し,2軒をハシゴした後,懲りずにに向かったのが「酒蔵 お太幸 中央店」。横須賀中央駅前の路地にびっしりと並ぶ昼間からやってる酒場通りの一軒です。「中央酒場」と並びよく知られた酒場ですが訪れたのはこの日がはじめて。ガラス戸越しに店内はまるまる見通せるのが大衆酒場としての自信の表れでしょうか。はじめての店の扉を開くときにいつも感じるドキドキはありませんが,老若男女入り乱れての熱気の中に加われる興奮はしっかりもたらしてくれます。二重三重に切れ込んだカウンターの席と席の間隔は,このお店が営業を始めた頃の標準的な日本人の体格向けに造られているんでしょう,いささか窮屈に感じられますがこれも味のうち。「お太幸」といえばおでんという印象がありますが,こちらではチーズクラッカーやらの呑兵衛好みの軽くつまめるものも多くて気安く使い勝手良いです。従業員のおにいさんたちはちょっと乱暴な印象もありますが,こうした有象無象の客たちが空間を共有する場にあってはそれ位がちょうどいいのかもしれません。 さて,ようやく横須賀の町に満足し,帰京することにします。居住性もばっちりで足も速い京急本線に乗り,品川駅に到着です。品川ではまだまだ家に帰って来たなあという感情は湧いてきませんが,この先乗り換えたりしても自宅まで1時間は掛からないと思うと安心してもうひと呑みしたい気分です。せっかく品川に立ち寄るのだから駅港南口を出てほどなくにある品川駅港南商店街をぶらついてみることにしようかな。とA氏を誘ってみるもののもう帰るとのこと。仕方がないので独り迷路のような飲食店街を彷徨するのでした。 この界隈では,「やきとり 鳥一 本店」や「大衆酒場 鳥徳」,「もつ焼き マーちゃん」,変わったところでは夕方から立飲み屋になる「立ち食いうどんそば ふじ」なんかにお邪魔していて,道を挟んであるユニークな喫茶店「DALI(ダリ)」も大好きですが,どこも日曜日のせいか営業していないようです。他店も多くが店を閉める中,この界隈を象徴するような屋号のお店が営業していました。「居酒屋 路地裏」です。昭和22年創業とのことでこの闇市商店街ができた当初から営業していたのではないでしょうか。激辛牛すじ煮込が定番のようですが,お腹も空いておらずこの2日間不健康な生活を送ったのでサラダを頼んだところこれが大盛り,他の飲物に比べるとお得感のある日本酒のお燗にはさすがにあまり相性はよくないようです。他店がお休みが目立つこともあり客の入りは上々のようです。明日も休みということもあってみなさん旧友たちと楽しげに呑み交わしており,彼らの目にはぼくのような孤独な酒呑みはよほど寂しげに写ったのではないでしょうか。ってちょっと自意識過剰気味。 さて,1時間後に無事帰宅。たまたま手元にあった勝新太郎主演の『海軍横須賀刑務所』を帰宅後に眺めます。横須賀の風景を眺められるかと思うのですが,クライマックスの意気揚々と軍旗を掲げて行進する勝新ら荒くれ者一行たちの進むのが横須賀の埠頭辺りだった程度でした。 ところで、今回の機動力の源泉となった三浦半島2DAYきっぷの利用総額を計算してみました。【1日目】品川駅―YRP野比駅―三崎口駅=三崎港-(徒歩)-日ノ出=城ケ島=三崎口=長井=逗子駅-(徒歩)-新逗子駅―六浦駅―追浜駅―逸見駅―浦賀駅―横須賀中央駅【2日目】横須賀中央―金沢八景駅=鎌倉駅=大仏前-(徒歩)-長谷観音=鎌倉駅=緑ヶ丘入口=鎌倉駅=新逗子駅―安針塚駅―馬堀海岸駅―追浜駅-(徒歩)-金沢八景駅―金沢文庫駅―横須賀中央駅―品川駅 乗り継ぎの場合の料金のことやら細かな規定があるかのかもしれませんが,とりあえず深くは考えないことにして、1日目の合計が3,390円、2日目が3,020円となり総額6,410円を利用したようです。
2013/11/21
コメント(0)
金沢文庫駅「停車場」で呑んだ後も駅周辺を散策してみますが,日曜日のためか居酒屋はお休みが目立ち,これといった店もなさそうです。さて,これで東京に帰ったかと言えばまったくそんなことはなくて,休みでも居酒屋がやっていそうな横須賀中央駅へとまたもや引き返したのでした。万が一を期待して「銀次」に向かいますが,やはり閉まっています。無念ではありますが致し方ありません。それでは前夜も到着時にはちょうど店仕舞いをしていて,前回も気になりながらも素通りするしかなかった,有名な繁盛店に向かうことにしました。 遠目からも焼鳥のテイクアウトコーナーで立ち食いする人々の群れを確認することができる「相模屋」です。立ち食いコーナーで酒が呑めるのかは不明ですが,この夜は少なくとも呑んでる人はいないようです。左手には大量の食べ終えた串を持ち,右手は焼き上がっている串にかぶりついている姿をぐるりと店内を囲むカウンターから見やるのですが,そんなに無我夢中な様子で焼鳥だけを食べるというのがぼくには違和感があるのでした。まあ,人それぞれなので,彼らの猛烈な食べっぷりはほっておいてわれわれは優雅にチューハイなどいただきながら焼鳥をつまむことにします。焼き直しの温めるだけのものですが,確かに値段の割にはおいしく食べれます。ただし,周りの客たちの10本単位で数種類というギョッとするような消費振りにゲンナリしてしまい長居はできそうもありません。折よく夫婦連れが外で待っておられたので,この夜いた人たちの5分の1にも満たないかもしれない量でお勘定したのでした。品書:ビール大:550,酒/チューハイ:420,焼鳥:70,ビビンパ:210,冷しトマト/刻み長芋:260 続いては「市場食堂 横須賀中央店」。商店街がそれなりに古そうなので,この店も外観はそれなりに年季があるような雰囲気ですが,店内に入ると最近できたばかであるらしく小奇麗で面白味のない店であることが見て取れます。禁煙の1階が満席で2階に案内されます。広いスペースに整然とテーブルが並ぶ様子はまあ食堂っぽいっていえば食堂そのものであるといってもあながち間違いではありませんが,ぼくの求めている食堂空間とは程遠いものでありました。ともあれ三浦半島に来ているというのに海鮮料理をほぼ口にしないで帰るというのもいかがなものかと,ぼくではなくA氏の表情が物語っているのでまあ手頃に楽しめそうではあります。ここも入りがよく大人数もこなせるほどの収容力があるので休みを久しぶりにあった友人たちと大いに賑やかに盛り上がっているグループなんかも多く,そういった席には船盛りなんかが盛大に並べられて,われわれの卓上がいかにもわびしく感じられるのは否めません。一部夫婦ものやアベックなどもおりますが,いずれも大量の食べ残しをして精算しているのでそれがまたわれわれの惨めな食卓を際立ててしまいます。店選びを誤ったようです。これではもう一軒行かねばなりません。
2013/11/19
コメント(0)
六浦交差点にある「やきとり 立ち飲み 栗田屋」もまだやってないようなので,駅前に行くことにします。わずか1泊2日でありながら随分と移動と寄り道を繰り返して,ようやく三浦半島の玄関口の金沢八景駅に戻ってきました。金沢八景ではどうしても行っておきたい酒場があります。この日の朝,鎌倉駅行のバスに乗り込む前のわずかな時間を使ってその酒場の捜索をしたのですが,その時には見つけることができなかったので,まだまだ残り時間もたっぷりとあるので隈なく散策することにしました。 駅の西側は神奈川市立大学,東側の駅前には密集して商店があって,規模こそ狭いもののさまざまな業種が過不足なくギュッと押し込まれた印象です。先日長野でも訪れた「三本コーヒーショップ」(北仙台には台原店,長野県上田市の上田店,千葉県の稲毛店などがあるようです)や町場のありきたりのパン屋さんを装いながらも実はハイレベルな惣菜パンがうれしい「アオキ」などに交じって「喜八」なる酒場もあります。黄桜の黄と白の地色に黒文字で七が3つの「喜八」と記された袖看板は場末めいた酒場によく似合います。 ところで肝心の目当ての酒場はそのものずばり「木川酒場」というらしく,ネット情報によるとまさにぼくにとってのど真ん中に好みの酒場らしいのですが,やはり見当たりません。諦めて駅前に戻るとバラックめいた仕舞屋があります。よくよく目を凝らすと酒場の文字が薄らと見えました。どうやらこれだったようです。こんなに駅の目の前だとは思いもよりませんでしたが,店をたたまれたようです。この辺りも再開発の波がじわりじわりと押し寄せているようです。無念。 これといった酒場も見当たらないので金沢文庫駅に移動。駅を降りるとこちらはいくらか駅前整備がなされていて整然としつつも古そうな店もあります。上手に開発をしたんでしょうが,金沢八景駅の迷宮感に強く惹かれます。 そんな駅前にはけっこう多くの居酒屋があり,大きめの店が多い中にあって小体な造りながらつい立ち寄ってみたくなるような哀愁漂う酒場がありました。「停車場」です。心揺さぶられるいい屋号です。この店を選んだのはそれだけではありません。ワンコインセット(酒1杯+肴2品):500円という張り紙があったのが決定的でした。店に入ると着物姿の60代の上品な女性がお二人。店は開いたばかりのようで,店のご夫婦は開店準備でてんやわんや。しかも着物姿の一人がノンアルコールビールを注文したところそれが品切れ,慌てて店主が近所に買い出しに飛び出しました。まぐろ山掛けなどとても500円とは思えぬサービス,これに日本酒なんかを追加しただけで,まったくもってワンコインセットをフル活用したのですが,ご夫婦はにこやかに愛想よく見送ってくれるのでした。セット以外はそこそこのお値段ですが,このお二人の人柄に惹かれて訪れる客も多いのではないでしょうか。実際女性1名で入られた方は実家に立ち寄ったかのようにリラックスされていました。
2013/11/16
コメント(0)
またまたやって来たのは,追浜駅です。ところが狙っていた立飲み屋の開店にはさすがにまだ時間があるらしく前日は歩き損ねていた駅前通りの夏島貝塚通りというのを歩いていると「カフェモカ 阿路間」なんてちょっとよさそうな喫茶店がありますが,コーヒーより酒という気分なので今回は見送ります。 迷った挙句にお邪魔したのは渋さ際立つ典型的な駅前食堂風のお店「浜食堂」です。純日本風の定食屋然とした構えながら,実は中華料理店であるというのは古い食堂では案外よくあるパターンです。びっくりさせられるのは6卓ほどあるテーブルのすべての客が呑んでいることで,追浜の住民の呑兵衛っぷりが窺えて愉快です。ことごとくが赤ら顔のじいさんたちばかりで,女性はというと白いかっぽう着に三角巾のいかにも町の食堂のおばちゃんただひとりのみです。われわれも負けずに瓶ビールを注文して呑み始めます。この中にあってはわれわれなんぞまだまだ小僧っこであります。しばらくしてやって来たのはちょっと悪そうな若造2人組です。2人ともに健康的にチャーハンの大盛なんかを注文しています。取り出したのが揃って懐かしのエコーであります。もちろんタバコのエコーのことでこれがじいさんたちの琴線に触れてしまい若造たちはヒマを持て余すじいさんたちの格好のネタにされてしまったのでした。チャーハンを口に運びながらもじいさんの長広舌に付き合わされる若造たちの困惑っぷりが哀れでありながらも滑稽で,ぼくならチャーハンを肴に酒を呑むことにして,あわよくばじいさんに御馳走させる位の覚悟で対峙するのになとふと思ったりもするのでした。 もう1軒ほど立ち寄ってみたかったのですが,A氏からは疲労を訴える無言のオーラを感じ取っていたのでここは堪えて,喫茶店を目指すことにします。横須賀街道を金沢八景駅方面に進むと何軒かの琴線をくすぐるよさそうな食堂を見掛けますがここは我慢我慢。遠く見えているシーサイドラインに迫っていくとクルーザーなんかが停泊する平潟湾に出ます。そんなリゾート感漂うマリンビューが眺められる好立地に古いけれど可愛らしい喫茶店がありました。 昭和42年に開店したという「喫茶 オリビエ」は白壁にマリンブルーの店名ロゴが記され,円形のエントランスが洒落ています。丸窓は煙草売場となっているのも絵になります。店内はどこかしら一昔前のキャバレーのような風情も漂わせる席間にもゆとりがある広々とした空間です。設備はけっこうくたびれてかつては湾の眺望と相俟ってリゾート地のくつろぎスペースとして愛されたのでしょうが,今ではすっかり流行らないスタイルのお店となってしまったのでしょうか。お客さんの入りはあまりよくありません。ぼくのような懐古的な空間を愛する客ばかりでなく,この時代遅れではあるもののひと時のくつろぎを求めているご高齢の方もおり,まだまだ現役であり続けてもらいたいものです。
2013/11/14
コメント(0)
新逗子駅から京急に乗って向かったのは,安針塚駅です。ホント寂しいところで駅のすぐそばにスーパーマーケットとレストラン,交番に消防署なんかがあるばかりです。パッとしない通りをしばらく歩くとお弁当屋さんが見えてきました。これが安針塚駅のお楽しみスポットです。 お弁当屋さんに併設の店舗が「よっちゃん」というお店です。外観はうらびれた食堂のように見えますが,想像以上に収容力がありそうです。入口すぐのレジカウンターの先には缶ビールや缶チューハイがずらり並ぶ冷蔵庫があって,奥の壁一面には焼酎の様々なボトルがずらりと並んで壮観です。もとは酒屋さんで,後に弁当屋をはじめ,やがて弁当屋の余禄で飲み屋となった時点で酒屋の営業をやめたというところでしょうか。販売用の一升瓶以上にボトルキープの酒瓶が多数を占め,こんな何もなさそうな土地でも夜になるとかなり盛況となるようです。肴の品書きも豊富で,ナマ物も結構な品揃えです。弁当屋さんがやっているだけあって揚げ物のボリュームがすごくてお得。昼食を兼ねて一杯引っ掛けようと近所の方たちが憩っています。憩う低度を越して本気呑みのご高齢夫婦もおりました。なかなかユニークな昼酒に抜群に便利なよいお店でした。ただし,カレーライスとラーメンは,かなりお寒い内容であんまりお勧めできません。 続いては,馬堀海岸駅にて下車。ごくありふれた住宅街のように見えますが案外隠れたよいお店がある予感がします。駅前に出るとすぐに飲み屋さんらしき店舗があって,どうやらもう開店しているようです。お楽しみはキープしておいて目星を付けている喫茶店を目指すことにします。線路に沿って伸びる道を進んでいくと民家にしか見えないスナック(こちらは裏手で表通りにはちゃんとスナックらしい店舗がありました)や紅茶専門の喫茶店などがあり,さらに進むと懐かしき団地が立ち並びます。その向かいにあるのが「Coffee リバーストーン(RIVER STONE)」です。白い板壁のバンガロー風のお店で,店名のロゴが緑色で映えます。外観から想像されるようなアメリカンスタイルのお店ではなく,ぐっとシックな茶色を基調にした正統派であるのを見て取ると快く裏切られたことにうれしくなってしまうのです。突き当りとカウンターの上方にあるロフトの2箇所の2階があって,突き当りの2階はここだけは安っぽい大きめのテーブルがあって多人数での利用にもよさそうですが,見栄えが悪いのが残念。すべてのスペースで80名ほどは入れそうなほど広いのでした。しかも6,7割の席はふさがっている繁盛ぶり。休日の遅いランチを取るお客さんたちはみなさんとても楽しそう。ナポリタンやカレー,サンドイッチにピザトーストなど本当に食べられんのと思うほどのてんこ盛りです。われわれも「よっちゃん」で冴えないラーメンやカレーライスを食べてしまったのを後悔するほどに満足げな表情を浮かべています。地元民にはファミレス代わりに重宝されているらしきお店でした。 駅前に引き返すと先ほど見かけた「まいど 馬堀海岸店」という立飲み屋に向かいました。この立飲み店はチェーン展開していて浦賀や金沢文庫でも見掛けました。ご機嫌な表情を浮かべ呼び込みしているお兄さんによると開店は4時からとのこと。残念。しからばと昼から呑める町,追浜に再度向かうことにしたのでした。
2013/11/12
コメント(0)
この日の宿泊地である横須賀中央駅に彷徨った挙句にようやく到着しました。電車のある時間に投宿するわけにはいかぬとばかりに前回横須賀を旅した際にお邪魔し損ねていた酒場を訪ね歩くことにしたのでした。まずはやはり1年ほど前にひとり横須賀を訪れていたA氏が行きそびれていたという「銀次」に向かうことにしました。ぼくは幸運にも前回訪れることができましたが,土日祝は休みでチャンスがあるとすれば例外的に営業している第4土曜日ということになりますが,ぼくはたまたまこの第4土曜日に行けたようです。ここは正確には「銀次 第二酒場」ということで当然第一酒場もあったようですが,すでに閉店してしまったようです。三浦半島ではもっともさかえているはずの横須賀も多くの店が店を閉めてしまっており,暗い中を脇目も振らずに向かいましたがやはりというか閉まっています。横須賀では地元の方以外は通いにくい(平日のみの営業)酒場も多いようで酒場放浪記で紹介された「大衆酒場 興津屋」も土日祝はお休みなので今回も空振りです。 そういうことであれば,前回廻り切れなかった三崎街道を横須賀中央駅の東側を進み坂を上がったところにある商店街の中の酒場を巡ることにしました。明るいうちであれば古びた商店街を楽しむこともできるのですが,辺りは人気もなくなり一人歩きは男でも危険なほどの暗さになっていて「野鳥」の明かりが見えてきたときにはホッとしたものです。ホッとした瞬間,気が抜けてしまいこの先の記憶はかなり曖昧です。カウンターはけっこう込み合っていて,奥の小上りだかテーブルだけに空きがあってなんとな腰を落ち着けたように記憶します。焼鳥屋なので当然とりあえず焼物をオーダーしたことは覚えていますし,常連たちと何やら会話を交わしたような覚えもあるのですが,何かを語れるほどのことはありません。それでもけっこう長いことのんべんだらりんと過ごしたようなので心地のいい店だったようです。 さて,宿泊先は「サウナ&カプセルホテル サウナトーホー」です。実はこれまでの人生でカプセルホテルに泊まったことがなかったので,ちょっと楽しみだったのでした。酔っぱらった頭でもそれはうれしかったらしくて一晩を過ごす巣の写真を撮影したようですが,服を脱ぐやコロンと眠りに落ちたようです。朝は案外酒も残らず7時前には起床。起き上がってひとっ風呂浴びようと巣を後にしますが,貴重品を置く場所もなく,ホテルのルールが分からぬままにうろうろしているうちにA氏が登場。腹が減ったというので風呂にも入らずホテルを後にしたのでした。 2日目の朝はお粗末なことにマクドナルドから始まりました。といっても嫌々行ったわけではなく無性にソーセージエッグマフィンが食べたくなったので文句はないのでした。前日は夜はともかく計画をそれなりにきっちりと立てて行動したのですが,2日目は寝坊すること織り込んでいたのでほぼ無計画です。それでは昼までは鎌倉方面をぶらぶらして,午後から本格的に呑み始めることにしました。5分ほどで店を出るとまずは金沢八景駅に向かいます。金沢八景駅から鎌倉駅前までの京急バスに乗るためです。ぼくの気持ではのんびり路線バスの旅を楽しもう(乗り潰そう)という腹積もりですが,A氏はあまり乗り気ではないようです。ともあれ,金沢八景駅の周辺をあっという間に終えて路線バスに乗車しました。起伏に富んだ楽しいバスの旅は思ったよりもあっという間のことで,堪能するまでもなく鎌倉駅前に到着です。 鎌倉駅前はぞっとするほどの人出で早々に立ち去りたい気分です。大仏前行きのバスに乗り込んでみたもののやはり観光のメッカだけあって,人ごみにうんざりします。大仏見物はやめ,長谷寺に取って返します。「樹(いつき)」や「浮(ぶい)(Buoy)」もお休みなのかやっていません。季節外れの暑さにくたびれたので,またもや鎌倉駅までバスで引き返します。次の行き先としてバスのターミナルとなっていそうな逗子駅行のバスにはまだ時間があるので小町通をしばし散策。ホットケーキで有名な「イワタコーヒー」はゾッとするほどの大行列です。すっかり列になった逗子駅行のバス停にほどなくバスが来ます。緑ヶ丘入口行きとなっていますが,逗子駅の途上のバス停であろうと能天気に見切って乗り込みます。連れて行かれたのは山裾でこれはどうにも楽しくなさそうなのでそのまま鎌倉駅行となった同じバスに乗車。またもや鎌倉駅に帰還します。別なバス停からも逗子駅があるようなので,今度は慎重に行き先表示を確認してバスに乗り込みます。逗子駅で下車。一息つきたいので昨日の散策で見かけていた喫茶店に立ち寄ります。 店の前が工事中なのかシートで隠された「ホルトの木」というお店に伺いました。外観は可愛らしいところもありますが,店内は家庭的なレストランといった雰囲気。テーブルがやけに大きくて椅子との隙間が狭くかなり窮屈です。足を組むことすらままならない感じ。ママさんはつっけんどんで飲物を出すと背を向けて座り込んでしまいます。なんだかイヤ~な感じ。愛着のある方もきっといらっしゃるだろうからあまり悪しざまに言い切ってしまうのには抵抗がありますが,どうにも不快感を拭えることなく店を後にするのはホントにイヤ~なものです。
2013/11/09
コメント(0)
さて,いよいよ今回の旅のメインイベントです。逸見駅を背にJR横須賀駅方面に商店街を進むとお目当ての酒場が見えてきます。車通りの多い道路に面しているとは思っていなかったので,面喰うというわけではありませんが,少し意外の念に駆られます。開店までには少し早かったようです。かといって,結構くたびれていたので,横須賀駅まで歩くのは面倒です。しばしコンビニ前で佇んで店開きを待つことにします。 そうこうする間もなく「今長」の引き戸が開かれ女将さんの姿が見えています。どうやら一安心です―といっても心の片隅では「庚申酒場」の女将さんのように姿は店どもいつまで経っても店開きしない例も脳裏をよぎらなくはありませんが―。するとつつつとお向かいさんのとろこに歩き去り,お喋りを始めてしまいました。不安を感じ,いてもたってもいられなったので,店に向かうとこちらに気付かれたようで女将さんも店に戻ってきてくれました。よろしいですかと早速お邪魔。カウンターにやたらと巨大なテーブル席が2卓,テーブルが大きすぎて店が窮屈な印象ですが,木製の懐かしいというよりも骨董品とさえいえそうな冷蔵庫や日本酒の扁額などにわくわくします。「吉田類の酒場放浪記」に出ていたのは見覚えがあるのですが,つい最近も「おんな酒場放浪記」で紹介されていたようですがまるで記憶に残っていません。昭和初期に横須賀駅前で酒屋をとして開店し,戦後すぐに現在の場所に移転し,居酒屋をはじめたということで,店舗は当時そのままのものだということです。当時の伝票やら古いものを大事にされていて,われわれのような酒場好きには惜しみなく貴重な資料などを見せてくれます。ホッピーの景品だったというラップなど変わり種もあって見飽きることがありません。お勧めのもつ焼は格安でいながら驚くほどにハイレベル,特にシロのトロリとした旨さに驚かされます。客のリクエストに応じて,どのようにでも調理してくれるというカウンターに置かれた野菜から,ミョウガに目を付けます。ミョウガはチャンプルーにしてもらいました。この変わった食べ方はどこでいただいたのかこの時は思い出せなかったのですが,ものすごくおいしくて自宅でも何度か試作したことを記憶していたのでした。あとになってそれは藤沢の名酒場「久昇」でいただいたことを思い出しました。「久昇」ほどではないもののこちらの味もはじめて作ったとは思われぬほどのおいしさだったのでした。 すっかり堪能したのですが,まだまだ帰るわけにはいきません,終点の浦賀駅に向かいます。浦賀駅は終着駅の情緒もなく,周辺もペリー来航の土地にやって来たというような感慨は微塵とも湧いてこないような風景です。次に向かう酒場は歩くとけっこうな距離がありそうなので,またまた三浦半島2DAYきっぷを駆使することにします。浦賀駅前から暗く面白味のあまりない大きな浦賀通りという道をしばらく進みドック前という停留所が便利そうなので下車します。ホントにこんなところに酒場があるのかと思われる寂しい住宅街で下車してしばらく迷います。東福寺という立派な寺があったりするもののなかなか店にたどり着けず難渋します。メモしてきた住所を頼りにしばらく歩くと数軒の酒場が見えてきました。街灯も少ない暗い通りだったので気付かなかったのですが,浦賀港はもう目と鼻の先だったようです。ようやく見つかった「さかえや」を見つけた時にはホッとしたものです。ところがガラスの引き戸から覗く客たちの足元を見るとかなりの入りのようで入れるものやら心配になりますが,なんとか2名分席を確保することに成功しました。コの字カウンターはそれこそありとあらゆるタイプのお客さんで一杯です。夫婦連れに独り者のおっさんや若者におばちゃん,若い男女の4人組などなど,男女の隔てなく,あらゆる世代,業種の方にも支持されているようです。まあ,地元の方にとっては他の選択肢があまりないということも人気を支えているように思われます。「吉田類の酒場放浪記」で放映されたことでもほとんど影響は受けていないように思われます。昭和30年頃創業という店の雰囲気は雑然としていてまさに場末の酒場然としていて大変居心地いいのですが,客層の多様さが日頃通う場末酒場とは一線を画しています。日によって出来の良し悪しがあるとお隣の常連の公務員風のおっさんが語る牛すじ煮込は確かになかなかの美味です。ところで何のきっかけだったか,若者グループの会話に嘴を突っ込んだのは,掃き溜めに鶴といったら失礼ではありますが,およそこのような酒場で出会うとは思ってもみなかった美女と出会ったためだったとは認めたくないところです。が,まあ当然この彼女に話し掛けてしまったわけで,地元の高校時代の仲間という4名はいずれも地元が一緒でなければここで集うこともなかったのであろうなあと思われるほどにタイプが異なり,それでもこうして度々集まっていると聞くと羨ましく思うのでした。ともあれわれわれのような闖入者をも暖かく包み込んでくれる楽しい酒場でした。品書:ホッピー:400,いなだ刺身/牛すじ煮込/いか丸焼:400,自家製いかの塩辛:300 ついつい会話を楽しみすぎて呑みも進み,店を出ると酔った頭をリフレッシュするために歩くことにしました。延々歩いていると若者の一人がこれから都内まで帰宅するとのこと。そうそう,まだまだ都内には帰れる時間なんだなと思うと,このまま眠ってしまっては勿体なさすぎると気合を入れ直し,宿泊先のある横須賀中央駅にむかったのでした。
2013/11/07
コメント(0)
まだ追浜にいます。追浜は昼呑み可能な店が町の規模からは予想できなく位にあって,翌日もまた訪ねたいと考えていますが,とりあえず日曜日は休業であると分かっている酒場を尋ねておきたいと思います。 向かったのは,14時開店の優良立ち飲み店「一銭酒場 えびす」です。ビルの2階と風情とか情緒とは無縁のまったくもっての実用店ですが,その実用度はかなり高いと感じました。造りはモダンな内装でこれといって語るべきことはありませんが,注目は,肴の,とりわけ魚介類の安さは驚くべきものがあります。200円の刺身がずらりとあって,その安さに惹かれて来店する客も多いようです。実際,すぐそばで呑んでいるおっさんなどは6点盛りだか8点盛りだかよくわかりませんが,独りで大皿にこれでもかと大量かつ種類も豊富でお大臣気分でご満悦の表情を浮かべて呑んでいます。職人風のおっさん2名は年上がカウンター下の冷蔵庫から一皿づつ慎重に品定めをしながら猛烈な勢いで飯を掻き込んでいます。いやはや追浜の酒場の実力はただごとではないですね。品書:ビール大:400,酒:250,ホッピー/サワー:300,まぐろさしみ:200,枝豆/冷やっこ/塩辛/納豆/おしんこ:100 そろそろ今回の三浦半島の旅のメインイベント―といっても単に酒場放浪記に登場した酒場を訪れるというだけなのですが―のある駅に移動です。追浜駅から京急本線で3駅目の逸見駅が第一の目的地です。ちなみにこの駅は「へみ」と読むらしく,これも無知をさらしてばかりで恥ずかしいのですが,はじめて知ったのでした。 それにしても降り立った駅前を見る限りはとても居酒屋などある気配が感じられません。ところが横須賀街道に繋がる二車線道路に出るとシャッターの閉じている店舗もあるもののそれなりに商店街らしさを維持している通りに出ました。これといって覗きたくなるお店があるわけでもないのですが,雰囲気だけは悪くありません。この通りをずっと進むとJRの横須賀駅で街道を越えた辺りには巨大なタワーが見えています。お目当ての酒場は街道の手前にありますが,開店にはまだしばらく時間があるので通りの途中にある「コーヒーショップ サン」で一憩します。オーソドックスな喫茶店で,装飾などに過剰さはない分落ち着けるというメリットがあります。この先まだまだ続くはずの夜を迎えるには格好のお店でした。
2013/11/05
コメント(0)
終着駅らしい哀愁漂う新逗子駅を後に,京急逗子線に乗り込んで向かったのは2駅進んだだけの六浦駅です。まあ逗子線と言っても盲腸線に近いたっだ4駅だけの区間なのですぐ次の駅は本線の金沢八景駅となります。駅を降りると線路沿いの通りこそ,商店が立ち並ぶもののあとは住宅があるばかりです。並びの途中に脇道があってそこには六浦商店会の大きな店名入りの地図看板が掲示されています。その先には喫茶店やらの店舗が数軒ありますが,人気のない寂しい商店街です。 そんな閑散とした商店街の外れに「たちのみ 廻り道」という酒場があることをリサーチしていたので伺ってみることにしました。15時開店ということで開店まではあと10分ほど。でもこんな人っこ一人いない町でこんな真昼間に店を開けてもどうなるものでもないなあなどと期待もせずに数分待っていると,まさに15時ジャストに店の主人らしき方がのれんを出し始めました。あまりに開店すぐに入るのもどうかと思いましたが,思い切って入店すると常連らしき女性がなんとすでに呑んでいるのでした。たちのみとありますが,椅子があるなんてもんじゃなくて実にちゃんとした居酒屋そのものです。開業時は立飲みでやっていたんでしょうか。恐ろしく濃い酎ハイが出てきました。お替りするとこれがグラスの7,8割ほどは焼酎で満たされています。肴はゴーヤチャンプルなどを注文しますが,これが出来合いではなく,その場の手作りで具が豊富でうまい。値段は肴が100~300円,ドリンクは250円~と驚きの安さ。馬刺しまでが300円とは驚きです。湯上り客などが続々と現れて,開店10分後に入ってこられたばあさんでカウンターは埋まってしまいました。他店との競合があまりなさそうな町なのにここまでサービスをよくしなくてもいいのではないかと,驚かされると同時に末永く頑張ってもらいたいと思ったのでした。なんと店を出ると入り口前まで店主ご夫婦が見送りしてさえくれました。 逗子線で金沢八景駅を経由,本線の追浜駅にて下車しました。かねてよりこの駅の読みが気になっていたものの生まれ持っての不精さ故に調べもせずに生きてまいったのですが,今回無事念願かなって判明しました。「おいはま」でも「ついはま」でもなく「おっぱな」と読むのですね。駅前には立飲み屋の看板がそこかしこにあって,こんなこぢんまりした町なのに驚くべき酒呑みの町であることを早速に知らされます。今回の目的地は10時開店の角打ち「安井商店」です。 横須賀街道を北上して庇下式のアーケード(道路沿いまで庇を延ばした形状の片側だけのアーケード)を進むと程なく見えてきます。軒下の看板には店名だけでなくなみなみとビールが注がれたジョッキや冷酒に猪口,ワインのボトルとグラスなどが描かれていて愉快です。店内はテレビを中心に迷路のように入り組んでテーブルが置かれ,早くもかなりの混雑です。乾き物と缶詰がメインで手を掛けた肴は冷奴,温奴にさつま揚げ程度ですが,これだけで十分です。場の雰囲気だけでも十分酒場らしさを満喫できます。正直よほど肴が充実した角打ちでない限りは雰囲気こそがすべてという認識なのですが,ここは雰囲気の点では申し分ありません。ハイキング中の熟年男女グループが怪訝な目つきで店内をチラ見していきますが,気にしないことにします。他人の目線を気にしていてはおいしく酒も呑めません。と思ったらこのグループもまたこちらに呑みに来られたようです。
2013/11/02
コメント(0)
開店前の「ジュ ルビアン」にがっかり。周辺にはマグロ料理店が何軒かあって,まだ昼前だというのに贅沢なランチを楽しもうという客たちが集まっています。近くには「やきとり 寿々木」とかいうボロい焼鳥店があって,店内ではじいさんが気が抜けたようになって座っています。非常にそそられます。当然開店は夕方からなので指をくわえて我慢です。最寄りの日ノ出なる停留所から路線バスに乗り城ケ島に移動します。城ケ島大橋からはぼんやりとはしていますが,輪郭ははっきりと認識できる程度に富士山も望め,ちっちゃなせこい旅だけどいいもんだなあと晴れ晴れとした気持ちになります。 城ケ島に到着,三崎港よりもさらに古びてシャッターの閉じられた店舗が多いさびしい町です。停留所のすぐには「cafe SEA SIDE HOUSE」なる喫茶店があり,店内を除いて,わざわざ立ち寄るまでもないかなと立ち去ろうとしたところを店主にいらっしゃいと声を掛けられたので観念して入店します。内装もインテリアもまあどうってことはないのですが,壁面には夥しいまでの映画関連のポスターやらチラシが貼り巡らされています。つられたてわれわれもひさびさに映画の話題に興じることになりました。映画についての薀蓄をあれやこれや語りましたが,案外まだまだぼくの記憶力もすてたこともないなあと自惚れたりもしたのでした。店を出てA氏に店主がわれわれの会話に興味津々の様子であったと言われ,だったら話し掛けてくれればいいのにと思ったりもしました。酒場なら容易にコミュニケートできるんですけどね。 さて,城ケ島をひと巡りし,食堂などを覗きながらも呼び込みの誘惑をかろうじて回避して城ケ島のバス停に引き返しました。これから三崎口->長井->逗子駅と路線バスを乗り継ぐことにしました。しばらくは来た道をそのまま辿ることになります。城ケ島大橋に差し掛かる辺りで「ジュ ルビアン」のシャッターが上がっているのがみえましたが,見なかったことにします。三崎口駅からは北上してすぐの長井という停留所で途中下車します。趣のある商店前にてしばし待つと逗子駅行のバスがやってきました。葉山のそばではプリンで知られる「マーロウ」やブーランジェリー「ビゴの店」などを通過して,こんな田舎町なのに随分きどった店が多いなあ,さすがに葉山だとますます嫌いになるのでした。ところが葉山御用邸のすぐそばにボロ食堂が2軒あって,なんだ葉山も悪くないじゃないかと簡単にころがるのでした。 逗子駅に到着しました。駅前には「立ち呑み処 寄り屋」とありますが,立飲みスペースらしきものが店舗わきにありますがまだ開店前。「立喰すし処 いなせ」も滑り込みでシャッターが半締まりとなっています。ぶらぶらする間に京急の新逗子駅に到着。田越川の向こうに「100円居酒屋」がありますが,まだ開店はしていません。いったいどんな店なのか気になりますが,今回は見合わせることにします。なかなかよさそうな趣ある「居酒屋 万紫味 支店」は暖簾が出ています。暖簾をくぐると今晩は4時からになりますと,カウンターにずらりと大皿に盛られた惣菜が並んでいますが,泣く泣く店を後にします。「居酒屋 万紫味 本店」はお休みでしょうか,開いていません。 逗子は諦めて移動しようかと考え始めたところ「つ久志」なる古い食堂風の造りの味のある店がありました。緑のテント庇に縄のれんがうれしい。きっと呑ませてもらえるだろうなと店に入ると案ずるまでもなくカウンターで若い男性2名がでっかいジョッキを煽っています。思ったよりもずっと狭くてコンパクトなお店でカウンターが10席,テーブルも2卓ほどです。瓶ビールをお願いしたらお通しに三枚おろしにした鯵かなんかの干物,家では持て余すであろうこうした肴もちょっぴり出されると無性においしく感じられます。せっかくなのでまぐろぶつやまぐろのメンチカツなどを注文。ビールはあなうれしやサッポロのラガーですね。昼酒の楽しめる良店でした。ひとつだけ難点を挙げるとこの日は暑かったのですが,さすがに冷房が効きすぎて恐ろしく寒かったのでした。
2013/10/31
コメント(0)
突然思い立って、いつものA氏と1泊2日の旅行に出かけることにしました。といっても日頃の散在が祟って相変わらずオケラの日々で行けるところとなると限られてきます。あれこれと候補地を立てていたところ、京急電鉄にお得なフリー切符があることをふと思い出しました。三浦半島2DAYきっぷというのがそれで他にも豊富なお得きっぷのあることで定評のある京急電鉄でもとりわけお得感の高いものなのです。ご存知の方なら知っているのは当たり前の話ですが、ご存じでない方のために簡単にご説明すると京急本線の金沢文庫駅より手前のほとんどの駅から金沢文庫から先の往復乗車券とフリー区間となる京急本線(金沢文庫~浦賀間)・逗子線・久里浜線各駅を組み合わせることができるというものです。さらに三浦半島を縦横につなぐ京急の路線バスも利用できるというのがうれしいのです。ぼくは品川駅から利用したので、2,000円です。1DAYきっぷは1,900円なので2DAY切符が断然お得です。 前置きが長くなりましたが、品川駅でA氏と落ち合い、まずはYRP野比駅を目指します。特快で1時間程度の乗車時間と旅行というにはいかにも物足りなくはありますが,それでも日頃あまり縁のない路線からの風景は,いくらかなりとも心躍らせてくれます。ところでこれから向かうYRP野比駅って随分へんてこりんでなんだか冴えない駅名ですが,このYRPとは横須賀リサーチパークの略称でNTTなどの電波情報通信技術関連企業の連合体の出資する研究拠点とのことであるとのこと。分かってみるとさらに興味が失せてしまいます。さて,早速駅前を散策です。駅を出るとさっそく立ち食いそば店みたいなのがありますが,それは横目に駅周辺を散歩します。喫茶店が数軒ありますが,「珈門」他1軒は準備中のようです。お目当ての「COFFEE HOUSE 木かげ茶屋」も見つけるには見つけたのですがどうも閉店してしまったように見受けられます。 しからば先ほど見かけた,すでに開店している駅改札すぐの「漁師小屋」という店に入ってみることにします。後でネットで調べたところ「うどん工房さぬき 野比店」が改装されたもののようです。改装記念サービスとしておでんが50円の張り紙があります。他にも売れ残りのかき揚げを卵とじにしたものやら豊富な肴もあって,立ち食いうどん店というよりは立派な立飲み屋さんの品揃えがうれしいのでした。1階の外から丸見えの立飲みスペースで通行人に眺めながら呑むのはどこかしら背徳的な喜びと恥じらいの気分に浸れます。2階もあるみたいでこの立地でこの広さはもったいないなあと余計な心配をするのでした。 もはやYRP野比駅には未練もないので三崎口駅に移動します。崖下にある三崎口駅の駅内の階段をひたすら上り駅前に出ると路線バス待ちの客たちで混雑しています。駅周辺にはコンビニや中華料理店やらがあるばかりで,いずれの人たちも待ち時間を持て余しているようです。われわれもしばし退屈な三崎口駅前でバスを待つことになりました。ほどなくやってきたバスに乗り込むと車窓をのんびり眺める間もなく三崎口に到着。三崎港を目の前に臨むひなびた港町に出ます。古ぼけた風景がノスタルジックでずっと歩き回っていたくもなりますが,あっという間に回り切れてしまうのが物足りなく感じられます。 バス通りに面して「喫茶 甘露(KANRO)」という屋号の標示のない喫茶店に入ってみることにします。さいはての地の海辺の喫茶店に似つかわしいどこか時代から取り残されたようなわびしさがそこはかとなく漂っていて,そのしんみりとさせられるところにああ旅に出たんだなあという心境をもたらしてくれます。どちらかと言えばオーソドックスでこれといった特徴があるわけでもないのですが,物静かなご主人と余計な音のない静謐な店内では特別な時間を送っている気分になれます。 「珈琲の店 キー」,「コーヒー 岬」,「珈琲屋」はいたって平凡なお店なのが残念。商店街のはじっこにある「ジュ ルビアン」は残念ながらお休み。というわけで次回は城ケ島に続きます。
2013/10/29
コメント(0)
野毛の思い出については、かつてもひとしきり語ったと記憶しますが、ヨコハマニュース劇場の存在と切っても切り離せないものがあります。トタンの壁のみるからに場末の映画館で、どこかからスクラップのプリントを拾ってきたのか、あらゆる映画を切り張りしたショットの繋ぎはもとより、映画のジャンルさえまったく無視した出鱈目なフィルムを漫然と眺める日々を今でもありありと思い起こすことができます。いつでもガランとしていながら、館内のどこかから発せられる殺伐とした視線を感じゾクッとすることもしばしばでした。今でも残る新橋のガード下のとある映画館のようにスクリーンの脇というなんとも乱暴な場所に設えられた便所では常に背後を気にしたものです。今ではその映画館もすっかり様変わりしてしまいましたが、当時そのままの酒場はいまだ残されており、当時の野毛の場末の緊張感を呼び覚ましてくれるような酒場が何軒か現役で店を続けています。 そんな好みの酒場のリストを増やすためにひさびさに野毛を訪れました。最初にお邪魔したのは「元祖 満州焼 庄兵衛 本店」です。満州焼という聞きなれない料理名を看板にする店で、存在はかねてより知っていましたが、今回が初めての訪問です。建物こそ年季を感じさせてくれますが、店内は思った以上に活気にあふれていて、むしろからっとした明るさを強く印象付けられます。たまたま入れ替わりで空いたカウンターに通されます。店の方たちもまた店と同様溌剌としており、野毛という町は活気よりくたびれた雰囲気のほうがぴったりくるのになあと贅沢な感想を抱きます。失われてひさしい映画館に通っていた当時は、野毛の町はこれほどまでに善男善女が集う町ではなかったように記憶します。今では観光気分で気軽に訪れることのできる町となってしまったようです。所詮よそ者のぼくなんかが言えた義理ではないことは重々承知していますが、なんとも残念なことです。ずっとこの町で呑み続けるより他になかった方々をわれわれはこうして物見湯算で訪れることで居場所を奪ってしまっているのではないのだろうかと柄にもなく申し訳ないような気持ちになったのでした。 「世界のカクテル 山荘」もまた、味わいのある洋風建築に惹かれながらも立ち寄ることのない酒場でした。思った以上に広い店内でカウンター以外にもたくさんのテーブル席があります。カウンターはほぼ埋まっていますが、まだ割り込む余地はあったのですが、ここは常連たちが集うための席であるという思いに駆られてテーブル席に通してもらうことにしました。カクテルなどを何杯かもらいましたが、あまり覚えていません。肴のメニューが豊富だったことを思い出すくらいです。どうも野毛の町では感傷的になってしまうのかいつも以上に呑み過ぎてしまうようです。この町がそうした感傷とは無縁になるにはまだまだ時間が必要なようです。
2013/08/31
コメント(0)
「山上酒店」を出るとこじんまりして味のある商店街に向かいます。横浜橋通商店街がそこで、つい先だっても訪れて数軒の喫茶店にお邪魔しました。この商店街の外れに見るからに歴史を感じさせる酒屋さんがありました。 「隅田屋酒店」です。店が目に飛び込んでくると遠目からでもオープンなスペースに14,5人程度は呑むことができそうな立飲みコーナーがあるのが見えてきます。すばらしく年季が入っており、あまりにうれしくて飛び込むように店に入ります。店にはちょっと暗い印象の高齢の女性がおられたので、こちらで呑むことはできますかと尋ねたところ、今では角打ちとしての営業は取り止めているとのことでした。無念です。が、くよくよしてもしょうがないものはしょうがないので、この古びたカウンターで酒を呑む自らを想像しながら店を後にしたのでした。 暑さに疲労もかなり募っていることを感じたので、どこか一休みできる店はないかとしばし彷徨います。阪東橋駅から伊勢佐木長者町駅に向かって歩いていると、広くて立派な食堂があります。冷房も効いていそうなので飛び込むように店に入りました。「いちばん」という典型的な町の食堂です。相当広い店内で昼食時はとうに過ぎているにも関わらず20名近いお客さんがおります。ほとんどの席には瓶ビールが置かれており、呑み屋使いしている客が多いようです。食堂らしく実にさまざまな肴があって、目移りします。かつては24時間営業だったというこのお店、それでも今でも朝の7時から夜は12時まで営業していて、さまざまな用途で使えて重宝しそうなお店です。調べてみると横浜という町は大衆食堂がかなり現役で営業しているようで、いずれ横浜の食堂巡りなども面白いかなと呑んでるその場ですでに次の呑み歩きを想像してしまうのでした。 ぼちぼちくたびれたので引き揚げてもいいほどすが、涼んだおかげで幾分体力も回復したので、せっかくですから有名な「浅見本店」に行ってみることにしました。明治にはすでに創業していたという古いお店で、さまざまなメディアでも頻繁に紹介されていますが、ようやく訪問することができました。味のある店構えで十分満足ですが、やはり有名店ということもあって14,5人程度が入れる立飲みスペースはほぼ一杯になっています。それはそれで商売繁盛結構ということなのですが、やはり角打ちは人気もなく侘しいくらいなのがちょうどいいと感じるのでした。静まり返った環境こそが角打ちの醍醐味で、これほど賑わってしまっては角打ちの魅力をかなり損なってしまうように思われます。それなに賑わっていないと店を続けるのは難しいでしょうが、やはりこの広さであればせいぜい4,5人程度入っているのがちょうどよく思えます。いずれ呑兵衛の世迷い事と笑って聞き流してください。
2013/08/27
コメント(0)
この夏は、あまりの暑さに遠出するのが億劫で、かと言って家でじっとしているのもうんざりなので、ちょっとした日帰りの散歩を楽しむことで気晴らししています。手軽な日帰り散歩として我が家から近いのが横浜で、電車に乗って1時間弱と日常生活ではそうそう出向くわけにはいかないけれど、暇を持て余す休みの日にふと思いついて出掛けるには程よい距離です。観光地を巡るのもこの暑さでどうにも気乗りしないので、いずれ機会を見つけて行きたいと思っていた角打ち巡りをすることにしました。 先日行ったばかりの西横浜駅の藤棚商店街には角打ちがそこらじゅうにあって呑みそびれた店も多いので再訪してもよかったのですが、まだまだ記憶に鮮明過ぎるので機会を改めることにしました。というわけで今回は石川町の近辺の角打ちを巡ることにしました。石川町駅のイメージは、女子高が多いことから乙女駅と呼ばれたり、元町、横浜中華街、横浜スタジアム、山下公園といった観光客向けの町や施設に近く、想像するだけでうんざりしてしまいなかなか足を延ばす気分になれなかったのですが、もう一つの顔を持っていることももちろん忘れていたわけではありません。山谷、釜ヶ崎と並び日本の3大ドヤ街と言われる寿町の最寄駅であるということです。日本を代表するドキュメンタリー映画作家のひとりである小川伸介が構成を担当した「どっこい!人間節 寿・自由労働者の街」や渡辺孝明が監督した「寿ドヤ街 生きる」などの映画を見て、この町に興味を持って訪れてからもうかなりの年月が経ちましたが、それ以降、めっきり足を踏み入れることなく忘れかけた町になっていました。 久しぶりに訪れた寿町は以前とさほど異なった様子もなく相変わらず労働者たちの姿がそこここで見られます。ヨコハマ・ホステル・ヴィレッジなる計画で、バックパッカーなどを町に呼び込む運動があるということですが、そうして人々の姿は見られないようです。そんなことを思いながら町を歩いていると、酔っ払いのオヤジが明らかにぼくを目掛けて道を斜めに歩いてきます。因縁を付けるつもりのようです。そして案の定、突っかかってきますが、この手合いのオヤジにはさすがに慣れているので、軽くいなしてオヤジが立ち去るのを見送ります。物見遊山で訪れたのだと思われたのでしょう。まあ角打ちを巡るのは立派な物見遊山ではあるのでしょうが、ドヤ街の人々にカメラを向けたりして迷惑をかけるつもりなどなかったので、いささか不快な気分になります。致し方ないとはいえ、そうした行為が誤解を拡大することに寄与するのは間違いないことです。 そんな只中に大きくて立派な「山多屋酒店」があります。かなりくたびれてはいるものの長く寿町の歴史を見守ってきた風格を感じます。創業は大正12年と言うことです。酒屋に併設されて20人程度は入れそうな立飲みスペースがあります。レジを挟んで店内でつながっている造りです。店内では真昼間だというのに7,8名ほどの人たちがご機嫌に酒を酌み交わしています。一人孤独に呑む客もいれば顔見知り同士愉快に大声でなんだかよく分からない会話を交わす者たちもいるのは当然どこでも見かける光景ですが、ことごとく高齢者ばかりです。この人たちはどこから流れてきて、これから先、このままこの地に骨を埋めることになるんだろうかと店を楽しんでばかりはいられない気持ちになります。 寿町を後にして中村町まで来ると最寄駅は伊勢佐木長者町駅ということになるのでしょうか。トタン張りの家屋やボロアパートなども建つ住宅街のある裏通りにある「山上酒店」にお邪魔しました。カウンターを挟んで酒屋と14,5人程度が入る立飲みスペースとに分かれています。このスペースは真昼であるにもかかわらず日の光もあまり届かず、真夏の日差しに慣れた瞳では恐ろしく暗い空間として捉えられました。店のばあさんが暑い暑いと椅子に座りこんで団扇で仰ぐ姿がカウンター越しに埋もれるように見えます。このばあさんが明るくて優しい方でなかなか話はかみ合わないながらもほんわかと温かい気持ちになります。ひとりおられる先客は店の奥で身じろぎ一つせずにすっくと立っており、表情は暗さのせいなのかまったく変化する気配もなく、時折グラスを口に運び異様なまでの迫力を醸し出しているのが印象的でした。 大通り沿いにある「坂田屋酒店」も角打ち営業をしているという情報でしたが、たまたまなのか店は閉まっていたのでした。その後、大きな食堂で一憩の後さらに角打ち巡りは続きます。
2013/08/25
コメント(0)
藤棚商店街散策にくたびれて、しかも歩き詰めで酒は呑んでも前夜からまるっきり固形物を摂っていないので、さすがに軽い空腹を感じ商店街の藤棚交差点にある立ち食いそば屋に入ることにしました。 「山善 藤棚店」は24時間営業と書かれていて、深夜に人の行き来することもなかろうと思われるこの商店街で果たして商売が成り立つものやらと怪訝に思いながら店に入ります。手前がカウンターで、奥にテーブルも2卓あります。品書きを眺めると、ここでも酒が呑めるようなので、食事は取り下げて、軽く肴をつまみつつ、少し酒を呑むことにしました。酒といってもビールと茶割ハイというのがあるだけ。水気はひっきりなしに摂取していたので、ビールはもう入りそうもありません。茶割ハイをお願いすると缶が出てきました。まあいいんですけど。天ぷらとコロッケを見繕ってもらいます。他にも酒の肴になる品書きがあって、ここで一杯引っ掛ける人も多いようです。だし巻たまごやねぎとろをそばやカレーライスの副菜にするのは変ですから。おばちゃんが2人でやっているけどシフトはどうなってんだろうななどと他愛ないことをぼんやりと考えながら昼酒を楽しむのでした。品書:ビール中:500,茶割ハイ:350,天ぷら:50~,かけ:320,カレーライス:550,だし巻たまご:200,ねぎとろ:350 続いて、洪福寺松原商店街を目指します。またもや汗だくになりながら相鉄線天王町駅に向かいます。途中、「吉野屋酒店」なる建ったばかりのような真新しい建物の酒屋さんがあります。この辺りなら当然角打ちもあるだろうと覗き込むと、やはりありました。店の奥に20人程度の広い立ち飲みスペースがあります。当然ながら営業している気配もなくすごすごと素通りするしかありません。 さて、到着した洪福寺松原商店街、「ハマのアメ横」なんて呼ばれ方もするそうですが実はやって来たのは、はじめてです。ここにも数軒の角打ちがあるようなのでそのチェックにやって来たというわけです。「伊達屋酒店」というのがあるはずですが、商店街見物もそこそこに必死になって探したものの見つからず、諦めて商店街を眺めて歩きます。店舗数は100軒に及ばないということですがものすごい人手です。確かにありとあらゆるものが安く売られているものの商店街としての面白味はあまり感じられません。買い食い商品も結構あるのになぜだろうかと考えながらぶらついているととうとう角打ちを見つけることができました。 「中村屋酒店」です。かなり年季の入った建物で年季というよりはボロいと言ったほうが適当かもしれません。入ってすぐにじいさん3名が歓談しながら呑んでいます。もちろん仲間入り。あまりの大汗をかいていたのが功を奏したのか今日は暑いねえからはじまるお決まりのやり取りが始まります。オヤジたちはそこらに適当に座り込んでいますが、壁に沿って置く行きの浅い板が伸びていて、そこは止まり木として使われているようです。なんとか詰め込めは10人程度が入れる立飲みスペースとなりそうです。ただこんな暑い日に暑苦しいオヤジたちとびっしり雪隠詰めになるのは遠慮したいものです。この日に入った角打ちでは、他に客もなかったので、ほとんど一言も話さずに一日を過ごしてきたこともあって、かなりハードな客層が集う店でしたが楽しく呑むことができました。
2013/08/16
コメント(0)
正確には藤棚商店街は、藤棚地区商店街連合会という横浜市の西区にある5つの商店街の連合会で成り立っているようです。藤棚一番街協同組合、協同組合サンモール西横浜、藤棚商店会、久保町ニコニコ商店会、西前銀座商店街協同組合という5つの商店街には、全部で約280店舗に及ぶ商店があってありとあらゆる物が揃っています(多分)。相鉄線の西横浜駅が最寄駅ですが、どうしても立ち寄りたいところがあったので、湘南新宿ラインに乗って東海道本線の保土ヶ谷駅に向かったのでした。さて、どうして藤棚商店街を訪れたかという理由については、以下のホームページをご覧いただければ一目瞭然です。http://hamarepo.com/story.php?story_id=462 そう、この商店街には角打ちが乱立しているらしいのです。幸いにもこのHPでは角打ちをやっている酒屋さん6軒を含めて商店街にある7軒の酒屋さんが紹介されているので随分参考になりました。この地図を参考にして巡ってみることにしました。ただし、時間の都合で昼間に訪れたので、夜のみの営業の角打ちはチェックするだけにとどまったのは至極残念ではありますが、また訪ねる機会を残したと思うことにしましょう。実際には指を加えて見過ごすのは断腸の思いでした。 保土ヶ谷駅から環状1号線を汗だくになって歩き、大門通りを右に折れます。跨線橋を渡り東海道本線、東海道(国道1号線)を越えさらに北に進むとぽつぽつと商店が建つ通りがあります。これが藤棚商店街の久保町ニコニコ商店会なのでしょう。すぐに酒屋さんが目に入ってきました。 「大和屋酒店」です。4,5人程度の立飲みスペースがあります。商店街の外れにあるせいか周囲にも人気はなく古びた店はさらに暗く感じられます。もちろんうらびれたムードは大歓迎なので、すぐさま併設の(本当は立飲み用のスペースが併設なのですが)酒屋さんに飛び込んだのですが、いくら声を掛けても反応はなし。ああ、残念です。たまたま留守にしていたのか、声が届かなかったのか、はたまた昼間は呑むことは許されないのか定かではありませんが、出直すことにします。 続いては、商店街を数十メートル程度歩いたところにありました。「藤屋酒店」です。こちらは独立した立飲みスペースはなく、4,5人程度の立飲みカウンターが設けられていました。お店のおばあさんにまだ呑ませてもらえないですかと尋ねると、夜だけなのよと優しい声ながら頑として譲らないという意志が感じられる回答でした。木造りの店内はこの界隈の角打ちでもなかなかの風情を漂わせており、こちらもまたぜひ再訪したいと強く思うのでした。 次の「柏屋 小野酒店」は商店街から外れた住宅街の中にある酒屋さんです。店の構えこそ改築したせいかかなり味気のない真新しいものですが、こっそり覗き込んだ店内には10人程度の独立した立飲みスペースがあって、なかなかの雰囲気。酒屋さんのほうにはおっかない面相の主人がデンと椅子にそっくり返っていて言葉を掛けるのも憚られる様子。店内に貼り出された紙に16時から営業との記載があったような。こちらもまた次回のお楽しみです。 続いての商店街、サンモール西横浜にあるはずの「徳島屋酒店(とくしまや)」が見当たりません。どうしたものかと何度か行ったり来たりしてようやく形跡を見出します。看板に「とくしまや」の記載があったのですが、実際には「Cafe SARAI」なるカフェになっていました。写真に残された店舗写真との落差にしばし愕然となりますが、もはや取り返すこともできません。気を取り直して次に向かいます。 「三河屋酒店」はすでに角打ちをやめていることが記載されていたので、参考程度に眺めてみますが、店舗そのものも小奇麗な現代的な店舗に変貌していました。 「杉山酒店」の軒下には「LIUOR SUGIYAMA」と浮き出しの金字で標示されておりなかなかモダンな雰囲気。酒屋側の店舗では店の夫婦がカレーを召しあがっていました。呑ませてもらってよいかと問うと、どうぞ今明かりを付けますからと快諾されます。ようやく呑むことができそうです。店の脇には10人程度が入れそうな立飲みスペースがあり、その奥にはレジの前でカレーを召し上がるご主人が見えます。腰上の高さの奥行きがあまりないカウンターの上には川柳やら注意書きが貼り出されていました。缶チューハイを求めたところコップを出してくれました。お食事の邪魔をして申し訳なく思いながらもカレーライスの香を肴にゆっくりと酒をいただきました。 「福田屋酒店」は商店街からわずかに逸れた住宅街の中にあります。倉庫のようなぶっきらぼうなお店で、中はかなり広いのですが立飲み用のスペースは外からは窺うことはできません。50代後半くらいのおじさんがいたので、呑ませてもらえるかと尋ねると快諾されました。いそいそと冷蔵庫の中を物色していると生ビールもあるよと声を掛けられたので、思わずじゃあ下さいと答えてしまいましたがそれは随分と割高だったようです。ここで呑んでよと示されたのは4,5人程度の座り飲みスペースです。ちょうど店頭からは死角になっていたのでした。パイプ椅子に座って生ビールを呑みながら観察するとハブ酒:320円、オットセイ・朝鮮人参 20年以上:300円といった張り紙もあります。店のオヤジさんによるとこの時間帯はたまたま客がいなくてついていたねということで、入れ代わり立ち代わり客が入るようです。川柳なんかも貼り出されているのはこうした店の特徴かもしれません。ちなみに火~日曜日は9~20時、月曜日は16:30~19時までの営業となるようです。 さて、藤棚商店街からはちょっと外れますが、「白木屋酒店」というモダンな住宅兼酒屋さんがありました。こちらにも座り飲みスペースがありました。ただ、この日はあまり気乗りしなかったので立ち寄らずに眺めるだけに留めました。次来た時にはきっと気分を盛り上げて寄るようにします。 といったわけで藤棚商店街は確かに角打ちが豊富ですが、互いの店のことはあまり意識していないようで、とある主人にこの辺は角打ちが多いですねえと話すとええっ本当、どこにあった?など本気なのかこちらを試しているのか判断し辛い反応をされていました。互いにあまり連絡を取り合っている様子はなさそうなので、この調子では先は長くなさそうです。連携して角打ち文化を守り、はぐくんでいってもらいたいものですが身勝手な願いなのでしょうか。
2013/08/15
コメント(0)
またまた武蔵小杉にやってきてしまいました。もうすぐどうしようもなく退屈な町に変貌するに違いない町の最後の煌きを求めてなんとか記憶に留めておきたいと考えたのでした。前回来た時に気掛かりでありながらすっかり酔っ払ってしまって入れなかったお店2軒に行ってみます。この2軒は再開発の波に呑まれずに持ちこたえることができるのでしょうか。 最初は「潮来」です。一見したところありきたりのどこにでもある居酒屋です。店に入ってもその印象は変わらずちょっと残念な気分になるものの品書きを見てちょっとびっくり。店の雰囲気とは異なりいずれもかなりお安め。それなのにこの入りの悪さはどうしたことでしょう。「文福」があれほど混んでいるのに、この比較的広いお店は3名ほどしかお客さんがいません。店は両親にその息子さんらしき3名でやっていますが、息子さんはちょっとよそ見が多いのですが、両親は居酒屋のオヤジとその奥さんというと想像してしまうそのまんまの雰囲気で安らぎます。ちょっとおっかないオヤジと優しげな奥さんという組み合わせは居酒屋という空間がそうさせるのでしょうか、それともこういう夫婦は居酒屋をやってみたくなる素質があるんでしょうか。これ以外ないという連れ合いに思えます。息子さんも両親のような連れ合いができたらそれらしい風貌と振る舞いが身についてくるのかもしれません。特別なところはありませんが、くたびれた金曜日の夜なんかにのんびり時間を掛けてくつろぎたくなるようなお店でした。品書:トリスハイボール:250,ホッピー:400,サワー:330,酒大:500,ビール大:550,焼とん:100,メンチカツ:380,レバー唐揚:420,煮込豆腐:500,じゃがバター:300 遠目から「(味)(マルミ)」を見掛けた瞬間にここは絶対好きな酒場だと予感しました。間もなく閑静かつ利便性のいい町に変貌しつつある武蔵小杉にとってこの店は過ぎたる贅沢とも思われるような酒場ではないかと直感しました。ところがこの店に酔っ払ったまま入ってしまってはもったいないとの気持ちが今回間をおかずに再訪した理由の一因です。店に入った途端にこの酒場の魅力にすっかりまいってしまいます。思いがけず広い空間は大げさに言えば王子の山田屋のような気軽さと大衆性を併せ持っていると感じます。品書きもまさに酒場らしくシンプルなものばかりで品数も少ない。でもまったく問題ありません。酒場は酒を呑む場所であって、肴を味わう場所では本来なかったはずです。とうふをお願いするとあったかいの冷たいの?とおばちゃんに尋ねられたので、この夜はめっきり冷え込んでいたため、迷わずあったかいのを。東京の酒場では珍しい温奴です。大振りの豆腐をゆっくりとゆで、豆腐としょうがを乗せただけの簡素ともいえるものがどうしてこうもおいしく感じられるのでしょうか。これは自宅でいくら上等な豆腐を使っても出せないうまさです。そこが酒場の不思議で魅力的な謎です。その謎に惹かれてついつい連夜暖簾をくぐるのでしょう。「潮来」と違う点、この酒場は毎晩でも訪れて軽く一杯引っ掛けて家路に着くというまさに王道の酒場と言えると思います。酒:280,サワー:320~,焼酎:280~,やきとり/とうふ:100,あじ干物/枝豆:250,ししゃも:160,じゃこ/もろきゅう/トマト/おしんこ/じゃがバター/あつあげ:210,おでん:300
2013/04/17
コメント(0)
立飲み店で様子を見ますがどうも決め手には欠くようです。きっと一昔前までは古い酒場もたくさんあったのでしょうが、すでにかなりの店が再開発で押し流されていったものと想像されます。ぼちぼち腰を落ち着けて呑みたいということもあったので、「吉田類の酒場放浪記」を参考にして武蔵小杉の有名店をはしごすることにしました。 まずは、「串焼 文福 本店」です。武蔵小杉と言ったら必ず名の上がるお店で、店の前に来るとこぎれいな一軒家のお店です。昭和45年頃創業ということなので、当然移転もしくは改築しているのでしょうが、もう少し風情があってほしかったですね。店内に入るとびっしりのお客さんで、こりゃだめかなあと思いながらも従業員の気付くのをしばらく待ちますが、一向にこちらを気に留める様子がない。しびれをきらして声を掛けるとさも迷惑そうな様子で、お待ちくださいとのこと。しばらくしてようやく通されたのが男女ペアに挟まれたカウンターの窮屈な一席だったので、よほど店を出ようかと思ったのですが、まあ待たされたこともあるので少しだけ窮屈さを我慢することにしました。で、感想。たしかにうまいことはうまいけど、都内にもこの位の店ならいくらでもありそう。焼き場担当の主人こそ愛想がよかったものの、客層も若い人が多すぎてくつろげず、ややうんざりとした気持ちでお勘定しました。品書:生中:500,生ホッピー:480,サワー:350,焼とん:100,焼鳥:110,カレー煮込:450,イタリア焼:120,玉三郎:150 次こそいい店であることを期待して、昭和32年創業の「玉や」を探すことにしました。「文福」は何度か見掛けたことがあったので、すぐに辿り着けましたが、「玉や」はおおよその場所さえわかりません。ところが案ずるまでもなくすぐに見つけることができました。古い店が少ないので遠目でもすぐに見つけることができたのでしょう。ここはとても雰囲気がよかったです。女将さんが優しい方でけっこう混雑している店の一番奥のカウンターのはしっこに案内してくれて、女将さんの定位置がその目の前なのであれこれとお話しさせていただきました。ただしそのお話の内容はすっかり忘れてしまいました。うなぎのお店かと思ったらなんでもありのお財布にも優しい気持ちのあったかくなるような居酒屋さんです。こちらも若いお客さんが多かったのですが、心なしか客層も好ましく感じられたのは店の雰囲気がもたらすものだったのでしょうか、まあ単純に酔っぱらっていただけかもしれません。
2013/04/13
コメント(0)
先日の散策した新丸子に続いてこの夜は武蔵小杉に出向きました。武蔵小杉には以前は映画を見るために何度となく通い詰めたものです(川崎市民ミュージアム)。ただ、以前は今ほど町歩きにも興味がなかったため、ほとんど自宅と映画館(というかホール)を行き来するのみで、まれに駅前の居酒屋で一緒に映画を見た友人などと軽く呑む程度でした。先日ひさびさに訪れた際にすっかりターミナル駅としての風格をなしており、駅前風景も再開発による立ち退きなどで趣を変えつつあるようです。武蔵小杉の古い酒場で呑むなら今が瀬戸際ということを感じざるを得なかったので、重い腰を上げて向かったのでした。 勝手の分からぬ武蔵小杉の飲み屋事情でもあるので、まずは安全性を重視、立飲み屋で様子を見ることにしました。最初に見つけたのが「もつやき処 立ち呑み番長」です。真新しいお店であまり魅力は感じなかったものの他に立飲み屋があるかもわからなかったので、軽く呑むだけのつもりで入ってみることにします。立飲み店としてもかなり手狭な店なので、先客が5,6名ほどでしたがそれでもぼくが入ると面倒くさそうなそぶりを見せる客もいて、あまり気分はよくありません。若い女性がひとりでやってるお店で、あれこれとオーダーが入っては忙しそうに仕事をこなしているので、なかなか注文のきっかけがありません。その間、店内や品書きをチェック。値段が立飲みとしてはちょっと高いなあと思う金額だったため、すぐに出してもらえそうなさといもそぼろ煮をもらうことにしました。他の客たちが食べている肴を盗み見ると、見ただけでもけっこううまいであろうことがわかります。実際煮物をいただくとこれがなかなかにおいしくて、さらにあれこれといただきたくなるのですが、あまりに忙しそうでしかも常連さんが電話でいま「番長」にいるから早く来いよなんてやり取りを聞いてしまったので新参者の自分がいつまでもいるムードではなかったのでお替りだけして早々に切り上げたのでした。帰り際に常連さん数名からまた来てよと声を掛けられすっかり気分がよくなるなんてちょっと単純でしょうか。品書:ビール大:600,酎ハイ:300~,酒1合:500,レバテキ:700,なすのピリ辛サラダ:200,ゆでたん/もつポン酢:350,もつ煮込:400,里いもそぼろ煮:280 ガード下に「やきとり 一心」というお店があります。外見ではわざわざ立ち寄るまでもなさそうに思われましたが、ほろ酔いセット(生中or酒(菊正宗)+焼鳥):600円の張り紙を見て思い直し、お邪魔してみることにします。立ち食いソバ屋さんのような店の造りでこちらも女性一人で店を切り盛りしているようです。さきほどの店はスーツ姿は少数派でしたが、こちらはすべてスーツ姿のサラリーマン客。女性の姿は見受けられません。張り紙のセットを注文しますが、冷静に考えると立飲み屋としてはけして安いわけでもありません。店の方が扉を挟んで奥のほうで焼鳥を焼くため、店の方との交流がない分、常連さんと主人とのやり取りというのがあまりなく、その点数名のサラリーマン客には使いやすいのかもしれません。ひとりでリラックスして読書でもしながら呑みたい人にはこちらがいいのかもしれません。
2013/04/12
コメント(0)
東急東横線と副都心線の相互乗り入れは,どこの鉄道の場合にもあてはまりますが,便利になる人と使い勝手が悪くなってしまう人に分かれるものです。今回の相互乗り入れはぼくにとってはまさに大歓迎の出来事で,うれしさのあまりすでに何度も東横線沿線に遊びに行っています。なかなか面倒で10年以上も訪れていなかった白楽で下車して六角橋商店街に遊ぶなんていうこともやってみたりしてまだまだ行ってみたい町がたくさんあります。 ところで,以前はしばしば訪れていた新丸子ですが,ここ数年はめっきり足が遠のいてしまっていました。ちっちゃな町ではありますが,かつては駅周辺には古いお店もたくさんあって,やたらと焼鳥屋が多いなと,やきとん中心の都内の酒場文化圏とは多摩川を隔てただけでずいぶん違うもんだなとじっくり飲みに行きたいと思いながらもなかなか足を運べずにいました。ひさびさに降り立つと,商店街の路地のごみごみした感じこそそのままですが,古いお店は更地になったり,閉じられっぱなしになっていたりして,詮無きことかと思いつつもさびしいものです。肝心の焼鳥屋もテイクアウトの店こそちらほらありますが,事前に調べておいた「けんもつ屋」や「六甲」というお店が見当たりません。閉店してしまったのでしょうか。居酒屋もさほどは見受けられず,古くてよさそうなのは明かりが付いていません。 それではと向かったのは「三ちゃん食堂」です。「吉田類の酒場放浪記」なんかでも取り上げられるよく知られたお店で,一度は来ておきたかったのですが,本当ははじめての訪問では昼飲みを楽しみたいと思い,今回来るつもりではありませんでしたが他にこれといったお店もないので致し方ありません。王子の「山田屋」ほどの風格はありませんが、川崎の「丸大ホール」と同じくらいのオオバコでしかも活気があふれています。にぎやかな店内でカウンターだけはひとり客がメインで、食事される方が多い中、ひとりしんみり酒を呑みます。季節もののたらの芽天ぷらは残念ながら売り切れ、ふきのとう天ぷらをお願いしました。とびきり風情があるとかいうわけではありませんが、暇をもてあました休日の昼時にふらり訪れて一杯飲むには抜群なお店です。昭和42年創業,ハイボール:350,ビール大:500,サワー/酒(松竹梅):300,ポテトサラダ/イカ天ぷら/メンチ:250,特上まぐろ:600,さばの味噌煮/ホルモン焼:450,ふきのとう天ぷら:280 以前、新丸子で古くから営業している喫茶店「まりも」(系列店が日吉にもあります)を訪れた際、ぜひ夜に新丸子にやって来なくてはと思わせてくれたお店に移ることにします。「まりも」のすぐそばにある「おしどり」です。すりガラスに格子の入った引き戸にやきとりの文字が入った藍暖簾、それに赤提灯とくればまさしく理想的な酒場はこれと言っても過言ではないかもしれません。店内はL字のカウンターのみ、先客はおひとりだけです。このお客も主人もけっこうな強面でちょっとたじろぎますが、ここは慣れた風を装っていきなりお酒をぬる燗でいただくことにします。肴が串焼や煮込など最小限なのも好みです。長っ尻するのでなければ肴なんかは10品もあれば十分です。串焼を適当に数本焼いてもらいます。この串焼はちょっとちっちゃいですかね。まあ味は悪くないし問題なし。すぐに先客はお勘定を済ませ立ち去りました。ぼくは店主と会話を交わすことも思いましたが、ここはひとり黙って呑むのが相応しいと思い直し、黙々と串を手繰り、盃を傾け早々に店を後にしたのでした。品書:酒:300,ウーロンハイ:350,煮込:400,串焼:100
2013/04/08
コメント(0)
市民酒場の概要については「はまれぽ。」(http://hamarepo.com/story.php?story_id=1449)に詳しい由来が記されていて参考になります。簡単にまとめると第二次大戦下の神奈川県では酒場に少量の酒を求めて酒飲みが殺到してしまい,ヤミ酒や横流しが横行したため,横浜市に700軒近くあった酒場を3店1組に整理して200軒程度に抑えることで犯罪を抑制するというのが狙いだったそうです。紹介されているのが新子安にある「市民酒蔵 諸星」,神奈川の「市民酒場 みのかん」,そして戸部の「市民酒場 常磐木」。同ページの記事で「諸星」の店主が語るところによると現在でも市民酒場を標榜するのはこの3軒のみということです。 そうなると今現在,代替わりなどで市民酒場を謳わなくなったお店が現存しているのかが気になるところです。そんな疑問の一部を解消してくれるページがありました。http://blog.goo.ne.jp/hagemarupika/e/d41242831766e15920d6a43a5e9c6120 このページの作者の方は,30年以上前に「横浜市民酒場組合」に属するとあるお店のご主人に会員名簿(昭和40年代)を借りて,約30軒を訪れたそうです。詳細はこのホームページを御覧いただくとして現在も営業しているお店として「武蔵屋」,「小半」,「栄屋」などが揚げられております。考えてみれば戦後すぐ創業した酒場の多くは,ヤミで営業していたお店や業種の違うお店以外はもともとは市民酒場だったんでしょうね。それにしても往年の名市民酒場を記憶されているこのページの作者の方をうらやましく思います。 野毛を散策している際,「市民酒場 相模屋」というお店を見かけましたが,このページで紹介されているお店と同一店なのでしょうか。シャッターこそ閉ざされていましたが,まだ閉店しているようには感じられなかったのですが。 ところで,市民酒場は横浜市だけが対象となっていたのでしょうか? 神奈川県内の横浜市以外の地域はどのような扱いを受けたのでしょうか。「はまれぽ。」の記事を読む限りでは,判然としません(きっちり読み込んでいるわけではないのでもしかしたら触れられているかも)。実は8月に小旅行した際,平塚に立ち寄って市民酒場を目撃していたのでした。この謎はぜひとも自力で暴いて見たいものです。
2012/12/10
コメント(0)
さて,さすがに相当いい気分になっています。あまり悩むのも面倒になっていたので,昭和27年創業の「若竹」に寄ってみることにします。噂ではいつも席が塞がっていて入れないこともあるとのことなので,ダメもとで行ってみたところ,なんのことはない,ガラガラでした。それにしても店の雰囲気は抜群にいいですね。カウンターと丸椅子の醸す雰囲気は酒場の理想系のひとつかもしれません。ただ,うろ覚えですが,ばあちゃんがなかなか厳しいお方で,なんだかんだ注文を付けられたようです。まあ出る頃にはすっかり出来上がってしまったので気にはなりませんでしたけど。ビール大:650,酒(菊正宗/白鹿):350,焼鳥:150~ そんなに出来上がったのに次に向かったのは「市民酒場 常磐木」です。ご存知の方なら出来上がって向かうにはいささか遠いんじゃないかと思われるでしょうが,酔っ払いには多少の距離は気にならなくなるようです。そんな状態なので,なにを呑んだか,つまんだかはまるっきり失念しています。唯一記憶に残っているのが,案外普通のお店だなあということで,お客さんの入りもぼちぼちという感じだったということです。ところで,このお店,市民酒場って標榜していますが,市民酒場って何なのか気になるところです。以前も調べてみるなどと書いたことがあったのですが,ネット上にその正体が明かされておりましたので,次回は市民酒場について触れたいと思います。品書:ビール大:550,酒(無冠帝):500,ひれ酒:600,ネギチャーシュー:450,あなご天:250,自家製シューマイ:400,ニラ天:300,,ふぐ豆腐:2,000
2012/12/09
コメント(0)
「吉田類の酒場放浪記」や先日放映された「アド街」でも登場した昭和34年創業の老舗焼鳥店「鳥芳」に伺うことにしました。アルミサッシに囲まれた安普請の狭いお店が心地よいお店でした。狭いカウンター席は席を譲ってもらってようやく腰掛けられ,常連さんに根強く愛されていることが感じられます。「おでん あさひや」もそうでしたが,何気ないお店なのになぜだか長居してしまいます。主人と常連さんが一見のぼくにも分け隔てなくお付き合いいただけたからでしょう。野毛でははしご酒する人がたくさんおられるようですが(かく言うぼくもまぎれもなくはしご酒派です),こうしたじっくり腰を据えたくなる店があるのも野毛の魅力の一つです。品書:ビール中:550,酒:500,鳥好み焼:500,ビーフシチュー:500,ささみわさび:150 昭和24年創業の老舗中華料理店「中華料理 萬里」で一休み。町場にどこにでもあるごくごく普通の中華料理店です。ついつい老舗というと店構えや内装なんかに期待を寄せてしまうわけですが,店自体にはさほどの面白味はありません。大方の客は清潔で気持のいい環境を望むわけで,長年商売を続けられるからにはこの辺きっちりと押さえられているのでしょう。有名店なので客の入りがいいのを覚悟して店に入ったわけですが意外なことに数名の客がいるばかりです。料理も現地のものに近い本格的な料理がどこででも食べられるようになった現代では特別どうこう言うほどのものではありませんが,おいしくいただけました。品書:ビール大:530,青島ビール:380,酒:290,焼餃子/水餃子:336
2012/12/08
コメント(0)
全116件 (116件中 51-100件目)